次の行き先
「西にあるコブジトゥ?」
「そう。ここから北西に向かうと王都、西に向かうとコブジトゥっていう村がある」
あの後私達は昼食を終え、再び西へと足を勧めた。そして日が暮れてきたので良さげな場所を見つけ、現在全員がお風呂に入り終わったところである。
あ、ちなみに今のイースは男の姿になっている。私達女メンバーがお風呂に入っている間に男の姿になってアレクに色々と説明してくれたらしい。私が異世界人であるという事も伝えてくれたとか。
………うん、うっかりその事話すのまたもやド忘れしてたよね。
そして私が異世界人である事を知ったアレクの反応はといえば、
「え!?じゃあ僕達って運命!?血の繋がりは無いけど僕の居たローゼンベルク家って異世界人である勇者様の嫁になった人の実家だし、そして僕はそこの領主だった元人間で異世界人のミーヤの嫁!ヤダ凄い運命感じる!」
と大歓喜だった。まあ、うん、ポジティブに受け取ってもらえたなら良いか。
そういえばだけど、アレクは魂だけの状態なのにご飯を食べる事が出来ていた。最初はアレク本人も食事は憑依でもしないと不可能だと思っていたみたいなんだけど、イース曰く、
「肉体が無くても食べれるわよぉ。魂の内部に物質を仕舞う魔法の応用でぇ、内部に入れた物質を魔力に分解して吸収すれば良いだけなんだからぁ。食べれば食べる程魔力量が上がるから食べておいた方がお利口よぉ」
との事だった。
生き物がご飯を食べて栄養素を分解してそれぞれ吸収して血肉に、っていうのの魂版なんだろうか。よくわからないけどアレクはそれで「成る程!」と理解したらしく、試しに焼いた肉を食べたらあっさりとその……魔力に分解して吸収?が出来たらしく、美味しい美味しいと食べていた。
………リッチって、味覚あるんだ。いや、アレクだけかもしれない。アレクは顔があるから舌も当然残っている。だから味覚も生きていた可能性が……どうせ他のリッチと関わる事なんて無いだろうから深く考えるのは止めよう。眠れなくなりそうだし。
私達がお風呂から上がった後だが、イースはアレクのローブを引っつかんでお風呂へ連行しようとした。丁度お風呂に入ろうとしていたコンが「何でアレクも?肉体無いから要らなくねえか?」と聞くと、
「魔族用の品の中には幽霊用もあるからなぁ。勿論シャンプーやリンス、ボディソープも。生前綺麗好きだったゴーストが開発した品で、本当に幽霊を洗う事が出来るんだ。どうせだし使っときなぁ」
との事だった。それに対しアレクは、
「え、確かに習慣として洗いたいなーとは思うけど、僕今肉体無いよ?体を洗ったりするのは肉体が生きてて老廃物が出るからであって、魂だけの状態なら必要無いんじゃないの?」
と言ったが、
「このシャンプー達、香り付きだけど本当に使わなくて良いのかぁ?匂いがしないのと良い匂いがするのとじゃミーヤだって良い匂いの方が良いよなぁ?」
「え、あ、まあ確かに。髪からふわっと香る良い匂いって魅力的だしね」
「お風呂入って全力で髪も体も洗います!体ってか骨だけど!」
という感じのやり取りを経てアレクは入浴する事になったのだった。
いやあ……大きい声だと中の声が普通に聞こえるから筒抜けだったよね。
「え、何このクオリティ凄い!しかもお湯まで色付いてるし良い香りなんだけど!?領主ですらこんな贅沢した事ないよ!?」
から始まり、
「ふんふん、水とかは自分の魔法で出すんだね。了解!」
「あっ、今つい癖で椅子に座ろうとしたけど下半身ってかお尻の部分の骨が無いから背骨が当たって超ビックリした!そうだよ僕今下半身無いから座れないじゃん!いやそれ以前に僕浮いてた!座る必要無かった!」
「うひぇっ、水や泡の流れる感触が僕の骨に凄くダイレクトで伝わって新感覚過ぎて気持ち悪い!」
