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異世界で魔物使いやってます  作者:
異世界に来ました
49/276

宴だ!



 呼びに来てくれたおかみさんにお礼を言って下に降りると、既にアルディスはテーブルに着いていた。しかも料理もしっかりテーブルの上に準備済み。



「おっ!待ってたぜミーヤ!」



 先に宿屋に居たのはこっちなんだけどという言葉を飲み込み、アルディスと同じテーブルに着く。私が座るとイース達もテーブルに着いた。

 人前では私がリーダーであるっていう事を示す為に従魔の皆は私の後に続くように動いた方が良いってイースが言うからそうしてるけど、一歩下がられるよりも隣に居て欲しいから人里がちょっと苦手になりそうだ。



「こんばんは、アルディス。この料理どしたの?」


「言ったろ?コンの名付けを祝って宴だってな!魔物を討伐ついでに美味い魔物たっくさん仕留めて持ち込んだんだ。あ、ミーヤは酒飲める歳か?この宿屋酒は有料だけど、今日は宴だから出来れば全員で飲もうと思ってたんだが…」



 首を傾げながらのアルディスの質問に、そういえば年齢教えてなかったなと考える。私の見た目ってそんなに幼いんだろうか。日本なら未成年だから合ってるっちゃ合ってるけどね。

 酒は飲んでみた結果割と大丈夫だったし、イースも居るから酔い潰れても多分大丈夫じゃないかな。ところでアルディスの隣に座ったコンが必死の形相をしながら腕で×印を作っているが何だろうアレ。コンもお酒飲めるよね?

 ………あ、酒飲める奴等ばっかりだから出費を気にして、かな?でもまあ私がこっち来てから自分で稼いだ分もあるし……大丈夫でしょ。



「うん、17歳だから飲めるよ。すぐに酔い潰れもしないと……良いなと思う」


「願望かよ」



 私の言葉がツボに入ったのかアルディスはケラケラと笑い、他のテーブルのお客さんに食事を運ぶおかみさんに酒を頼んだ。



「とりあえず最初はビールだな!ミーヤは好きな酒あるか?ここは結構酒の種類が豊富でさ、現地限定の酒とかじゃなけりゃ置いてあるから好きなの頼めよ!」


「いや、私まだ一回しかお酒飲んだ事無いから…」



 メニューを見せられてもどんな酒なのかわかんないしね。文字は読めても意味がわからん。初心者向けのお酒下さい。出来れば甘いやつ。

 するとその考えを読んだのか、イースがくすくすと笑いながら私の手の中にあるメニューをひょいっと取ってパラパラと捲る。



「そうねぇ…とりあえずはビールを飲んでから頼みましょうかぁ。ミーヤの分のお酒は私が注文して良いかしらぁ?」



 ウィンクしながらそう聞くイースに、私が聞くっていう手順を省いてくれてる気遣いが凄いなと他人事のように思う。いや、めちゃくちゃありがたいなって思うよ?思うけどこうさらっとフォロー入れられるとうっかりスルーしそうになるよね。

 イースなら私の味の好みもわかってるだろうしと安心しながら頷く。



「うん、お願いする。ありがとねイース」


「どういたしましてぇ♡」



 お礼を言うと、イースに頭をわしゃわしゃと撫でられた。少し頭をイースの方に寄せられたから頬に胸当たってるんですけど。相変わらずの反発力強めのおっぱいだ。



「何だあそこのテーブル…楽園か?」


「あの美女と女の子の間に挟まれたい」


「お前何もわかってねえな」


「あの二人の間にテメェが入るなんざ許されるわけねえだろ滅されろ」


「わかるか?綺麗な花と花の間にハエが入ったらそれだけで台無しになるだろ?わかるか?花の美しさは損なわれねえがハエが駄目なんだよ。わかるよな?」


「お前ら酷くね!?」


「あの狐獣人必死にアルディスが頼もうとしてる酒類却下してるな……是非とも頑張って欲しい」


「アルディスは酒飲むとな……うん、普段は良い奴なんだが」


「あっはっは!あんた前に大乱闘になったもんね!」


「うっせぇお前がもっとガード固けりゃ乱闘になんざならなかったつーの!」



 おい周り騒がしいな。そんなにこのテーブルは目立つのか?あ、うん、目立つね。私と獣人二人はともかく、とんでもない美女のイースとミステリアスな雰囲気漂わせたラミィと可愛らしいハニーだ。そりゃ目立つわ。冒険者の人結構露出少ないのもあって、露出高めなイースとラミィは凄い格好に見えるだろうな。

