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異世界で魔物使いやってます  作者:
バーバヤガ編
269/276

ファンファーレ吹かれるトコだった第十八夫人



 あの後、とりあえずルークには今まで通りにミーヤ呼びでと頼んでから、再びセレスとの話し合いになった。話し合いというか、依頼の進捗どうですかって聞かれた感じだったけど。



「んーと、ホリィ救出に関してはコンプリート。情報収集は……」



 イースが通行人の魂をこっそりとつまみ食いして記憶を勝手に共有したり、コンが優れた五感で隠された秘密通路とかを見つけてくれたり、アレクがやべえ書類とかを壁擦り抜けたりして持って来てくれたり、ハイドが色んな場所にこっそり糸を張り巡らせて盗聴してたり、ロンが道端でぶつかってきた人の記憶を読んだり、パンドラが嫉妬の邪眼で誰かが所持してたやべえ魔道具を奪っといてくれたり、ローランがあちこち潜入してパンドラやオールの発言の裏付けを取ってくれたり、そしてオールが必要な情報の殆どを教えてくれたりして……。



「……うん、多分結構捗ってる、はず」


「多分どころじゃねーっすよ」


「タバサ」



 ホログラムの向こうで、セレスの後ろに立つ形でタバサが姿を見せた。タバサは手に持った書類を見ながら、書類を持っていない方の手で面倒臭そうに頭を掻く。



「ミーヤ、マールに情報渡してくれたじゃないっすか。で、ソレがもうこっちに届いてんすよね。足速い獣人がバーバヤガとツィツィートガルの国境までこの情報運んで、そっから鳥人に王城まで運んでもらうっつーソクタツ法使ってるんで」


「おおう」



 バーバヤガからツィツィートガルの王都まではそれなりに距離があった気がするけど、流石獣人&鳥人。情報伝達が迅速。

 そしてホログラムの向こうで、タバサの言い方にくすくすと笑いながらセレスは言う。



「ミーヤ様のお陰で、こちらもかなり情報収集が捗りました。それもたった一日の滞在でここまでの情報を集めれるだなんて……うふふ、こちらの諜報係達がミーヤ様達を諜報の神扱いしようかと騒いでましたわ」


「いやそれは止めよう?」



 確かに神は居るし神に切り離された全能も居るんだけど、私は一般人なわけよ。最近自分でも一般人名乗るのはどうかなとか思い始めてるけど、それでも一応一般人枠ではあるはずなの。



「まあ、うん、情報収集の方もセレス達にとって良い感じの進捗なら良かった。で、最後の一つであるバーバヤガとの戦争を無血で終わらせて欲しいっていう依頼の方なんだけど」


「普通に無理だよなー」



 ホログラムの画面外から、セインの声が聞こえた。



「戦争を終結させるってだけでもキツイってのに、それを無血でなんてよ。勇者でも無きゃ無理無理ですだ。……あれ、アディ?何ソレ。何そのバチバチ言ってる棒ッジャア!?」


「アンナ作製、おしおき棒だ。凄まじい高温になっているが火傷などは残らない。的確に痛みだけを感じさせ、肉体には後遺症が残らない新製品」


「おま……仮にも主相手に何てモン使いやがんだ……」



 ……ちょっと心配になるけど、セインとアディさんだしな。

 この程度のやり取りは割りと日常っぽいし、セレスも苦笑気味だけど動揺はしてないし、タバサも「あーあー……」って感じの表情してるくらいだし……うん、スルーしとこう。



「えーと、戦争に関しての依頼なんだけどね、一応案はあるの」


「あるんですか!?」



 セレスは酷く驚いた表情で口元に手を当てながらそう言った。

 ……いや、依頼したのそっちだよね?



