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異世界で魔物使いやってます  作者:
バーバヤガ編
263/276

奴隷連れ歩きはちょっと



 イーグルさんは見た目が完全に奴隷状態だから、可能なら即行で宿屋に戻りたかった、が、今は皆それぞれ情報集め中だ。

 ラミィ、ヒース、マリン、フローラ、ジェム、リオはお留守番。ラミィがお留守番なのは下半身が長くて小回りが利かないのが理由。フローラは同調スキルがあるから情報収集には助かるけど、わざわざ人の闇に触れさせたくは無い。なのでフローラもお留守番だ。

 そして情報収集をしているのはパンドラ班とロン班。パンドラ班はハニーとコンとローラン。ロン班はハイドとアリスとノアって感じに組み分けられている。

 最後にアレクだが、アレクだけは単独行動を選んだ。



「ホラ、僕って幽霊でしょ?物質を擦り抜けたりも出来るから、諜報係の人達とはまた違う方向からアプローチ出来ると思うんだよね。重要そうな書類とか見つけたら持って帰って来るね!」



 というような理由らしいけど、それって盗難……いや、まあ、幽霊のやる事だもんね。霊障の一種として見逃してもらおう。ポルターガイスト現象的な感じで。どっちにしろ重要な書類だったら諜報係の方が奪取する可能性高いしね!

 さておき、どうしよう。

 宿屋集合は夕方頃。今はお昼。どうせならバーバヤガにしか売ってない本とかをお土産に買いたいし、お昼ご飯も食べたいけど……連れ歩くのもなあ。

 宿屋にハイドが居たら一旦帰って着替えを作ってもらう事も出来たんだけど……あ。



「イーグルさん」


「?」



 首を傾げたイーグルさんに、私は言う。



「後でしようと思ってたんですけど、もう奴隷契約解除します?」


「!?」



 何故かめっちゃ驚かれた。羽が膨らんで一回り大きく見えるくらいもっふもふ。



「……?」



 イーグルさんは膨らんだ羽を落ち着かせてから、再び首を傾げた。



「「私の持っている情報と引き換えなんじゃないのか?」って言ってるわよぉ」


「ありがとうイース」



 内心の部分はスルーしてちゃんとイーグルさんの言いたい事だけをピックアップして通訳してくれたイースにお礼を言ってから、私はイーグルさんに視線を戻す。



「えっとですね、さっき話した私の仲間であり嫁の子達なんですけど、殆どが外に出てるんですね。戻って来るのは夕方で、だから今帰ってもちょっとアレかなって」



 「ちゃんと全員揃ってから聞いた方が良いと思うし、イーグルさんの声を取り戻せるパンドラも外に出てるから」と私は続ける。



「なのでそれまでの間ちょっと周辺を見て回ろうかと思って、でもイーグルさんは奴隷のままだから連れ歩くのはあまり良く無いかなって思って、ならもういっそ奴隷契約を解除して普通に同行者みたいな感じで観光すれば良いかなって」



 驚いたように目を見開いたイーグルさんに、オールが「ふむふむ」と十字架が光る目を細めて笑った。



「イーグル、君は「そんなに簡単に奴隷契約を解除して良いのか?あれだけの金額を払って買って、そしてまだ私は情報を開示してないというのに。確かに声はまだ戻っていないが、しかしそこにメリットなんて無いだろう。寧ろ逃げられる可能性というデメリットがあるというのに……」と思っているね」



 ……オール、オブラート忘れてないかな。多分それは「そんなに簡単に奴隷契約を解除して良いのか?」の部分だけが言葉として発したかった部分だと思うんだけど……。



「けれど、その疑問に対しては「ミーヤはそういう人間だから」と返そう。逃げられるという懸念よりも、奴隷を連れ歩く方がミーヤからすると問題だった。それだけだ」



 ……うん、まあ、大体合ってるから良いか。



「えっと、そういう事です。バーバヤガの人に奴隷だからって理由で何か言われるのも嫌ですし、変に絡まれたくも無いですし。だから、えーと……奴隷契約、解除します?」


「…………」



 私の言葉にイーグルさんは少し考え込んだ後、コクリと確かに頷いた。

 それを確認し、私はアイテムポーチに入れていた契約書を取り出して破く。力の入れ方をミスって四分の一破きみたいになったからもう一回破いておいて、



「火魔法、燃えろ」



 とにかく契約書よ燃えろという念を込めて魔法を使用すると、私の手の中にあった契約書の残骸は綺麗に燃え、塵になって風に吹かれて消滅した。

 ……うっかりしてたけど、別に手の中で燃やす必要は無かったよね。良かった無意識の内に自分にはダメージ無しって調整してたみたいで。危ない危ない。危うく手の平火傷するトコだったぞい。



「!」



 契約書が焼滅すると共に、イーグルさんの首輪もバキンと外れた。

 私は首を動かして感覚を確認しているらしいイーグルさん、の周囲に落ちた首輪の残骸を拾っておく。不法投棄はアカンだろうからね。アイテムポーチに突っ込んどけば良いかな。

