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異世界で魔物使いやってます  作者:
異世界に来ました
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久々にゆっくりした時間



「昨日はごめんなさいね?何だか先に寝ちゃったみたいで……」


「片付けなどをやらせてしまって申し訳ありません………」


「ああ、いえいえ、ベルさんも村長さんも疲労が溜まりまくってたっぽいんで仕方ないですよ」



 正確にはイースによる催眠だったけど。

 現在私は村長家の前でベルさんと村長さんとお別れタイムの最中である。ベルさん達が本気で申し訳無さそうな顔してるけど……すみません、それ原因うちの子です。主にイースとハイドが原因です。



「あ、そうだわ」



 ハッ!と何かを思い出したらしいベルさんは一旦家の中に戻り、すぐにパタパタと足音をさせながら何かを手に持って戻って来た。



「はい、お弁当のサンドイッチ。良かったら途中で食べてね」


「え、良いんですか!?」



 渡されたのは大量のサンドイッチだった。うわ、しかも十個セットで布に包まれてる。十個セットが……これ何個だ?少なくとも十個以上はあるぞ。中身も全部違うし。肉サンドセット、卵サンドセット、野菜サンドセット……うわ、フルーツサンドセットもある!



「皆よく食べるから多めに作ったの」


「ありがとうございます!」


「気にしないで。昨日は先に寝ちゃって色々させちゃったみたいだから、そのお詫び」



 そう言ってベルさんはふわりと微笑んだ。すみません、寝かせたのうちのイースなんです。

 でもそれはそれとして、ベルさんの微笑みは綺麗だった。いや浮気じゃないよ?浮気じゃないけど、昨日までのベルさんの表情はもうちょっと病んだ表情だったから……肩の荷が下りたみたいに緩んだ表情で、ほっとする。



「それじゃあ、色々とありがとうございました」


「ええ、また会いましょうね」



 「あと」とベルさんは少し悪戯っ子みたいな表情で言う。



「旅先でコブジトゥの宝石を見かけたら、是非購入してね?」


「あは、お買い求めしやすいお値段だったら買いますね」



 ベルさんからのアタックを笑って躱す。ここで頷いたら見かける度に宝石を購入せにゃならんくなるからね!お財布の紐は固めに縛るぜ!

 あ、でもいつの間にか宝石を発掘可能って意識にはちゃんとなってるのね。村長ファミリーがそう言うならって村人さん達も流されてくれるだろうし……多分ハイドの事は過去の話になってくれるはず。そうであってほしい。



「クアドラードの教育、間違えないようにねぇ」


「ええ、勿論。根性を根っこから叩き直してやりますよ」



 ふふふふふ、とイースと村長さんは怪しく笑った。

 ……記憶も無いし面影も奪われた哀れなるクアドラード少年に心の中で合掌し、ベルさんと村長さんに手を振って村を出る。目指すは王都だ。あ、サンドイッチはちゃんとアイテムポーチに収納したよ。うっかり落としておーまいがっ!な事になったら嫌だもんね。

 途中で薬草なんかを摘みつつ、北へと歩く。



「ねえ、イース」


「なぁにぃ?」


「王都ってさ、フィリップス商会の商品売ってたりするかな?」


「そりゃ売ってると思うわよぉ?ツィツィートガルの大体のお店に品物を卸してるのはフィリップス商会だものぉ」


「へえー」



 そうだったんだ。いまいちそういうの気にした事無いから知らなかった。そもそもあんまり買い物してないしね。大体の物はイースが所持してるし、消耗品は気付いたらイースが買ってるし………本気でイースにおんぶに抱っこ状態じゃね?



