異世界のドラゴン討伐のやり方に物申す!(前)
前編です。
「何で参加しないんだ?ドラゴン討伐は報酬がかなりオイシイから良い依頼だぞ?」
「うーん」
そう言われましても。
「明らかに邪魔になる気しかしないし……」
そう、下級が上級に混じるってのは下級が戦犯になるようなものだと思うんだよ。それにさっき上級がメインで戦うとか、回復アイテムが支給されるとか言ってたじゃん?もうね……そこらへんもアウトだよね。
「…ミーヤ、俺あんまりわからないんだが、邪魔になるってどういう事だ?数で押すって作戦みたいだし、人数は多ければ多い程良いって事だろ?」
コンが首を傾げながら私にそう問いかける。
…うーん。
「数が多いからこそ良く無いって気がするんだよね。まあこれはあくまで私の考えだからハッキリとは言えないんだけど…」
でもさ、この世界は現実でしょ?ゲームの中なら味方からの攻撃が当たっても無効扱いになる事があるけど、現実ではそうもいかない。その辺が心配なんだ。
そう考えてるとラミィがじぃっと私の目を見つめてきた。
「……数で押す、のに……数が多い、の、良く無い……?」
「あー…」
視線が集まってるからこの場で話すの嫌なんだけど、従魔に見つめられて目を逸らせるハートは持ってないんだよね、私。仕方ないから言うだけ言おう。あくまで素人の勝手な考えに何でこうも皆食いつくんだか。
「まず最初に、プロ冒険者と新米冒険者、中堅の冒険者とかが入り乱れてる状態なわけじゃん?」
「そうだな」
うん、とアルディスが頷いた。
「そこがもう駄目だと思う」
「何故ですか?ギルド長は下級が上級の動きを見て学ぶ為だと言ってましたよ?」
私の言葉にハニーが不思議そうにそう言うが、
「そんな上級が倒す相手であるドラゴンを目の前にして冷静に動きを観察出来る下級が居たらそんなの下級じゃないでしょ。普通の下級ならとんでもない化け物を目の前にしたら頭真っ白になると思うんだよね」
そして頭が真っ白になった人間ってのは危険だ。
「そうなると頭真っ白になった下級冒険者はテンパって逃げ出すと思う。変に暴れたり周りに居る人を攻撃するよりは生き残る確率の高い逃亡を選択するだろうから。でもそうなるとドラゴンの視線がそっちに向かうと思うんだよね」
統一性の無い動きってのは目立つから。つまりターゲットされるって事。
「逃げる方向が皆同じなら上級冒険者も守るくらい出来るかもしれないけど、そもそも下級冒険者を上級冒険者が守らないといけないってのがおかしいよね。上級冒険者達がメインで戦うのに戦力にならない大勢の人を守ったりしながら戦わないといけないんだから」
ドラゴンとのバトルにだけ集中させてやって欲しい。もし私が上級冒険者だったらキレるぞ。
「てか頭真っ白状態で逃げてる場合、同じ方向に逃げれるとも思えない。周りの動きを見ずにドラゴンの方に飛び出していったらもうアウト。上級冒険者だってドラゴンと他の人で手一杯なのに細かく散らばった人達の面倒まで見るなんてのは無理だろうしさ。もう食われるしか無いよね」
ドラゴンからしたらよっしゃ何かおやつの差し入れが向こうから来た!って感じだと思う。
「その場合、考えようによってはその人は囮役をしてみせたって考える事も出来るよ?でもメインで戦ってる上級冒険者の人達からすると攻撃しやすい立ち位置や場所があると思うんだよね。そう考えると多分自分達で囮役もこなして強い一撃を叩き込みやすい場所に誘い込みたいって考えてるはず。場合によっては無駄に命が散って不利になるだけだ」
しかもこの場合、最悪な事も想定出来る。
「もし本当にそうなったら、苦情を言われるのは上級冒険者側だよね」
「何故ですか?」
ハニーの問いに、私は答える。
「下級冒険者は皆上級冒険者に守ってもらえると思ってるから。下級の誰かが死んだら、上級冒険者はその人を守りきれなかったという事実を背負う事になっちゃう。下級冒険者が自分勝手な行動を取って自殺同然で死んだとしても、戦場に行ってない身内の人からしたら上級冒険者が守れなかったっていう結果しかわからないしね」