「マジであるんすか?」


「流石の余も案を考える事は出来なかったが……そうか。……ありがたい事だ」


「……凄いな」


「戦争を無血でって時点で詰みにしか思えないのに、案を出せた時点で常軌を逸してるとしか思えないねえ。あ、勿論褒めてるよ?」


「おいアディ、お前ですら無理って判断してた事に関して案あるつったぞミーヤ。お前ももうちょい頑張んねえとだよなっだい!?」


「お前も無駄に頭良い癖に無理って答えしか出さなかっただろうが……!」


「ミーヤってば凄いわねー!マジでそんな案あるの?」


「最悪の場合、俺がバーバヤガを滅ぼそうかと思っていたが……それは平和的な案なんだな?俺みたいに一瞬にして消滅させる事で血は流させてないという理論を使う気では無いんだな?」



 上からタバサ、王様、ケインさん、ブラッドさん、セイン、アディさん、アラン、ファフニールの順である。つかファフニール何て恐ろしい作戦立ててんのさ。一般人そんな作戦立てないアルよ。

 というか、うん。セレスとタバサ以外姿見えないけど、やっぱ全員勢揃いで居るのね。まあセインとアディさんの声聞こえた時点で察しては居たけど。

 王の剣メンバーは居るのか居ないのかわかんないけど、ルークは確実に居たはず。それにしてはコメント無いなと思ったけど、うん、普通はそうやって静かにしてるもんだよね。王族とその付き人が野次馬してるって平和だなーツィツィートガル。現実逃避なんてちょっぴりしかしとらんぜよ。



「えっと……一応普通に平和的な無血の方向の案なんだけどね?こう、バーバヤガ人の目先の欲に眩みがちなトコとかを利用した案というか」



 バーバヤガ人、結構図太いみたいだし。自分優先するあの性格を考えると、結構良い線行くんじゃないかなーと思うんだけど……。



「ただちょっと、この案にはセレス達の協力が必要というか」


「わかりました」



 詳細を説明する間も無く、セレスは真顔で頷いた。



「……あの、セレス?勿論伝手とかの協力も頼みたいし、色々な準備も頼みたいよ?でもソレはソレとしてセレスを始めとした王族達の協力が要るというか、具体的には割りと前に出てもらう必要があるというか」


「ええ、断ったりはしませんわ」



 ……詳細まだ聞いてないのに返事早くない?

 そんな思いが顔に出ていたのか、セレスは「ふふ」と花が綻ぶように微笑んだ。



「ミーヤ様なら、わたくし達を危険に晒したりはしないでしょう?」


「そりゃまあそんな案は発想が浮かんだ時点でボツにするけど」



 頷くと、「それがわかっているから頷いたんですよ」とセレスは言った。



「もっとも、わたくし達はミーヤ様に無理難題を押し付けた側ですから。もし多少の危険があったとしても頷く以外ありませんわ。その程度の誠意は王族として、そしてミーヤ様の友人として、きちんと見せるべきですもの」


「王族なら自分の身はちゃんと案じて欲しいかなー……」



 まあ、付き人がしっかりしてるから大丈夫っていう確信もあるんだろうけどね。

 そう思って私は少し苦笑しつつ、バーバヤガとの戦争を無血で終わらせる為の案に関する詳細をセレス達に伝えた。

 ……うん、



「……ミーヤって結構思考ぶっ飛んでるよな。いやまあ、人間人外オールウェルカムでハーレム作ってる時点で普通じゃねーのはわかってますケド」



 タバサにそう言われたのは誠に遺憾の意……と言いたいところだけど、うん、ぐうの音も出なかった。だって作戦内容がなー……なっかなかになー……。



「ですが、ソレでは女手が足りなくはありませんか?わたくし一人だけでは……」


「ロロとアンナにも協力させるか?」



 あ、ニコラスさんの声。ロロさん、またはアンナさんのツッコミが無い事を考えると、ホログラムの向こうに居る王の剣メンバーはニコラスさんとルークだけなのかな。あの二人、ニコラスさんに対して結構ずけずけ物を言うから居たら絶対発言してるもん。