「え、これどうやって洗うの?僕は僕の体をどうやって洗えば良いの?肋骨の中まで手を突っ込んで洗った方が良いの?」
「うあー、何コレお湯に全身浸すのめちゃくちゃ気持ち良い…。骨に染み渡る…。惜しいのはこんなに広い湯船なのに足が無いから足を伸ばす事が出来ない事かな!」
という感じでアレクの声が殆ど外に届いていた。はしゃいでるのか声が大きいせいで筒抜けだった。
そして男達が風呂から上がり、イースが風呂を消し、現在に至る。ちなみに今はハニーが私の髪を乾かし、私がコンのブラッシングをしているというトレイン状態である。
「そういやあの場所から離れないとなーって思ってそのまま西に向かって歩いてたけど、行き先考えてなかったね」
「アレクの墓がイルザーミラの西側だったからそっちの方向へ進んだ、というだけですからね」
四つの手で支えたり櫛で梳いたりしつつ、魔法で出した温風で私の髪を乾かしながらハニーはそう言った。うん、正にその通り。元々行き先あんまり考えずにどこ行こうかなー、出発前に方向決めようかなーとか思ってたらアレックスの死を伝えられたからね。そりゃ話し合う暇も無いわ。
「そう。んでぇ、どうせだから王都とか行きたいだろぉ?」
「ふむ……」
ファンタジー世界ではお決まりだから確かに行ってみたいっちゃ行ってみたい。というか見たい。王族の人に異世界人だとバレるととてつもなく大変な事になるっぽいけど、まあこのツィツィートガルなら治安も良いから大丈夫だろう。
国民の人達も結構面白い人達が多いし、多分トップの王様も良い人なんだと思う。ドラゴン退治の時に自費で色々と支給してくれるくらいには。
…うん、社会見学としても王都は一回見ておきたいね。
「皆はどう?王都行きたい?」
一応皆の気持ちを確認する為にそう質問すると、
「私はどちらでも。ミーヤ様が行くのであれば行きますし、行かないのであれば行きません」
ハニーは私の髪を梳かしながら声のトーンを変えずにそう言い、
「……ん、ラミィ、美味しいの……が、沢山、ある…なら、行きたい……」
ラミィはお風呂に入って眠くなったのかうとうとしながらそう言い、
「お、俺は別に王都に行けるかもしれないと思ってわくわくなんかしてねえからな!?」
コンはそわそわうずうずしているのを隠し切れない様子でそう言い、
「僕はハニーと同じで正直どっちでも。王都って領主だった時にお偉いさんとの顔合わせの為に行くって印象が強くて楽しい思い出が無いんだよね」
アレクは思い出したのか疲れた様子で溜め息混じりにそう言った。
…うーむ、完全にどっちでも良い派のハニー、強いて言うなら行きたい派のラミィとコン、正直あんまり…派なのがアレクか。
私はどっちかというと行きたい派だからな…。ちょっと困っちゃうね。
「あ、でも今はもう領主じゃないから普通に王都を見て回ったりが出来るのかな!?領主だった時は暗殺に気をつけないといけないって言われて一人で出歩く事すら出来なかったけど、ミーヤの従魔としてなら王都の中の屋台とか店とか色々を見て回れる!?」
アレクが乗り気じゃないならどうしようかなーって悩んでたら勝手に自分で解決してたよ!わっくわくな様子で目を生き生きキラキラさせるのがどうして似合うんだろうねこのアンデッドなリッチさんは!
まあ、うん、アレクが王都オッケーになったなら良いや。そう思い私は手を挙げる。
「私もちょっと、王都が気になるかな。どういうものか見てみたいんだよね」
「では私も王都行きに賛成という事で」
ハニーってば同意がはやーい。
「じゃあ全員王都行きで賛成って事だなぁ?」
「そうなるね」
「ならやっぱり先にコブジトゥに寄った方が良いなぁ」
チラシのような紙を見ながらイースはそう言うが、どゆ事?
