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異世界で魔物使いやってます  作者:
異世界に来ました
48/276

おいこら称号、お前ツラ貸せや



「何か……疲れた…」


「お疲れ様ぁ♡」



 日が暮れたグレルトーディアの町で、私は宿泊している宿屋のベッドに思いっきり寝そべっていた。何でかって?疲れたからだよ!

 バーンズ家での相談後、イーニアスも執事さんも凄いはしゃいでたから、



「あ、じゃあ私達この辺でお暇しますねー」



 と言ってバーンズ家を出た。あのままだと夕食に誘われて発案者ですと紹介されかねなかった。そんな空気を執事さんから感じたから即座にバーンズ家から退出させてもらったというわけである。

 そして外に出ると、丁度夕方だった。もうすぐ日が暮れそうだったからハニーとラミィを迎えに行った。そしたらまあ……花屋でまた面倒なっていうか…。



「今日最高だったのよ!ハニーちゃんのお陰でうちの花壇がめちゃくちゃ綺麗に整えられたし、ハニーちゃんが少しお店側に顔出した時にキラービーの人間姿を知ってる人が大声でキラービーだって叫んでくれたお陰でキラービーの恩恵がある花屋だって噂になっていつもより売れたの!だからお願い!ここに滞在する間ハニーちゃんをここでバイトさせてくれない!?お給料はちゃんと出すから!」



 と熱弁された。お姉さんの目がめっちゃギラギラしてて怖かった。しかも何ていうか……欲望に目が眩んだタイプのギラギラじゃ無くって、その道のオタクがマニア垂涎の物を見つけた時のような眼差しというか……察して欲しい。とりあえず怖かったとだけ言っておく。

 私としては一週間滞在の予定だけど、やるのはハニーだからなーと思ってハニーに聞いた。



「ハニーはどうしたい?」


「そうですね……」



 ハニーは少し悩む素振りを見せたが、すぐに結論を出した。



「魔物の討伐は私が居なくても余裕だと思いますし、良いのではないでしょうか。今日の内にある程度整えた分花達の世話はかなり楽ですし、安定した収入があるのはありがたいです。ただし私としてはミーヤ様と共に居たいのも事実ですので、一日置きにここでバイトする、という事でもよろしいでしょうか?」



 ………うん、凄いよね。完璧な答えだったよね。一番若い子なのにめちゃくちゃしっかりしてるよねハニー。流石働き蜂。まあそういう事で、ハニーは一日置きにバイトする事が決定した。

 花屋のお姉さんは、



「いよっしゃあああああああ!!!」



 と雄叫びをあげ、神に祈りを捧げていた。オタクが推しのライブのチケット取れた時ってこんな感じなんだろうなと思うくらいには強い雄叫びだった。花が似合う線の細い美人さんなのにとんでもなく残念。

 反してラミィのお迎えはとても平和だった。笑顔のお爺さんとお婆さんが、



「婆さんの相手をしてくれて本当にありがとうね。話をするのが好きだから話をさせてやりたかったんだが、足が悪くて外では長話が出来なくて…。何度か同じ話を繰り返していたのに、根気強く話しを聞いてくれて助かったよ」


「ラミィちゃん、お話を聞いてくれてありがとうねぇ。うふふ、お爺さんとの思い出を誰かに話したくて仕方ないんだけどね?いつもその話だからって皆もう飽きちゃって聞いてくれないの。でもラミィちゃん、とっても真面目に聞いてくれて嬉しかったわ。ありがとねぇ」



 と言ってくれた。

 ラミィもご飯を少し御馳走になったらしく、とても満足そうだった。話を聞くのも楽しかったらしく、機嫌良さそうに微笑んでいたから頭を撫でると擦り寄って甘えて来てめっちゃくちゃ可愛かった。

 そしてお爺さんとお婆さんとばいばいして、ギルドに戻って依頼達成の報告をした。報告する直前までシルヴィアさんはとても心配そうな顔をしていたが、バーンズ家の相談は普通の相談だったから問題は無かったと報告すると安心したように頬を緩ませた。