その辺が面倒だよね。
通行人が前を見ずに飛び出して、車の運転手が急ブレーキ掛けて回避しようとしても回避し切れず轢き殺してしまったような感じだ。その場合人殺しにさせられてしまった運転手はとんでもなく被害者だけど、でも人を殺したという事実が付き纏うせいで悪人になってしまう。被害者の身内からしたら加害者でしか無いわけだしね。
「というか他にも色々と問題が山積み過ぎるんだよね、このシステム」
ハァ、と私は溜め息を吐いた。
下級冒険者は実力が足りないから下級なんであって、いきなりプロ用の狩場に行ったりして役に立てるはずが無いじゃんね。ちゃんと順序を踏んで強くならないと駄目でしょうよ。筋トレだってゆっくり慣れしていってレベルを上げていかないと体壊すでしょ?そういう事だ。
「……確かに」
「冷静に考えてみると…そうだな」
「やばい。反論が一つも思い浮かばない」
「完全に私達プロ冒険者のお荷物って事じゃない…でも言い返せない」
「事実だもんな」
「お前ら、前にもドラゴン討伐行った事あったよな?そん時頭真っ白になったか?」
「ふ、聞いて驚け。何一つとして覚えてない」
「ドラゴンと目が合った瞬間から記憶が消えた」
「気付いたら教会のベッドで寝かされてた」
「お前ら揃いも揃って足手まトリオか」
「教会?」
「ああ、病院とかギルドとかに寝かせるスペースが足りない時は教会に場所を提供してもらうんだ」
「つまりそんだけ駄目になった奴等が居たって事か」
「そういやプロ冒険者だけなら避けるだけで済むドラゴンのブレスが俺達の方に向けられてたからって俺達を守ってくれてた魔法使いがめっちゃ凄い大技の魔法使って相殺してたような…」
「アンタそれ確実に味方のMPすり減らしてない?」
「プロ冒険者の敵は俺達だった…?」
聞こえる冒険者達の声にツッコミたい。お前ら心当たりあるんかーい。
私はただもしドラゴンとバトルする事になったら…って考えただけなんだよ。そしたら事実と合ってるっぽくて驚きだよ。てか誰もその辺考えた事無かったの?
「…なあミーヤ。他にはどんな問題があるんだ?」
「え、いや私のはただの個人の感想と考えなんで……。実際の人物、団体、名称とは一切関係がありません」
保険大事。
「個人の考えで構わない。ミーヤは俺達とは違う視点みたいだしな……ちょっと、他の問題に関しても聞いておきたいんだ」
…うーむ、アルディスには酒代とか色々恩があるしな。というか根本的にコンの幼少期を支えたって恩もあるのか。……こうも真面目に聞かれると答えるしか無いな、これ。
さっきから視線集まりっぱなしで居心地が悪いけど仕方ない。あんまり言いたくないけど、という姿勢は崩さんがな!変に敵を作りたくないんだよ私は!あくまで私個人の意見ですからね!そこらへん理解してね!
「他の問題に関してだけどさ、下級冒険者は上級冒険者の後ろに下がった状態で魔法を撃ったりするんだよね?」
私の問いにアルディスは頷いた。
「ああ。場合によってはプロ冒険者の指示に従って全員の魔力を合わせて大技魔法を繰り出す事もある。でも基本は普通の魔法を撃ってドラゴンの視線を逸らしたり、ちょっと意識を逸らしたりするくらいだな」
ふむふむ、猫に猫じゃらし使うみたいな?
「それもやっぱ良く無いよね」
「……?何処、が…?」
そのやり方の危険性がわかってないらしいラミィの頭を撫でながら私は言う。
「それ、上級冒険者が先陣を切ってドラゴンと戦ってる時にやるやつでしょ?多分上級冒険者は剣とか持ってドラゴンと近距離で戦ってるんだよね?」
「ああ」
「だから良く無いんだよ。その場限りの大勢パーティなのも合わさって特に良く無いやり方だと私は思う」
何が良く無いやり方なのかまでは明言しない。出来れば私が何も言わないままで理解してくれるとありがたいしね。私は何も明言してませんよスタイルで責任を取らずに済むルート!
