【02】女神と聖女の約束
「えっ……と、ここ、どこ?」
その場で回転しても見渡す限りなんもなく、ただただ白い──。
下唇に人差し指を当てて、ん~死んだ? 夢?
「い・た・い?」
両手で頬の肉を多めに摘まんでみた。
ほんの少しだと痛いから……。
頬が赤くなっているかもと、摘まんでいた両手を離し、頬をさすってみた。
温かく感じるから赤くなっているなぁと、溜息をしながら手を前にだしたら、薄くなってる……。
「…………」
うん、夢だと確信し、もうすぐ目が覚めるのかもと頷いていたら急に寒く感じた。
両手で二の腕を擦りながらコタツが欲しいなぁと考えたら、なんもなかったはずのところにコタツが現れた。
おそるおそるコタツの中を覗き、なんもないのを確認し足を入れ、温さに横になりそのままウトウトと寝てしまった。
***
「あらあら寝てしまったわね」
「どうする? 起こすニャ?」
「まだ安定していないみたいだからもう少し待ちましょう。私たちも寛ぎましょう」
二人はお茶を飲み、ながら待つことにした。
しばらくして、一人が先に口を開いた。
「ねぇねぇ、そろそろあの黒ちゃんヤバくニャい?」
「そうね……誰も彼女の元へ行く人はいないみたいね」
「可哀そうだニャ……」
「……そろそろ起こしましょうか。起こしてくれる?」
「はいニャ!」
***
「・ろ・・お・て・・きて・・おき・・・起きろーー!!」
声にビックリして起きると、コタツに知らない美女二人が、お茶を飲みながら座っていた。
「やっと目を覚ましてくれたわね」
「美女二人だって! ねぇねぇ、私も美女だってニャ♪」
美女一人目は猫っぽく無邪気に飛び跳ね美女二人目にどや顔を決め、それをスルーしながらニコニコと微笑み私を見つめている美女二人目。
美女一人目二人目と呼ぶのは大変なので、美女一人目は猫? 破天荒っぽいので妹にし、美女二人目は澄んだ声で賢そうで微笑んでいるけど実は怖い?──なんか寒気がする。妹は真っ青?──綺麗で憧れる感じだから姉にしよう。うんうん。
それにしても、まるで小説にでてくるような異世界みたい。
夢だから綺麗な顔をずっと眺めていても、大丈夫だろうし!──。
「えぇ、話が早く進みそうでなによりです。それに見る目もありますね」
「えーーーニャんで私が破天荒ニャのニャ!──」
「そのままじゃない? 落ち着きがないし、この前も失敗したばかりでしょ」
「ヴ……私より怖……この前は国滅ぼ……た癖ニャ……」
妹は喜んだり怒ったりと、忙しくしたかと思うと徐々に声が小さくなり、姉に目を向けられたら押し黙った。
あれ? 私、口にしてないよね! 頭の中読めてる?
「えぇ、今のあなたには疲れるので私たちは口にして会話しますね」
「そうそう、慣れてニャい人がすると物凄く疲れるニャ! また寝られても困るニャ」
ひょっとして「かなり起きるの待っていました?」
「魂の定着に少し時間がかかったのとコタツをだしたせいですね」
「少し遅れたらコタツがあって焦ったニャ! でも椅子よりいいニャ!」
「あなたのせいで遅れたのでしょ、まったくっ」
お姉さんが溜息でるぐらい妹は破天荒なんだね。
しかしコレを私が? 目を輝かせて、他にも考えればなにか出るかも!
