(作為的な)恋愛イベント
「昨日ぶり、ミーヤ♡」
「何でダンジョンの前で待ち伏せしてんの、アレックス…」
朝、ダンジョンに入ろうとしたら入り口でアレックスが待ち伏せしていた。
よーし、落ち着け私。とりあえず回想だ。まず朝起きて、ご飯食べて、ギルド行って、依頼を受けた。今日受けた依頼はゴブリン十匹討伐と、宝箱に入っているらしい回復薬五個と短剣一本を取ってきて欲しいという依頼だった。回復薬五個はギルドの依頼で、短剣一本は冒険者の人の依頼だった。
何で冒険者が依頼?と思って短剣の依頼を出した冒険者の人に聞いてみると、
「大量発生した魔物のせいで俺の短剣が折れちゃったんだよ!折れても武器屋に治してもらえば良いだけなんだけど、武器屋のおじじが言うには「バッキリ逝っちまっとるから直すにゃもう一本要るぞ」って!魔物討伐したから金はあるんだけど、俺の家のジンクスで「ダンジョン内で手に入れた武器以外を使用すると体臭が臭くなる」っていうのがあって……!でも武器無しでダンジョンに入って短剣出るまで宝箱開けに挑戦!なんて出来ないし!今魔物が大量発生してるし!お願い俺の体臭の為にどうかダンジョン内の短剣を、短剣を……!」
と、泣きながらお願いされた。
そのジンクスはガチなのかと一応聞いてみたら、
「親戚のおじさんは馬糞みたいな体臭になって、従兄弟は生ゴミをしばらく放置したような体臭になった……」
との事だった。ダンジョンでゲットした武器以外を使うと体臭がガチで大変な事になるとは凄いジンクスもあるもんだ。ジンクスっていうか家系の呪いっぽい。
まあとにかくあのお兄さんのこれからの為にも短剣を探さないとね。必死さが凄かったし、馬糞や放置した生ゴミの体臭とかは流石にちょっと、止めてあげてほしいっていうか。うん、頑張って短剣だけは見つけよう。短剣ゲットまで帰れまテン。
そんな事を考えつつダンジョンに潜ろうとしたらアレックスが入り口に居たわけだ。回想終了。
「…つい待ち伏せって言っちゃったけど、他の人を待ってたとかだったりする?だったらごめん。謝ります」
「いやいや、ミーヤを待ってたで正解!ギルドの依頼の殆どはダンジョン関係だから、ここで待ってたらミーヤに会えるかなって♪」
言いながら、アレックスは少し赤くなった頬を隠すように両手で覆ってくねくねと揺れる。
「本当に会えるなんて、運命だと思わない…?」
「作為的な運命っすね」
待ち伏せしておいて運命とは言わんだろう。一昔前の少女漫画でよくある、曲がり角でぶつかってあいたたた、アンタどこ見てんのよ!から始まるアレは偶然だからこそだ。待ち伏せしてどーんは展開が変わる。アレは偶然ぶつかり、何だアイツって思ってたらなんと転校生だった!しかも隣の席!?これからの学園生活どうなっちゃうのーってなるまでがセットだから。ヒーローはツンツン系がデフォ。お姉ちゃんが言ってた。
だから待ち伏せされての運命には頷きません。イケメンが頬染めて流し目で見つめてこようと靡かんぞ。こっちにはタイプ豊富な嫁がおるんじゃい。
まあそれはそれとしてアレックスは見た目イケメンだから一瞬ドキッとするけど、性格と行動を思い出すだけでトキメキが死ぬから本当に勿体無い。
「作為的でも運命は運命だよ。俺がダンジョンに潜って、ミーヤもダンジョンに潜るならダンジョン内で俺達が会う可能性もある。もしダンジョン内で出会えたらそれこそ本物の運命だ」
アレックスは爽やかに微笑む。
「でも、ちょっとくらいの早回しは良いと思って。ミーヤと一緒の時間を少しでも長くしたかったからこうやって待ってたんだ。そうしたら、俺達はダンジョンに入る時から出る時まで一緒に居る事が出来るでしょ?」
「言い方が怖い」
チャラい系かと思ってたらヤンデレ系の香りがしてきているという事件が発生。誰かポリスメン呼んで来て!大至急!もしくは心のお医者様でも可!