「そう……ただの相談だったのね。権力で変な事言われたりとかは?」


「いや、本当にそういうの無かったんですよ。単純に色んな意見を聞いてみたかっただけみたいで。内容は言っちゃ駄目って契約だから言えませんが、普通の相談でしたよ」


「なら良かったわ。貴族の依頼って結構無茶振りが多いから心配だったのよ」


「あはは、ありがとうございますシルヴィアさん」



 とまあ、こんな感じで。深く聞かずに納得してくれてとてもありがたかった。まあ受付嬢だからその辺のプライバシー保護はしっかりしてるんだろうな。

 ちなみに、



「な?な?マジだろ?マジでシルヴィアが微笑んでるだろ?」


「うっわマジだ……氷の受付嬢が春の妖精みたいになってる…」


「絶対に嘘だと思って賭けたのに……畜生俺の今日の稼ぎが!」


「ふはははは、俺の言葉を信じれば勝てたのにな!さーあ今日は奢ってもらうぜ!なぁーに奢ってもらおうかなー!」


「ド畜生が!」


「確かあの子、バーンズ家からの依頼を受けてたよな?ほら、あのGランクの相談依頼」


「ああ……本当にただの相談だったのか。なら受けとけば良かったな。報酬結構多かったし」


「貴族だから無茶振りされるだろうなって思ってたからなー」


「バーンズ家ってあれよね?イーニアス様のお家よね?」


「そうよ!フェロール家の跡取りであるライナス様とバーンズ家の跡取りのイーニアス様!とても仲が良いらしくて距離が近いから、目の保養なのよねー」


「私、前の祭りの時に見ちゃったの……ライナス様とイーニアス様が恋人のように手を繋いでいるところを!」


「きゃーーーー!」


「それ本当!?」


「やっぱり……ゴクリ」


「お互いを見るときのあの眼差し……ただの幼馴染じゃ無いとは思ってたけど…!」


「女ってああいう話好きだよな」


「恋愛話なら何でも好物だからな、女って」


「でもイーニアス様は本当女かと見間違うくらいに美人だよな!成人するまで腰から上まで髪を切ってはいけないって家訓で髪伸ばしてるらしくてさ、本当遠目で見ると美少女にしか見えない!」


「お前……」


「ライナス様に聞かれたら殺されるぞ…」


「惜しくも無い奴を亡くした」


「今の内に遺書を書いておけよ。所持品全部俺に譲るって」


「お前ら酷くね!?」



 という冒険者達の会話も背後で繰り広げられていた。ツッコミ所しかないが、イーニアスとライナスの関係に関しては知られてるっぽいんだけど良いんだろうかとちょっと心配になった。まあ普通に受け入れられてるっぽいし大丈夫だろう。

 執事さんの言葉が気になったからバーンズ家からの帰りの途中でイースに聞いたら、



「え?ああ、こっちの世界では基本的に同意でさえあれば結婚出来るのよぉ。成人してないと駄目だけどぉ、成人さえしていれば同性だろうが異種族だろうが一夫多妻だろうが女三人男五人だろうが結婚可能よぉ。それが同意の上ならねぇ」



 との事。だから男同士でも結婚可能って言ってたのかあの執事さんは。まあ同性愛への偏見は少なそうだから安心した。折角ならイーニアスには幸せになってもらいたいからね。

 そんな感じで、依頼を達成して宿屋へ戻ってきたわけでありやす。疲れた。主にバーンズ家と花屋で。部屋に入ってベッドに腰を落ち着けた瞬間に疲れがどっと来たのでそのまま上半身をベッドに預けている。



