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この二人スペック高え



「…………この辺りの家屋は修復されていないようですね。タバサ、この辺りの管理をしている者をリストに」


「はいはーい」


「道の整備がなっていません。タバサ」


「はーい、リストアップしときまーす」


「タバサ!ここの屋台で売られている料理がとても美味しいわ!」


「この味って事はあれとあれと……あとは隠し味に蜂蜜ですかねー。ちょいとメモっといて料理長に渡しときますわ」


「貴方、ここに店を出す許可はきちんと貰いましたか?はい、貰ったんですね。でしたら許可証を所持しているはずですので見せていただけますか?見せられないのですか?」


「今責任者に魔道具で連絡入れたんですぐ来ますよ。出店だろうが許可無しは駄目だぜーい」


「何故かこの辺りは野良猫が多いですね」


「周辺の人に聞いてみたんすけど、観光客が餌付けしちゃったみたいっす。そんで住み着いちゃったって。可愛いのは確かっすけど、このままじゃ人間に害が出かねないんで対策考えた方が良いっすね」


「そうね。感染病の原因になりかねないし、下手に繁殖されると大変な数になってしまうわ。それだけの数をこの辺りの人だけで世話出来るとも思えないし………去勢して、飼う余裕がある方々に預けるのが良いかしら」


「その辺はやっぱお嬢様のおとーさまに話を通さないと難しいっすねー」



 …………セレス、本当に10歳なの?凄くない?とんでもなく凄くない?



「家屋とか道とか、どこ見たらおかしい事に気付けるんだろう……」


「そうねぇ、劣化の仕方を知ってたらわかるんじゃないかしらぁ」


「道の整備とは、その土地を管理している者の管轄なのですね。知りませんでした」


「…………雑草……や、道…が、平ら、か……とか、見てる……みたい……?」


「しかも相手の動き方で色々見抜いてたしな。動揺の仕方で本当に許可を貰ってるかどうかを見抜くって、十歳の人間に出来る事なのか?獣人ならともかく」


「僕としてはタバサのスペックが気になるかな。凄そうな雰囲気無いのに殆どの事をさらっとこなしてるし。緩く見えるから見逃しがちだけど、彼かなりの高スペックだよ」


「我は猫が多い事にもいまいち気付かなかったが、猫が多いという事は管理する側からしたら気にするべき事なのか……」



 ほぉ~~~………と、セレスとタバサのやり取りを見ていた私達全員が感心の溜め息を吐いた。

 確かに道の雑草が伸びてるなーとは思ったけど、これってそんなに気にする事なんだ……って感じ。考えてみれば背が低い子供にとって背の高い草なんかは失明の危険性があるくらいには危険だけど、いちいちそんな事を考えて雑草を見た事は無い。

 地面がちゃんと平らになっているか、なっていないと馬車が引っくり返る可能性がある、とかも考えた事は無かった。そっか、確かに馬車が引っくり返ったら馬車の中の人や荷物がとってもデンジャーな感じになっちゃうし、馬車を引いてる馬にもダメージがある。馬車を頻繁に利用するっぽい貴族なら気にして当然……なのかな?

 野良猫に関しては……観光客の餌付け問題、日本でもあったな…って感じ。鳥にパンを食べさせると「そのう」っていう……鳥特有の胃?みたいなトコにカビが生えちゃって死ぬ事もあるとかなんとかって問題になってた気がする。

 あとは媚を売れば食べ物をくれるって覚えると、皆楽な方法を選ぶとも。そうすると野生動物が狩りの仕方を忘れちゃうせいで自然界で生きれなくなり滅ぶとか。数が多いと繁殖して最悪共食いが発生しかねないってのも問題だし………意識しなければ野良猫可愛いで済む事が、意識した瞬間に超やべえ現実になるの超怖いな。

 ちょっぴりブルーになった思考を頭を振る事で追い出し、溜め息で残りのブルーな気分を吐き出してから、私は足元に転がっている人間達を道の端へと引き摺って移動させる。



「ミーヤ、そこまでしなくても縛って転がしておけば兵士が引き取りに来るから大丈夫でっすよー」


「いや、明らかに通行人の邪魔になるよね?」



 何の話かと言えば、セレスを狙って来た悪人の方々の事である。ここに転がっている人達は、皆セレスを……人質に取ろうとしたり、誘拐しようとしたり、荷物をスろうとしたり、まあ何かそんな感じの事をしようとした人達だ。

 あんまり居ないだろうと思ってたけど、悪い人ってのはやっぱり居るんだね……ああヤダヤダ。ここ最近はハッキリと悪人って断言出来るクズと関わった覚えが無いから安心してたってのに……いや、クズには会ったな。ハッキリと悪人って断言出来るクズには王都に来る直前に会ってたわ。ある意味死ぬより大変な罰を受けてたけど。成る程、悪人とエンカウントしてないって言うよりは私が悪人に慣れちゃってたのか。あっはっはー。……気付きたく無かった…。

