何故怒られた………
「それじゃあ色々聞かせてもらおうか。まず私の名前はミーヤ。そっちの銀髪の綺麗なお嬢さんはセレスで、その横の男がタバサ。あと褐色肌のイースとキラービーのハニーとラミアのラミィと狐獣人のコンとリッチのアレクと闇毒スパイダーのハイド。数が多いから無理に覚えなくても良い。で、君達の名前は?」
「ぼ、僕、コリン……です」
「俺はレッドだ」
「そっか、了解」
現在私達は、孤児と思われる少年二人とお見合い中である。ごめん冗談。普通にその辺の座れそうなトコに座って顔を見合わせてるだけです。
とりあえず話をするにあたって、好印象を植えつけておいた方が良いのでは?と姑息な手段を思いついた私は、タバサに頼んで近くの屋台のジュースを買ってもらった。人数分。
お陰でコリンとレッドは普通に自己紹介してくれからね!やっぱ人間、美味い食べ物や飲み物には弱いよね!わかるよ!
あ、ちなみにだけど、やっぱり紫髪のおどおどした少年がコリンで赤髪のツリ目少年がレッドだった。一致していたようで一安心だ。
「えーっと……とりあえず色々と聞きたい事があるんだけど」
「あ、は、はい!」
どもりながらもそう答えたコリンに対し、
「待てコリン!」
レッドが厳しい声で制止した。
「あの変わった姉ちゃんが言ってただろ!何かしてやる度に何かを強請れって!」
「そ、そうだった!え、でも僕達ジュース奢ってもらったよ?」
「馬鹿!あの姉ちゃんは「自分の名前、店や住所にも価値があるんだからタダで教えちゃ駄目」って言ってただろうが!俺達はジュースと引き換えに名前を名乗ったんだ!だから次の質問にはまた何かを要求する事が可能なんだ!」
「そ、そっか!レッド頭良い!」
「だろ!」
えっへんと胸を張ってるトコ悪いけど、ツッコミ待ちのボケか何かか?
うーん、でもその手を出されると困るんだよね。穏便に事を済ませたい派の私だからな……。
穏便に済ませなくて良い派だったら子供相手に脅しでも掛けるんだろうけど、流石にそんなブラック魔物使い以下のクズに成り下がりたくは無い。それにお姉ちゃんはよく言っていた。「ショタとロリは宝。忍びの里の三代目長の息子だってそう言ってたし」って!
……色んなトコから色んな人に怒られそうな言葉だったよね、アレ…。
まあとにかく穏便に済ませたい派としては、情報を出し渋られると打つ手が無いから言いなりになるしか無い、っていうね。
「………タバサ」
私はチラリと横目でタバサを見る。
目が合ったタバサは、ジュースの屋台で一緒に売られていた串に刺さっているフルーツを食べながらニッと笑った。
「今日の護衛をしてくれてる間は経費扱いで金が出るんで、一等地にゴーカな自宅とか建てるレベルでさえ無ければ出せる。あとこれに関しては多分こっちの仕事と関係あるだろうから普通に負担するんでゴシンパイナク」
「ええ、お気になさらないでください。私達では良い方法も浮かびませんし、ミーヤ様にお任せ致しますわ」
「助かる」
笑顔のタバサとセレスの言葉に、私はヘラッと笑って返す。
要するに向こうが要求する物品なんかを買うお金を負担してくれるって事だ。名前を呼んだだけでそこまでバッチリ理解してくれるとかマジでタバサ凄いな。イースみたい。
……アレ?これ、なし崩し的に私が彼らに色々と事情聴取をする事になっているのでは…?ま、まあ良いか。最初にぶつかってしまったのは私でありやすからね。仕方あるめえ。誰だこの江戸っ子。
「じゃあ……そうだね」
まずはやっぱり……最初のアレを聞こうかな。孤児院の子ですかって質問もしたいけど、まずは順番。私は人差し指をピンと立てて口を開く。
「最初にコリンが「失敗した!」って言ったのは、一体何に失敗したのかって聞こうかな」
そして私は立てていた人差し指で、近くの屋台を指差す。
「はいらっしゃい!具沢山スープだよ!今の時間帯なら厚底じゃねえスープ皿にしてやるからじゃんじゃん金払って飲め!つーか食え!具沢山だから飲むっつーより食うって感じのスープ!美味いぞ!」
