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異世界で魔物使いやってます  作者:
異世界に来ました
69/276

おやすみなさい



「よし、お風呂済ませた。ご飯も食べた。従魔ケアもクリア」



 今日中に済ませないと駄目なやつはこれで全部終わったわけだ。つまり、



「やっと寝れる……!」



 ようやくベッドに全身を預けられるという事!



「思い返せば、イルザーミラに到着してすぐに下見行こうぜ!って事でダンジョンに行ったんだよね……」



 私もダンジョンに興味があったのも手伝って宿屋すら取らずに直行したからね。まさかあんな大変な事が連続するとは思わなかったけど。

 そう思って呟くと、ベッドの上ではあるが足元側で丸まっていたコンが耳を伏せ、落ち込んだように下を見つめながら口を開く。



「……悪かった」


「え、いやいや何でコンが謝るの?」



 今の流れにコンが謝罪する理由あった?私がテンション上がって直行した結果イベント盛り沢山だったよねって話だったよね?

 そう思って聞くと、コンはしょんぼりとしたまま言う。



「………俺がはしゃいで急かしたりしたから…」



 ああ、成る程。コンはそういう思考だったわけね。コンがダンジョンに行きたがったからダンジョンに直行し、結果色々巻き込まれて私が疲労困憊になったって考えになっちゃってるのか。このネガティブ思考もうちょっと上向きになれば良いんだけどね。あ、いや性格の話なら前向きに、かな?



「コン」



 既にベッドの中で寝る気満々だったけど、一旦起きてコンに近付いて頭を撫でる。耳も一緒に撫でるようにするのがお気に入りなのは知っているのだよ。右手でうりうりと頭部全体を撫でつつ、左手で耳の付け根を軽く掻く。するとあら不思議、力が入っていたコンの体からゆっくりと力が抜けリラックス状態に、ってね。



「ダンジョン行ったのは私の選択。確かにコンが行きたいって言ったのも理由の一つだけど、私がダンジョンに行こうとしたのは別の理由だよ」


「……別の理由?」


「そ」



 言いながら、コンのマズル部分を優しくなぞるように撫でる。この部分は敏感だし、押さえられると牙が使えないから本人からすると急所らしいんだけど、コン曰く「主であるミーヤに牙を向く事は無いから」って事でこの位置も撫でてオッケーの許可を貰っている。最初はそんなに重要な部分撫でて大丈夫なのかって聞いたけど、コンからすると重要な部分だからこそ主である私に委ねるんだそうだ。

 よくわかんないけどあれかな?小説であるような「信頼の証として私の命に等しいこの剣を預けます」みたいな?メロスも友人の命預けて妹の結婚式にダッシュで向かったんだもんね。……メロスは何か違うな。要らん事言って死刑にされそうになるけど妹の結婚式があるんです!っつって友人を身代わりにして結婚式に出席する話だもんあれ。確かそんなんだったはず。



「私の世界にダンジョンなんて無いんだよね。ゲームの中……うーんと、作り話の中にしか無いんだよ」


「そうなのか!?」



 冒険好きなコンにとっては衝撃的な事実だったのか、全身の毛をぶわっと逆立たせて起き上がった。



「そうなんです」



 そんなコンの腕を軽くぽんぽんと叩いて落ち着けと伝えると、コンは大人しくさっきまでと同じようにベッドの上で丸くなる。



「だから、本物のダンジョンを見てみたかったってわけ。最初の方は私も好奇心マックスでイースに注意されてたでしょ?」


「確かに…」



 うん、本当にイースの言う事はもっともだったよね。最初の方だから良いけどトラップがあったらどうするの、ってね。実際今日開けた宝箱は何個かトラップが仕掛けられている物もあった。サーチのお陰でわかったしトラップ解除も出来たけど、イースの忠告が無かったらうっかり宝箱を開けて頭部の位置目掛けて飛ばされた矢に脳天ヒットされてるトコだったよ。うわ、改めて思い出すとエグいトラップだったなアレ。壁のところに穴があって、その穴を土魔法で塞いで栓をしたから良かったものの……本当にイース様様だわ。



「だから気にしなくて良いよ」



 うん、本気でコンが気にする事は無い。だって今日の私の疲労はその後だから。

 ダンジョンで開ける宝箱全てからレアアイテムが出てきただとか、何かチャラい領主様の救助だとか、謎の大量湧きしていた魔物の討伐だとか、そして最後にギルドでの色々が積み重なった結果の疲労だったから。正直ラストのギルドでめっちゃホールドされてたアレはコンも責任の一端があるような気もするけど、うん、まあ、あのくらい受け止められなきゃ複数の嫁は持てんだろうから私が慣れれば問題は無い。世の中のハーレム持ってる人の意見を聞いて参考にしたいよ。役立つかはしらんけど。

