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異世界で魔物使いやってます  作者:
バーバヤガ編
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無事の報告



 ホリィさんを救出した翌朝、私達は宿屋で遅めの朝食を食べていた。



「いやー、こんな豪華な食事が食べれるなんて幸せですね!軟禁されてた間は高級食材なのに味が微妙って感じの料理ばかりだったので、質の良い素材で作られた美味しい料理が食べれてホリィさんは最高の気分です!」


「それは良かった」


「はい!」



 にっこにこな輝く笑顔でそう頷き、ホリィさんはサラダを頬張った。

 あの後、ハイドの作った服に着替えたホリィさんは素直に部屋を出てくれた。どうも、あのドレスを着続けるのが本当に嫌で嫌でしょうがなかったから即座の脱出をしようとしなかったらしい。



「ホリィさん、ああいうヒラヒラ系苦手なんですよ。パーティなんかで着るドレスなんかには憧れますけど、それはそれこれはこれ。ホリィさんが選んだわけでもないドレスとか拘束着でしかないですからねー」



 そんな風に言っていたホリィさんの今の格好は、結構シンプル。

 上は肩から肘辺りまでが開いているデザインの白いタートルネック。袖の部分が少し変わったデザインで、着ぐるみのように丸みがある。そしてこう、手を出す部分が手袋みたいになっていて、指だけが出る作りだ。



「本当は手袋をしたかったんですけど、治癒系魔法を使う時は素手の方が相手に安心感を与える事が出来ますからね。でもやっぱり旅をする時に手袋は欲しいし、でもでも指は動かしやすくないと……って考えた結果こういうデザインに」



 うん、腕の方にはデザイン的に丸みがあって、でも肩と二の腕が出てるからホリィさんの細さがわかる。そして体側は体のラインに沿うピッタリデザインだから、太く見えたりもしない良い服だ。

 下は動きやすさ重視らしく、細身のズボン。靴は汚れが目立たないようにか、黒いブーツを履いている。下半身は完全に動きやすさ重視って感じだから、本当にあのドレスは動きにくかっただろうね。

