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異世界で魔物使いやってます  作者:
異世界に来ました
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その日暮らしって中々のパーティ名だよね



「じゃあこの魔物の群れの解体はやっておくからぁ、ミーヤ達は休んでて良いわよぉ。大量の魔物を相手にして疲れたでしょう?」


「ありがと、イース。そういえばイース達来るの遅かったけど何かあった?迷った?」


「いえ、迷ってはいないのですが……」


「……途中、魔物……沢山、出た…。足止め、された……」


「成る程、この部屋だけじゃなくてフロア全体で謎の魔物湧きタイムだったと」



 以上、魔物を全て倒した後の会話である。

 そして現在、



「ありがとうなお嬢ちゃん!」


「ホレ報酬の銅貨七枚!だけどめちゃくちゃ大変だったって領主様が言ってたから銀貨一枚にグレードアップな!悪いけど今これしか手持ち無えんだ!」


「僕が気絶したせいで巻き込むことになってすみませんでした!」


「………あの、一人ずつ喋ってくださらんかね」



 戻って来た冒険者ギルドで例の冒険者のお兄さん達三人の手によって私は頭を撫で回され髪をぐしゃぐしゃにされている。

 どういう事かといえば、とりあえず魔物全部倒したしさっさと戻ろう!ってなってダンジョンから出て、冒険者ギルドに戻って来たわけなんだよね。そしたら病院か教会のどっちかで回復してもらったらしいお兄さん達がチェルシーさんと大騒ぎ状態だった。内容は、



「はあ!?アンタらあの可愛い子に全部任せて逃げて来たっての!?」


「だって!だってゾーラが!」


「頭部に打撃受けて血ぃダラッダラ流して気絶だぞ!?一刻も早くどうにかしないとってなるだろ!?」


「すみません僕のせいで!」


「だからって領主様に全部任せた上でこの町に来たばっかりの女の子にその領主様の救助を依頼するってバッカじゃない!?ああもうただでさえ今はダンジョン内で魔物が謎の大量発生してるって報告がどんどん寄せられてるってのに!」



 というような感じだった。周りの人達は、



「え、あれ何の騒ぎ?」


「またいつもみたいにチェルシーが可愛い子贔屓したとかじゃね?」


「いや、何か違うっぽいぞ」


「よっしゃウサギガール、お前の出番だ!」


「ウサギガールって何ですか!?ウサギ獣人って言ってくださいよ!あ、でもレディよりはガールの方が良いのでそこはグッジョブです」


「良いから解説!内容によっちゃ俺らの酒のネタになる!」


「そんなに楽しい話じゃないですよ。あの三人がダンジョンで大量の魔物に襲われてやばいトコを領主様が身代わりになって助けてくれたらしいんですが、どうやら数が多くて領主様でもやばそうなレベルだったっぽいです。それで逃げる途中に居た魔物使いの女の子一行に銅貨七枚で救助を依頼したとか」


「うっわ、大量発生した魔物の群れに飛び込んで人間一人救助の依頼で銅貨七枚ってアウトだろ。ブラック過ぎる。せめて銀貨四枚欲しい」


「いやいや、地下何階かによって魔物のレベルも変わるし」


「あ、地下十二階だそうです」


「うっわブラック」


「やっす。やっっっっっっす」


「ああでもアイツら、とりあえず特攻ってタイプの脳筋だからな……。いつも金欠って嘆いてたから……」


「…………あのさ、さっきから気になってたんだけど」


「ん、何?」


「ギルドの入り口にいるの、領主様とその女の子一行じゃね?」



 と、いつも通りに騒いでいた。ええそうですよギルドに到着したらそんな会話が繰り広げられてたんですよ!そして話していた冒険者達、チェルシーさんやお兄さん達も最後の人の呟きでこっち見たからね。いきなり視線集まってビビったわ。

 まず冒険者のお兄さん達三人がアレックスに駆け寄って色々と話して、チェルシーさんは泣きそうな顔で私にハグしてから今回の依頼を正式依頼、そして依頼達成として処理しておくと台風のように受付に戻って行った。おっぱいはラミィより一回り小さいかな?くらいで、人間のサイズで判断すると巨乳寄りなサイズだった。お餅みたいなモチモチ感だった。