「おいテメェそれってつまりさっき買った時は厚底のスープ皿だったって事か!?」
「あ?スープ皿持参するならともかくスープ皿はこっち負担なんだ!戻って来た皿を洗わねえといけねえし、皿が戻ってこない時もある!そんくらいの細工は許せ!ちゃんと屋台出す許可取る時に「厚底にする事で視覚的に満足感を得て少ない量で満腹になりダイエットに最適です!」って言ったら通ったからこれは公認の皿だ!」
「コイツ乙女のダイエット心を利用してあくどい事やってやがる!」
……店主と客が面白い会話してるなー。
まあ、うん、さっきから良い匂いしてたし、少年達もチラチラ見てたから良い対価だと思う。
それに私にはわからないけど、もしこの子達が結構飢えてる子達だった場合……いきなりガツンと固形の肉は、内臓にダメージ入りそうだしね。それなら安全牌である具沢山なスープを進呈したい。
「報酬はすぐそこの屋台で売られてる具沢山スープ一人一杯。どう?」
お代わり自由にしろとか強請られるかな。もしくはサラダとメインとデザートも付けろとか言われるかもしれない。子供って結構その辺容赦無いし……。
「本当に!?」
「二人で一杯じゃなくて、一人で一杯!?本当だな!?」
あ、大丈夫だわ。この子達かなりの純粋無垢だ。スレた子供像で見てごめんなさい。
いや、うん、だって日本の子供って結構その辺容赦無いじゃん?そのイメージで見ちゃってたわ。苦しい生活を強いられてるんだろうし、残酷な現実を知っているんだろう子供がそこまでの欲を出すわけなかったね。現実を知ってる人間は現実的に可能かどうかのラインを理解してるものだ。理解してないのはこっちでしたごめん。
……この子達が良い子だったから良かったけど、下手したら第一手から私ミスってたね、コレ…。
まあ、うん、結果オーライという事でよろしく頼んます。
「本当本当。で、答えてくれる?」
するとレッドは声を潜めて、私の顔色を窺うように問いかけてきた。
「………追加で、俺らが色々話しても怒って殴ったりしないって約束、出来るか?」
「場合によっちゃデコピンや拳骨くらいはかますと思うから断言は無理かな」
「うげっ…」
レッドの顔が引き攣った。しかしすぐに「……まあ、血が出るくらい殴られる可能性は無さそうだし……大丈夫、かな」と小声で呟いた。レッドの隣に居るコリンにも聞こえていないだろう小声だったが、生憎と私は地獄耳の称号持ち。ごめん、全部聞こえました。
うーむ、しっかしいきなり虐待の気配が……。まあ、うん、あれだ。孤児院で虐待されてる可能性と、孤児院に入る前に虐待されてた可能性と、その他諸々の可能性があるから。孤児院が悪とはまだ決まっておらぬでやんす。
はぁ、と溜め息を吐いたレッドは大人しく喋りだした。
「あの時コリンが「失敗した」って言ったのは、ぶつかったのが作戦だったからだよ」
「作戦?」
「そ、その………」
ぎゅっと手を握り締め、目をきつく閉じたコリンは言う。
「ぶつかって、怪我した振りをして、色々と買ってもらおうって……!」
「当たり屋か!?」
「ひぃっ!」
おっといかん、我が黄金のツッコミが先制攻撃。私の大声でコリンを怯えさせてしまった。ごめんなさいと頭を下げると、ナイスタイミングでタバサとコンとハイドが屋台で買って来たスープを持って来てくれた。……あ、これも全員分なんだ。ごめん私すっかりこの子達の分だけって思ってた。ありがとう。
「美味い!しかも具が沢山だ!兄さん達が魔物を狩ってきてくれた日のスープみたい!」
「うん!美味しい!」
セーーーーーーーッフ!良かった食べ物で気が逸れてくれた!うっかりここでコリンを泣かせてたら私悪者だったぜサンキュー皆!買ってきてくれたコン達に向かってビッとサムズアップすると、コン達もビッとサムズアップ返しをしてくれた。こういうのに慣れてないハイドだけタイミングが遅れてたのが可愛らしくて私のメンタルも回復。嫁が可愛いってのは良い事だ。
「それで何で当たり屋なんてしようとしたのさ。あ、この質問はさっきの延長戦だから追加報酬は無しね」
「確かにあれだけじゃ説明になってねえけど……」