「うふふふふ。恋愛相談なんて無縁だったのにぃ、すっごく頑張ったものねぇ?」


「うん…」



 イースが頭を撫でてくれてるお陰で少しだけ回復してきた気がする。心の中でよっこいしょと声を出して起き上がり、頭の中でこの後の予定を考える。



「後はもうお風呂入って寝る準備かな?」


「いや、確かアルが酒盛りに来るって言ってたぞ」


「あー、そういや言ってたね」



 コンの名付け祝いの酒盛りするって言ってたわ。じゃあアルディスを待たないとね。待ってる間ちょっと暇だな。スマホのメモに書いた色々でも読み返そうかなーと思っていると、



「ならギルドカードの確認をしたらどうかしらぁ?ミーヤ、全然確認してないでしょう?」


「ああ、それ良いね」



 そういや全然確認してないなと思ってギルドカードを取り出し、魔力を流す。表示されるステータスはこんな感じだった。



 名前:ミーヤ(17)

 レベル:33

 種族:人間

 HP:450

 MP:800

 職業:魔物使い

 スキル:従魔契約、妄想癖、オリジナル魔法作成、魔力感知

 称号:異世界人、変人、人外好き、ラッキーガール、人外たらし、貢がれ上手、エルフの友人、気楽人間、ハーレムの主、こいつ大丈夫だわ、勇者の子孫(嘘)、地獄耳、何か凄くてやばい奴、ハッピールートメイカー



「……いや称号!!増え過ぎだろバグってんのか貴様!」


「どうどう、落ち着いてミーヤ。称号って結構贈られやすいのよぉ。本人以外の人物とよく一緒にいると尚の事、ねぇ」


「…そうなの?」



 聞くと、イースはにっこり笑って説明してくれる。



「そうよぉ。最初に出会った時も私が変わった子だって認識したから変人の称号が贈られたでしょう?そんな風に、他人が認識した印象がそのまま称号として贈られちゃう事もあるのよねぇ」


「ああ…」



 何だかとっても納得した。コンもツンデレの称号持ってたもんね。従魔も増えたし、称号が増殖するのは当然なのかな。私を認識する存在が増えたって事だもんね。あと町中で人目を引くとその分称号が増えるって事でもあるのか。……増えるのは止められんな。



「……ミーヤ、詳細…」


「あ、そうだね。そっちも見ないと」



 ラミィの言葉で詳細をまだ見てない事を思い出し、詳細を見る。まずはスキル。



 魔力感知

 何となく魔力を感知可能。意識的に発動させると魔力を視覚的に見る事も可能。このスキルがあると魔力の流れを掴みやすい。



 ……成る程。



「盃を交わした時のあれで開花したのかな、このスキル」


「そうねぇ、あの時酒に混ざった魔力を感知してたからぁ……多分それでこのスキルをゲットしたんでしょうねぇ」



 そう言い、イースは微笑む。



「これは結構良いスキルよぉ?常時発動型スキルでもあるからぁ、魔法を使われそうになっても魔力の流れですぐ気付けるわぁ。自衛にピッタリねぇ♡」



 成る程。確かにそれは助かる。なら結構良いスキルなんだな、これ。

 ……さて、次はこの倍以上に増えてる称号の詳細だ。



 エルフの友人

 エルフから信頼の証となる特殊な装飾品を贈られた者に贈られる称号。この称号があるとエルフが心を許しやすくなる。こちらからもエルフに対し友人のように接すれば倍率ドン。


 気楽人間

 気楽な人間に贈られる称号。この称号があると大変な状況でも気楽に考える事で意外とどうにかなる。


 ハーレムの主

 嫁を複数侍らす夫。


 こいつ大丈夫だわ

 あ、こいつ色々と大丈夫だわと思われた人間に贈られる称号。この称号があると何となくこいつなら大丈夫だろうと信頼されたり、こいつなら大丈夫だろう(笑)と敵が油断したりする。


 勇者の子孫(嘘)

 こいつ子孫ちゃいまっせ。


 地獄耳

 遠くの話し声も聞こえる人に贈られる称号。この称号があると話し声がめっちゃ聞こえる。ただし大声や大きな音のダメージも倍になる。


 何か凄くてやばい奴

 何とは断言出来ないけど何かがめっちゃ凄くて明らかに色んな意味でやべえなと思われた存在に贈られる称号。この称号があると見た目や性格で見くびられる事は無くなる。ただし「こいつ大丈夫だわ」の称号があるので時と場合による。


 ハッピールートメイカー

 人の運命を捻じ曲げてでも幸福へと導く人間に贈られる称号。この称号があると何でも無い一言で誰かの運命が幸福へと向かっていったりする。お前が関わればハッピーエンドルート確定だゼ!