「それはないかと、この空間は座るものが出るようになっているので」
「そうそう、他の神さまもコタツ気に入って置いてあるニャ。地球のものは便利なものがあるニャ。あと破天荒じゃニャいし──」
神さまといえば天使や七福神しか思い浮かばず、コタツに入っている姿や神さまが奪い合いしているのを想像したら我慢できず吹き出してしまった。
「聞いてニャいニャー! それにいつの間にか姉からお姉さんで私は妹のままニャー!」
急に暴れ回りだし、私の頭を軽く甘噛みしはじめた──。
「そんなことはどうでもいいから、座りなさい!」
「そんなこと……どうでも……」
妹は飛び跳ねて大人しく座り、声とともに徐々に小さくなりコタツより小さく見える。
目の錯覚だろうか? 代わりにお姉さんが答えてくれた。
「私は美と豊穣の女神イシュタル、戦の女神でもあるけどそこは気にしなくていいわ。彼女は狩猟の女神バステト、私たちは慈愛の女神でもあるわ」
「私は……法子? 苗字は……あれ? わからない……覚えてない?」
「記憶が曖昧なのはこの空間に呼ぶのに時間がかかってしまったからで、そのうち思い出すと思うから問題ないわ。それと私たち基本、勇者呼び出しや転生ノルマ、世界貢献とかも関係なく好きにしているからその辺も問題ないわ」
「好きにというか文句じゃなくて、怖くてじゃなくて、そう、意見いえる神が少ニャいともいうニャ!」
いまノルマとか言った? 神さまにもノルマあるんだ……。
それに何度も訂正するバステトさま……なんとなくわかる気がする。
「わかるニャ? 一緒にいる私も大変ニャの……とても助かってるのニャ! これは本当ニャのニャ!」
「彼女は怒ると我を忘れて手に負えなくなるの。見た目と違い強いのよ。過ぎたことは根に持たない子だから私は気に入っているわ」
「そうニャのニャ! このまえ我を忘れて暴れてしまって、イシュちゃんに一発殴られて意識取り戻したのニャ! 山がひとつ無くなっていたのニャ!」
「えーっと、それはテトを殴って山に飛んでしまったともいうけど、止めなければもっと被害がでていたので結果的にテトのせいね」
「──ッ! それは私がしたのではニャいニャ? でも止められなければ……ブツブツ……」
バステトさまが小さな声でブツブツ悩んでいるのをそのままに、イシュタルさまが話をつづける。
「肝心なことを話してなかったわね。私たちはあなたの祖母、聖女さまに貸しがあるの」
「おばあちゃんに貸し?……聖女? え? どゆこと?」
そこから、祖母が聖女でシュテネオンという魔法がある異世界の住人だったことを聞かされた。
なんとなく納得した。なぜなら予知夢や見える人だったから。
よく私が怖いのを見ても唯一信じてくれ、心配してくれていたからだ。
バステトさまはすっかり寛ぎ、コタツの上はどこから出したのかミカンや駄菓子などいろいろ並べられ食べあとが……目が合うとポイポイと渡され、私も遠慮なく食べながら聞くことにした。
どうやら貸しといっても、褒美としての約束らしい。
他にもバステトさまが可愛がっていた猫を祖母が助けたことがあり、お礼としていろいろと加護を授け、祖母の努力もあり高スペックな聖女が誕生し、ずっと見守っていたらしい。
バステトさまは一度気に入ると、身内としてずっと見守る慈悲深い女神みたいだ。
まず転生か転移するには、五つまでの願いを叶えてくれるとのこと。
祖母の願いで使ったのはひとつだけなので、代わりに私が四つ願うことができる。
ただし、転生と転移だと少し異なるらしい……よくわからないが、危険じゃないほうを選ぼうと思う。
ふと、頑張って勉強し、民を助けて雲の上の人になって孤独だったのかな?
ほら食べ物とか毒見で冷めた物しか食べれないとかあるじゃん? と思ったら幼少期だけで、毒解除や補助魔法覚えたら見分けられるようになり普通に温かいものを食べていたみたい。
うん、凄いね! 私のおばあちゃん!
2019/09/16 読み直しで変更。
2019/08/13 所々変更。
2019/05/29 呼び名イーシュをイシュに統一。