そう思って首を傾げていると、アレクが口を開いた。
「コブジトゥって確か鉱山がある村だよね?種類関係無く、紫や黒の様々な宝石が採れる鉱山がある村って本で読んだよ」
「でもあの村ってここ数百年は……」とアレクは顎に骨の手を当てながら言葉を濁した。え、何?ここ数百年にその村に何があったの?そのコブジトゥとやらに……コブジトゥって言いにくいな。発音が難しい。
「確かにコブジトゥ自体に用は無いんだがぁ」
はぁ、と溜め息を吐き、見ていたチラシのような紙をヒラヒラさせてイースは答える。
「あと一週間かそこらで王都名物の武道大会が開かれるんだよなぁ。イルザーミラから王都までの道は、混む」
「混むんだ」
「混む。A級以上の冒険者限定のプロ部門、それ以外の一般部門、そしてどっちでも無い獣人部門なんかがあるからなぁ………A級以上の冒険者達の戦いを見たがる観客や、ついでに自分も腕試し!って感覚で出る奴が多いんだ。そいつらのせいで混む」
ほへー、ザ・ファンタジー世界って感じだ。
「それで、何でコブジトゥ経由?混むのはわかったけど色んなトコからお客さん来るってんならコブジトゥからの道も混むんじゃないの?」
「あ、それは大丈夫だ」
イースは人差し指を軽く振るい、空中に地図を表示した。表示ってか幻覚だろうけどね。
「現在地がここでぇ、王都はこの北西にあるでっかいトコなぁ。んでコブジトゥはここ。……わかるかぁ?」
「えーと…」
コンをの尻尾をブラッシングする手は止めずに考える。コブジトゥから王都へ行く道が混まない理由は………あ、
「コブジトゥの西側と南側が山だから?」
「せいかぁい♡」
にっこり、とイースは微笑んだ。
「この山は鉱山なんだ。だからトンネルとかも無い。つまりコブジトゥは東側のイルザーミラへの道と、北側にある王都への道しかない。そして今皆は王都に向かっているからぁ?」
「そっか、イルザーミラから王都行けるんだからわざわざコブジトゥを経由して行こうとする人は少ないのか」
「少ないってか殆ど居ないと思うよ?今のコブジトゥは大分廃れてるし」
私の言葉にアレクはそう返した。え、廃れてるの?
「確かに廃れてはいるが一泊くらいなら大丈夫だろぉ。ここからコブジトゥまでは二日、コブジトゥで一泊、その後コブジトゥから王都までは三日ってトコだからぁ、武道大会には丁度良いと思うぜ」
?イースは武道大会が見たいのかな?
「いや、ミーヤが武道大会に出るかなぁって思ってなぁ」
「何故に!?」
王都で下手に目立つ事はしたくないですことのよ!?
驚愕で思わずコンの尻尾をブラッシングする手を止めると、私の髪を乾かし終わったハニーがイースの方へ移動し、イースの持っているチラシのような紙を受け取って読み、頷いた。
「……確かに、これは出た方が良いかもしれませんね」
「どういう事?」
まったく話が見えない。とりあえずブラッシングを再開させて聞くと、ハニーは答える。
「この武道大会、賞品が出ます。1位は王様の常識の範囲内で願い事を何でも叶える。2位は王城に一泊二日&見学許可。3位二名は宝石掴み取り」
「1位の賞品とんでもなくレベル高いのに3位からいきなりグレード下がるの何なの?」
いや、宝石掴み取りって結構凄いと思うけどね?でも1位と比べると商店街っぽさがあると思う。日本でもお金を掴み取り!みたいなのあった気がするし。
「というか、別に出た方が良いの無くない?」
「はい、1位2位3位は正直どうでも良いです。重要なのは参加賞ですね」
「参加賞?」
参加賞なんてあるんだ。
ハニーはチラシを指差して言う。
「まずこの武道大会ですが、エントリーした参加者全員が大会に出れるわけではありません。16人によるトーナメント制です。なので最初に参加者をそれぞれ均等に16等分し、それぞれの勝者を決めるようです。そして勝ち抜いた者が代表者となり、武道大会に出場する事が出来るようになります」
「ああ、まあ確かに効率を考えるとそうなるね」
さっきイースの話を聞いた限りだと人がいっぱい来るし参加もするしって感じだったし、長ったらしくならないようにするには一番良い手だと思う。
「そして、勝ち抜いた16名に参加賞が出るんです。その前に脱落したら参加賞はありません」
「条件が中々にハード。で、選ばれた16名に渡される参加賞ってのは?」
ハニーはチラシのような……もうチラシで良いや。チラシを持っていない下の両手でぐっと握り拳を作り、言う。
「お高い宿屋に一週間無料で宿泊出来る権利です!しかも宿屋での食事などその他諸々無料!」
「よっしゃ絶対に武道大会出るぞ!頼りにしてるからね皆!!」
王都は今確実に宿が混んでいる。だというのにお高い宿屋に一週間無料!?お高い宿屋って事は広い部屋も大きいベッドもあるという事!それは助かる!