 ちなみに周囲の冒険者の皆さんはまた色々と会話を再開していた。皆話題が尽きる事無いよね。



「……というかさ」



 私は小声でイースに問いかける。



「前に普通のパーティは一体感が薄いからおすすめ出来ないって言ってたよね?」


「言ったわねぇ」


「あの人達普通のパーティだよね?」


「普通のパーティねぇ」



 少しジットリとした目でイースを見つめる。



「……一体感、普通にあるよね?」



 イースは色っぽく微笑んで言う。



「別に従魔ハーレム計画の為に一昔前だったりそのまた一昔前のパーティ事情を話したわけじゃないのよぉ?」



 一昔とかそのまた一昔前のパーティ事情だったんかーい。



「一応聞くけど、じゃあ何で?」


「こっちの世界の人間と仲良くなってミーヤが故郷を恋しがるんじゃないかしらとかぁ、コンの自分の存在を認めて欲しがるアレコレとかぁ、色々と考えて……かしらぁ?」


「疑問系かい」



 私の発言にイースはくすくすと笑った。



「それにぃ、知られたくない事情はあるじゃなぁい?受け入れるのと言い触らさないっていうのは別の事だものぉ。フリーでいる事が出来るっていうのも事実だしねぇ」


「あー、まあ、それもあるか」



 何となく納得したようなしてないようなまあでも納得したって事にしても良いかというような気持ちで曖昧に頷いた。うん、まあ最悪な事にはならんだろうし、実際に見て違ったら違ったでその時考えれば良いさね。うっかり皆善人なんだ!って思い込んで悪い人に騙される方が怖いもんね。

 大前提として私、異世界人っていうアレがあるしなー。

 そう考えてはぁ、と溜め息を吐くと、アレックスと話し終わったらしいお兄さん達に囲まれてさっきの状況になったわけである。



「とりあえず、あの、お兄さん。銅貨七枚って約束だったんでお釣り出します。出しますんで頭かき混ぜるの一旦止めてください」


「あー?子供がそんなん気にすんなって!そりゃ俺ら金が無いパーティだが恩はきちんと返すぜ!」



 お兄さんがそう言うと、近くの冒険者から野次が飛んだ。



「よく言うぜテッド!お前俺から借りた銅貨五枚まだ返してねえ癖に!」


「うっせえな!恩は返す!金は無理だ諦めろ!」


「ハッキリ言いやがったなお前!?もう金貸さねえぞ!?」


「ごめんなさい」


「流れるような謝罪!」


「コイツ謝罪慣れしてやがる!」


「しかも頭を下げる姿勢もパーフェクトな角度…だと……!?」


「ふ、この謝罪で俺は今まで生きてきたからな!」


「おいこら頭上げて良いとは言ってねえぞ」


「自慢する時は胸張って見下しポーズを取るのが俺の家のしきたりなんだよ」


「うっわコイツ他人が口出ししちゃ駄目なタイプの理由持ち出してきやがった!」



 愉快だな本当に。ギャグアニメ見てる気分だよ。

 そう思ってお兄さんと冒険者達のやり取りを見ていたら、残っている二人のお兄さんが向こうのお兄さんを見ながら苦笑いをしていた。



「えーと…ミーヤだったよな?」


「はい、そうです」


「そっか、色々巻き込んじゃって悪かったな。俺はアスベルで、あっちの脳みそ筋肉野郎がテッド」


「あ、僕はゾーラです」



 ふむふむ、最初に私に銅貨五枚あげるから!って言ってきたお兄さんがアスベルで、向こうで冒険者達と騒いでるお兄さんがテッドで、怪我してた眼鏡のお兄さんがゾーラね。

 覚えました、と頷くと、ゾーラは微笑みながら言う。



「パーティ名は「その日暮らし」って言うんですよ」



 色々とツッコミたい!!

 その日暮らして!その日暮らしって!確かに冒険者はその日暮らしだけど!特にテッドさんその日暮らしっぽい事言ってたけど!それで良いのかパーティ名!