むぅ、とスプーンを口に入れたままレッドは顰め面になって考えている……が、口の周りがベタベタしてるのが気になる。隣のコリンは綺麗に食べてるからこそ凄く汚れが目立つ。
気になって仕方がないからアイテムポーチから布を取り出してレッドに渡すと、レッドは少し顔を赤くしながらも布を受け取り、
「…仕方ねえな、答えるよ」
と口の周りを拭いながら言った。
「俺達が住んでるトコは別の対価を払ってもらう為に言えないが、端的に言って貧しいんだ。人数も多いし。だから金と服と食べ物が足りない」
レッドの言葉に、コリンが続く。
「だから年長者の兄さん達が冒険者としてお金を稼いだり、肉を狩って来てくれるんだけど……魔物討伐で、聞いてたより魔物が強かったみたいで……」
「兄さん達は皆怪我人になっちまった。怪我はそこまで酷く無いが、炎症や熱を冷ます薬とかは……買う、金が無くて」
「怪我に塗るお薬も、買い足すお金が無いせいでもう殆ど残ってなくて……」
「そのせいで怪我の治りも遅くて、まあ、要するに稼ぎ手が足りないんだ。一番稼いでる兄さん達は怪我してて働けないし、怪我人だから怪我を治す為の薬も要る。俺達は俺達でいつも通り生きていく為の金が必要だし……」
レッドはそこで話を一旦切り、残り少ないスープを一気に飲み干す。空になったスープ皿に落とされたスプーンがカランと乾いた音を鳴らした。
「そこで、俺達は思いだしたんだ」
「何を?」
「昔、客の食い残しなんかを譲ってくれてた、変わった姉ちゃんの言葉をさ」
あ、さっき言ってた変わった姉ちゃんってその人か。ん?でもその文脈だとまるでその人が当たり屋を教えたみたいな……。
「姉ちゃんは俺達に、生き方を教えてくれた……そう!」
レッドは小さい手で力強く拳を握った。
「その名も「子供の内は可愛がられるから、良い人そうな人に「僕らってこんな辛い生活をしていて…」って話して同情をゲットして色々貢いで貰う作戦」!!」
「作戦名長いし全部言っちゃってるよね!?」
あとそのお姉さん子供相手に生々しい事教えてるな!?確かに生き残るには良い術だろうけど!ショタコンに春を売るよか良い方法だろうけど!
「成る程、だからミーヤ様にぶつかったのですね」
「……良い人、オーラ……出てた、とか……?」
「確かにミーヤは毒気も無いし、気を許しやすい雰囲気だけど……あ、いや、客観的に見てだからな!?俺の主観じゃねえからな!?」
「はいはい、弁解しなくてもコンがミーヤ大好きなのは知ってるから」
「でも見る目はあるな。ミーヤ程優しく、そして誰かを助けようとする人間は居ない」
「皆ぁ?嫁からの評価が過剰過ぎると思ってる夫のミーヤがプレッシャーで潰れそうよぉ?」
「言わんといてイース!」
上からハニー、ラミィ、コン、アレク、ハイド、イース、私の順番である。
嫁からの信頼は嬉しいけど、私そこまで出来た人間とちゃうねん。人助けするのは旅をスムーズにする為、もしくは依頼、それか成り行き、一番多いのは自分の寝つきが悪くならない為でしか無いのだよ……全部自分がセンターに立ってるんだよ……。
「まあ、つまり身の上話をして同情を買い、良い人そうな私に色々恵んでプリーズしようとしたって事ね」
「「しようとした」じゃない。「した」んだ」
「そういや言われてたわ」
うっかりしてたけど、確かに言われてたわ。二人から。
「………良し、今の質問への返答で君達の事情は大体わかった」
「え、俺達そんなに話したか?」
「ど、どうだろ……?対価が貰えるようにって思って、全部は話してないと思うけど……」
二人は顔を見合わせてそう話すが、
「いや、それでも大所帯で貧乏で稼ぎ手が年長者しか居なくて、ただでさえ貧乏なのに今は稼ぎ手が稼げないし薬代要るしでとてもピンチって事は理解した」
「殆ど理解されてる!?」
「あ、あれだけでそんなにも見抜かれるなんて……!」
ものっそいリアクションで驚かれたけど、え?あんだけ話してくれればわかるよね?このくらいまではわかるよね?わかるっつーか全部言ってたよね?