 どっこいせ、と私は人間を積み重ねる。

 まあ、うん、セレスに手を出す前にイースが見抜いて、ハイドがささっと糸で縛り上げるだけの仕事だったけどね。めちゃくちゃあっという間だった。マジで一瞬の出来事だった。

 ちなみに縛り上げた後に騒ぐ方が殆どでしたので、縛り上げた後はアレクに憑依してもらってちょっぴり魂を吸ってもらう事により大人しくさせております。イースの教えによってアレクも魂をちょっぴり舐める感じのやつ?出来るようになったらしいんだよね。



「く、くしょぅ……こんにゃいひょへいろ、しゅぐにきっへやるんらかあなぁ……!」


「……アレク、魂吸い過ぎてない?この人呂律回ってないよ」


「えー、でもこれくらい吸わないと立ち上がりそうだったから仕方なくない?」


「なら仕方ないか……。あとおじさん、その糸はうちのハイドが出した糸だからナイフとかじゃ切れないからね。蜘蛛の糸ってのは鉄よりも硬い物だし」



 もぞもぞと動いていた、恐らくナイフを取り出そうとしていたんだろうおじさんは私の言葉を聞いて戦意喪失したらしい。頭を垂れて項垂れた。

 蜘蛛の糸の強度に関しては蜘蛛に関してを調べて初めて知った事である。一センチの蜘蛛糸で蜘蛛の巣作れば飛行機も受け止めれるとか凄いよね。ちなみに検索した結果蜘蛛のアップ画像が出てきてビビったのは内緒であります。

 すると、タバサと話し終わったらしいセレスが駆け寄って来た。



「それにしても、ミーヤ様達は本当にお強いのですね!何か手を出される前に危険を察知し、捕縛する……。無駄が無く、そして連帯感があるその動き!尊敬してしまいますわ!」


「あは、ありがとう。私って言うか、私の従魔が凄いんだけどね」



 「でもありがとね」と私はセレスの頭を軽く撫でた。



「……………」


「?」



 え、何でそんなポカンとした表情で私を見上げるの?私何かおかしな事を……したな!?してたわ!私何やってんだ貴族のお嬢様相手に!?これ不敬罪!?不敬罪の罪で罪人コースかな!?



「ご、ごめんね?」



 慌てて手をセレスの頭から退ける、と、



「いえ、お気になさらないで下さい」



 セレスは私の手を両手で掴み、微笑んだ。



「ふふふ、今、わたくし、とても嬉しかったのですよ?私の頭を撫でてくれるのは家族くらいしか居ませんから」


「そりゃおじょーさまの頭を使用人が撫でるとか普通に無理っすからね」


「私はもう少し気安い雰囲気の方が好きだわ」



 セレスはタバサにそう返してから、私に向き直った。



「ですから、頭を撫でてもらえたのが本当に嬉しかったのですよ。最近はお父様も、お兄様達やお姉様達もお忙しい様子でしたから……」


「なら良かった」



 ほっと一安心だ。不敬罪にならなくて良かった。

 すると、セレスは私の手を握りながら、少し恥ずかしそうに視線を下に逸らしつつ、とても小さな声で呟いた。



「……あの、もし、もし…なのですが…。もしよろしければ、私が仕事を…ミーヤ様から見て、上手に出来ていたら、また頭を撫でていただいてもよろしいでしょうか……?」



 …………うわぁお。

 「また頭を」の辺りで顔を上げて大きな緑の瞳をうるうるさせるとはとんでもない小悪魔テク。これは将来が楽しみであり心配でやんすねー。そうですか、それでは次のニュースです。誰だ貴様。

 …おっけい、ちょいと落ち着きなんし。お前はテンパる癖があるからな。クールダウンはサッカーに必須な事だぜ?誰だお前。私にサッカー系の知り合いなんぞ居らぬ。だから落ち着けっつってんだろうが私。思考の端っこでウサギが餅つきしてるのはスルーせよ私。



「勿論、幾らでも撫でるよ」


「嬉しいです………!」



 ぱぁああああっという擬音が聞こえそうなくらいに眩しい笑顔で、セレスはそう言った。……うん、正直一瞬目が潰れたかと思ったよ。高貴さと純粋さを併せ持ってる幼女の笑顔の威力パネェ。



「……逸脱者のハートキャッチガール…」



 イースさんや、小声で私の称号を呟くの止めてもらえませんかね。薄々気付いてたけど。

 ……セレスが好意的に接してくれてるの、この称号の効果のお陰なのかな…。明らかにセレスは賢さが逸脱してるし……良いや、考えないでおこう。考えたって答えは出ない。はいはいいつもの事いつもの事。