 ……と、



「そのまま上半身裸で下がボロボロのズボンだけってのもアレですよね。布ならありますけど使いますか?」



 布はハイドが「何かに役立つかもしれない」と言って渡してくれたものだ。手触りがとても良いし質も良い、その上布によっては色も違うという素晴らしい品である。あ、あとお土産として渡し忘れた高級っぽい布もある。ホラ、あの、上級ドラゴンの巣で貰ったやつ。

 薄くて透けてて刺繍が施されてる布は女性用っぽいからと除外し、私はハイド手作りの布とちょっと厚めで大きめの柄が入ってる布を取り出してイーグルさんに見せてみる。



「…………」



 イーグルさんは布を見て、困ったように首を傾げた。それを見てイースがくすくすと笑い、イーグルさんの心境を話す。



「「そこまでしてもらって良いのか?」ですってぇ」



 ……そこまでって言われても、布だしな……。

 しっかりした服とかならともかく、これはただの布だ。それに使い道が無いと嵩張るだけなんだし、特に気にする必要は無いと思う。大前提として私既にイーグルさんの主じゃ無いわけだし。気遣い無用。



「えっと、私からすると布を渡すのは特に問題無いんですよ。正直言ってイーグルさんをその姿のままにしておく方が私の心境的に問題と言いますか。なので、はい、問題は無いです」


「…………」



 正直に思ったままを言うと、イーグルさんはペコリと頭を下げた。そして私が手に持っているぶ厚めで柄が大きい布と、ハイド手作りのちょっと薄めの布を羽で指した。

 どうぞと渡すと、イーグルさんはそれを足で受け取った。

 ……今、魔法の気配がした。そして差し出された足の爪とかに泥が無かった事と、さっきまでちょっとベタついてたイーグルさんの羽が綺麗になった事から察するに、自分に向かってクリーンを使ったのかな。



(鳥人は獣人に比べてそれなりに魔法を使えるのよねぇ。そして翼はあるけど手が無いからぁ、手でやる動作は基本的に足で行うのぉ。だから鳥人は皆日常的にクリーンを使うのよねぇ)


(成る程)



 イースから従魔用テレパシーで伝えられた情報に、私は納得してふむふむと頷く。そういや王都でよく見かけるタカ鳥人さん、フォークを足で持ってたような。あの人大体相方っぽい人と一緒に騒いでるからよく耳に入ってくるんだよね。

 よくよく思い返すと鳥人が使用する椅子は止まり木っぽいデザインの椅子だったりするし……成る程、アレは鳥人が使いやすい&足を使えるデザインなのか。まだまだ異世界の知らない事は沢山あるなあ。

 そんな事を考えている間に、イーグルさんはお色直しを終えていた。ハイドの薄手の布は帯のように腰に巻き、柄が大きめの厚手の布はポンチョのように巻いている。

 ズボンのボロボロ感が演出みたいに見える着こなしに、思わず「おお」と言って拍手してしまった。



「イーグルさんセンス良いね!」


「…………」



 素直にそう言うと、イーグルさんは拍手する私の手にぐりぐりと頭を押し付けてきた。あ、凄ーいふわふわー。羽ってカラスの羽が落ちてるイメージが強いから硬そうな印象だったけど、普通にふわふわだ。もふもふって感じ。

 って、あ。思わず癖で頭撫でちゃったけど良いんだろうか。手癖で目元とか撫でても大人しくしてるし、良い……のかな?



「懐かれたわねぇ」


「懐かれたね」


「二人共、成人済みの男性相手に言う事じゃないと思う」



 懐くて。



「獣人や鳥人みたいに獣の特性が強い種族の場合は頻繁に「懐く」って表現が使われるから良いのよぉ」


「うんうん、それにちゃんと理由もあるさ。鳥人の場合は翼を動かして飛ぶ為に、袖がある服を好まない。邪魔になるからね。イーグルへの気遣い、偶然とはいえ翼の邪魔にならなさそうな布を提供、そしてイーグルのセンスを褒める」



 「あっはっは!」とオールは笑った。



「これは懐かれても仕方ないね!何よりミーヤの傍は、ミーヤの特性上心地良い感覚を覚えるだろうから。うんうん、ミーヤに好意を抱いた上で接し、ミーヤにその好意を倍にして返されては懐くしかないだろう」



 そういうもんなんだろうか。よくわからんけど、イーグルさんが特に反応も反抗もせずに大人しくしてる事から考えると……うん、まあ良いか。中々味わえんであろう感触を楽しんどこ。

