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王都



「あ!ねえそこのお嬢さん!掘り出し物あるよ!」


「おいコラおっさん!客引きよりも買う気満々な客である俺を優先しろや!嫁怒らせてマジ離婚5秒前レベルなんだけどどのアクセをプレゼントしたら嫁に捨てられずに済むと思う!?」


「悪いな兄ちゃん、俺今までストーカーなんかのヤバイ奴からしか告白された事ねえからそういうのわかんねえんだわ。自分から告白した時は贈り物に失敗して振られたから兄ちゃんの本能で選びな。俺に選ばせると破局確定だから」


「おっさんよくそんな人生歩みながらアクセ売ってんな!?」


「はいはい寄ってけ寄ってけ!めちゃくちゃ美味い肉饅頭だ!蒸かしたて!安いから食え!食い物の在庫余らすと怖いんだからな!オラ買ってけ!美味いから!」


「じゃあ二個買うから一個オマケしてトータル三個にしてくんない?」


「無理に決まってんだろうが。テメェの肉で饅頭作ってやろうか」


「待ってこの肉饅頭の材料の肉は一体何肉なんだ!?」


「色々」


「色々とは」


「とりあえず狩った魔物の肉ぶち込みまくってミンチにして臭み抜きの野菜混ぜ込んだ。毒消しも混ぜてあるから人体に害はねえ。食え」


「おい待て毒がある魔物の肉使ってんのか!?」


「珍しいだろ?食え」


「その死んだ目で食え食えコールすんの止めろ怖い!」


「なあ、お前武道大会どうする?出る?」


「一般部門にか?ヤダよ。プロ冒険者部門はニコラスさんの確定勝ちだけど一般部門の闇鍋っぷりハンパねえからな?」


「マジで?俺武道大会初めて見るんだけどそんなにやべえの?」


「ヤバいってもんじゃねーよ。危険とマジキチとまともしかいねえから。しかもこれ三分割出来ないからな?危険とまとも、マジキチと危険が同居してる事も頻繁に起こってるから」


「そんなに?」


「結果一般部門では棄権者が続出するからな。まともはマジキチと対戦する事になったらすぐ棄権するんだ。そして最終的にマジキチとマジキチのバトルになり、勝者の願いを常識の範囲内で叶えないといけない国王様に心労が募る」


「もう一般部門やるの止めたら?」


「でも一番アホっぽくて見てて楽しいんだよ。プロも獣人も結構真面目なバトルだからさ」


「お前散々な事言っておきながら一般部門大好きか」



 …………さっわがし!

 王都に到着して早々めっちゃくちゃ騒がしいなおい!?あっちでもこっちでも屋台!出店!客引きのオンパレード!そしてそれ以上の人!人!人!!真夏の海か!?イモ洗いの現場かここは!?

 幸いにもイースが認識阻害の魔法を使ってくれたお陰で皆が避けてくれるから平気だけど!凄い混んでる!ラミィ大丈夫!?尻尾踏まれてないよね!?



「認識阻害は認識出来ないだけでぇ、そこに存在してるのはわかってるから大丈夫よぉ。実際、ちゃぁんと他の人達は避けてくれてるでしょう?」


「うん……結局これ、どういう事なの?」


「本人はまっすぐ歩いてるつもりだしぃ、脳もそう認識してるわぁ。でも実際は私達を避ける動きをしてるって事ぉ」



 これ脳弄くってんの!?薄々気付いてたけど乱用したらあかんやつじゃない!?



「大丈夫よぉ、物を忘れる事が増えるくらいしか害は無いわぁ」


「害あるんじゃん!?」



 私のツッコミに、イースはくすくすと笑った。

 ……うん、まあ、ツッコミはしたけど周りの人が無意識とはいえ私達を避けてくれてるのは事実だから止めろって言えないんだよね。

 これを解除したら私達も強制おしくらまんじゅうに参加させられちゃうし、そうなると主にラミィが一番危ない。数メートルの尻尾が踏まれまくる。あと多分身長2メートル級のハイドが目印にされる気もする。



「まあ、認識阻害はこのままやってもらうとして……どうしよっか?」



 一応道の端に寄りつつそう問いかけると、ハニーが頷いた。



「これからの事ですね?」


「宿……取る、か、ギルド……行く、か、ご飯…を、食べる……か」


「今丁度昼だからどこの飯屋も混んでそうなのがな…」



 ラミィは指を立てながらそう言い、コンは頭をガシガシと掻いた。



「確か武道大会へのエントリーは、大会の会場以外にもギルドとかから出来たはずだよ」


「ならまずギルドに行ってエントリーするのが良いか?受付に聞けば空いている宿屋もわかるかもしれないしな」



 アレクの言葉に、ハイドがこれからの予定をさくっと纏めた。ふむ、良い案かもしれない。そう思って私も頷く。



「じゃあまずはギルドって事で……イース、どっちの方向にギルドあるかわかる?」


「えぇ。こっちよぉ」



 イースに手を握られ腕を引かれる。……いや、うん、普通に手を繋いだだけだけど新鮮な感覚。そういや手を握られる事はあったけど手を繋ぐのはこっち来てからあんまりしてなかった。旅の途中だと魔物が襲ってくる事があるから手を空けておかないと危険だからだけどね。

