ツケ凄い
「いやいや」と言ってもホリィさんも一歩も引かずに「いえいえ」と言ってくるので、仕方なくホリィさんに迎え入れられるがまま部屋の中に入った。……軟禁部屋のはずなのに、救出しようとしてた軟禁されてる人にその部屋に迎え入れられるって変な感じ。
……いやまあ、一応私もこれで良いのかなって思ったよ?思ったけどホリィさん全然引かないし、力ずくで連れてくのはやだしって思って。で、一応従魔用テレパシーでパンドラに確認を取った。
(ああ、今はそこなのか。迎え入れられた方がホリィが居なくなったという事実に気付かれ難いから、そのまま迎え入れられてくれ。無理矢理今ホリィを連れて行くと夜中の内にそれが発覚してしまうが、少し話をしてから出ると朝まで発覚しないからな。そっちのルートの方が楽だ)
外に見回りの人が来たら切られた鉄格子とか発見されて大変な事になるんじゃなかろうかと思ってたけど、どうやら大丈夫らしい。多分。
………………。
「あの、ホリィさん。外に見回りの人とか来たりしませんよね?」
駄目だ不安。
不安のままにそう問い掛けると、ホリィさんはドレスの裾を翻しながら振り返って「大丈夫ですよ」と微笑んだ。
「なんかですね、ここんトコ軟禁されてたんで窓から観察とかしてたんですけど、どうもこの城の見回りって夜中に一回だけなんですよ。日付けが変わる前に城の周りをぐるーりと回ってはい終了って感じで。だから朝まで安心ですよ」
「誰か来たとしても酔っ払いですから、適当な壷で殴って外に放り投げておけば良いですし」とホリィさんは鼻歌混じりに言った。
すると、私の首に背後から骨の腕を回して抱き憑いていたアレクがこそっと耳元で囁きながら、部屋の隅を骨の手で指差す。
「……ねえミーヤ、適当な壷ってこの部屋に一個しかないんだけどさ、アレかな?」
「多分アレじゃないかな……」
アレクが指差したのは、子供くらいならすっぽり納まるだろうサイズの壷。壷というか水瓶な気もするけど、他に壷っぽいのは見当たらない。
……さっきの酔っ払い達よ、あのままゲロの中で眠っててくれ。こっち来たら壷で頭割られるかもしんないから。
「いやー、それにしても嬉しいですね、助けに来てくれた人が可愛い子で!バーバヤガに来てからは嫌な感じのする人にしか会えてなかったから良い子そうな子に会えただけでホリィさんの機嫌急上昇ですよ!ミーヤ……と、他の人達はパーティですか?」
棚から高級そうなティーセットを取り出ながらのホリィさんの問いに、私は「あ、いえ」と返す。
「私は魔物使いで冒険者なんですけど、他の皆は私の従魔であり私の嫁です」
「おお、ハーレムですね?」
「はい。人数が多いんで、これでも半数以上お留守番してますけど」
「ほほう、若く見えるのにミーヤってば実は中々のやり手なんですね」
いや、やり手かどうかはちょっとわかんないからそう頷かれても……。
「それで、えーと、皆さんのお名前は?」
首を傾げながらそう言ったホリィさんに、まずイースが手を上げた。
「私はイースよぉ」
「あ、僕アレクね」
「ハイドだ」
「僕はノアだよ」
「で、俺がローラン」
「ローラン?」
ローランが自己紹介すると、ホリィさんは不思議そうに首を傾げた。
「……どっかで会ったりした事ないですっけ」
「会った事は無いが、多分ルークが手紙に書いたんじゃないか?俺元王の剣メンバーだし、種族人間だし」
「……よくわかりませんけど、とりあえず人間も従魔になれるって事はわかりました」
「世界の仕組みって不思議ですねー」と、雑な感じに納得したらしい。ホリィさんはうんうんと頷いた。
