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小さな花  作者: 雨世界
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 ……このはな? 小の花か。それがこの女の子の名前のようだ。……このはな、このはな。木の葉は小の花という言葉を頭の中で何回か繰り返して読み上げてみた。その名前は、どういう漢字を書くのだろう? やはりこのはなは『小の花』だろうか? それとも違う、あるいは、ひらがなのこのはな、なのだろうか? (いや、きっと小の花だろう。だってこの女の子には、小の花という名前がすごく似合っているから)

 小の花と呼ばれた女の子は元気よくベンチから地面の上に降り立つと、「猫ちゃん。こっちにいらっしゃい」と言って、ベンチの上でおとなしくしている黒猫を抱きかかえて、その猫を腕の中に抱いたまま移動して、器用な手つきで赤いリュックサックを背負い、そして最後に、白い手提げ袋を手に取った。そして小の花はにっこりと笑いながら、木の葉の目の前までやってきた。小の花は一人、ベンチに座ったままでいる木の葉にその場でにっこりと笑いかけた。

「これ、あげる」と小の花は言った。

「これ?」と木の葉は問い返した。「うん。これ」と小の花は言った。小の花は手に持った白い手提げ袋を木の葉に差し出していた。木の葉がそれを受け取るかどうか戸惑っていると、小の花はもう一度、にっこりと笑ってから、いそいそと白い手提げ袋の中から、その中身を取り出して、それを両手で持って木の葉によく見えるようにしてくれた。……それは『小さな鉢植え』だった。その鉢植えには、すでに女の子がなにかの種を植えていたようで、小さな緑色の芽が黒い土の中から遠慮がちにその顔を出していた。……それは、とても春らしい光景だと木の葉は思った。

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