「……………」


「…ミーヤ様、これは叫んでも良いと思います」


「……そう?」


「ん……これは、仕方ない…」


「風魔法で防音しておくから安心して叫んで良いわよぉ」


「俺ちゃんと耳塞いでおくから」


「ありがとね、皆」



 お礼を言ってから、私はすぅっと息を肺に取り込み、



「テメェ色々ツッコませろやあああああああ!!!」



 叫んだ。



「何だお前は!?意識あんだろ絶対!詳細の内容なめてんのか貴様!距離感が近いんだよ距離感が!こいつ大丈夫だわって何だ!そんな称号があるのか!?わかりにくいわ!あとこいつ子孫ちゃいまっせって何だお前は!何だよその口調は!絶対中の人居るだろ貴様!急に何で方言繰り出してきた!まだ名乗ってないんだからそんな称号贈らなくて良いんだよ!何か凄くてやばい奴って称号も物申したいがハッピールートメイカー!内容はとんでもなく最高だが説明文!「だゼ」って何だ「だゼ」って!腹立つわボケ!」



 とにかく叫びたいだけ叫び、ぜーはーぜーはーと肩で息をしながらぐってりと体から力を抜く。疲れた。力の抜き方を間違えたせいでベッドがある後ろではなく何も無い前に倒れそうになったが、ハニーが四つ腕で支えてくれて顔を床に叩き付ける事は無かった。ありがとうハニー。



「中々凄い称号ばっかりねぇ」



 くすくすと笑いながらそう言ったイースの言葉に、耳から手を放したコンが頷いて同意を示した。



「かなり良い称号だと思うんだが……説明文が凄いな」


「ふざけてるわねぇ、説明文が」


「絶対中の人がいる……この説明文には絶対中の人がいる………!」



 いまだ虫の息状態だが言わずには居られなかった。この称号の説明文には絶対中の人居るって。大分ふざけてるって。コンが言う通りかなり良い称号達ばっかりな気がするんだけど、説明文で全部持っていかれた気がする。特に勇者の子孫(嘘)の称号貴様の事だ。お前顔あったら絶対ムカつく表情で手を横に振ってただろ。

 ベッドに体を預けながら深呼吸して精神統一。宇宙の真理を考えろ私。すぐにクールになれるから。



「……ふー…」



 数分宇宙についてを考えながら深呼吸して、どうにか落ち着いた。ギルドカードでステータスを確認しただけなのに何でこんなに疲労しなくちゃいかんのじゃい。



「落ち着きましたか?ミーヤ様」


「うん、背中擦ってくれてありがとハニー」


「私は人間よりも手が多いですから、幾らでも手を貸しますよ」



 ふふふと微笑みながらそう言うハニーに、こっちもちょっと笑顔になった。うちの子可愛い。

 まあ叫ぶだけ叫んだし、変に拗ねたって状況は変わらんのよねって考えるとヒートアップしていた脳内もクールダウンした。ちょっと興奮したせいでエネルギーを消費したのか、私のお腹がぐうと鳴った瞬間。



「おーい、お客さん来てるよ!アルディスって冒険者が!」



 ノックの音と共に、宿屋のおかみさんの声がした。

 あ、もうそんな時間?



最初はコメディチックながらも普通のファンタジー小説にしようと思ってたんです。

でもやっぱり馬鹿なノリが書いてて楽しいなって思ったら称号までふざけ始めましたね!

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