 とりあえずイースの手を握り返して大人しく着いていく。うわ、こうしてちゃんと握ってみるとイースの手ぇ柔らかっ。しかも細っ。肌もすべすべだし……流石淫魔。



「……ミーヤ?いくら淫魔でも照れる時は照れるのよぉ」


「えっ」



 思いがけない言葉に思わずイースを見ると、後ろから見えるイースの耳が少しだけ赤くなっていた。褐色だからわかり難いけどちょっと赤い。えっ、レア!イースが赤面とかSSSよりもレアじゃない?



「はぁい、雑念は捨ててギルドに行くわよぉ~」


「あいだぁっ!?」



 私の手を握るイースの手に力が込められた。ギリィッて聞こえるレベルでミシミシ言ってる。ミシミシ言ってる!痛い!



「ちょ、照れ隠しでも手を強めに握り締めるのはちょっと!痛い!」



 ギブギブギブ!と叫んだらイースは手に力を込めるのを止めてくれた。あービックリした。イースってこう……こういう時に照れる癖あるよね。あと照れてるのを指摘すると無理矢理にでも話題を逸らそうとするよっねっ!?あ、あいだだ、すんません考えるのも止めますんで手に力込めるのやめ、やめっ!

 あ、良かった力抜いてくれた。あっぶねえあぶねえ。今は考えるの止めておこう。大人しくギルドで武道大会にエントリーする事だけ考えておこう。そうしよう。



「うっわギルド混みまくってる。どうする?」


「武道大会にエントリーする奴、普通に依頼を受けようとする奴、こなした依頼の報告をする奴でごった返してるな……え?何か言った?悪い聞こえなかった」


「真横の俺の声を聞き逃すなや難聴男!ギルド混んでるからどうすんだって言ったんだよ!」


「お前のキレ芸もいい加減どうにかしろよ!?あー、でも混んでるのは事実だしな……一旦外出て屋台の飯買おうぜ」


「依頼ボードの前に人が居すぎて見れないわね」


「オッケー肩車作戦だな?任せろ。さあ乗れ」


「誰が万年発情期男に肩車されるか。太もも触りまくる気でしょ?」


「いや、合法的に首の後ろに女の股間を押し付けてもらえるという最高イベントの為でもある」


「リーダー!私コイツに殺意を抱いちゃったんだけど良い!?コイツ殺して良い!?」


「こらこら、こんなに人が居る場所で殺っちゃ駄目だ。もう少し落ち着いてから人が居ない場所で仕留めなさい」


「リーダー!?穏やかに俺を見捨てた!?言っておくけど人が多い方が容疑者増えて犯人がわからなくなる事多いんだからな!?つまり俺の命を延命してくれたリーダーは俺が好き!証明終了!」


「リーダー、やっぱりコイツ今すぐに殺しましょう。バラバラにして魚の餌にしてやるわ」


「やむを得ないか」


「やっべガチおこじゃん逃げよ」


「あっ、こら待て!」


「あーーーーっ!また逃げられた!逃げ足だけは速いんだからあの野郎!」


「お嬢さん……貴女はいつ見ても美しい…」


「あの、すみません忙しいんで用が無いなら帰ってくれませんか」


「こんなに忙しい中で働いていても、貴女の輝きは失われない……」


「すみません、後ろに人が並んでるんでいい加減にしてください」


「受付嬢としてどんな時でも笑顔を崩さない君に、俺は何度でも惚れ直す…」


「貴方のせいで私の自慢の笑顔も決壊しそうなんですけど」


「そんな君と一緒なら、俺の人生は薔薇色になれる……。結婚してくれないか?」


「警備員!警備いーーーーん!!業務妨害しまくりの男が!受付の仕事滞るんでこの頭の病気の人路地裏に放り投げて!!」



 ………ギルドの中は中で騒がしいな。

 警備員らしき人に迷惑男は連れて行かれ、再び受付はスムーズに……人が多いからそこまでスムーズじゃないけど、まあ迷惑男によって起こっていた渋滞はゆっくりと消えていく。

 とりあえず邪魔にならないように壁側に寄り、イースに認識阻害を解除してもらった。

 ……しっかし、まぁー……、



「流石は王都って言うべきなのか、受付もいっぱいあるけどさ……」



 他の町では二つか三つくらいしか無かった受付が五つ以上ある。ただ……、



「男の人が受付やってるトコだけ列短いのは何なの?コントなの?」



 何故か受付の男性のトコだけ列が短いのだ。お姉さん達が受付してる列は今もまだ並ぶ人が居るせいで途切れる気配が無い長蛇の列。しかし男の人が受付してる列は、こう………女性と子供、あと少しの男の人しか並んでいない。