「でぇ?普段はあのお店のあの商品が良かった、くらいしか言わないミーヤがフィリップス商会の話をするなんてどういう風の吹き回しかしらぁ?」


「ニヤニヤして言わないでよ。そりゃ確かに商会とか特に考えないし基本屋台の食べ物くらいしか買わないタイプの人間だけど」



 私はアイテムポーチからある紙を取り出してイースに見せる。



「ああ、成る程ねぇ」


「そう。これ全然使ってないから使いたいなーって。無限に使用可能らしいのに一回も使わないの勿体無いし」



 何かと言えば、ハーティさんから貰ったフィリップス商会の商品全部一割引券だ。グレルトーディアからイルザーミラまでの護衛をしたあの人。

 結局これ使えてないんだよね。イルザーミラではずっとダンジョン探索だったし、買い物はイースがいつの間にか終わらせてるかアレックスが奢ってくれるかの二択だったし。ヤダ、私ヒモ……?ヒモにはなりたくないな。



「………でも、ミーヤ、あんまり……買い物、しない……」


「そうなんだよね」



 ラミィの言葉に頷く。消耗品とかをイースが買い足しといてくれてるのは事実なんだけど、私自身もそこまで買い物をしないっていうね。

 アイザックさんと話した時にそんな感じの事を言ったけど、元々物欲がそこまで無いんだよね、私。強いて言うならオタク趣味に関してだけ……かな?

 あ、でも大体のグッズや原作はお姉ちゃんが持ってたから、私は電子書籍を買うくらいだったな。服は基本的に着回せるのが何着かあれば数年着続ける事が出来るし、アクセサリーも邪魔臭くて苦手だったし……。女子力が足りてないのは自覚してるからツッコミ無用。

 仕方ないじゃん髪長いからネックレスとか引っ掛かるんだよ!指輪はペン持った時に違和感あるし、ブレスレットも机に腕置いた時とかに違和感あるし!マニキュアは不器用過ぎてはみ出たりムラが出来たりしてあんまり得意じゃなかったから爪を磨くくらいしかしてないし……。我ながら金を使わん人生を歩んでるな。

 物欲も正直言って微妙。一つ気に入ったらそれが駄目になるまで使い続けるタイプだから。良い言い方をすると物持ちが良いんだよ私は。悪い言い方だと執着心が強い。

 まあ、そういう事で。



「使うタイミングが無いんだよねー………」



 これだ!って思う欲しい物も無いしね。服は今の服が気に入ってるし、かなり着慣れてきたから変える気無いし。ネックレスはメリーじいさんに貰った首飾りを隠してるけど着けてはいるし、ブレスレットはイースがくれた嘘を害意に反応するミサンガを着けてるし…。あ、ミサンガは再び渡されたから装着してるよ。「効果は大して変わって無いから安心してねぇ♡」との事だった。何の魔法掛けたんだろうね。やっぱGPS系なのかな?丁度タイミング悪く私が単独行動した結果大変な事になっちゃったから否定出来なくて困る。



「ねぇ、ミーヤ何それ」


「ん?ハーティさんって人がくれた、フィリップス商会の商品全部が一割引になる紙」


「マジで!?え、アレ都市伝説的なやつじゃなかったの!?」


「待ってそんな反応するレベルなの?コレ」



 元領主であるアレクがそんな反応するとか怖いんだけど。え、厄介事?厄介事の種になりそう?

 アレクは死んでいるのに瞳をキラキラ生き生きと輝かせ、私が持っている紙を覗き見る。



「へぇー……これが噂の…。初めて見た!」


「……念の為に聞きたいんだけど、どういう噂?」



 万が一厄介事になりそうならハーティさんからの感謝の品だったとしても質屋に売る。あ、いや質屋だと身元がバレる。アイテムポーチの肥やしコースだね。

 しかし、そういう事では無かったらしい。アレクはにっこりと笑って言った。



「これね、フィリップス商会で働いてる人達が一年に一回開かれる宴会のビンゴ大会の賞品なんだよ!」


「ビンゴ!?」



 宴会でビンゴ!?日本のホワイト会社か何かか!?楽しそうだね!?