正直言って私、アレックスに対して発言やべえなコイツって思ってる。思ってるけど普段に比べると冷静なんだよね。何でかって?私の背後に居るハニーとラミィとコンがイライラしてるからだよね!
ああもうアレックス、その辺で、その辺でストッププリーズ…!ハニーが歯をカチカチし始めてる!アレ蜂の生態調べた時に初めて知ったけど、スズメバチの警戒音だよアレ!
調べてわかったんだけどキラービーの生態って基本ミツバチ、バトル時スズメバチ要素ちょっと有りって感じみたいなんだよね。なのでガチでやばいやつだ。スズメバチのカチカチ音はあかん。
ラミィはラミィで威嚇している。舌をチロチロ出しながら尻尾をビタンビタン振ってるってあかんやつ。このままだとシャーッて言いかねない。うちのラミィ人食いの称号あるからあんまり刺激しないで欲しいんだけどね!本人マイペースで食欲に忠実だから良いけど、これで性格がやばい子だったらアウトだったからね!?
コンはギリギリ我慢してくれてる。本気でギリッギリだけど。既に威嚇体勢に入ってるからギリギリもギリギリ、あと一歩でアウトになりそうなレベルでギリギリだ。いやだって、アレックスを見下すような顔の角度だしその状態で耳伏せて牙見せてるもん。まだ唸ってないだけ良いけど牙見せてる時点で結構アウトだよ。
調べて知ったけど、狐は威嚇の時に耳を伏せて大きく口を開ける。牙を見せるかのようにグアッとね。どんだけ大きく口を開けれるか勝負してるって可能性もあるけど、多分アレ牙がメインじゃないかな。多分だけど。そして威嚇の時狐は鳴く。検索したら狐の威嚇の鳴き声出てきたから知ってる。犬みたいな鳴き声だった。その声を聞いたコンはビックリしてた。
スマホからする狐の威嚇声に驚いてるコンを思い出して現実逃避していると、アレックスがスマートな動きで私の左手を両手で握った。ねえ、アレックス私の後ろ見えてる?今殺気まで新入荷したのが私にもわかったんだけど、アレックスわかってる?
「ミーヤ」
わかってるのかわかってないのかがよくわからないが、アレックスは私の左手に頬擦りをして私を見つめた。瞳がうるうるしているせいで乙女かな?と一瞬錯覚した。私の左手を両手で握っているからお願い♡ポーズに見えたせいもあるかもしれない。お願い♡ポーズで伝わる?あの、昔やってたウサギずきんのやつなんだけど。
昔あの太陽でカーニバルって感じのランドに行きたいってお姉ちゃんにお願いしたけど、そんな遠征資金は無いって却下された記憶を思い出す。ええ、現実逃避ですよ。
私の左手を握り締めながら、アレックスは頬を染めて言う。
「ダンジョン、一緒に行こう?」
あー駄目だ、後ろの三人の殺気が本気になった。イースヘルプ。イース何でさっきからアレックスをじっと見てるの。何を考えてるの。位置的にイースも私の背後だから視覚的には見えてないけど、サーチ魔法でサーチしてるから何してるかわかるんだからね。そりゃマップみたいに平面的なサーチだとわかんないけど、後ろの三人の動きが気になったからちょっとタイプを変えてみたのである。3Dみたいな立体タイプだ。だからイースがアレックスを見てるのもわかる。わかるから助けて。駄目だイース口の動きだけで「頑張ってね♡」って言った。立体的だから口の動きまで完璧にわかるのが仇になった。お前パニックになってるだろって?こんな状況でパニックになったら従魔のブレーキになれないでしょうが!めちゃくちゃ頑張ってテンパりさんを押し留めてるんだよ!わかって!パニックさんは心の奥底に監禁中なんです!捜索願を出さないでください!