 ちょっとの間わしゃわしゃしてからイーグルさんの頭から手を離し、ふと私は本題を思い出した。



「あ、そうだ。買い物するんだった」



 ボサボサになってしまったイーグルさんの頭を軽く手で直してから、私はイースに聞く。



「イース、本屋とご飯では」


「バーバヤガの屋台は衛生的におすすめしないわぁ」



 マジか。衛生的におすすめ出来ない屋台とか超怖いんだけど。



「他国から来た人間が開いている、バーバヤガ国民お断りの店ならあるよ。ただし今の時間は満席みたいだから先に本屋に行くのを余はおすすめしたいかな」


「あー、お昼時だもんね」



 他国から来た人だってそりゃ安全なトコで食事したいだろうし、うん、納得。少なくとも本屋ならお昼時に混雑する事は無いだろうしね。



「オール、皆が喜びそうな本が揃ってる本屋さんわかる?」


「勿論だとも。余は全知だからね」



 にっこりと微笑み、オールは指差す。



「向こうにある本屋は品揃えが少ないが、その分珍しい本を取り扱っている。ただし店主は値段を吹っ掛けてくるから気をつけた方が良い。あっちの本屋は広く浅くという感じで様々な本を取り扱っているね。バーバヤガにしかない本も取り扱っているらしい」



 「他の本屋と比べて考えるに、この二つの店が良いと思うよ」とオールは笑った。



「ああ、古本屋に関してだけど、バーバヤガの古本屋は駄目だ」


「駄目なの?」


「管理が杜撰で保存状態が悪い。読めないくらいに虫食いになってる本も多いし、ページとページがくっ付いてしまっていたり、食べ物を零した跡なんかもある。読むのに適していないし本としての価値も無いからおすすめしない」



 オールはキッパリとそう言い切った。

 ……うーん、確かに保存状態が悪いのは嫌だよね。リオと会った時の事を思い返すに、リオって本がそういう扱いされるの地雷っぽいし。

 あ、今思い返すとバーバヤガの人間ってリオの地雷っぽい感じするよね。良かったリオをお留守番組にしておいて。町中でドラゴンが出たりインクが降り注いだりしたら目も当てられん。



「まあ、ミーヤが望むのであれば……というより、皆が望むのであれば、ミーヤのスマホの通販機能をアップデートして購入出来る範囲を増やしておこうかな。この世界の物品であればどの時代の何であろうと購入可能という仕様にしてしまおうか。全能では無いから未来の品は不可能だけど、うん、楽しそうで良いね。やって損は無いし、アップデートしておこう」



 おっと?何だかオールの独り言っぽいのを聞き流してたら何かが起こってたぞ?



「ああ、ミーヤ。たった今通販機能のアップデートを終了させたから後で確認しておいてくれ。今までと同様に代金はこちら持ちだから安心して購入して良いからね」



 既にアップデート終了済みだと!?



「……あの、オール?何事にも限度とかはあると思うんだけど」


「使用する人間であるミーヤに限度を守る気があるなら問題は無いさ。結局のところ、こういうのは使用する人間次第だからね」


「さいでっか」



 まあ、悪い事にはならなそうだから良いって事にしておこう。ロンとかめちゃくちゃ喜びそうだしね。



「と、ごめんねイーグルさん。よくわかんない話ばっかしちゃって」



 放置してこっちの会話をしてた事を謝罪すると、イーグルさんは首を横に振った。



「「聞いていてもよくわからない会話だったから問題無い」って言ってるわぁ」


「うん、ごめんなさい」



 こっちとしては聞いてもよくわからんだろうから良いやの気持ちだったけど、聞く側からすると知らないゲームの話を延々と聞かされてるようなもんだよね。本当に申し訳ない。



「えっと、それじゃあまずは本屋さんに行くとして……お昼ご飯、イーグルさんはコレ食べたい!みたいなのってあります?」


「…………」



 イーグルさんは困ったように首を傾げてから、首を横に振った。



「「現在は一文無しだから、食べたいも何も食べる為の金が無い」ですってぇ」


「いやイーグルさん?私達そんな外道じゃないからね?」



 それってつまりイーグルさんがお腹空かしてる横で見せ付けるかのように「美味い美味い」ってご飯食べるって事じゃん。



「そんな悪質な事はしませんし、そんな事するようなら布だって渡してませんよ」



 奴隷商に居た期間はそこまで経ってないっぽかったけど、微妙に思考が奴隷寄りになっちゃってるのかね。



「イーグルさんも一緒に食べましょうよ。ここ最近私がご飯食べる時って大人数がデフォルトだったんで、一緒に食べる人数は多い方が私が嬉しいです。お金あるから一人分増えても普通に払えますし」


「…………」



 首を傾げたイーグルさんの心を読み、イースが通訳する。



「「鳥人は人間よりも食べる量が多いぞ」って言ってるわよぉ」


「今は別行動ですけど私の嫁には狐獣人やラミアや幽霊だって居ますからね。そして半数くらい大食いだから一人大食いが増えるくらい別に問題ありません」



 「あと先に言っておきますけど、金額制限も設ける気無いですから。ちゃんとお腹いっぱい食べて下さいね」と言うと、イーグルさんは驚いたように目を見開いてから、小さく頷いた。



「ミーヤ、どうやらイーグルは魚が好物のようだ。特に鮭が好きなようだね。ヒイズルクニの国民が開いている店は新鮮な魚も扱っているし、鮭もある。その店は向こうの本屋と同じ方角にあるから、道順を考えて向こうより先にあっちの方の本屋に向かおうか」



 このやり取りの中で先を考えるという事とオブラートを学んだらしいオールの言葉に、私は「うん、そうしようか。案内お願いね」と頷いた。



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