「あ、ところで何飲みます?紅茶と緑茶とウーロン茶のどれかしかないですけど」
「軟禁部屋にしてはアメニティが充実し過ぎてません?」
お茶の種類が三種類もあるとか結構な好待遇に感じるけど。
……それに、この部屋他にもかなり良い家具が揃ってるんだよね。棚もベッドも高級そうだし、ソファもテーブルも高級っぽい。カーペットとかも、正直言うといつもの宿屋のカーペットの方が質良いけど、でも普通のペラいカーペットとは違ってふかふかしてるし。
「これらはですね、ホリィさんの機嫌を取ろうとしての事なんですよ。ホラ、知ってるかもしれませんがホリィさん捕まった時にちょっと結構な事やらかしちゃったんで。だから、「設備整えるから大人しくしてろよ」って意味なんですよね、コレ」
「まあホリィさん、こういうヒラヒラ系好みじゃないんで懐柔とかされませんけどねー」と、ホリィさんは苦笑気味に笑った。
「ところでお茶は?」
「あ、紅茶で」
「はーい」
「ちょっと待っててくださいねー」と言って、ホリィさんは室内に置いてある火の魔石がセットされた入れ物に水を注いでから、お湯になったソレを茶葉セット済みのティーポットに注ぐ。
それを見ていると、突然廊下からドンドンと強い力でノックされた。
「おい!さっきから何かうっすらと話し声が聞こえてるぞ!誰と何話してやがる!?」
「なんですかもう」
扉の向こうからの、恐らく見張りだろう男の声に対し、ホリィさんはティーポットの中を確認しながら面倒臭そうに言う。
「夜の見張りになって眠いからって八つ当たりしないでくださいよ」
「八つ当たりなんてしてねーし!してねーかんなボケ!別に俺が眠気とバトってる最中すやすやと天蓋付きふかふか高級ベッドで寝てるんだろうなって思って明日の夜にヒイズルクニ式の呪いを掛けてやろうとかくらいしか思ってねえ!」
「正面から来ない辺りが女々しくてねちっこいですねー。そこは部屋の中に入って一人かどうか確認してから発言してくださいよ、男なら」
「まあ入ってきたら普通に金的食らわせますけどね」と言いながら、ホリィさんは人数分のティーカップに紅茶を注ぐ。
「ちなみに今聞こえたらしい話し声はアレですよ、ホリィさんの日課であるイマジナリー妖精との会話ですよ。ホリィさんってばバーバヤガに来てから妖精さんと話す能力身に着けちゃったんですよねー」
物凄い棒読みで凄い事言ってらっしゃるこの人。イマジナリー妖精とか言っちゃってるし、バーバヤガ人である見張りの人がそれに納得するわけ……。
「イマジナリー妖精っておま……いや、まあ、確かに閉じ込められてたらそんくらいの症状が出てもおかしくはないか……。実際バーバヤガの牢屋に入った奴は時々「ああ!窓に!窓に!」って発狂する事もあるらしいし……」
おい後半小声だったけど聞こえたぞ。何そのクトゥルフ的叫び。邪神を主神として奉ってるからそんな前例が起こるんじゃないだろうか。
「他の見張りさん達から聞かされてたりしないんですか?今日の見張りさんは嫌われ者なんですね、可哀想に」
「誰が嫌われ者だクソアマ!この王城内じゃ俺くらいの奴が普通なんだよ!本気の嫌われ者はマジで会話通じねえんだからな!まあ王様の事だけどよ!」
この見張りの人雇い主を嫌われ者って言ったぞ。
「……つか軟禁してる聖女が精神病んで妖精と話してるとか誰も報告しねーっつの」
またもや小声が聞こえた。確かに精神病んだまでならともかく、妖精さんとお話してますはちょっと言い難いよね。
……いや見張りなら報告しろよ。聖女ならあり得ると思うの。ホリィさんの棒読み具合からするに十割虚言だろうから良いけどさ。