「えっとですね、こっちの……えーと、ちょっと詳しい事情は話せないんですが、伝手がありまして。天使に女性体になってもらってどうにかします」


「待って下さいミーヤ様。……天使とは、あの天使ですか?神の使いの?」


「うん。でも詳細は聞かないで」


「……わかりました。ミーヤ様ですものね」



 その納得のされ方は遺憾の意。

 ちなみに天使の協力についてだけど、これは大丈夫っぽい。一応オールにも確認取ってみたけど、オールを嫁にした事で天使さんからすると私も上司枠になっているらしく、寧ろ命令待ち状態とか何とか。「仕事がある方が喜ぶから良いと思うよ」との事だった。

 さておき、そんな感じで纏まりはしたものの、戦争終結の為の案を実行するには多少の準備期間が要る。というわけで私達はそれまで待機となり、ブリジャーさんはブリジャーさんで下準備の為にと出された指示をこなす為に宿屋を出た。

 で、現在。



「ここでオッケー?」


「はい!」



 頷いたホリィの左の二の腕に触れ、私は従魔契約を発動させた。そう、現在は部屋に戻り、ホリィと従魔契約の真っ最中なのである。

 ……いや、一応しっかりと嫁入りに従魔契約は別に必要無いって言ったよ?ちゃんと言ったよ?でもさ、



「いやー、花の模様の印だなんて素敵ですね。こういう契約の印ってゴツいの多かったりするんであんまり好きじゃなかったんですけど、こんな可愛い系なら大歓迎です!あと皆でお揃いってのがまた良いですね!」



 イース達による私が異世界人だって事を含めた私達の色んな事情説明を聞いて、その上でキラキラな目を向けられたら……ね。



「あ、痛みとかは無いんですね。ホリィさん従魔契約ってもっと怖い感じのイメージがあったんで、痛みとかあるかなーって思ってたんですけど……寧ろ暖かい感じなんですねー」


「うーん、やる側の私はわかんないけどね」



 と、印が刻み終わり、私の指先から出ていた糸はプツンと切れた。うん、綺麗に桜が咲いてるね。ホリィさんの格好白い肩出しタートルネックだから桜がワンポイントみたいに見えるし、うん、素敵。



「じゃあ、次はステータスの確認かしら?」



 茶色の細い指を頬に当てながらそう言ったフローラに、ホリィは「確かに確認は大事ですよね」と頷いた。



「というわけでミーヤ、確認お願いしますね」


「はーい」



 何だかわくわくした様子のホリィさんに釣られて私もちょっと微笑みながら、表示されるステータスを読み上げる。



 名前:ホリィ(24)

 レベル:34

 種族:人間

 HP:370

 MP:490

 スキル:あっちむいてほい、抜き足差し足忍び足、だるまさんが転んだ、色鬼、高鬼、影踏み、人体理解、癒し手の微笑み

 称号:勇者の子孫、逃げの鬼、治癒魔法を極めた者、聖女(偽)、従魔、第十八夫人、愛の加護



 何コレ思ったよりスキル多いしめっちゃ覚えがある。

 思わず思考停止しかけていると、ホリィは照れ臭そうに笑った。



「いやー、ホリィさんって旅こそしてましたけど、冒険者じゃ無いですからね。基本的に魔物見かけたら逃げる、盗賊見かけたら逃げる、って感じだったんで、レベル低いんです」



 「弟のルークは王の剣所属なんで、ちょっと恥ずかしいんですよねー」とホリィは視線を下に逸らし、頬を指で掻いた。

 そんなホリィに、ジェムは「だいじょうぶ!」と微笑みかけた。



「ジェム、うまれたて!レベル、まだ、ひくい!でも、いどう、する、した、とき、ちょっと、たたかう、した!て、とがらせる、して、まもの、たおした!ジェム、レベル、あがる、した、から、ホリィ、まだ、レベル、あがる、する!」



 えっへんと胸を張り、ジェムは瞬きをしてラピスラズリの睫毛を震わせながら「それに」と続ける。



「よめなかま、みんな、つよい!つよくなる、する、しなくても、だいじょうぶ!ミーヤ、よめ、だいじ、する、してくれる。つよい、よわい、かんけい、ない!じゅうよう、あい、だけ!だから、ホリィ、もんだい、ない!」