「駄目?」
ワー、首を傾げる仕草があざとーい。
後ろに居るハニー達が「駄目です」「駄目」「駄目に決まってんだろうが」って小声で言ったのが聞こえた。蚊の鳴くようなレベルの小声だったからまだ理性が働いてる……と信じたい。というか何故私がこんなに色々と考えねばならんのじゃ。
……よし、考えるのを止めよう。ポンコツが頭使う時点で既にアウトなんだよね。
「アレックスと一緒にダンジョンに潜る事によって発生するメリットとデメリットは?」
「メリットはダンジョンの管理してるの俺の家だから入場料が無料になる。あと人手が増えるっていうのと、………ミーヤと俺とのラブイベント♡」
おい最後。それお前にとってのメリットだろ。そうツッコもうとしたが、それより前に背後から舌打ちと低い声が聞こえた。
「…ラストはデメリットの一つじゃないですか」
よーしハニー落ち着いて深呼吸してマジでお願いだから。あーやっぱり朝宿屋に居る内に従魔用テレパシーを試しておけば良かった。ダンジョンで試せば良いかなーって思ったのが駄目だった。もし使えたらハニーにステイって指示が出せるのに。
ああもう、気を使う。
「…デメリットは?」
「俺がミーヤと居る事でミーヤの従魔が不機嫌になる。それとダンジョンから出る時にダンジョンの近くでアイザックが待ち伏せしてたら一緒に怒られちゃうかも。あとはミーヤの従魔達が死ぬ程、というか俺を殺そうってレベルで威嚇してきてるから連携は無理じゃないかなって感じ?」
「自覚あるんかい!」
ならそれらしい反応を見せろ!私だけ冷や汗だらっだらじゃないか!
もうアレックスの誘いを断った方が楽な気がしてきたし、そこまで言ってくれたのに悪いけど、と前置きして断ろうとした瞬間、
「良いと思うわよぉ、同行しても」
イースがそう言った。
「え、あ、良いの?」
思わず振り向いてイースにそう確認すると、イースはにっこり微笑んで頷く。
「戦力としては問題無いものぉ。ミーヤに惚れてるのは本当みたいだけどぉ、だからって無理強いしようとは考えてないみたいだしねぇ」
「勿論!俺はそんな真似はしないよ!愛し合ってないと意味が無いからね!」
イースの言葉に、アレックスは自信満々で胸を張った。え、てか惚れてるのは事実なの?あれって戯れとか冗談とかじゃなくてガチだったの?ガチでマジだったの?そういえばミサンガ光ってないわ。うっわ、マジでか……。
衝撃の事実に私が言葉を失っていると、いまだに不機嫌な三人が待ったを唱えた。
「……戦力、充分……ある…」
「そうです!それに嫁の前で旦那を寝取ろうとする間男と同行なんて嫌です!」
「大体ダンジョンを管理してる家って事は、ダンジョンで魔物が大量発生してる責任は領主であるそいつの責任だろ。昨日のはミーヤとの出会いを演出する為にしたのかもしれねえじゃんか」
「いやそれは流石に無いでしょ」
いかんいかん、コンの発言についツッコミを。
いやでも、流石に出会いの演出にあんな仕掛けはしないと思うんだよね。ガチで死に掛けだったし。しかもその日暮らしのメンバーも巻き込んで?無い無い。
もし魔物の大量発生を人為的に引き起こして私との出会いを演出しようとするなら私だけを隔離して魔物の群れに襲わせて、疲労が溜まりだした辺りで俺登場!すると思う。私だったらそうする。
「あー、えっと、残念ながらダンジョンの魔物大量発生には関わってないんだよね、俺」
困ったようにへにゃりと眉をハの字にしてアレックスがそう言う。
