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【01】プロローグ

 ここは魔物や他種族が住み魔法が飛び交う異世界のひとつ『シュテネオン』。

 一人の聖女が旅立った────。


 ・世界のために人々を救った聖女

 ・教会の雲の上の聖女

 ・生涯一人身だった聖女

 ・たくさんの弟子に恵まれた聖女

 ・透き通るような肌で清楚な聖女


 聖女の呼び名はいくつもあった。

 実際は、教会本部から出ることもままならず、次の聖女を育てるため癒しが使える有能な弟子を次々と与えられ、力を失わられる可能性があるもの……特に男性は厳重に近づくこともできず、護衛は身辺捜査されたうえで女性限定され、隔離された生活を幼いころから人生を送っていた。


 聖女は、窓に遊びにくる鳥や庭に咲く蝶々と戯れたり、弟子たちが地方に行ったときの話を聞き及びまだ見ぬ森や海や村など想像しながら暮らしていた。

 その生活が役目のある者の宿命としてなんの不満もなかったが、死が近づくにつれ一度は思いっきり外を走り生活したかったという気持ちが強くなっていった。


 女神たちは、彼女(聖女)に違う人生を生きてほしくて、この世界シュテネオンに貢献した褒美として転生させることにした。

 旅立ちと同時に白い異空間に彼女の魂を呼び、転生の話をしたら断られた……。

 断られると思っていなかった女神たちは渋々聖女の願った魔法のない世界(地球)へ転生させた──。


『魔法がない世界』

『できれば記憶はなくしてほしい』

『子孫がもしこの世界に来たときは私の代わりに願いを』


 それが彼女の望みだった──。

 魔法がある世界から魔法がない世界へ魂を送るとき、耐えられず魂は記憶をなくすため願いをひとつ叶えた。


 ***


 ──時は流れ、ここは聖女の願った魔法のない世界(地球)──


 聖女は次女として普通の農家に生まれた。

 魂の記憶は飛び越えたと同時に消えたが、見えないものが見えたり、正夢を見ることがたびたびあった。


 幼いころは、不思議な世界の夢もおとぎ話として大人は聞いてくれていたが、大きくなるにつれ自然と周りに言わなくなった。


 ──なんとなく普通の生活をしたかったから──


 次女の私は家を出なければいけなかった。

 学生になるころには親同士が決めた婚約者が決まり、卒業と同時に写真も見たことがない婚約者の元へ嫁いだ。

 主人は本家の次男ということもあり、家と土地をいただいて二人で住むことになった。

 今まで家族でしていた家事など、私一人でするには家は広く苦労したけど、作ったものは文句もいわず食べてくれた。

 最初の子を私の不注意で亡くし、口数の少ない主人に怒られたのが辛かったけど、たくさんの子供たちに恵まれ、孫や曽孫も産まれ幸せな人生を送れたと思う。


 子供たちは私の血を受け継いだのか、幼いころに見えたり怖がる子もいたけど、大人になるにつれ言わなくなったので見えなくなったのだと気にしなかった。


 主人は口数が少なく、見えないものとか信じない人だったけど、決して否定するような人ではなく話を聞いてくれた。

 ただ会話より行動力のある人だったので、事後報告が多かったから大変だったかも。

 それでも会ったこともない人へ嫁ぐにあたり夢というかどんな人だろうと、学生のころは友達と話に花が咲いて時間を忘れたほどだった。

 見た目は悪くないと思うの。

 むしろ恋に落ちたといってもいいかしら? だから幸せだったと思う。


 子供たちの一人、娘が結婚せず孫を身籠った。

 世間体もあったけど神さまから授かった命、そしてなにより()()

 貧乏という程ではなかったけど、裕福でもなかったため娘は出稼ぎにいき、私が娘の代わりに育てることになった。

 もう子育ては卒業したと思っていたけど、こうして子育てを再開し、それも孫を育てることが嬉しかった。


 女の子ということもあり、おとぎ話を喜んで聞いてくれる。

 そして思ったこと、この子も私と同じく見えないものがよく見え色濃く受け継いでいるみたい……。

 父親がいないため虐めにあうかもと思い、周りに左右されず自分で考え生きていけるようにと、そんな思いで付けた名前なのに不幸なことばかり襲いかかり、祖母として守ることができなかった。


 産まれて幸せがあったのかというぐらい不幸の連続……。

 心残りは()の幸せ──。

2019/09/16 見直しで変更。

2019/08/13 変更。

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