 ………待って最後の方。アルディス酒癖悪いの?ふとアルディスとコンの方に視線を向けると、



「アル、お前は酒飲むな」


「何だよ、心配してくれてんのか?」


「……いや、これに関しては心配とかそういうのじゃねえから」


「真顔止めろよ。ちゃんとセーブくらいするって。度数低めの酒にするし」


「お前が今指差してるの度数高めの酒だろうが」


「大丈夫だ、この宿屋の酒の中では度数が低い」



 という会話をしていた。心配しかない。

 ツンデレのコンが心配してるのか?って言われてツンデレする事なく真顔で対応してるという事実がやばさを物語っている気しかしない。

 先に酔うとどうなるのか聞いておこうかなと思って口を開いた瞬間、宿屋の主人が大きな音を立てて私達のテーブルに酒を置いた。



「おっと、すまんすまん!酒が重くてな!」



 テーブルの上に乗せられた料理の皿達が不満を言うようにガチャガチャと音を鳴らしたからか、宿屋の主人は嫌味のないカラッとした笑顔でそう謝った。ちなみにこの主人、ワイルド系のイケおじである。

 するとその音や謝罪が聞こえたのか、美味い飯作るぞこの人はという確信を持てるビジュアルのおかみさんが端っこのテーブルを拭きながら大声で叱咤する。



「アンタ鍛えるのサボってるね!?そんなんでデカイ料理運べると思ってんのかい!?」


「お前が掃除しろって言うから掃除してたら鈍ったんだよ!」


「掃除しながら鍛えな!酒落としてグラスが割れたらどうすんだい!」


「落として俺が怪我したらっつう心配は!?」


「そんな柔な旦那を持った覚えは無いね!!」



 そのやり取りに、周りの宿泊客やご飯を食べに来たお客さん達から笑いが起こった。どうも日常茶飯事なやり取りらしい。仲の良いご夫婦だな。

 宿屋の主人はすぐに厨房に戻って行き、すぐにまた厨房からあちこちに酒を運んでいる。おかみさんもテキパキ働いてるし、この宿屋人気の宿屋なんだろうか。良さげな宿屋に泊まれてラッキーだな。

 そう思っていると、アルディスがビールジョッキを持って立ち上がった。



「よーし!全員聞け!!」



 大声でそう叫び、アルディスは話し出す。



「今日俺はひっさびさに幼馴染に再会した!知ってる奴は知ってるだろうが名無しの狐獣人だ!」



 宿屋全体に響き渡るような声でそう言うアルディスの言葉に、何人かが反応した。



「ああ、よく心配だって話してた奴か」


「ふとした瞬間に思い出してはいじめられてまた落ち込んでるんじゃないかっつって酒飲んで大変な事になってたよな」


「俺も獣人だからわかるが、名無しってのは肩身が狭いよな……。本人の性格とか関係無しに迫害されるし」



 周りの数人がそう話すのを尻目に、アルディスは言う。



「しかし!!今日再会した時ソイツは名無しじゃ無くなっていた!主を見つけ、名前を付けてもらい、見事名前持ちの主持ち獣人になって旅に出ていた!!」



 その言葉に、さっきよりも反応する人が増えて話し出す。



「マジか」


「おい、お前獣人のしきたりに詳しかったよな?あれってどんだけ凄え話なんだ?」


「そうだな…。いじめられてた子猫が久々に会ったらライオンでしかも聖獣扱いされてました級」


「すっげえ!?」


「主持ちだと…!?リスク高いけどクッソ羨ましい……!!」


「主持ち獣人ってそんなに羨ましいのか?」


「冒険者で言うならS級並みに羨ましい」


「S級って羨望の的じゃねえか」



 凄いざわざわしてる。周りの人達が凄いざわざわしてる。というかそんなに凄い話だったのか。改めて現地の人の会話で詳しく聞くと私の常識の無さが浮き彫りになるな。

 アルディスはジョッキを持っていない左手でコンを引っ張って立たせ、背中を一発強く叩いた。



「イダッ!?」


「コイツがその幼馴染だ!!名無しでいじめられてたのに、いつの間にか主見つけて「コン」って名前付けてもらってた!しかもコイツ魔物使いの女の子相手に押しかけ女房までしてたからな!?すっげぇだろ!!」



 おーっとアルディスさん!?それあんまり公開しなくて良い情報じゃないっすかね!!押しかけ女房について聞かれると私へ向けられる視線が大変な事になってしまう!



