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輪廻の島  作者: よしお
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エリアスは城内の衛兵宿舎で目を覚ました。宿舎では起床時にラッパを吹いて全員を起こすのだが大抵の連中は生活リズムが出来上がっていて、そんな不愉快な音で叩き起こされる前に目が覚める。彼も大音量のラッパの音色で叩きおこされる前に目覚めたが今回は事情が違った。ある夢を見たのだ。それは人生の岐路に立たされた時、必ず見る夢であった。

夢の中で自分は誰かを追いかけている。現実でその人物に思い当たるところはないが必ず捕まえ止めねばならなかった。やっとのことで追いつき、いざ対峙するという段になって相手が振り向く最中に夢は覚める。その間、後光が差して顔は見えずらい。誰なのか見てやろうと光の中の影に目をこらすと、現実では朝日で目が覚めただけと相成るのだった。夢の中では現実では感じたことのないほどの強い思いがあった。自分の中にそこまでの欲求があるのかと驚くほどだった。起きている間抑えている感情や無意識的に持っている感情が眠ることによって発露するのだろうか。

そんな夢を見たせいか、この世界に存在すると信じられている二つの奇跡について考えを巡らせた。一つは輪廻。端的に言えば過去に戻る現象。もう一つは転生。これは言わずもがな生まれ変わる現象。二つ合わせて輪廻転生。この二つの奇跡を持ってして人は究極の自由を得ると言われる。つまりどんな時代のどんな人間にでもなれるというわけだ。

だが無論彼自身はおろか誰もこれらの現象を体験したことはないだろう。輪廻に関してはある島にそれらしい伝承が残されている程度であるし、転生にしても前世の記憶を持っていると主張するうさんくさい奴が時折現れたりするくらいだった。

にもかかわらずこの奇跡は洋の東西を問わずこの世界中の人々に信じられている。昔から土着信仰として各地にあるにはあったらしいが、一番大きな要因といえば神政帝国がかつて全世界を統一した際布教した帝国正教にこの二つの事象に関する逸話をもっともらしく記載されていたのが発端だろう。帝国の退いた後の地域でも案外この考えは根強く残った。

そんな力が本当に存在すれば自分も過去に戻ってあの奇妙な任務を命じられることを避けれたのだろうか。とりとめのない考えにとりつかれてぼうっとしていると起床のラッパがせっつくように衛兵たちを起こし始めた。

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