序章 Abandoned from the world
世界の在り方は変わってしまった
あの日を境に
ーあの厄災共が姿を表した日を境に
人間は新しい生命体により生態系の頂点を奪われ、元々いた生物はほぼ絶滅した
しかし、生態系が破壊されたわけではない
今の世界は第二世代と呼称される、前の世界の住人が存在する
簡単に表せば進化である
ただし、遺伝子を受け継がない進化である点以外は
コピーされて似ても似つかない生物が作られたといわれているが分かるはずもなく、それを探求する者はもういない
世界はヒトを見捨て、自然界のトップを置き換えて
破滅したのである
そんな中
「ドグゴォォォォォン」という轟音を吹きながら一体の鉄の塊が泥の中でもがいていた。
戦車のようにも見えるそれの上には泣きべそをかきながら周囲に指示を出しているスキンヘッドのマッチョマンがいた。
「もう諦めろ。こんな所にいつまでもいたらまたいつこいつが出てくるか知れたもんじゃない」
車体に下から呼び掛ける少年の足元にはムカデやクモとも違うとにかく嫌悪感がするルックスをした頭が緑色のグジュグジュを纏って何個か転がっていた。
「おまっ、グリス!どんだけ払ったのか分かってんのか、このハイパーウルトラメガ砲が!」
「どこぞの軍の対二世代用大型自走榴弾砲だろ。作ったは良いものの弾代はかかるはどこに火薬が仕込まれてるか分からんで解体もできないはでジャンク屋に流されてたやつだろ。んなもんいるのかよ」
「んな、お前!ロマンというものを知らねえのか!これはな、砲頭の先から履帯の底までが規格外のバケモンなんだよ!さっきも鳴ったろあのでけえエンジン音。あぁもっと強く鳴ってぇ...」
目の中にハートが浮かんでいるようにみえてきた。女の子であれば男子にはたまらない状況であるが、なにせ今目の前にいるのはハアハアしながら鉄塊を撫で回してる三十路過ぎたいかついオッサンである
「黙ってろ、変態ハゲジジイ」
「うっせえ、俺はスキンヘッドだ!そして俺はそんなに歳をとってない!そしてそして!俺にはちゃんとダビッドっつうママからつけてもらった名前があるんだよ!」
「変態も否定しろよな。んでどうすんだ、このデカブツ。またこのキモいやつがウジャウジャ集まってきたら逃げる自信しかないぜ」
「大丈夫だ。そうなりゃこのハイパーウルトラメガ砲ちゃんの機銃の出番だ!」
「機銃、ねぇ」
気にせず迷惑なでかいのを泥の中から引き出しに戻ろうとすると、
「いや主砲使えよ!」
「高いんだよ一発一発が!」
「だから言ったろうよ!」
ダビットとそんなやり取りをしていると空がオレンジ色の極彩色に染まってきた。
「今夜は夜営か。まったくとんだ迷惑な鉄塊をだぜ、こいつは」
「なんだと!もっかい言ってみろ!」
「はいはい分かったからこいつをなんとかしろよ」
今夜は長くなりそうだ