「……押しかけ女房?」


「魔物使いって銀髪と黒髪どっちだ?」


「女の子っつってたし、銀髪の美女の胸元に契約印がある。黒髪の女の子の方だな」


「あの子めっちゃ慌ててるけど」


「性別って何だっけ」



 あ、思ってたよりあっさりしてた。ふー、危うく従魔をハーレムのメンバーにしてるクズだと認識されるところだったぜ。従魔がハーレムメンバーなのは何故か事実だけど、クズとは思われたく無いからね!!

 アルディスは楽しげな声でコンの背中を何度も叩きながら続ける。



「まあそういう事で!今日は名無しが名付けられて主持ちになったっつー祝いの席だ!今全員のテーブルに運ばれたビールは俺からの奢りだから飲め!!今日は騒いで騒ぐぞお前ら!!」



 笑ってそう言い、ジョッキを掲げるアルディスに続いて他の人達もジョッキを掲げる。あ、さっきから宿屋の主人とおかみさんが忙しそうに運んでたのそれか!

 他の人達が皆ジョッキを掲げていくのをどうしたら良いのかわからず見ていると、イースが私の手にビールを持たせた。そしてアルディスがじっとこっちを見てくる。

 だから何!?言ってくれないとわからんぜよ!と泣きそうになっていたらイースが笑いながら耳打ちで教えてくれた。



「コンの主であるミーヤが乾杯の号令をするのよぉ。立ち上がってジョッキを掲げて乾杯!って叫べばあとは勝手に盛り上がるから大丈夫♡」



 な、成る程…。

 他の人からの視線も集まってるしさっさと乾杯しなくてはと思い、ジョッキを持って立ち上がる。少し大きめのジョッキだから片手では重いけど、レベルが上がってるお陰か持てなくは無い。顔より上の位置、皆に見えやすいように掲げて、



「コンの主で魔物使いであるミーヤです!アルディスがコンの為にって開いてくれた宴に!カンパーーーーイッ!!」


「「「「カンパーーーーイッッ!!」」」」



 あちこちから上がる乾杯の声と、ジョッキがぶつかる音が聞こえる。

 とりあえず集まってた視線が無くなったのでほっと一息吐いて椅子に座りなおす。あー緊張した。アルディスに文句の一つでも言おうかと思ってアルディスの方を見ると、既にジョッキを傾けてビールをグビグビ飲んでいた。



「んぐっ、んぐっ……っぷはーーー!良い音頭だったぜミーヤ!」


「……ありがとね」



 良い笑顔でそう言われると何も言えなくなる。それが日本人だ。ウサギの表情が大分わかるようになってるな私。日本じゃウサギを飼ってる人くらいしか持ってないスキルを覚えちゃったよ。

 仕方なく文句を飲み込み、流し込むようにビールを飲む。あ、ちょっと苦いな。でも無理って感じではなくて、苦い炭酸って感じだ。

 緊張で喉が渇いてたのかジョッキの半分くらいを飲み干して、テーブルの皆を見回す。



「♪」


「……んぐ、んぐ…」


「あ、おかみさん注文良いかしらぁ?これとこれとこれとこれとこれ頼めるぅ?ええ、じゃあお願いねぇ」


「………っ、カァッ!あ、ビールのお代わりも頼む!当然アルの奢りなんだよな?」


「おっまえちょっと前まではもっとおどおどしてた癖に名前ゲットしてから図々しくなったな!?まあ最初っからそのつもりだから良いけどよ!」



 ハニーは前回酔い潰れたからか、お酒は飲まずに砂糖漬けのフルーツをちみちみと摘まんでいた。ラミィはビールを一気に飲み干し、テーブルの上の料理をまるでジュースでも飲むように呑み込んでいく。