 どう反応したものかと困っていると、アスベルが笑って言う。



「パーティ名が憐れみを誘うって評判になって毎日一定の指名依頼があるから結構良いぞ!」



 爽やかな笑顔と完璧なサムズアップでした。

 そうか、それってその日暮らしだからって同情されてるだけな気もするけど、これも生きる知恵ってやつなんだろうか。よくわからない。

 とりあえず報酬のお釣りである銅貨三枚を渡そうとアイテムポーチに手を入れると、



「ミーヤ、本人達が報酬値上げするって言ってるんだからわざわざお釣りを渡したりしなくて良いよ」



 という声と共にアイテムポーチに伸ばしていた腕が掴まれた。アレックス、いつの間に私の横に。



「それにこういうのは男のプライドとかも関係してくるからさ、そのまま受け取ってやって」


「いや、でも」


「じゃあこう言おうかな」



 アレックスは私の腕を少し引いて距離を詰め、



「その足された銅貨三枚分は俺の価値なんだ。報酬が高い程俺の価値が高いって事。だからそのまま受け取ってくれると俺のプライドも保たれるんだよ」



 と、私の耳元で囁くと同時、



「はぁ~い、部外者がそれ以上の接触は駄目よぉ」



 というイースの声が聞こえた。次の瞬間イースの手が私の腕を掴んでいるアレックスの手に触れ、さらっと私の腕から離させた。そして言う。



「それ以上触れ続けたりするならぁ、あの子達が暴走しちゃうわよぉ」


「あの子達?」



 アレックスはハテナマークを浮かべてイースの指差す方向を見る。私も一緒にそっちの方向を見てみると、私の従魔達が殺気を滲ませた目でアレックスを見つめていた。

 ………お、おおう…私ってば愛されてる…。

 とりあえず皆の方に戻って頭撫でたりして機嫌を直させないとまずいかな、と思っていると、バタンと大きな音をさせてギルドの中に凄い勢いで入って来た人が居た。



「っは、っは……」



 膝を手で押さえて息を整えている男性は、首までのボブにしている薄紫の髪を鬱陶しそうに耳に掛けた。前髪を真ん中分けにしたその男性は少し体を休ませつつ、緑色の目だけをきょろきょろとせわしなく動かしていた。ギルドの中を探すみたいに見てたけど、何か探し物なんだろうか。

 すると、その男性を見た冒険者達がざわざわと話し始める。



「アイザック様だ」


「ああ、領主様がここに来てるからな…」


「こりゃ雷が落ちるぞ」


「確実にまた領主様が仕事放り投げてダンジョン潜ってたに銅貨二枚」


「お前それ賭けにならねえだろ。領主様が仕事放り投げて殆どの仕事を弟であり秘書であるアイザック様に任せて自分はダンジョンに潜るってのはこの町の常識なんだから」


「あの紫の髪、良いわよね。一房くれないかしら、アイザック様」


「何で?」


「対象の一部があるとおまじないが成功しやすくなるのよ」


「お前またか!良い男を見つけると毎回毎回効き目があるのかわからん怪しい黒魔術でハートを仕留めようとすんの止めろ!」


「仕留めるって何よ仕留めるって!射止めるって言いなさいよ!そりゃうっかり間違えると死んじゃう可能性はあるけど!」


「アウトじゃねえか!」


「恋に犠牲は付き物なのよ!」


「アイザック様、また緊急かつ領主様以外がやっても良い仕事を全部終わらせてから探しに来たのかな」


「そりゃそうだろ。領主様が脱走した直後は確実にダンジョンに潜ってるから、ある程度時間経過してからじゃないと町中では発見出来ないもんな」


「でも領主様がいる場所毎回違うからアイザック様も大変でしょうね。防具屋に居たと思ったらギルド、かと思ったらご飯食べに行ってたりするし、場合によってはまだダンジョンの中だったりする時もあるし」



 ああ、あの人がアレックスの母親違いの弟さんか。ダンジョン行く前も冒険者の人達がそう言ってたよね。髪色と髪型はまったく似てないけど目元がソックリだから血を感じるな。

 そんな事を考えていると、アレックスがこそこそとした動きで私の背後で身を小さくした。



「……何してんの?」


「しー!しー!俺が仕事サボってダンジョン行った上に大怪我したとかバレたら外出禁止にされちゃう!お願いミーヤちょっと匿って!」



 小声でそう言うのは別に良いし匿うのも別に嫌じゃないけど、私の目がつい白い目になってしまう。……いや、だってさ。



「領主様、隠れてるつもりなんだろうけど全然隠れてないな」


「身長20cmくらいは差がありそうだものね」


「あれだろ、あれ。あの女の子が領主様を救助したから、領主様にとって心の支えみたいな扱いになってるのかもしれない」


「ああ、この人なら安全だって刷り込み?」


「アイザック様相手じゃ無理に銅貨一枚」


「だから賭けになってねえって」



 ……何か色々と話が飛んだが、まあ身長の問題が大きいよね。

 隠れたいならコンの後ろに回れば良いのにと思うけど、コン達に殺気ぶつけられてたから私の背中に逃げるしか無かったのかと思……いやいや、アスベルとテッドとゾーラのその日暮らしパーティも近くに居たのに何故私なんだ。そっちに隠れろよ。

 ふぅ、と溜め息を吐くと、それに反応してかこっちを見たアイザックさんとバッチリ目が合ってしまった。そして私の背後に気付いた彼はビキリと青筋を立てて口元を引き攣らせた。うーむ、美形だからこそとても怖いぞ?

 あと近付いてきてるんですけど。私の背後霊に気付いたらしいアイザックさんがめっちゃ近付いてきてるんですけど。目をかっぴらいたままゆっくりと歩いて近付いてきててめっちゃ怖い。

 そして、アイザックさんは私の目の前でピタリと止まり、青筋を浮かべたままニッコリと笑い、



「お探ししましたよ?イルザーミラの領主、アレキサンダー・シルバ・ローゼンベルク様。大人しく机に向かってペン動かさねえとそろそろお前の足切り落とすぞおい」



 と、ドスの効いた低い声でそう言った。

 …………アレックスの本名、長いね。



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