 まあそんな感じで着替えたホリィさんとバーバヤガの王城から脱出し、昨夜は同じ部屋で寝た。これも勿論理由はある。要するに防犯的な理由だ。

 私達と一緒なら手を出せる者は居ないだろうという判断で、安眠の為にこうなった。寝る必要が無い組が自然と寝ずの番をやってくれるしね。

 そんな感じでぐっすりと寝て、遅めの時間に起床。で、朝食の真っ最中というわけである。



「それで、これからの予定は?」



 そう言いながら、リオは皿の上に盛られた糸をまるでパスタのようにフォークに絡めて食べる。



「既にホリィ……っつか、聖女が脱走したのは発覚してるみたいだしな」



 積まれたラム肉を飲み物のように減らしていくコンの言葉に、「そうなんだよねー」と私も頷く。



「外からの話し声からすると、大事おおごとになるのも時間の問題かな」



 バーバヤガ人は入って来れない宿屋だから安全が確保されているとはいえ、外の通行人達の大きな会話はしっかりと耳に入ってくる。



「おい!聖女は居たか!?」


「いやこっちには居ねえ!ゴミ箱ひっくり返したら野良猫に引っ掛かれた畜生全部聖女のせいだ!」


「それはゴミ箱を持った時点で人が入ってる重みがどうかを察せれなかったお前のせいな気もするが、おう!そうだな!」


「くっそ……!おい、お前ら聖女は!?」


「見つかってねえよ!」


「くっそ!くっそ!何で脱走なんかしやがったあの聖女のやつ!お陰で今日は朝から賭場で遊びまくるっつー予定が台無しだ!」


「おいこらテメェ今日別に非番じゃねえだろ」


「兵士職舐めてんのかテメェ。ちなみに俺は舐めてる」


「バーバヤガの兵士は全員舐めてるに決まってんだろうが!」


「つか馬鹿な事話してねえでさっさと探すぞ!次はあっちだ!このままだと聖女に賞金が懸かるかもしれねえ!」


「あ?賞金懸かるなら懸かってから捕らえた方が得じゃねえか」


「馬鹿野郎!あの王様が自費負担するわけねえだろ!俺らの給料からちっとずつ引かれて賞金にされるんだよ!」


「つまり俺が聖女を捕らえれば俺がハッピーになれるという事か!」


「一般人が捕らえた場合は俺ら損しかねえって事だよ!」


「……ほっほう、良い事聞いたぜ」


「コイツはまた美味い話が出たもんだなあ」


「王城に聖女が居てどうのこうのっつーのはここ最近よく耳にしたが、そうかそうか聖女が脱走なあ……しばらく泳がして賞金の額釣り上がって黄金の聖女になるまで待つか」


「まあそんな事言いつつも実際に賞金懸けられたら即行捕まえようとするんだけどな」


「だって俺達目先の欲に目が眩みがちなバーバヤガ人」


「目の前に金があったらそりゃゲットしにかかるよなー」


「……顔が良かったら献上する前に味見してえな」


「いや、ソレは流石に駄目だろ。聖女を犯したら聖女じゃ無くなるかもしんねえし」


「あ?いやでもうちの主神は邪神様じゃねえか。欲に塗れてた方が喜ぶんじゃね?」


「あー、あり得る。伝説とか聞く限りじゃ心病んだ奴に甘い言葉を掛けて陥れるのが好きっぽいもんな」



 ……既に大事になっている気がする。



「……ホリィさん、絶対に宿屋の外には出ないでくださいね」


「いや、今の聞いて「よし外に出ますか!」とか流石に思いませんて。身の安全第一ですよ」



 「カチューシャ取られたらホリィさん完全にアウトですし」と言い、ホリィさんはスープを飲んだ。



「ですが、困りましたね」



 フルーツを食べながら、ハニーは眉を顰める。



「このままではツィツィートガルまでの移動が出来ません」


「そうだね」



 うん、とシャーベットを口に運びながらアリスも頷く。



「ホリィをツィツィートガルまで送るのは、イース達の認識阻害があれば大丈夫だとは思うけど……このまま放置しておくと、無関係な人にも被害が出そうっていうか」


「ホリィ似の娘が無理矢理連行される可能性もあるな」



 アサリの酒蒸しを貝殻ごとお煎餅のようにバリボリと食べながら、ロンも眉を顰めてそう言った。



「困ったね……」



 戦争を無血で終わらせる案もまだ出てないし。

 ……いや、一応あるんだよ、案。無くは無いんだよ、案。でもちょっと、こう、成功するかどうか微妙も微妙っていうか……具体的には王族の協力が必須というか。あとそれ以外にもちょっと協力が欲しいっていうか。

 ただなー……邪神云々に関してはなー……何も案が無いんだよなー……。

 まずはセレス、は無理でもタバサに連絡を取れんものだろうかと思いながら、隣に座っているジェムの口元に付いている石の食べカスを拭っていると、



「お久しぶりであります!」



 急に聞き覚えのある声を掛けられた。

 振り向くと、見覚えのあるウサギ獣人が敬礼をしていた。って、



「ブリジャーさん?」


「そうであります!」



 獣人部隊のブリジャーさんじゃん。何でバーバヤガに居るの?



「実はですね、自分先日の遠征で諜報係としての才能を認められまして!獣人部隊の諜報係としてバーバヤガに潜入してたんであります!」


「おお、何か凄いですね!おめでとうございます!」


「あの時ミーヤさんが自分の得意分野を活かすようにと教えてくれたからであります!」



 軽く手を上げてみると、ブリジャーさんは軽くハイタッチしてくれた。おお、兵隊っぽい性格かと思ってたけど普通にこういうのに対応も出来るタイプか。流石ノリが良いツィツィートガル人。

 と、皆の方に視線を戻すと、半数が首を傾げていた。

 ……あー、獣人部隊と接触してたのって魔王国行く前だもんね。私の記憶を見たロンとか、全知であるオールは知ってるみたいだけど……それ以外の皆は知らなくて当然か。知っててもローランくらいっぽい。