 イースはビールを少しだけ飲み、丁度横を通ったおかみさんに追加注文。

 コンはビールを勢い良く飲み干してビールのお代わりを頼み、アルディスはコンの言葉に苦笑いしながらも楽しそうに返した。

 うん、皆結構楽しんでるみたいで良い事だ。私も料理を小皿に取って食べていく。空きっ腹に酒流し込み過ぎるのはよく無いって聞くもんね。



「お!?何だアルディス!この宴じゃ全員分お前の奢りか!?」


「えっマジで!?じゃあこのパーティ用のメニュー頼んでも良い!?」


「は!?ふっざけんな俺が払うのはミーヤ達の分だけに決まってんだろ!お前らはお前らの金で払え!」


「ひっでー!俺らの期待を弄ぶなんて!」


「なんて酷い男なのあのウサギ!」


「うっせえお前らがこないだの依頼で結構収入あったって話してたの聞いたぞ!寧ろ奢れ!」


「マジかよお前ら!」


「えー、じゃあ私達の代金、今日はリーダー達の奢りって事よね?」


「うげっ」


「俺らでこなした依頼だしってヘソクリに回そうと思ってたのに……畜生アルディス覚えてろよ!」


「今度お前の背中に「万年発情期」って書いた紙貼っつけてやるからな!」


「良い度胸だやってみやがれ!」



 何かアルディスと他所のテーブルで会話が発生した。他の冒険者達とも仲が良いようで良い事だね。にしても本当に冒険者の人達の会話が面白いんだけど。ツギルクでのあのテンプレ共はいったい何だったんだ。



「あ、それなんだけどねぇ?」



 サラダを摘まみながら、イースがその疑問に答える。



「あれ、バーバヤガ出身の冒険者なのよぉ。ああいうのが居ると絡まれて面倒だからってギルドに人が少ないのが問題だったわねぇ」


「え、あれバーバヤガの冒険者だったの?」



 バーバヤガと言えば悪い話ばっかりの国だ。成る程、だからあんなにもテンプレ雑魚のような言動を……げふんげふん。

 でも何となく納得した。通りでツギルクのギルドに人が少ないわけだよ。あの後話しかけて来たのルークだけだったしね。他の人は居なかった。……本気で心配して声を掛けてくれたルークに対して警戒心バリバリの対応をしたのが申し訳なくなるな。今度会う機会があったら謝ろう。うん。



「うふふ、別にそんな気にする必要なんて無いわぁ。あ、それよりもミーヤ、お酒来たわよぉ♡」



 イースのその言葉のすぐ後に、おかみさんがお酒が入ったグラスを複数テーブルに置いた。



「はいよ!注文の果実酒!」


「ありがとぉ」


「いいや、こっちも酒の注文はありがたいからねえ!でもお嬢ちゃん、あんまり酒を飲んで飲まれないように気をつけるんだよ?」


「あ、はい!」



 幼く見える私を気遣ってかそう言ったおかみさんに素直に頷くと、おかみさんは明るくニカッと笑って私の頭を軽く撫でて違うテーブルの注文を聞きに行った。

 ………私の頭は撫でやすい頭なんだろうか。



「はぁい、ミーヤ。まずはこれがオススメよぉ」


「おっと」



 渡されたグラスを落とさないように両手で受け取る。中を覗いて見ると……あ、これフルーツ系の匂いだ。ライチっぽい。そういやおかみさんも果実酒って言ってたな。



「ええ、それはライチのお酒よぉ。他にもピーチやチェリーの果実酒もあるわぁ」



 他のグラスを指差しながらそう説明して、イースは紫の瞳を細めてクスリと微笑む。



「最初は飲みやすい味が一番でしょう?ビール、初心者にはちょぉっと苦いものねぇ?」


「見抜かれてたかー。流石はイース」


「うふふ、とぉぜん♡」



 ビール飲んだ時ちょっと苦いから嫌だなって思ったんだよね。あと泡も嫌だった。あんなに泡飲んだらゲップ出そうじゃん?

 とりあえず最初はライチの酒を……と飲んでみると、結構サッパリしてて飲みやすい。あ、これ美味しいわ。少し酒の味もするが、どちらかというとジュースに近い気がする。



「ミーヤ様、お酒だけでは体に悪いのでこちらの料理もお食べください」


「あ、ありがとハニー」



 すっとハニーに差し出された皿を受け取る。皿の上にはテーブルの上の料理達がバランス良くワンプレートに盛り付けられていた。ハニーって結構センスあるよね。

 ありがたく皿を受け取り、一旦グラスを置いて皿の上の料理を食べる。ちなみに人前だから普通にフォーク。お箸が恋しい。



「あ、このお肉美味しい」


「だっろー?!」



 何気なく摘まんだ肉の感想を言うと、すっかり出来上がっているアルディスが機嫌良さそうに笑って私の隣に座った。アルディスさっきまで違うテーブルの人と騒いでたよね?あと毛で地肌見えないはずなのに何で顔赤いのがわかるんだろうね。流石ファンタジー。ただ隣に割り込んできたせいでラミィがちょっと不機嫌な表情になったから離れた方が良いのではと不安になる。その子人食いの称号持ってるよ。獣人食いの称号までゲットしちゃわないか心配だ。

 ……私も酔ってるのかな。思考が微妙におかしい気がする。

 しかし既に完全に酔っ払っているアルディスにとってはそんな細かい事はどうでも良いらしい。ビール一杯と他の酒少しで出来上がっているアルディスはケラケラと笑いながら話し出す。



「その肉はグレルトーディアの北にあるデルフトって森に居る魔物、イートピッグの肉なんだ!知ってるか?イートピッグ!」


「イートピッグ…」



 スマホが出せないから確認出来ないけど、多分まだ聞いた事無い魔物だよね?