 何故だ。エントリーの為にも受付に頼まないと駄目だし、早そうだから男の人の列に並びたい。でもこう……見てわかるレベルで列の長さが違うと怖いんだけど。



「何故って言う程複雑な理由じゃないわよぉ」


「そうなの?」


「えぇ」



 壁に背中を凭れさせ、イースは言う。



「単純にぃ、男は女と接するチャンスを一個でも多くしたいだけよぉ」


「あー………」



 成る程納得。確かに冒険者の男の人からしたら受付嬢が一番よく会話する女性なのかもしれない。そう考えると接触のチャンスは出来るだけ逃したくないわな。



「というか受付って男の人がやったりもするんだね」



 今まで受付の人は女の人だけだったし、受付嬢って名称からすっかり女の人オンリーだと思ってたけど……王都レベルの場所なら性別とか関係ないんだな。



「あ、それちょっと違うよ」


「え?」



 アレクは骨の手を横に振り、私の言葉を否定した。



「男が受付やるのは今の時期だけの期間限定。ホラ、今って観光客とかいっぱい居るでしょ?参加や見学の冒険者も多いし」


「確かに……あ、人手が足りないのか」


「その通り!」



 私の返答に、アレクはにっこりと微笑んだ。



「見ての通り凄い人でしょ?仕事量も凄いからさ、下手にいつもと同じ量の仕事をやろうとすると体壊しちゃうらしいんだよね。だから普段は裏方やってる職員が受け付けをやる、って感じらしいよ」



 「ま、全部アイザックが説明してくれた事だけど」とアレクは笑った。



「王都では基本強制引き篭もり状態だったから、アイザックに王都のちょっと変わった日常とか調べて暇潰しに教えてーって頼んだら本当に持って来たんだ。自分が言った事も、言われた事も、とにかく実行しようとするあの性格は美点だと思うけど……」


「行き過ぎちゃってたんだね」


「そうなんだよねー。妥協出来ない性格だからこその有言実行なんだろうけどさ」



 アレクはケラケラと笑っている、が……アイザックさんの話をする時のアレク、お兄ちゃんの顔なんだよね。アイザックさんも最後に話した時は弟の顔してたし……血の繋がりは無くとも兄弟なんだね、やっぱ。

 …いや、そもそもガルガさんとコンの時点でめちゃくちゃ親子だったな。あそこも血の繋がりまったく無いけど思いっきり親子だった。酔ったガルガさん狐っぽくなってたし。親子でしかなかったわ。今更だったわ。



「えーっと、まあつまりあの列並んでも問題無いって事だよね?」


「えぇ、大丈夫よぉ。私達はここで待ってるからいってらっしゃーい」


「はーい、行って来まーす」



 手を振るイースに手を振り返しつつ、人混みを日本人スキルですり抜けながら受付の列へと並ぶ。ふはははこっちは他人と可能な限りぶつからないように歩く日本人だからね!

 五歩くらい先の前方を見て他人の足の動きを確認して移動方向を察知し、さりげなぁ~く自分の動きを少しだけ横にずらして避ける!これが日本人だ!その代わり方向をミスるとカバディみたいな動きになって時間を大変ロスするのでお気をつけください!

 でも向こうが避けてくれないから微妙に袖が掠っちゃった。日本なら本屋さんとかで本棚と本棚の間で本を見てる人ですらこっちを確認する事すらせずさりげなく通りやすいように動いてくれるのに。人の足音と影と気配でさっと本棚に近付いてスペースを開けてくれるのに。これが外国か。じゃねえわここ異世界だわ。なら仕方ない。



「次の人どうぞー」



 あ、もう私か。

 思ったよりも早く来た順番に、思わずチラリと横を見る。受付嬢が居る列は今もまだ長蛇の列だった。これもう女の人と話したい!って気持ち以上に男のプライドとかも混じっちゃって引けなくなってるんだろうな……。

 っとと、考えてないで受付の人に武道大会のエントリー希望ですって言わないと。



「あの、武道大会の事なんですが」


「はいはい……って…」



 受付のお兄さん……薄茶色の長い髪を首元で結んだ、眼鏡と本が似合いそうな垂れ目のお兄さんは私を見て無言になった。まず私の顔を呆けたように見つめ、そのまま目を頭ごと上下に忙しなく動かした。

 ……え、何?怖いんだけど。私王都じゃイケてないファッションだったりするとか?そういう感じのありえねえって視線か何か?

 無言のままだと一番反応に困るんだけど……と視線を逸らそうとした瞬間、お兄さんは、



「可愛い!俺の心にザックリ刺さった!お嬢さん貴女の名前は!?」



 私に向かって綺麗な花を一輪差し出しながら、大きな声でそう言った。

 ああ……また変わった人と関わっちゃったよ……。

 私は自分の目が死んだのを感じた。



大量のモブを書いてる時って楽しすぎてめちゃくちゃ筆が進む。

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