 私が普通に接してる事から警戒はしてないみたいだけど、ちゃんと紹介した方が良いよね。



「皆、この人はツィツィートガルの獣人部隊に所属してるブリジャーさん」


「よろしくであります!」



 ビシッと敬礼をしたブリジャーさんに、それぞれ初対面のメンバーが自己紹介をする。



「……それ、で……ブリジャー、何か、用……あった、の……?」



 ラミィのその問いに、「そうでありました!」とブリジャーさんはポケットから魔道具と思われるアイテムを取り出した。



「自分はつい今朝までその辺をうろついたりして有益な情報を得ようと耳を澄ましていたのでありますが、マールさんにコレを渡されまして!何でも、「俺らは情報操作とかする必要があっから、これ渡しとけ」との事です!」



 どういう事だろうと首を傾げると、イースが微笑みながら「昨夜、二人に伝えておいたのよぉ」と言った。



「ホリィを助けたって事を報告しておいたらぁ、「なら情報操作をして混乱させておこう」って言ってくれたのよねぇ」


「成る程」



 そういや昨日の夕飯時に話した時はホリィさん救出作戦の事言ってなかったもんね。成功する確証は無かったから。そっか、報告しててくれたんだ。



「ありがとう、イース」


「うふふ、どういたしましてぇ」



 くすくす、とイースは赤みがかった紫の瞳を細めて笑った。



「……でもねぇミーヤ?夜遅かったからって気遣いをするのは当然だけどぉ、諜報を得意とする元暗殺組織のメンバー相手にその気遣いは要らないと思うのぉ」


「あー」



 そっか、そういやそうだわ。夜遅いし明日言おうと思って寝たけど別に全然活動時間か。次から気をつけよう。次は無い方が嬉しいけど。

 そんな事を考えている間にブリジャーさんは空になっている皿をささっと積み上げて横にやり、魔道具を設置して作動させる。その瞬間、魔道具の上の空間にテレビ画面のようなホログラムが映し出された。



「って、セレス?」



 ホログラムに映し出されていたのは、セレスだった。こっちの音が向こうにも伝わっているのか、セレスは「はい」と頷いた。



「……お元気そうで、安心しました」



 本当に心の底から安心したんだろう表情でそう言ってくれたセレスに、私はにっと笑って答える。



「うん、元気。あとね」



 私はホリィさんの方を指差す。



「ホリィさん、無事救出したよ」


「あ、はい、救出されました」



 ホリィさんは戸惑ったようにそう言ってから、小声で私に問い掛ける。



「……あの、あの方って姫様じゃないですか?」


「はい、第四王女ですよ」


「何で第四王女にタメ口で一般人であるホリィさんに敬語使ってるんですかミーヤ」



 ……な、何となく……?

 特にこれといった理由も無いから答え難いなと思っていると、ホログラムの向こうでセレスは近くに居る誰かを手招きした。そして画面に顔を出したのは、



「姉さん!」



 心配そうな顔をしたルークだった。

 しかしそれに対し、ホリィさんはけろっとした表情で「ルークじゃないですか。何か痩せました?」と言った。……いや、それ多分ホリィさんが原因じゃないっすかね。



「……姉さんのせいだとは思わないのか?」


「何でホリィさんのせいになるんですか。ホリィさんは被害者ですよ」


「姉さんが被害者になったから弟の俺は心配してやつれたんだよ!」


「繊細ですねー」



 「ま、見ての通り無事ですよ」とケラケラ笑ったホリィさんを見て、ルークは疲れたように「そうみたいだな……」と呟いた。



「で、姉さんはちゃんと帰って来る気はあるんだよな?まさかとは思うけど、バーバヤガで治癒活動するとか言い出さないだろうな」


「誘拐軟禁、挙げ句の果てに聖女だか生け贄だかにされそうになりましたからね。そんな危険区域でほけほけと治癒して回ったりは流石にしませんて」


「今何か聞き捨てならない言葉が混ざってなかったか?」


「まー気にしてもどうにもなんないですから気にしない気にしない。変に気にし過ぎても頭部が寂しくなるだけですよ」


「遠回しにハゲろって言ってないか!?」


「いえ、普通にダイレクトで言いました」


「尚酷い!」



 この姉弟仲良いな。



「まあ、帰って来る気があるなら良いや。治癒活動は止めないから、出来るだけバーバヤガから離れた場所で活動しろよ、姉さん」


「あはは、そうですねー。まーその辺はミーヤ次第なトコがある気がしますけどね」



 ん?と私とホログラムの向こうのルークは首を傾げた。今何か違和感があったような。



「……姉さん、迎えは要るか?」


「え?要りませんよ別に。ホリィさんはミーヤの嫁になるつもりですし」


「えっ」


「え!?」



 ホリィさんの衝撃発言にホログラムの向こうのルークは私を見て、そして初耳だった私はホリィさんに視線を向けた。いや、え?そんなフラグあった?無かったよね?