 言い切った事に満足したのか「むふー」と満足そうに笑っているジェムに、ホリィは笑いながら「確かにミーヤへの愛はあるから、レベル低いホリィさんも安心ですね」と言ってジェムの頭を撫でた。



「わ、ジェムって本当に宝石なんですね。見た目ふわふわな髪なのにカチカチじゃないですか」


「ピンク、ぶぶん、ローズクォーツ。くろ、ぶぶん、ヘマタイト!」


「へー、そういう種類の宝石なんですね。ホリィさんの実家宝石買える程お金に裕福じゃ無かったんで宝石知識あんま無いですけど、キラキラしてて綺麗で良いですよね」


「知識が欲しいなら書籍らの本を貸すが?宝石図鑑以外にも色々あるから、何か気になったら書籍らに言うと良い」


「え、良いんですか?」


「書籍らは読まれる事が目的の本だからな。粗末に扱われるのは業腹だが、読まれる事自体は好ましい。実際フローラには花の図鑑、ハイドには昔の服飾についての本、ヒースには簡単な問題集、マリンには魚図鑑、イーグルには様々な土地の写真集などを貸したりしている」



 リオは周囲に浮いている広げられた巻物を椅子のようにして座りながら、「ロンも頻繁に同人誌を借りて読んでいるしな」と続けた。

 ……うん、皆結構リオから本借りてるよね。ヒースなんて昔勉強出来なかったからっていう健気な理由で自分から問題集借りてたし。思わず撫でくり回しちゃったよ。

 まあ私の場合はリオに本を借りるというか、リオが興味を示した電子書籍を買って、写本の為にリオにスマホを貸してるって感じだけど。でも流石本と言うべきか、リオって写本レベル高いんだよね。コピーしたんだろうか級で絵も文字も上手い。

 さておき、



「スキルの詳細読み上げるよー」



 それぞれの「はい」や「ああ」という返事を聞きながら、私はスキルの詳細を読み上げる。



 あっちむいてほい

 相手に指先を向け、横や上、下などに動かす事で相手の視線を逸らさせるスキル。あっちむいてほいの掛け声があった方が成功率が高いが、別に無くても効果はある。


 抜き足差し足忍び足

 爪先立ちで歩く事により発動するスキル。気配が気持ち隠蔽され、足音などの己から発される音が無音になる。ただしあくまで音だけ。


 だるまさんが転んだ

 誰かに追われている状況下でのみ発動するスキル。相手の視線が自分に向く直前に動きを硬直させる事で相手から認識されなくなる。ただし動いた瞬間にその効果は無くなる。


 色鬼

 誰かに追われている状況下でのみ発動するスキル。己が持っていない色から「赤」や「青」などと色を決め、その色に触れる事で相手から認識されなくなる。ただし自分の見につけている色では効果は無い上、連続で同じ色を使用する事は出来ない。そしてその色に触れるのを止めた瞬間に効果は無くなる。


 高鬼

 誰かに追われている状況下でのみ発動するスキル。相手の手が届かない程高い位置に移動する事で相手から認識されなくなる。ただし効果は数分なので、定期的に下に降りて別の高所に移動する必要がある。勿論高い所から移動した瞬間に効果は無くなる。


 影踏み

 相手の影を踏む事で相手の動きを封じるスキル。ただしこの場合影を踏み続ける必要があるので自分も動けない。一応杭や針などで相手の影を地面に縫い止める事で同等の効果を発揮出来るが、日が暮れると同時に効果は無くなる。太陽が動いて影の位置が移動し、杭などの範囲外になった瞬間に効果が無くなったりもする。


 人体理解

 様々な人を治療した事で得たスキル。このスキルがあると目の前に居る人間の肉体的な殆どの事が手に取るようにわかる。隙も急所もしっかりとわかる。ただし本人が鍛えない限りは相手の動きがわかるだけであり、避けれるかどうかは実力次第。