…………私、そんなにも理解力が無いと思われてたんだろうか……。ポンコツの自覚はあるが年下に見下されてたのはショックである。これでも私は小説も読むタイプの人間だから情報を繋ぎ合わせるくらい出来るんだからな。ポンコツだってそれくらい出来らぁ。
「んで、えーっと……ハイド」
「何だ?」
いつの間にかタバサに買ってもらったらしい焼き鳥を頬張りながらハイドは答えた。うん、そっか、糸出したからタンパク質の補充要るもんね……。
「ハイドってさ、服作れたよね?」
「縫い物スキルの事か?ああ、作れる。糸を自由に動かせるから機織り機も不要だ」
「最高。ナイス。そしてイース……と、今はアレクもいけるかな?」
「何が?」
首を傾げるアレクをよそに、イースは私の心を読んで成る程、と頷いた。
「ミーヤの服みたいにするのねぇ?それなら出来るわぁ。魔力を含んでるハイドの糸が素材なら「自動修復」や「洗濯不要」の魔法も掛けやすいと思うわぁ」
「出来る?」
「勿論よぉ♡」
イースはハートが浮かんでいる紫の瞳を細め、微笑む。
「自動修復は光魔法と思われがちだけどぉ、破損しても時間を巻き戻すように修復する、って感じなら闇魔法で出来るわぁ。洗濯不要に関してはぁ……闇魔法の場合だと汚れを布が吸収して色や模様になるって感じかしらぁ。土で汚れ続けたらその色に染まり続ける、って事になるわねぇ」
うーん、日本にも使っていくと色が変わっていく物が無いわけじゃないけど……色にこだわりある子は嫌がらないかな?白色が好きだった子の白い服が茶色に染まるのは……ね?多分イースの言い方からすると綺麗な染まり方になるんだろうけど……。
「洗濯不要、闇魔法で今言ったのとは別のやつある?」
「あるわよぉ」
あるんだ。
「闇魔法ならぁ、汚れが布に定着しない魔法があるわぁ」
「よっしゃ、それで行こう」
ポツリと呟かれた「これぇ、本当は怪我が癒着しないようにする為の闇魔法なんだけどねぇ…」というイースの言葉は聞かなかった。イイネ?
さて、
「というわけで、次の質問に対しての報酬は劣化も汚れもしない服をレッドとコリンの家族、人数分。しかも蜘蛛の糸が原料だから鎧よりも軽いのに堅い品だ」
レッドとコリンの二人が息を飲んだ。この反応なら、質問に答えるだけの価値はあると認識してくれたかな?まあうちの嫁達の力作お洋服だから価値は天井知らずですけどね!?嫁である事を除いてもガチで天井知らず級の価値ですよよろしく!!
……ウォッホン。
というわけで、恐らくビンゴだろうけど確信を貰おう。
「質問。君達、孤児院の子?」
レッドとコリンはその質問に対し、
「………ああ、そうだ」
「…はい」
頷いた。
じゃ、ここからが本題だ。既にセレスとタバサも行く気満々っぽいし……。
「なら頼みがある。孤児院まで案内してくれる?責任者にも合わせて欲しい」
「えっ」
コリンが驚いたように声を漏らすがスルーである。
というかこれ、マジで本題なんだよね!最初っから孤児院行くの決まってるコースなんですわ!ここで断られても結局行くわけだし、どうせ色々と調べるなら現地の子の意見も聞いておきたいという!圧が!セレスの方から来てるんでありますよ!貴族の圧に一般人が勝てるわけねーでっしゃろ!今にも平伏しそうじゃわい!
「ちなみにこれに答えてくれた場合の対価……報酬は」
えーっと、色々と困ってるみたいだったし……私が頼んだのは二つだったし、
「とりあえず、人数分の昼食&夕食をこっちで負担する。あと怪我人の怪我も治そう。これ、いける?」
材料費はタバサに出してもらうとして、料理はイースに作ってもらって……怪我は回復の剣で治そうかな。光魔法を使っても良いけど、回復の剣の方が確実だろうし。あと私の回復は基本的に従魔にしか使ってないから人間に使うのはちょっと不安が……という気持ちもちょっとある。
住所まで案内、そして責任者との対談。この二つは結構な事だからそれなりの報酬を出さないと……と思って出した案だったが、レッドとコリンの二人は目を見開いて固まっていた。
ごめんちょっと訂正。怯えたようにお互いの手と手を握り合ってる感じです。え、そんなに?
