表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さな花  作者: 雨世界
21/30

21

「一緒に猫ちゃんを探してくれたお礼」と小の花は言った。

 木の葉は小の花が鉢植えを両手に持って木の葉に差し出す、という行動をしている間に、いつの間にか小の花の胸のあたりから肩の上に移動していた黒猫の顔を見た。それから小の花のすぐ近くにいる三人組の大人たちの顔を見た。みんな、「受け取ってあげて」とでも言いたげな優しい顔をしていた。年老いた太った男性も、双子の女の人たちも、みんな、みんな、そんな顔をしていた。唯一普段と変わらない表情をしていたのは、黒猫一匹だけだった。木の葉がもう一度黒猫に目を向けると、黒猫は木の葉を見ながら大きなあくびをしていた。木の葉はその贈り物を受け取ることにした。

「ありがとう」と木の葉は小の花にお礼を言った。

「どういたしまして」と嬉しそうに小の花は言った。

 木の葉がこうして誰かのお願いを聞いて行動したり、その見返りとして、誰かから贈り物をもらうという経験をしたことは、今日が初めてのことだった。木の葉はベンチから立ち上がると、両手を使って、その贈り物をしっかりと大切に受け取った。……その小さな鉢植えを受け取ったときに、木の葉は危なく、小の花の前で泣きそうになってしまった。小の花から手渡された小さな鉢植えはとても軽かった。……だけど、そこには確かに『命の重さ』が感じられた。

 それから小の花はなんだか木の葉の前でもじもじとし始めた。

「どうしたの?」と木の葉が聞くと、小の花は木の葉に「名前を教えて」と恥ずかしそうな顔で言った。

 木の葉はそんな小の花に「僕の名前は木の葉だよ」と自分の名前を教えた。

 すると小の花はとても喜んで「私は小の花って言うの。猫ちゃんを一緒に探してくれて、ありがとう!」と木の葉に言った。

「どういたしまして」と木の葉はさっきとは反対に小の花に言った。

「小の花ちゃん。そろそろ」と女の人の一人が言った。

 その言葉を聞いて小の花は「じゃあね。さようなら」と木の葉に言った。

「うん。さようなら」と木の葉は言った。

 そしてそのあとで三人組の大人たちも木の葉にきちんとさようならを言ってくれた。木の葉は三人組の大人たちに向かって、きちんと「さようなら」を言った。三人組の大人たちは年老いた男性、双子の女の人たち、の順番でバスに乗り、そして最後に小の花が腕の中にいる猫と一緒に大きな青色のバスの中に乗り込んだ。その間、黒猫はずっと黙ったままだった。言葉を持たない黒猫は木の葉にさようならを最後まで言わなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