 癒し手の微笑み

 対象を安心させるスキル。微笑む事で安心させ、つつがなく治療を終える為のスキル。治療の為以外には使用不可。治療関係でさえあれば割りといける。



 ……うん、何というか、



「めっちゃ逃亡用のスキルだね」


「ホリィさん、昔ちょっとお菓子とかに釣られてついて行きがちでして。そしたら何か、使えるようになってたんですよね」



 まあ、うん、特定の状況下でしか使えない感じっぽいけど、逃げる際にはめちゃくちゃ役立つスキルだよね。条件さえクリアすれば結構高レベルな認識阻害っぽいし。

 動かないようにしたり色見つけたりって条件は大変そうでもあるけど、まあ、子供向け遊びみたいなスキルのお陰で多分普通より比較的条件は易しめだし、うん、良いと思う。

 次に、と私は称号の詳細を読み上げる。



 勇者の子孫

 どれだけ時代が遠かろうが異世界人の血が少しでも混ざっていれば贈られる称号。不思議と何かしらの才能があったり無かったりやっぱりあったりでも何かに特化し過ぎてたりとかまあ何かそういう感じの才能がある。


 逃げの鬼

 追っ手から逃げまくった者に贈られる称号。鬼から逃げ切ったなら最早鬼だよ鬼。


 治癒魔法を極めた者

 治癒魔法を極めた者に贈られる称号。このくらい極めてれば切断された腕を神経ごと繋げるくらいは出来る。生やすのは治癒の範囲外なので無理。生き返らすのも無理。でも腐り掛けの足を治すくらいなら出来る。原理?知るか。


 聖女(偽)

 偽の聖女としてわっしょいされた。聖女では無い。


 第十八夫人

 十八番目の嫁。そろそろファンファーレでも吹いとく?



 ファンファーレは要らん。

 というか、こう、詳細がめちゃくちゃ適当な気がする。勇者の子孫に関しての詳細超適当だもん。逃げの鬼も治癒魔法を極めた者も超適当。最早鬼だよ鬼とか、原理?知るかって詳細どうよ。何が詳細なんだって感じなんだけど。

 そう思って白い目で表示されている詳細を見ていると、オールは楽しそうに苦笑しながら「あー」と声をあげた。



「称号は昔遊び半分にシステムを作って、最初は余が管理をしてたんだけど面倒でね。自動で良い感じにアップデート重ねていけるように設定して適当に放り出したんだ。そのせいか、真面目な詳細説明とそうじゃない詳細説明が混ざっちゃったんだよね」



 「放り出してからは好き勝手に適当な称号も新規作成してるみたいだし」と、オールはとても楽しげな様子で苦笑した。

 何というか、困った事ではあるからポーズとして困った顔をしたいけれど、でも面白いし楽しくてしょうがないのを隠しきれて無い、みたいな表情してる。にやけを抑えれてないって感じ。



「……オールは本当に神様なんですねー」


「信じてなかったの?」


「普通は信じないんじゃないかな」


「そうね、わたくし達は実際にオールになる前の神様を見てるから理解してるようなものだし」


「だがイーグルは説明を受けて即行で「そうか」と納得していたぞ」


「鳥人も獣人と同じで、人間よりも五感が優れてるんだよな?ならソレ系か?」


「いや、私達鳥人は獣人程五感は優れていない。あくまで人間よりは、という程度だ。ただまあ心を読まれまくったし、否定しても何も意味は無いからな。否定して関係がぎこちなくなるデメリットを考えれば、「まあなんかそういうものなんだろう」という雑な納得をしておいた方が楽だ」


「本気で雑だな」


「正直言ってホリィさん、オールだけじゃなくてパンドラに関してもよくわかってないんですけど」


「長年生きてきた儂からのアドバイスとしては、深く考えてもどうせ答えが出ぬものは出ない。それがわかったら後は程ほどに理解を深めつつ、体感で丁度良い距離を探ってあとは成り行きという感じだな」