「まあ多少病んでる方が邪神様も喜ぶかもしんねーし、死なない程度に好きにしとけ。死にさえしなけりゃ自傷癖くらいまで病んで良いから。んじゃ俺もうここで寝るから幻覚の妖精とは小声でくっちゃべろよ」
「ふあーあ」という小さな欠伸の後、どうやら見張りの男は本気で寝始めたらしい。あっという間にいびきが聞こえ出した。
……野比さん家の息子さんかお前は。
というか邪神の生け贄にする事とか凄いペラペラ喋ってるみたいなんだけど、それで良いのか見張り。あと人に対して病めとか言うなや。
しかしホリィさんは特に気にしてないらしく、紅茶の入ったカップをそれぞれの前に置く。
「もう安心ですよ、無事誤魔化せましたから」
にっこり笑顔で言うのは良いんだけど……。
「あの、誤魔化される方も誤魔化される方だと思いますけど、誤魔化す方もそれで良いんですか?」
精神病んでるってレッテル貼られちゃってましたけど。
だが、ホリィさんは本気で気にしていないのか、自分のカップを手に取った。
「どうでも良い他人にどう思われたって別に「何か鳴き声がうっさいですね」くらいしか思いませんからねー」
紅茶を飲みながら、ホリィさんは何でも無い事のようにそう言った。
……ホリィさん、結構言う事キツイね。
「それに万が一入って来ても、金的して気絶させた後に頭がおかしくなるような幻覚をちょっと見せれば数日の間凄く大人しくなってくれますよ」
「それ相手人間的に死んでません?」
人間的に死んで無くとも脳が死んでいる気がする。
「大丈夫ですよ、ホリィさんは色んな人を治してるから限界値はわかってます。……多分」
「多分なんですね……」
思わずツッコむと、ホリィさんは綺麗な微笑みを浮かべた。あ、はいツッコミ無用と。
まあターゲットは悪い人オンリーみたいだから良いかと判断し、私はアイテムポーチからハニーの蜂蜜を取り出す。
「あ、キラービーの蜂蜜なんですけどホリィさんも紅茶に入れます?」
「マジですか!?昔一度舐めた事があるんですけどキラービーの蜂蜜ってとっても美味しいですよね是非ください!高級品だから買えないんですよ!」
瞳をキラキラさせながらそう言ったホリィさんに、私は苦笑しながら「好きなだけどうぞ」と蜂蜜の入った瓶を渡す。
「おー、黄金色でキラッキラしてますね!これキラービーの蜂蜜の中でも高いんじゃないですか!?」
「あ、いえ嫁が作ってくれる蜂蜜なんで」
「嫁?」
「嫁の中にキラービーが居まして、その子が作ってくれた蜂蜜なんです」
「成る程、ミーヤは一番普通に見えて一番普通じゃないんですね。よくわかりました」
何故だ。皆も「そうそう」って頷かないでよ。普通だよ。ちょっと不老長寿な人間だよ。愛が無限で感情を反射するだけの異世界人だよ。
……普通では無いな、我ながら。
ホリィさんは蜂蜜をたっぷり入れた紅茶を飲んで一息つき、「いやー、お迎えが来てくれて助かりましたよ」と笑う。
「流石に誤魔化し続けるのにも限度がありますからねー」
「誤魔化すって、さっきみたいにですか?」
「ああいえいえ、あれは今回限定の適当誤魔化しですよ」
やっぱアレ口から出任せだったのか。
「誤魔化すっていうのは、戦闘能力の事です」
溜め息混じりにそう言ったホリィさんに思わず「え?」と呟くと、「だろうね」と紅茶を飲みながらノアが頷いた。
「僕は人形だから、人間観察が結構好きなんだ。それで君の事も軽く観察してたけど、ドレスで身動きが封じられている状態で金的蹴りをするならそれなりの筋力が要る」
「しかし君はそこまで筋力があるようには見えない」とノアは続ける。