「あれ、どういう意味だ?」
「わかるわけないだろ。俺らとりあえず力で押せばいける派なんだから」
「魔法使い、お前わかるか?」
「いえまったく。確かに魔法は人によってアレンジされたものを使用している場合もありますし、他の人と合わせ技を放つ時なんかはある程度癖を理解してないと成功しなかったりはしますが」
「そういや剣に魔法掛けてっつった時も断ったよな、お前」
「貴方の動きの癖を理解していないと適した魔法を掛けられないんですよ。魔力の相性もありますし」
「でもプロ冒険者が戦ってるトコに魔法が来たら追い風って感じで勝利確定って気がするけどな」
「プロ冒険者が作った傷に魔法の追撃入ったら相当効くだろうしな」
「それに数で押すんだからその場限りの大勢パーティになるのは仕方ない事よね?」
「ドラゴンが出る場所によって居る冒険者も変わるもんね。毎回その場限りだよ」
あー、駄目だ。冒険者脳筋ばっかりか。いやむしろ脳筋なら気付いて欲しかった。考える事を放棄しないでくれ。考える事を放棄した瞬間から老化が始まるって誰かが言ってたよ。誰だっけ。近所の幼稚園児だっけ。
私は思わず溜め息を吐きながら、言わないままで居るのを諦めて答えを言う。
「魔法を放つ下級冒険者はプロ冒険者の癖を知らないから、この人は避ける時こう動くから当たったりしないように違う方向に魔法を放とう!とかが出来ないじゃん。プロ冒険者も同じく下級冒険者の癖を知らないから、撃つ時に避ける方向を考えてくれてるかどうかすらわからない」
そもそも誰が撃ったのかすらわからないだろうし。
しかも、
「下級冒険者を守りながらも上級冒険者の動きを見せるようにするなら、確実にプロ冒険者はドラゴンと対峙しながらその背を下級冒険者に見せてる状態って事でしょ?つまりプロ冒険者の背後から下級冒険者が魔法を放つって事になる。でもチームワームはゼロかそれ以下の可能性が高い」
つまり、
「プロ冒険者は下級冒険者からの魔法に当たらないよう気をつけながら戦う必要がある。それっておかしいよね?仲間が居るはずの背後をずっと気にしながら強敵であるドラゴンと戦わないといけないなんて。でも気をつけて無いと不意打ちで味方の攻撃が背中に当たるって事件が起こりかねないのも事実だし」
こうやって考えると本気で上級冒険者が損をしているようにしか思えない。前門の虎、後門の狼とは言うけれど、この場合は前門のドラゴン、後門の足手纏いって感じだ。私は後門の足手纏い側にしかなれんけどね!こっちゃチート持ちでも何でも無いただの女子高校生ですどうぞよろしく!