「知らない。どんな魔物?」


「イートピッグってのは森に居るブタの魔物。何でも食う雑食で、森の中の死骸から廃棄物まで何でも食っちまう魔物なんだ」



 ほうほう、それは……ゴミの不法投棄が増えそうな魔物だな。食うから良いだろってゴミが不法投棄されてそのイートピッグとやらが増えて大変な事になる未来が見える。



「んでもって、そのイートピッグは肉が美味いって有名なんだ!生はあんまり美味くねえんだけど、熱を通すと脂っこくなくて食べやすい、めちゃくちゃ美味い肉になるんだぜ!まあ俺は草食だから食えねえけどな!」


「ふむふむ」



 ところでアルディスは酔うと距離感がおかしくなるタイプの人なんだろうか。さっきから肩を抱き寄せられてるから顔とかにふわっふわの毛が触れて幸せ気分だ。

 コンの毛もふわっふわのさらっさらな上に手入れしてるからめちゃくちゃ気持ち良いんだけど、アルディスの毛は短毛だからこれはこれで新触感。ゴールデンレトリーバーと柴犬の毛並みの違いみたいな感じだ。



「それでな?イートピッグはあんまり強くないけど繁殖性が高いからすぐ増えるんだ。増えると人里に乗り込んで食い荒らしまくるからって狩るのを推奨されてる魔物でもあるんだぜ」


「わお、屍喰いカラスみたい」


「あー、あれは肉も美味くないって言うし臭いから最悪だな!あ、ミーヤもイートピッグ討伐の依頼受けるなら先に教えておくけど、イートピッグは基本的にピンクの毛が生えてるんだ。でも時々火魔法を使える個体が居て、そういう個体は毛皮が真っ赤なんだよ」


「病殺しみたいに?」


「そう!そしてその真っ赤な毛皮はレアって事で普通のイートピッグの毛皮より高く買い取ってもらえるから良いぞ!狩る時に毛皮をあんまり痛めつけないように気をつけろよ!」



 アルディス、酔ってるけど本当に良いお兄ちゃんキャラだな。めちゃくちゃ親切かよ。んー、イートピッグの討伐依頼もあるならその依頼を受けて肉を貯蓄しておきたいな。豚肉好きだし。

 桃のお酒を飲みながらそう考えていると、話を聞いていたらしい他のテーブルから笑い声と共にツッコミが入った。



「おいおい!アルディスお前が毛皮を痛めつけるなってよく言えるな!」


「お前がイートピッグ仕留める時、全身を蹴り飛ばしてから仕留めてるせいで毛皮が売り物にならねぇって商人が愚痴ってたぞ!」


「うっせえ全体を先に叩いた方が肉は美味くなるんだよ!肉を売る時はそっちの方が良い肉になる!」


「おっまえ基本一撃で頭部潰す癖に食用で売る予定の魔物だけ狩り方エグいの止めろよな!前に同行した新人冒険者吐いたの忘れたか!?」


「普通に倒す魔物はちゃんと蹴りで潰してるんだから良いじゃねえか!」


「お前に前線で戦ってたら後ろから茶色い何かが跳んで来て目の前の魔物の頭部が破裂する瞬間見た事あるか!?目の前で弾け飛んだ肉塊のせいでしばらく肉食えなかったんだぞオラァ!」


「ちょっと人が肉食べてる時にそういう話すんの止めてくれる!?」


「知ってたけどあんたって昔っからそういうデリカシー無いわよね」


「俺か!?今のは俺が悪いのか!?」


「はっはー!それ見ろ俺よりお前が悪い!」


「アルディスお前マジで覚えてろよ!?今度あの定食屋でバッタリ会ったらお前に奢ってもらうからな!」


「よっしゃ受けて立つ!どっちが先に食い終わって店を出るかの勝負だ!獣人に速さで勝てると思うなよ人間!」



 ぎゃいぎゃいわーわーと騒がしいその日の宴は、真夜中まで続いた。



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