「強化系魔法は使えるようだけれど、だからって毎回無傷で迎撃出来るとは思えないからね。少し違和感を感じていたんだ」
「あー、やっぱりわかる人にはわかっちゃうものなんですね。人ってか人形ですけど」
ホリィさんはへらっとした笑みを浮かべているし、他の皆もノアに同意みたいだけどどういうこっちゃと首を傾げていると、ホリィさんは頭に付けている白いカチューシャを指差した。
「このカチューシャに、うちに伝わる秘密の術式を仕込んであるんですよ」
「秘密の術式?」
「はい」
ホリィさんは頷いた。
「実はホリィさんって、勇者の子孫なんですよ」
「当然ルークもですけど」と、ホリィさんはいきなりのトンデモ情報を暴露した。
「……え?」
「あ、いやあんまり距離とか取らないでくださいね?勇者の子孫なんてその辺に割りとごろごろ居ますから。ホリィさんも勇者の血がちょっぴり流れてるだけであって一般の生まれですし」
「言っちゃえば王族なんかは勇者の血濃いめですよ」とホリィさんは続けた。
……あー、そっか。昔は勇者とか結構来てたんだっけ。そして帰れた人は居なかったっぽいから、そう考えるとこっちに永住したって事で、つまりはこっちで子孫残したりしたわけだ。
そうか、それなら勇者の居た時代こそ違えど勇者の子孫は結構な数存在してるよね、そりゃ。
…………だからアランって王族に生まれたのかな?異世界人の血とか云々みたいなアレで。いやわからんけども。
「で、ホリィさんが使ってるのはそのご先祖様が遺してくれた術式なんです。……あ、どうもありがとうございますいただきます」
「いいえぇ」
ホリィさんはイースがアイテム袋から出したクッキーを摘まんだ。
……私も食べよ。あ、コレおからクッキーだ。深夜だからカロリーに配慮したのかな。
「この術式はですね、蓄積系の術式なんですよ」
「蓄積系?」
「んー、というよりはツケって感じですけど」
ツケ?
「例えば石で転ぶっていう事象を、ツケるんです」
「ツケ」
「はい。それをツケにする事で、ホリィさんは自分が転ぶという事象を回避出来るんですよ。怪我とかもツケれます。で、そのツケを他の人に払わせる事も出来るんですよ。ツケだから」
「ツケ……」
何か凄まじい術式だなソレ。永遠の図書館が劣化を弾いていたみたいなアレ系の魔法だろうか。
「なのでホリィさんに攻撃しようとした人からの攻撃をツケて、怪我をするという事象を相手に支払わせるんですね。そうするとあら不思議、適当に振り上げた足が見事相手の息子さんにヒット」
「うわあ、痛そう」
少し引き気味にそう言ってから、「僕死んでて下半身無くて良かった。まあ上半身も顔以外骨なんだけどさ」とアレクは呟いた。
「ふーん、成る程な」
一方、ローランは納得したように紅茶を飲みながら頷く。
「前にルークから、姉は凄く運が良いって聞いた事があったんだが……そういう意味だったのか」
「はい。まあコレ我が家に伝わってるとはいえ、女性限定術式なんですけどね。どうも勇者のご先祖様は女性だったらしくて、異世界では女性故のモラハラとやらに遭われてたみたいで」
ホリィさんは紅茶を飲んで頬を緩めながら、「で、その能力がまた凄いんですよ」と続ける。
「ご先祖様の能力、月経の痛みを男性相手に味わわせる能力なんです」
「えっぐ」
「しかも女性が相手の時は男性が金的された時の痛みを味わわせる事も出来たらしんですよ」
「えっぐ!」
それ男も女も答えが出ない争いをするやつじゃん!性差で違う痛みだし、でもその性別について回る痛みだし、痛みの種類も結構違うし、でも違う性別ってだけで理解出来ない痛みなもんだからどっちの方が痛いか論争をするやつ!