「な、成る程…!」
「確かにそうだな、俺らだって新人の魔法使いが後ろから魔法撃ってきたら怒るもん。お前うっかりで俺の髪を焼け野原にする気か!?って」
「あの時の事は忘れてください。本当すいませんでした」
「おう、マジで頭頂部が可哀想な事になったかと思ったからな?」
「ああ、あの事件な……。良かったよなお前の毛根が頑丈で。すぐ復活したし」
「復活するまで家の中でも帽子が手放せなかった俺の気持ちわかる?」
「ざまぁ」
「お前は俺に何の恨みがあるってんだこんちくしょう」
「でも確かにドラゴンと戦ってる時にドラゴンにだけ集中出来ないって危険だよな」
「俺達は知らず知らずの内に「王の剣」達を命の危機に追いやっていたというのか…!」
「お前いっつも右目押さえてるけど何なの?」
おい最後。厨二病ってこっちの世界にもあるんかい。他にもツッコミたい会話は聞こえたけどファンタジー世界にも存在する厨二病に全部持ってかれたわ。
「あとアイテムの支給ってのがあるんだよね?」
アルディスにそう確認すると、アルディスは頷く。
「ある。基本的にHPやMP回復のアイテムが多いな。それのお陰で変な方向に逃げた奴をギリギリ死なせずにすんだりするんだ。……まあ、毎回被害甚大だから山盛りの回復アイテムを持っていっても必ず使い切るんだけどな」
その言葉に、冒険者達もざわざわと話し出した。
「回復アイテムは凄いよな。いつも一人何個までって持たされるけど、全部国王からの支給品だろ?」
「あれ自分で揃えたら金掛かるよな」
「アイテムがあるからこそ、俺らもドラゴン相手に戦うぞって気分になれるわけだし」
「でも俺ら完全に足手纏いだったという新事実」
「悲しい」
「現実って残酷」
国王、国民を甘やかし過ぎじゃないっすかね。
「それもアウトじゃんか……」
「アイテムは大事だろ?」
本気でわかっていないらしいアルディスに、私は言う。勿論あくまで個人の意見でしかないけどさ。
「そのアイテムを下級冒険者が使うのが問題なんだよ。アイテムって事は数に限りがあるでしょ?でも下級冒険者が多ければ多い程アイテムの消費は増すと思う」
支給品であるのも手伝って使うの惜しまないだろうし。
「でもそれってさ、回復出来るからこの回数だけ無茶をしても良い!って考えになると思うんだよね。それで下手な特攻して死に掛けて上級冒険者の邪魔にもなったらもうアウトでしょ」
統率を乱して、アイテムを無駄に消費して、上級冒険者の作戦を邪魔して、その他諸々本気でアウトだ。一発でレッドカードによる退場扱いだと思う。
「第一下級冒険者はまず怪我をしないように立ち回るのが大事だと思うんだよね。強敵に遭遇した時に一番重要なのはその場を切り抜けて生きて帰ってその情報を持ち帰る事なんだし」
目撃者が生きて情報を持ち帰る事で初めて脅威が近くに居るという事実を知る事が出来るわけだしね。目撃者が報告する前に死んじゃったらその情報が届く事は無い。つまり対策とかに時間を使えないわけだ。最悪町まで脅威が到達してからそんな存在が居たって事実を知る事になっちゃうよ。そうなったらもうジ・エンドだ。
それと、
「まず一番アイテムを使うべきなのは前線で戦ってる上級冒険者でしょ?控えの下級冒険者が使い切ってどうするのさ。一番怪我しやすい位置で命を掛けて、命を背負って戦ってる上級冒険者こそが使うべきなのに、何で皆アイテムを使い切った上で怪我人続出してるのかがわからない」
そう言うと、向こうで聞き耳を立てている冒険者達の中の何人かが膝を折って顔を覆った。
「正論!」
「確かに俺ら控えだもんな!プロ冒険者がアイテム使い切った時に渡す役割こそが俺らに与えられていた役割だったのか!?」
「しかしそれも知らずにガバガバアイテム使ってた自分が恥ずかしい!」
「正論は時に凶器だ!」
「俺達が無駄な動きをしなければ良かったという可能性があったなんてうっ頭が!」
「その可能性に一切気付かず、まだ小さいお嬢ちゃんに指摘されて始めて気付く俺達の愚かさよ」
「もう今日は酒飲みましょ。飲んで忘れましょう」
「いや忘れたらまた二の舞だろ」
冒険者の人達元気だね。反応が。
私の言葉を聞いたアルディスは何とも言えないというような表情で浅く何度も頷いていた。
「確かに一番危険に近いのはプロ冒険者なのに、そうじゃない俺らがアイテム消費激しいってただのアホでしか無いな…」
「いやあの、これあくまで私個人の意見だからね?あとレベル差でHPも耐久度も防御レベルも違うって見方もあるからね?」
そう素直に受け取られても困る。
「でも、そうか。そんなにもこの依頼には問題があったんだな…」
アルディスは深い深い溜め息を吐きながらそう言うが、
「あ、いやまだ問題はあるんだけど」
まだ終わってないです。