が、ミサンガが反応した。白色に光っている。つまり嘘だ。
……ん?でもここでアレックスが魔物大量発生の黒幕だったら害意があるって事で赤も混じってピンク色に光るはずじゃない?嘘だけ?害意無し?どういうこっちゃと内心で首を傾げる。
「ダンジョンのシステムを管理してる部屋にはここ数年入ってないんだ。領主の仕事は殆どアイザックに任せてるから」
あ、ミサンガの光が消えた。という事はダンジョンのシステム部屋に入ってないってのは本当って事だ。……んんん?より一層わからなくなった。私推理小説では先にネタバレレビューを読んである程度の展開を知ってから読むタイプなんだよね。一からドキワクで読むと体力持たなかったから。
「ただアイザックも原因不明だって言ってたから、口実が出来たと思いこうして俺は仕事を放置してダンジョンに潜っているのです」
「そのせいで命の危険に陥ってる件に関しては」
「領民見捨てるわけにはいかないじゃん?」
そう言いパチンとウィンク。台詞と合わさって格好良いけど、ミサンガがまた気になる反応をした。アイザックさんも原因不明ってところで白く光り、口実が出来たと思いってところでは光りが消えた。……アイザックさん、関係してるの?いや、でも昨日見た限りでは完全に仕事に殺されそうな社畜でしかなかったよね。
単純に他に原因があって、どういう原因もわかってるけど部外者には教えられないからその辺は誤魔化しって事なんだろうか。最初にアレックスが関わってないって言った時にミサンガが光ったのはただ単に、アレックスがダンジョン関係の家の生まれだから関わりがゼロってわけでは無いよって事である可能性もある。
うーむ、推理小説だったらネタバレを読むんだけどね。現実はカンニング出来ないのが辛い。
「それにぃ」
困ったような眉、しかしつり上がるのを隠せていない口元。そんな表情で、イースは言う。
「依頼クリアの為に、宝箱を開ける人がいた方が良いと思うのよねぇ」
「あっ………」
盲点だったぁぁああああああ!!
そうだよそうだよそうだったじゃん!私が開けた宝箱全部レアアイテムだったじゃん!今日は確率が正常かもって期待はしていたいけど、二者択一の勝者ってスキルがある以上多分確実にレアアイテムが出る。そうなると短剣はどうにかなっても回復薬がゲット出来ない!ぐっあ何てトラップ!トラップってか自分で自分の首絞めてただけだけどね!ああもう私の馬鹿!回復薬じゃなくて別の依頼受けとけば良かったのに!
私が開けるんじゃなくて、イースとかハニーとか他の人に開けてもらえば良いんじゃね?と考える人もいるかもしれない。けれど、彼女達は従魔なのである。私の従魔。つまり私の影響を受ける。どういう事かと言えば、私以外が開けても私の従魔って時点でレアアイテムしか出ない可能性があるって事だ。何故レアアイテムが出続ける事をこんなに悲しまねばならんのじゃい。
しかし、アレックスは違う。私の従魔じゃないし、別にパーティを組むってわけでもない。単なる同行者だ。つまり私の二者択一の勝者効果が及ばない存在である可能性がはちゃめちゃに高い。
「……確かに、そうですね」
「…ん」
「ミーヤの場合、懸念が現実になる事も多いしな…」
あれだけ警戒してた三人が警戒を解いて渋い顔で納得してるよ!?そんなに!?マジで殺すんじゃないかって心配になるくらいの殺気が引っ込むレベル!?同行を認めちゃうレベル!?