 驚いて思わず叫ぶと、アレクは笑顔のまま頷いた。



「うん、ビンゴ。全部の列がビンゴになった人にだけ贈られるらしいよ!先着十名!」


「え、それ賞品なんだよね?貰って良かったのかな」


「大丈夫じゃない?フィリップス商会の職員なら特権としてデフォルトで二割引だから意味無いと思うし」



 おい。それってつまり押し付けられ……。



「でもバーバヤガの迷惑野郎みたいな奴に渡すと大変な事になるからってその紙をゲットした職員の信頼を得た人しか貰えないって噂なんだ!流石ミーヤ!」


「私はただ護衛をして話を聞き続けていた記憶しかないんだけどね?」



 まあ、うん、問題無いなら良いや。

 というかそれは置いといて、



「この紙を使用するタイミングが無くて困ってるんだよねー…」



 歩きながら、もう良さげな人見つけたらプレゼントした方が有効活用になるのではと考えつつうーんと首を傾げた瞬間、



「!」



 ハイドが背後に向かって糸を出した。そして一本釣りするかのようにソレを手元まで寄せ、糸に巻かれながらもがくソレに噛み付いた。数秒間の出来事であった。



「え、何?どしたのハイド」



 そう問うと、ハイドはソレから口を離して私に見せた。



「シュガーバタフライだ。普通は群れなのに単体でいるのは珍しいぞ」


「そうなの?」


「ああ、我が山に封じられる前の知識だから今はどうか知らないけどな」



 ブラックジョークか?それはハイドなりのブラックジョークなのか?

 というかシュガーバタフライなんて初めて聞く名前だ。見てみると、シュガーバタフライとやらはハイドの手の中でビクンビクンと痙攣を起こした後くたりと事切れた。……あ、ああ、毒ね。噛み付いた時に殺っちゃったのね。

 しっかし何かやたらとキラキラしてる蝶だな、と思って見ていると、イースが説明してくれた。



「シュガーバタフライはむかぁし勇者が作った蝶なのよぉ」


「マジで?」


「マジよぉ。確か魔物を作るスキルを持ってたけどぉ、最愛の娘が怖がるからって理由で作った魔物じゃなかったかしらぁ」



 …ああ、うん、そうだね。確かに魔物っつったらホラーにホラー重ねた感じのイメージだもんね。子供、それも女の子なら魔物=ドチャクソ怖いって考えになるわ。

 成る程、だからこんなに綺麗なんだこの蝶。



「何でシュガーバタフライって名前なのかって言うとねぇ?この蝶の鱗粉が砂糖だからなのよぉ」


「マジで!?」


「マジよぉ」



 うっわ、綺麗だけど何となく嫌だ……。鱗粉だからかな。鱗粉だからな気がするな。流石にシュガーバタフライをケーキの上でパタパタさせて粉砂糖のデコレーション♡ってのはちょっと……。

 そう考えながらハイドの手の上のシュガーバタフライを指でつついていると、イースはにんまりと笑った。



「ところでぇ、ミーヤは覚えてるかしらぁ?昔勇者が調味料を簡単に手に入るようにしたけど馬鹿貴族とかのせいで調味料が手に入り難くなったって話ぃ」


「ああうん、覚えてる」



 覚えてるし、たった今イースがおさらいしてくれたから完璧にわかる。



「その結果砂糖目当てにシュガーバタフライが乱獲されてぇ、今はかなり数が減ってるのよねぇ。だから昔はハイドの言ってたように群れで存在してたんだけどぉ、今は単体でしか目撃情報は無いのぉ」


「我が山に居た間にそんな事になってたのか…」



 ほうほう、って感じで頷いてるけど……ハイド?君もしかしてやべー事しちゃったんでない?大丈夫?絶滅危惧種を保護する団体みたいな人とかに怒られない?テメェ絶滅危惧種を殺すたあ良い度胸してんなぁ!って感じでライフル持って追いかけてきたりしない?



「まずこっちの世界にライフルが無いわぁ」


「あ、そっか」



 なら良いや。



「………今、ミーヤは何も言ってなかったよな?」


「イース様は心を読む事が出来ますから。ミーヤ様もそれを受け入れてるので、結構こういう事はありますよ」


「…ん。説明……いる時、は、ちゃんと……説明、してくれる…から、スルー……」


「単純に暴走し過ぎたミーヤの考えを止めるってだけの時もあるしな」


「まあ慣れだよ慣れ」



 私達の背後で、ハイドはコソッと皆に問いかけていた。そして皆はさらっと答えていた。…うん、うっかりしてたけどそういやこれ結構凄い事だよね。心を読む側と心を読まれるのを受け入れてる側による前置きが無い会話って。

 端から聞いてたらイースが急に変わった事を言い出して、それに私が納得するという状態。事情知らなかったらまったく理解出来ないわ。説明するの忘れてたけど言っておけば良かったね。