 どういうこっちゃと混乱していると、私の視線に気付いたらしいホリィさんはにっこりと微笑んで拳を握り、私に言う。



「大丈夫です!ホリィさんは正直家事とかいまいちですが、治癒魔法はピカイチですからね!」


「いや別に家事出来る出来ないは特に嫁にする基準には入ってないんですが」



 料理は基本イースとハニー任せで時々それぞれがお手伝いって感じだしね。



「あと胸が大きいです」


「確かに大きくて魅力的ですけど、別に胸のサイズは嫁基準に入ってないです」



 まあ嫁の巨乳率高いのは事実だけどね!

 イース、ラミィ、アリス、マリン、フローラと胸が大きい子は多い。他は男や、生殖機能が無かったり性別が無かったりするからペタンコという理由がある。そして私はおっきいおっぱい派である。

 ……あれ、コレは最早基準か?巨乳だと私の嫁になりやすいという基準が生まれてしまっているのか?

 すると、ホリィさんはハッとした様子で言う。



「まさかもう嫁の数は増やせないとか!?」


「全然余裕ですしホリィさん美人さんだし良い人だからこっちとしては拒否する理由が皆無ですけど、その分ホリィさんの方が私の嫁になるメリットは無いと」


「あ、言質」


「え?」



 ルークのぼそっとした呟きにハテナマークを浮かべると、ホリィさんはキラキラした笑顔を浮かべながら私の事を抱き締めた。



「それはホリィさんが良いと思ってるなら良いって事ですね!」



 ちょ、顔埋まってる顔埋まってる。細身なのに大きいおっぱいに私の顔が埋まってる。



「一目見てキュンと来たと思ったら助けに来た発言、そして甲斐性抜群!将来も安泰だろうミーヤは最高の旦那様なんですよ!現在ホリィさん24歳ですけど、正直三十代になる前に嫁ぎ先が見つかるかどうか不安でしたからね!こんな最高の旦那様逃したく無いです!」



 おっぱい柔らかいし良い匂いするしふわふわしてるしで私が拒否する理由が皆無にも程があるんだけど、その辺は私の一存じゃ、



「ホリィにミーヤを勧めたのは私だからぁ、反対はしないわよぉ?」


「まあ、俺様からすればこうなるのはわかってた事だしな」


「全知故にミーヤの内心もわかっちゃってる余としては、かなり乗り気みたいだから良いんじゃない?」


「イース様を始めとしてパンドラとオールまでこう言っているのであれば、問題は無いかと」


「イースとハニーがそう言うなら自分達は反対する気ないよ!後輩大歓迎!」


「ああ、じゃあ私は先輩達に同意という事で」



 私の一存じゃ決められないって思う暇すら無く怒涛の許可。ちなみに上からイース、パンドラ、オール、ハニー、マリン、イーグルの順である。

 ……ああうん、そうね、別に養えないわけじゃないし、良いか。



「……許可出たし、これからよろしく、ホリィ」


「はい、よろしくお願いします!」



 ホリィさんはにこにことご機嫌な笑みを浮かべた。



「何だか凄い展開で付いていけませんでしたが、ご結婚おめでとうであります!」


「あ、ありがとうございます」



 そういやブリジャーさん居たね。本当すみません色々置き去りにしちゃって。なのに力強い拍手してくれてありがとうございます。

 何か連日で嫁が増えたなと思っていると、ホログラムの向こうではルークが困ったように頭を抱えていた。



「……この場合、俺はミーヤを義兄さんと呼ぶべきなのか……?」



 基本的にこの世界ではその辺の呼称は呼ぶ側と呼ばれる側が納得してれば自由に呼んで良いらしいけど、とりあえず義兄さんは無しで。夫の自覚はあれど女を辞めた覚えは無い。



「ここ開いてます?」「ああ、開いてますよ。どうぞどうぞ」みたいなノリでミーヤの嫁が増えていく……。

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