それを味わわせるとかおっわぁ…………まさかとは思うけど、その能力与えたのってオールだったりするのかな。凄いあり得そう。
……というか、私女だから金的はよくわかんないけど月経の場合は痛みに個人差あるよね。酷い人は本当もう貧血だわホルモンバランス崩れるわで大変らしいんだけど、それを味わわされた男性が居たんだろうか……多分ホリィさんのご先祖様の敵だったんだろうけど、ちょっと同情する……。
「で、この術式はその応用らしいんですけど、どうしても女性専用にしか出来なかったらしいんですよね。何か男が使おうとすると微妙に魔力の流れとかが合わなくて、自分に被害が及びそうな時は相手の頭上から何故か金ダライが降って来ちゃうというか」
「どういう事なの」
「だからもう、石にコケた時なんかは石の上の方から金ダライが降って来るんで、コケた上に金ダライに頭打たれるという悲惨な結果になっちゃうんです。結果この術式は女にのみ受け継がれるようになりました」
「そりゃ女にしか受け継げれませんよ……」
受け継ごうと思う男は芸人くらいしか居ないと思う。
「まあそういうわけなんで、このタネがバレたらホリィさんの無傷伝説は終わってましたね。術式自体は刺繍で仕込めるし、ご先祖様の血が流れている者の体のどこかに触れてさえいれば勝手に魔力使って発動する仕様なんで替えを用意する事は可能なんですが、だからって怪我とかしたくないですし」
「いやー」と、ホリィさんはケラケラした笑みを浮かべた。
「聖女に相応しい服をって言われてほぼ無理矢理このドレスに着替えさせられたんですけど、カチューシャだけは死守しましたよ。「これは両親の思い出の形見なんです!母が父にプロポーズする時に父に渡して生涯付けさせたという曰く付きの、ええ、まあ、はい、なんかそんな感じの大事な品でして!」って」
「何かおかしくないですか?主に男女の立ち位置が」
「ええ、ホリィさんも言い終わってからちょっと間違えた事に気付いたんですが、そこで「間違えました」って引いたらカチューシャが没収される可能性がありましたからね。やむを得ずホリィさんは父が付けていたとされるカチューシャを付け続ける羽目になりましたよ」
「いや普通に両親存命ですし、このカチューシャはホリィさん手作りだから父が付けた事なんて無いんですけどね?」と、ホリィさんは困ったように眉を顰めながらおからクッキーを齧った。
……まあ確かに、父が死ぬまで付けてたカチューシャを付けてる娘って目で見られるのはね。
と、そんな風に話していたら紅茶とおからクッキーが終了した。見張りの男性のいびきという名のBGMも結構な時間聞いている気がする。
「あの、ホリィさん、お茶とお菓子も無くなりましたし、そろそろ逃げません?」
自分で言っておきながら逃げるとは何ぞや?みたいな気分になるけど、今って誘拐軟禁されてるホリィさんの救出作戦の真っ最中なんだよね。何かのんびりと真夜中ティータイムしちゃってるけど。
「そうなんですけどねー」
そう言ってカップに残っていた紅茶を飲み干し、ホリィさんは困ったようにドレスの裾を摘まんで言う。
「……ホリィさんの服、持ってかれちゃってるんですよ。ホリィさん、流石にこんなヒラヒラのドレス着たまま表通りを通過とかしたくないです」
ドレスの裾から手を離し、ホリィさんは「はぁ」と溜め息を吐いた。
「あれ動きやすいしシンプルで気に入ってたのに、聖女っぽくないからって理由でこんな動き難いドレス着せられちゃいまして。ですから、あの、後でどうにか弁償とかもしますんで、着替えとか持ってないですか?」
ホリィさんは「この際透けない大きめの布でもバスローブでもありがたいです」と真顔で言った。
「……えっと、別に今まで着てた服に思い入れは無いって感じですか?」
「デザインは気に入ってたんですけど、もう大分痛んでたので。時々縫って直しながら騙し騙し着てた感じなんで、まあ別にって感じですかね」
「………………」
無言のままハイドに視線を向けると、ハイドは黒く尖った手を上げていた。
「我は闇毒スパイダーという蜘蛛系の魔物だから、糸を使って服を編み上げる事が出来る。そういう系のスキルも充実してるしな。……要するにデザインさえ教えてくれれば、作れるぞ」
「それも蜘蛛の糸だから普通の布より軽く、鉄より頑丈な服が」と言ったハイドに対し、
「…………神よ……!マジで大感謝します……!」
ホリィさんは両手を組み、微妙に雑みのある祈りを天に捧げていた。
……というか天に居るのも間違い無いけど、これから向かう宿屋にもその神が居るんだよね……。
実は結構な割合で存在してる勇者の子孫。