 そんな事を考えながらコンを撫でていると、納得してくれたのか尻尾が緩く左右に振られていた。あ、よしよし耳も伏せてないね。獣人ってこういう時目に見えてわかるからありがたい。



「お、俺は別に気にしてなんかねえし。ただ、その、ミーヤがダンジョン嫌になってもうダンジョン行かないってなったらどうしようとか考えてただけなんだからな!?」



 はいツンデレ入りましたー。ツンデレるって事はメンタルに余裕があるって事だから私は嬉しい。はいはい、と言って右手で撫でながら左手で静かにしてねというジェスチャー。何故なら、



「もうハニーとラミィ寝てるから、音量少な目でね」


「あ、ぅ……お、おう…」



 コンは少し慌てたようにハニー達の方を確認し、二人が寝息を立ててすやすや寝てるのを見て安心したようにほっと一息ついてから頷いた。

 ラミィはいつも、そろそろ寝ようかーって言う頃には既にすやぁ…と眠りについている。マイペースなのはラミィの良い所だけどね。ラミアは下半身が蛇だからなのか、日が落ちて少し温度が下がるのが苦手らしい。だから日が落ちたら結構さっさと寝たがるんだよね。

 ハニーは仕える身として主である私より早くは寝ない!っていつも頑張ってるけど、今日は流石にバトルで疲れたのか早めに就寝。キラービー姿ですやすやと眠っている。ハニーはキラービー姿が本当の姿だから寝る時は擬態が解けるんだよね。



「というか、コンも近くで寝れば良いのに。何でベッドの端っこ?しかも足元側」



 大部屋だし、大きい人用のベッドでもあるから幅はあるけど。でも足元側に居られるとうっかり蹴飛ばさないか心配になる。いや、うん、私チビだからその心配は無いけどさ。無いけどラミィの下半身は長いから。あと単純に心苦しいものがある。

 まあ、最初はベッドの下だったのに比べればベッドの上に居るだけでかなりの進歩だけどね。



「あ、足元じゃねえとミーヤを守れないし…」


「いや、別に大丈夫だと思うよ?」



 確かに私の両隣はハニーとラミィが守ってくれてる感じになってるけど、だからって足元守らなきゃ!とはならないって。侵入者が来てたらコンの五感で即御用だろうし。そもそも侵入しようとする奴が居たらイースがそいつの魂つまみ食いして気絶させると思う。

 そう思って言うと、コンは真っ赤になって、



「べ、別にまだミーヤの隣で寝るのが気恥ずかしいとかそんなんじゃなくてだな、俺はただ主持ち獣人として主を守れる位置に居ようと思ってるだけなんだから勘違いすんなよ…!?」



 と言った。



「……うん、ちゃんと小声で言えて偉いね」


「な、撫でられるような事言ってねえけど…!?」



 いや、うん、撫でたくなるくらい可愛い事言ってたからね?

 それにいつもならツンデレの時大声になってるのに、さっき私が注意したからかちゃんと小声で言ってた。そこに健気さが溢れてて可愛かったんです。私日本に居た時ツンデレって面倒臭いなーって思ってて範囲外だったのに、こっち来てコンに出会ってからツンデレの良さを理解しちゃったよ。これか。ツンデレ好きな人はツンデレのどこが好きなんだろうと思ってたけどこれなんだろうな。ひたすら健気なんだけど、つい本心を隠そうと突き放すような事を言っちゃう感じ。成る程、私が苦手だったのは暴力系ツンデレであって、こういう健気系ツンデレは好みだったんだね。新しい自分と出会った気分だぜ。



「あ、話終わったぁ?」



 机の上に座って本を読んでいたイースが、パタリと本を閉じてそう言った。反射的にイースの方を見ると、



「イース……何その本の山」


「ここ数年で発売されたダンジョン関係の書籍ぃ♡」



 机の上や椅子、机の周りに本の山が出来ていた。普通の本から分厚い本まで沢山あり、魔力感知で感じる魔力からその山の本全てイースが読破したのがわかった。だって置いてある本にイースの魔力が付着してるもん。魔法で速読でもしたのかな?