……この反応見てると得なのか損なのかわからんスキルだよね。
「では、まあ、良くは無いですが依頼もありますし。同行を許可するかはミーヤ様に任せます」
「……ラミィ、も、任せる…」
「他に同じく。仕方ねえしな」
おおう、めちゃくちゃ殺伐とした雰囲気だったのが見る影も無く雲散霧消。仕方ないなーって空気ではあるけど受け入れモードになったっぽい。……ある意味、アレックスを同行させるかっていう二者択一が発生していたんだろうか。
「でぇ、ミーヤはアレックスの同行を許可するのぉ?しないのぉ?」
「え?」
あ、そっか私が決めるのか。さっきまでの空気と違い過ぎてちょっと高低差による耳キーンが起こってたよ。んー、でもこれ選択肢無くない?まあ損はしなさそうだし良いか。
「じゃあ、同行お願いしても良いかな?アレックス」
「もっちろんだよミーヤ!」
「へっぶ防具が硬い!」
お願いした瞬間ハグされ、勢いが強すぎたせいでアレックスの装備している防具と私が衝突事故を起こした。あービックリした、防具って硬いんだね。いや硬いのはわかってるんだけどちょっとビックリ。コンは胸当てみたいな防具付けてるんだけど、皮製か何からしくて硬くは無いんだよね。だからビックリした。イースとハニーとラミィは防具着けてないし。
防具って本当に硬いんだなーと謎の感動をしていると、ハニー達の手によってアレックスがべりっと剥がされる。そして私を守るかのようにアレックスと私の間に三人が立ち塞がった。
「言っておきますが、同行を許可したからと言ってミーヤ様にくっ付くのは許可しません」
「…これ、従魔……の、特権…!」
「隣に立つのは良い。前に立つのも良い。ただし腕を組んだりとかハグしたりとかは駄目だ。それをして良いのはミーヤの嫁である俺達だけだからな」
「へーえ?…恋心って壁が高ければ高い程燃え上がるって知ってる?」
もうなんか、お前ら仲良いな。
既に息が合ってるよ全員。イースはどうしたって?イースなら後ろで皆のやり取りにウケてるよ。ギリギリ耐えてるのか咳払いで誤魔化してるけどね。
しかしきゃんきゃんと言い合ってるこの状況じゃ先に進めないし、と私は両手を叩いて注目を集める。
「はい、それじゃあダンジョン探索開始するから言い合いは無しね!それで魔物に襲われたら目も当てられないし、もしどうしても喧嘩するしか無い!ってなったらジャンケンで決めなさい。勝った方の意見を通すって事で。反対意見は?」
簡潔に纏めてそう言うと、
「無いわねぇ…っふふ」
「ありません」
「…無い」
「ねえな」
「無いよ」
全員がそう返した。よし、無いなら良いんだよ無いなら。ジャンケンこそが正義だ。
お姉ちゃんはカップリング戦争が友人と起きた時、必ずジャンケンで勝った方の推しカプをメイン扱いにするってルール作ってたからね。勝った人がドマイナーカプを推していたとしても、その人が勝者になった時点でお姉ちゃんや同じく負けた人達はそのカプをメイン扱いする決まりだった。
「私は何故このカプを…?このカプがメイン枠だから…。原作で会話した事すら無いし、そもそも原作キャラとスピンオフキャラだから接点皆無だけど…これがメインだから…」ってお姉ちゃんが自分に言い聞かせてたのを思い出す。そんな事を言いつつもお姉ちゃんはいつも最終的には本気で推すようになってたんだよね。毎回どれくらいの期間でガチ嵌まりするかなって思ってた。
うん、まあ、つまりジャンケンが最強って事だよねって事だ。とにかくこれで問題は無くなったんだし、さっさとダンジョンに入って依頼を達成……と考えたところで、ふと思い出す。
「そういえばアレックスって本名アレキサンダー・シルバ・ローゼンベルクだったよね?アレキサンダー様って呼んだ方が良い?」
「今それ言う?」
ごもっともだけど今思い出したんだから仕方ない。
「俺はただの冒険者であるアレックスだから、普通にそのままアレックスって呼んで。口調もそのままの方が嬉しいな」
そう言ってアレックスはふわりと微笑んだ。イケメンは何しても様になるから良いよね。
「了解。頼りにしてるよ、アレックス」
「!うん!」
……主に、宝箱に関して。