あと何より宿屋での食事が無料ってのが最高!私こっち来てから動くようになって代謝が良くなったのか前より食べるようになったからね!それに食欲強めのラミィとコンも居るし!今は食べ物を食べて魔力の量を増やそうとしているアレクも居る!無料めっちゃ助かる!!
そう思い私は叫ぶが、「あ、それ無理だぜ」とイースがストップをかけた。
「え、無理って?」
「ミーヤは一般部門だろぉ?」
「そうだね」
プロじゃないし獣人でも無いからね。あ、でも獣人部門ならコンが出れるのかな?そう考えていると、イースが現実を突きつけてきた。
「この武道大会、魔物使いは従魔使うの禁止だからぁ」
イースはそのまま「従魔の参加が禁止されてるから獣人部門にコンを出すのも無理だぞぉ」と続けた。
「何故じゃ!」
「うひゃっ!?」
思わずヘドバンをしてしまい顔面がブラッシング終了直前だったコンの尻尾にダイブ。もふっとふかっとサラっと素晴らしい毛の感触が私の顔を包んだ。って折角ブラッシング終わりかけてたのに!
「ご、ごめんコン」
「だ、大丈夫だ。別に俺はミーヤが俺の尻尾に顔埋めた感触にちょっと喜んだりなんてしてねえしな!」
喜んだのか。
まあ、うん、とりあえず詳しくは詮索せずにブラッシングを再開しよう。機嫌良さそうにゆらゆら揺れている尻尾を捕まえて再びブラシを通す。
「で、イース。従魔使用禁止って?」
「昔魔物使いが百匹以上の従魔でゴリ押ししようとした。これでわかるかぁ?」
「成る程理解した。つまり数の暴力は禁止ですよって事ね」
確かに魔物使いの従魔がオッケーになるとフェアじゃないよね。
魔物使いオンリーでロンリーな状況もフェアじゃない気はするけどね!基本バトルは従魔に任せてるから魔物使いそのものに戦力は無いよ!
「ミーヤなら魔法も鞭もあるから大丈夫だろぉ。そもそも出場する事が出来たならさっさと辞退して参加賞だけ貰えば良いしなぁ」
「イース天才」
確かにそれなら私に被害は無い。私は負けず嫌いでもな……な……まあ、ちょっとは負けず嫌いなトコもあるけど!でもまあ無理して進もうとする精神も持ち合わせていないのでさっさと辞退コースだね。相手が辞退した相手だろうとバトル続行しそうなタイプなら辞退は出来ない可能性があるけど、まあそうそうそんな相手にも当たるまい。
……あ、やばいフラグが立った気がする。おーけい考えないでおこう。
「でもイース、最初のバトルロワイアルを勝ち残らないと出場出来ないんだよね?私一人で突破出来ると思う?」
「勝ち残ってれば良いわけだからぁ、壁と同化して残り一人になるまで息を潜めてぇ、残り一人になったらその一人を背後からぶん殴れば余裕だと思うぞぉ?」
「その方法は検討しておく…」
ただし実行するとは言わない。それやったら私ただの漁夫の利狙いでしかないじゃん。流石にそれはちょっと、後で色々言われそうで嫌だ。
「っと、良し。コンのブラッシング終了でーす」
「ありがとな、ミーヤ」
「いーえ。私もアニマルセラピー出来てて助かってるからね」
もふもふに思う存分触れるのはメンタル回復に最高だよね!