「………足りなかった?」
「足りないなんてもんじゃねえ……」
力無くそう言ったレッドの声に、マジかー……という気持ちに襲われる。確かに住んでる家、それも家族が居る家まで知り合ったばかりの人間を案内………しかも責任者出せ、だもんね。
今日の分のご飯と怪我の治癒だけじゃ安いかー、とちょっぴり落ち込む。読み違えちゃった。ここは一週間分の食費負担が妥当だったか……それでも危険管理が厳しいだろう孤児院相手じゃ難しいかな?ううむ、その辺の定価がまったくわからん。
でも幼い子にとって心の大黒柱であろう責任者を出せってのは酷だったか……言い方考えた方が良かったかなー……。と、幾つか反省点を出しつつ改善の余地を探していたら、
「高過ぎるよ……」
ポツリ、と呟かれたコリンの声が聞こえた。
……え?
「アンタ……ミーヤだったか!?何考えてるんだ!?孤児院の場所なんてその辺の奴に聞けば無料で教えてもらえるだろうが!」
「え、え?」
「たったそれだけの事に、俺達全員分の今日の飯を負担するなんて……!」
「そ、それに!責任者であるシスター、ミーク姉さんなら普通に孤児院まで行けば会えるよ!話だって出来る!そうじゃなかったら僕達を引き取りたいって言う人や、色々と恵んでくれる人とどうやって責任者が会うのさ!?」
「お、おっしゃるとおりで……」
「そんな、そんな事でしかないのに、その分の対価に兄さん達の怪我を治すだなんて……!光魔法による治癒はお金が掛かるの知らないの!?」
「ごめん初耳!」
「世間知らずか!」
「そんな事して悪い人に目を付けられたらどうするの!?」
「ご、ごめんなさい!ってこれ私が悪いのか!?」
立場おかしくない!?なんで当たり屋してきた少年達に私が怒られてんの!?ガチおこじゃん!怒られると素直に反省しながら謝ってしまう落ち零れ女子高生の気持ちも考えろよ!怒られるのに慣れ過ぎてるせいで素直に怒られちゃうんだからな!おもわず座ってたトコに正座しちゃったじゃん!
「え、えーと、では今の報酬のままで、こちらからの要求にこれからの質問には無料でお答えいただくっつーのを足すのはありでしょうか……」
恐る恐る挙手してそう問うと、レッドとコリンは目を見合わせた。
「……仕方ないな」
「最初に報酬制にしちゃったの僕達だったしね」
二人は溜め息を吐き、息の合った動きでビッと私を指差した。
「これから俺らはミーヤ達を孤児院に案内するし、責任者であるミークにも合わせるし、質問にも無限に答えよう!どんな質問にでも、だ!」
「その代わり!」
「「もう二度と過剰な報酬を渡そうとしないように!!」」
「あ、あいあいさーであります……」
イース達がうんうんと頷きながら拍手をしているのが耳に痛い。そんなにか?そんなに報酬過多だったのか?私にはわからない。ご飯は確かにタバサ達に任せるつもりだったけど、治癒に関しては元手ゼロじゃん……手術なら費用掛かるけど魔法なら無料じゃん……。しかも回復の剣だし。何がそんなに駄目だったんだ。地球人にはこっちの価値がわからんぜよ。
ずーんと落ち込んでいると、セレスが手を叩く。
「それでは、ミーヤ様へのお説教はここまでに致しましょう?案内、お願いいたしますね」
「お、おう」
「ひゃい…」
セレスのお陰で説教から解放された。レッドはセレスの貴族オーラに一歩下がり、コリンはセレスの美しさにときめいたと思われる。
「お疲れサマでっす」
「何故……何故私は怒られたんだ……」
「まーまー、当初の目的がかなり良い感じに果たせそうなんでヒツヨーケーヒと思って」
「必要経費か……なら仕方ない」
タバサの言葉でメンタルをどうにか納得させ、正座の状態から立ち上がる。よし、短時間だったから痺れてないな。良かった。これで痺れてたら恥ずかしいもんね!
さて、思わぬ時間経過があったけど、ようやく孤児院へ出発だ。