 にしても数年でこんなにもダンジョン関係の本が出るって凄いな…。いや、日本でも環境破壊だの何だので同じような本ばっかりが沢山出てたりしたからそんなもんか。ダンジョンに魔物が増えてるって点も本を書く人からしたら良い飯の種になりそうだもんね。



「そうなのよねぇ、売る為にそれっぽい事を書いてある本しか無かったわぁ」



 「もうちょっと役に立つ内容だったら良かったのにぃ」と溜め息混じりに呟きながら、イースは積まれている本の山を流れるような動きでアイテム袋へと収納していく。今更驚いたりはしないけど、イースが本に触れた瞬間にアイテム袋の中に本がシュートされてる動き凄い。無駄が無いし早送り映像見てるみたい。あっという間すら無く、山積みだった本達は綺麗さっぱりアイテム袋の中に消えていった。



「さぁて、と♪」



 そう言い、イースは足音すら立てない軽い動きで机から降りた。



「ミーヤ、私ちょぉっと出掛けてくるわねぇ」



 そう言うと同時、イースの全身を黒い靄が覆う。数秒して靄が晴れるとそこには見知らぬ女性が立っていた。赤っぽい茶髪を上の方で結った、露出多めの服を着た女性。

 私はイースが変身したその姿を見て、ぼんやりと(変身する姿のストック多いな)と考える。



「うん、いってらっしゃい」


「夜明けまでには帰ってくるわぁ。もし何かあったら従魔用テレパシーで連絡してねぇ」


「ぶっつけ本番で?」


「そう♪」



 「了解でーす」と返すと、初めて見る姿のイースは微笑んで投げキッスをしてから部屋を出て行った。…うん、投げキッスは見事私に当たる位置に投げてたな、アレ。

 町では毎晩の事だけど、毎日違う姿に変身するって中々に凄いよなと考える。どういう事かといえば、イースは寝ないのだ。種族的に。

 最初は私達の夢を覗いたりして暇を潰していたらしいけど、やっぱりどうしても暇になっちゃうらしい。でも淫魔にとって眠るという事はイコールで誰かの夢の中に入るという事になってしまうとか。だからなのか、適当な女性に姿を変えて夜の町に出るようになったのである。

 一応定期的に私の魂を軽く食べたりしてるんだけど、暇潰しと悪党潰しと食事と性欲発散を兼ねて夜の町で遊び歩くのが気に入ったらしい。

 まず適当な女性の姿で夜の町をうろつく。すると男が寄ってくる。少し酔っているだけの男やナンパなだけの男は断ってるって言ってた。イース曰く、「私が相手をするのは救いようの無いゴミだけよぉ♡」との事。

 意味?意味はまあ、何というか、要するに逮捕して死刑が妥当ってレベルの奴等しか食べませんって事。イースは心を読めるし魂だって読めちゃう。だから性根が腐りきった奴……例えば女を騙して暴力を振るって無理矢理犯すような奴とか、酒場で酒飲ませまくってふらふらになった女を奴隷として売るような奴とか、まあそういう奴らを見つけてはターゲットにしてるらしい。

 イースにターゲットされたが最後、もう情状酌量の余地無しってレベルのクズだからって事でイースは容赦しない。まずそのターゲットに声を掛けられるなり声を掛けるなり魅了を使うなりしてエロい事に持ち込む。そして精を搾り取り、死なない程度に魂を食べるんだとか。

 後は干からびた相手を放置して匿名で通報し、姿を靄にして窓から部屋に戻ってくる、というような感じらしい。見た目を変えてるし声も何もかも違うから、ミーヤ達が巻き込まれたりは絶対に無いから安心して良いわよぉ♡とイースは言っていた。

 一応そのターゲット達も干からびさせた後に軽く記憶操作して意識を混濁させ、何があったかを覚えていない状態にしているから絶対に足は掴めないとの事。やり方が暗殺者みたいだよね。ナチュラルに記憶操作してるし。

 まあ、結果的に淫魔であるイースの性欲発散&食事になってるし、町に居るガチでやばい悪人は減るしで問題は何一つとして無いんだけどね。良い事だらけだ。

 そんなわけで、今日も私はさらっとイースを見送るというわけである。私は嫁が食事兼趣味に出かけようとするのを禁止させて束縛するような病み旦那では無いのだよ。イースならちゃんと帰ってくるだろうっていう確信と、何があっても余裕でどうにか出来るんだろうなっていう二重の意味で大丈夫だと思ってるからね。

 今日もまたその辺で悪人が食われるんだろうなと他人事のように思いながらベッドに入る。コンは結局足元側で寝るという意思を曲げなかった。



「よいしょ、と」


「ヴ………」



 ぐっすり眠っているハニーを抱き締める。キラービー姿のハニーってぬいぐるみサイズだから抱き締めるのに丁度良いサイズなんだよね。寝る時に抱き締めるのにピッタリなサイズ感というか。



「おやすみなさい」



 そう言って瞼を閉じると、すぐに睡魔がやってきた。



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