「そうよぉ、どうせ五百年くらい生きたら人間なんて大して変わらないんだからぁ。5歳の幼女と80歳の老女の差なんて桁と文字が一つ違うくらいしか差が無いものぉ」


「結局は年下って事に変わりは無いしな」



 上からホリィ、アレク、アリス、フローラ、リオ、コン、イーグル、パンドラ、ホリィ、ロン、イース、ハイドの順である。

 ……まあ確かに、千年とか万年とか生きてる側からすれば幼女も老女も大して差は無いか。そしてその内私もそっち側の思考になってくんだろうなあ。

 もう既になってきてるとかの突っ込みは不要ナリ。まだ気付かない振りを続けさせてたも。

 まあとりあえずあんま考えたくないので思考を切り替えて、……どうしよう。



「思考を切り替えた瞬間にいきなり「どうしよう」ってどういう意味だい?」


「さらっと心の声に質問してきたね」



 良いけど。オールならそれがデフォだってわかってるし、正直心の声に当然のように返事があるのはイースのお陰でとっくの昔に慣れてるから良いけど。でも本当、他の人にはやらないでね。人によってはめっちゃ嫌がられると思うから。

 そんな内心を読んだのか、「うん、わかった。気をつけるよ」と微笑みながら言ったオールに一抹の不安を抱きながら、私は困り事の内容を打ち明ける。



「ホラ、一応戦争を無血で終結させる案は出したわけじゃん。セレス達も「いける」って言ってくれたから、そこは安心してるんだけど……」



 でも、懸念は残ってる。



「……バーバヤガの王、使用人の命を勝手に使用して邪神召喚とか仕出かさないかと……」



 頭を抱えてそう言うと、「まあ、実際出来てしまうからね」とオールは言った。



「出来るの?」



 ノアの問いに、オールは「うん」と頷く。



「召喚には魔法陣と、あと生け贄と、強い欲望と、それっぽい詠唱があれば出来ちゃうから」


「……それっぽい、で……良い、の……?」


「邪神が面白いって判定を下せば来れちゃうからね。その辺はそこまで重要じゃないんだ」



 うっへえ……。

 ラミィの問いへの返答に、私は思わず舌を出した。いやだって狂気とか混乱とか何かその辺を司ってる感じの邪神だとすると普通に来かねない。特に自分勝手な理由で他人の命を生け贄にする辺りの外道さとか好みそうだもん。

 セレス達が言うには準備には移動を含めても数日は掛かるらしいしなー……。

 一応こっちでもやれるだけの準備……というかコネと伝手を使用しようとは思ってるけどね。



「けれど邪神なら問題は無いだろう」


「え、そうなの?」


「ああ」



 オールはにっこりと笑って十字架が浮かぶ金目を細め、頷いた。



「だって、彼……いや、彼女でもあるのか。まあとりあえずあの子という呼称を使うけれど、あの子はそうあれという思いで作られた純粋なる悪だからね。要するにどれだけの悪であろうが、模造品の人工物だ。本物には程遠い。何よりあの子の内心を知覚する限り、余達の……ミーヤの敵になる事は無いさ」


「?」



 どういう事かと問おうとすると、その前にパンドラがオールの頭を軽く小突いた。



「言い過ぎだ」


「うん?何がだい?」


「ネタバレし過ぎ。それと存在に関する事も言い過ぎだろう。そこは本人以外が言ってはいけない領域だ」


「ふうん?その思考はよくわからないけれど、うん、気をつけるよ」



 気をつけるって言うけど、何を気をつけるかはわかってないよね、オールって。いやまあ私としても言語化するの無理だから何も言えないんだけどさ。こういうオブラートとか言っちゃいけない暗黙の部分とかって説明し辛いよね。

 そう思っていると、パンドラは目を伏せながら「言って良い部分としては」と言って私の腰にあるアイテムポーチを指差した。



「もうすぐ向こうからの干渉が来るぞ、くらいだ」


「ああ、確かに先程からそわそわした様子でこちらの様子を窺いながらタイミングを計っていたね」



 だからどういうこっちゃねんと思いながら頭上にハテナマークを浮かべていると、



「ん?」



 パンドラが指差している私のアイテムポーチから突然赤い光が放たれ、見覚えのある点滅を繰り返し始めた。



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