 ちなみに私が異世界人である事は既に鉱山で説明してある。それに対してハイドは、「我を閉じ込めたのも勇者だったが、他にも色々な勇者が居たのは知っている。我の服も別の勇者が着ていた服をモデルにした物だしな。だから気に病むな」と言ってくれた。何百年も山に閉じ込められてたのに、ちゃんと別の存在だって認識してくれてるのは嬉しかった。

 だってホラ、人によってはB型は皆こう!とか、O型は皆こう!みたいな先入観があるじゃん?そんな感じで一緒くたにされる可能性があるかもなーってちょっぴり思ってたからめちゃくちゃ安心した。良かったハイドがちゃんと考える事が出来る魔物で。



「ちなみにぃ」



 イースはハイドが手に持ったままのシュガーバタフライを指差し、言う。



「シュガーバタフライの羽は飴細工、他の部分はチョコだったりクッキーだったりとランダムよぉ。食べてみるぅ?」


「イースさんや、それ狩ったのハイドだからね?」


「ミーヤが食べたいならミーヤにやるぞ?」



 ハイドの善意により、私の目の前にシュガーバタフライがずいっとズーム。こっち来てから虫への耐性上がったとはいえ、この近距離はちょいと距離を置きたい。何故なら私は昆虫採集で虫の標本作りが出来なかった女。

 いやわかってる!可愛らしいウサギを捌いて食ってる奴が言う台詞じゃないってのは誰よりも私がよくわかってる!でもちょっと!トラウマなんだよ!幼い私が泣き叫ぶんだよ心の中で!

 …………あと本音として、蝶とはいえ虫を食うのは……まだ、ちょっと、心の準備が…って感じなんだよね。カブトムシの幼虫食わされるわけじゃないだけマシだけど。……ん?ちょっと待てよ?



「ねえハイド、さっきその蝶に噛み付いて殺してたよね?」


「ああ、もうそろそろ食べ頃になってるはずだ」


「……それってつまり、毒だよね?」


「あっ」



 私の言葉に、ハイドは口をポカンと開けた。



「そうか、確かにこの方法で狩った獲物を食わせたらミーヤに害がある可能性が……。これは我が食う事にしよう」



 良かったわかってくれた!

 うん、だってさっきそのシュガーバタフライ思いっきり痙攣してたもん。確実に毒入れられてたもん。ただの消化液なら問題無いだろって?お前それ胃液を飲めって言ってるようなもんだぞ。

 しかも正体が8メートル級のハイドなんだよ?ハイドの消化液とか確実に人体に影響ありありじゃん。人間の胃液で勝てるとは到底思えないレベル。内側から溶けるわ。



「うん、それにハイドが狩った獲物だしね。ハイドが食べちゃって」


「ああ、そうする」



 頷き、ハイドはシュガーバタフライを丸呑み……しようとして、横からじぃっと見つめているハニーの視線に気付いたらしい。動きが止まった。

 少し間を置いてから、ハイドはシュガーバタフライの羽を捥いでハニーに手渡す。



「羽なら我の毒に侵されてないだろうからな。先輩嫁への賄賂だ。受け取れ」


「ありがたく賄賂を受け取らせていただきますね、後輩嫁。何か質問があれば聞いてください。知ってる範囲の事なら賄賂への対価として答えますから」



 そう話し、二人は半分こにしたシュガーバタフライを食べた。

 ……蜂と蜘蛛による蝶の捕食シーンなんだよね、コレ。会話だけ聞くと距離を縮めてる同僚っぽいのに、正体の情報をプラスするだけで一瞬にして捕食シーン。

 まあ、うん、ハニーがハイドの事をまあまあ警戒してた事を考えると良い事…かな?



「じゃ、食べ終わったトコで王都に向けて再びしゅっぱーっつ」


「えぇ、そうねぇ」


「はい!」


「…ん」


「おう!」


「はーい」


「ああ」



 皆の個性豊かな返事を聞きつつ、私は歩く。

 さぁって、三日かけて王都まで頑張るぞ!全ては美味しいご飯とちょっとお高めな宿の為に!

 あと観光ね。



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