さて、じゃあブラッシングも終わったし寝るかな。明日から向かうのはコブジトゥに決定でー…と考えていると、イースが良い笑顔で私の肩を叩いた。
「…………♡」
「え、何?何その笑顔」
「さ・か・ず・き♡」
「あっ」
「え、何?」
そういや従魔と盃を交わした方が契約がしっかり結ばれるとか言ってたっけ。その事を思い出し、ハテナマークを浮かべているアレクにかくかくしかじかと簡単な説明をした。
「つまりより強い契約をミーヤとの間に結ぶって事?な、なんか照れちゃうね…♡」
アレクの照れるポイントが私にはよくわからないんだけど、これは私の感性がおかしいんだろうか。それともアレクの照れるポイントがおかしいんだろうか。両方なんだろうか。
……深くは考えまい。ただそのくねくね踊りはフラワーロックを連想させるから止めてくれないかな。油断してると吹きそう。
「はい、ミーヤ」
「おっと」
そんな事を考えていたら、既に盃に蜂蜜酒が注がれていた。蜂蜜酒がなみなみと注がれた大きい盃を、中身が零れないように受け取る。
「えーっと、これってまた私が最初に飲んでイースに渡してって感じ?」
「いやぁ?俺達は既にふかぁく結ばれてるからなぁ。ミーヤが飲んでアレクが飲んでミーヤが飲み干す。それで成立だぜ」
「言い方」
ふかぁくの辺りに良からぬ気配を察知。いや、うん、まあ、淫魔ならデフォか。なら仕方ない。
飲む前に、アレクは私との従魔契約をより深いものにしても良いのかと聞こうと思ったが、アレクのわくわくしている様子を見て聞くのを止める。甲斐性の無い夫にはなりたくないからね。
……性別が行方不明だなあ。今更だけど。
「私は、皆と共に歩いて行きたい」
誓いの言葉を変えるのは良く無いよね、と思って前と同じ言葉にした。歩くって言ってもラミィは這ってるしアレクは浮いてるけど、まあこういうのはフィーリングだよね!
盃を傾け、中の蜂蜜酒をゴクンと飲み、アレクに渡す。
アレクは私の手から盃を骨の両手で恐る恐る受け取り、
「僕は、死んでもミーヤと一緒に居たい」
と誓いの言葉を口にして盃を傾けた。相変わらず思いが重いけど、まあ私が慣れれば良いだけか。重かろうが病んでようが嫁からの愛は受け止めたいからね。
目の前に差し出された残り少ししか無い盃を受け取り、私はまた前と同じように言う。
「私は、三岡美夜は、皆と共に生きていく」
再び盃を傾け、中の残り少ない蜂蜜酒を飲み干した。
あ、また魔力が強く繋がった感覚がした。アレクの目尻にある契約印も一瞬光った。よしよし、しっかりと繋がりが強化されたね。良い事だ。
「これからよろしくね、アレク」
「うん!僕足が無いから歩けないし既に死んでるけど、ずっとずぅっと一緒だからね!」
「言い方もうちょっとソフトになったら最高なんだけどなー」
最初のポエム入った感じのはぞわっとしてたけど、そのタイプの愛の言葉もそれなりにぞわっと来るから困るんだよね。いや、うん、本人は結構照れ屋だし純情ボーイだから実害は無いと思おう。うん。
まあとにかく盃も無事交わす事が出来たし、とそれぞれ眠りに付く。イースとアレク以外はイースの作った水のベッドの中だ。ハニーとコンは最初、襲撃に備え難いと言っていたが一回試したら気に入ったらしく、それ以来普通に水のベッドを使って眠っている。うん、適温に調整されてて気持ち良いよね、コレ。
私はもぞもぞと水のベッドの中で寝返りを打ちつつ、
「じゃあ早速練習だなぁ。一番やってみたいスキルってあるかぁ?」
「夢渡りがやりたいな。アイザックの夢の中に入って「僕死んでから結構エンジョイしてるし気にしないでね!領主変わってくれてありがとう!」って伝えたいし。アイザックって思考の迷宮に迷い込みやすいから言うだけ言っておきたいなーって思って」
「りょうかぁい。どうせ夜は長いからなぁ?使いこなせるようになるまでじっくりたっぷりがっつりと教えてやるから覚悟しとけよぉ?」
「え、怖っ」
というイースとアレクの会話を子守唄にしてゆっくりと眠りに落ちた。
そういや書こうと思って書き忘れてたんですが、アレクの墓がオレンジの木の下だったのはオレンジの花言葉が良いなーと思ったからです。気になった方は是非お調べ下さい。