「えっと、それで次はどこに行く予定なの?」


「そうですね、昼食は屋台のお料理で済ませましたので、このまま教会へ向かおうかと思います。よろしいでしょうか?」


「私は良いよ。皆は?」



 振り返ってそう聞くと、従魔を代表してイースが答える。



「問題無いわぁ」



 イースはラミィ達をチラリと見て、



「まだ足りない様子の一部の大食いさん達は途中で買い食いさせれば良いだけだしねぇ」



 と微笑んだ。



「んじゃ屋台が多い道選んで行くか」


「お手数掛けます」


「いや、そういう道の方が色々見れるから良いだろ。んー、と、この時間帯だとあー行ってこー行けば…オッケー、脳内地図で道順完成したからついて来ーい」



 タバサはそう言いながら歩き出し、少し歩いた辺りで手招きした。

 …タバサって緩い雰囲気なのにめちゃくちゃ仕事が出来る人だな。アイザックさんとは違うタイプだけど。アイザックさんはキッチリカッチリ仕事をこなすタイプで、タバサはそつなくこなすタイプっぽい。

 そう考えるとアイザックさんは仕事を押し付けられやすいタイプで、タバサはいつの間にか終わらせて帰ってるタイプ…………あ、駄目だこのイメージしっくり来過ぎて逆に駄目だ。私の中のアイザックさんイメージが社畜で固定される。考えるのを止めよう。



「教会ってここから近いの?」


「近いっちゃ近いし遠いっちゃ遠い感じ?」


「どっちだ」


「ここで立ち止まって距離を測れば遠いし、このまま歩いていけば近くなるっつーか……絶妙に微妙な位置に、俺達は居る」



 キメ顔で言うなや、というツッコミが喉まで出かかったが頑張って飲み込み、頷くだけに留めておいた。要するに近くも無く遠くも無いって事ね。まあ遠く無いなら良いや。

 さて、私は護衛として金目当ての悪人や幼女目当ての変態からセレスを守る為に気を張って………、



「っ!」


「あたっ」



 と思った瞬間にぶつかったよ!前方から走って来た少年にぶつかったよ!このポンコツめ!どこに目を付けてるんだよ私は!前方に目玉が二つ付いてるよ!なら前を見ろや私!

 って自分にツッコミ入れる前に少年!

 私はぶつかった拍子にコケてしまったらしい少年に手を差し伸べる。



「あの、ごめんね?立てる?怪我してない?」



 視線を合わせつつそう聞いてみるが、少年はおろおろしながら「あの」「その」と言って一向に私の手を取ろうとはしなかった。

 ……ん?



「もしかして怪我しちゃった?」


「いえ、その、怪我は……無い、んです、が……」


「なら良かった」



 とりあえず地面に座らせたままは良く無いし、と思って少年の手を掴んで立ち上がらせる。あ、掴んだ少年の手が一瞬ビクッてした。

 いきなり触れるのはアウトだったか?これアウト?少年に不注意でぶつかってコケさせてしまい立ち上がらせる為に手を掴むのってアウト?通報案件?やっべ、性犯罪者扱いされるのはちょっと勘弁。

 しかし、そういうわけでは無かったらしい。

 少年はあわあわしながら手を右往左往させ、背後に振り返って涙目で叫んだ。



「ごめんレッド!失敗した!」


「馬鹿野郎名前呼んでんじゃねえよコリン!バレるだろうが!」



 少年の声に反応し、物陰から少年よりも少し年上っぽい少年が出てきた。



「たった今バレたね」


「あっ!しまった!」



 出てきた少年はショックを受けたように頭を抱え……誰が誰かわからんな。

 最初にぶつかっちゃった少年、紫髪でいまいち切り揃えられていないおかっぱヘアの彼はさっきの子の言葉からコリンという名前で合ってるはず。

 そして続いて出て来た少年、ところどころ跳ねている長い赤髪を首の後ろで括っているツリ目の彼はレッドで合ってるはずだ。

 というか合って無くても知らん。とにかく先にぶつかっちゃった子はコリンで後から出て来た子はレッドで固定する。じゃないと混乱するからね!



「ど、どうしようレッド…!」


「ええい!バレたってやる事は変わらねえんだ!やるぞ!」


「う、うん……!」



 え、もしやちびっ子ギャングとかそういうのだったりします?

 そう思って警戒した瞬間、コリンとレッドは私の服を強く握り締めた。



「……ん?」



 私はアレ?と思って首を傾げた。いや、だって、ナイフで脅されでもするのかなって思ってたし…。

 少年達は私の服を握り締めながら私と目を合わせつつ、大きな声で叫んだ。



「「お金とご飯と服と怪我によく効くお薬下さい!!」」



 …………後ろでセレスが目を細めて真剣な顔になったのがサーチでわかった。うん、何ていうか、凄く孤児院関連の匂いがする。まさか行く前に向こうから来るとは思わなかったよね。だからイースもフォローに入らずスルーしてたのか。

 まあそれはともかく少年達、まずはお姉さん達に色々説明してくれるかな?



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