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異世界で魔物使いやってます  作者:
バーバヤガ編
257/276

真面目モードな王族とか息苦しい



 王城に来て、いつもの部屋に通されたのは良い。何故かその部屋に王族と付き人が大集合してるのもこの際良いとする。が、



「………………」



 全員が全員重苦しい雰囲気で黙り込んでるこの空気何とかなりませんかね!?

 王様無言だし、ケインさんいつもより険しい顔だし、ブラッドさんいつも通りの顔に見えて雰囲気ピリピリしてるし、セイン珍しくおちゃらけたりせずに無言だし、アディさん眉顰めてるし、セレス思いつめたように無言だし、タバサいつもの明るさ皆無な真面目顔だし、アラン目ぇ逸らしてるし、ファフニールはそんなアラン抱き上げて無言だし……やだ凄く息苦しい。



「……あ、あの、セレス?」


「ミーヤ様」



 耐え切れずに声を掛けると、私の正面に座っているセレスが口を開いた。慌てて「あっはい!?」と返すと、セレスは俯かせていた顔を上げ、覚悟を決めたような表情で言う。



「……ミーヤ様とわたくしは、友人ですわよね?」


「え、あ、うん、そうだね」



 頷くと、セレスはより一層辛そうな表情になった。何故だ。



「……ミーヤ様。これより、今回の依頼についてをお話したいのですが、よろしいでしょうが」


「あ、はい。でも私何も聞いてないんだけど……」


「それなら今から説明致しますのでご安心下さい。タバサ」


「へーい」



 いつも通りの返事だが、しかしいつもの緩い笑みを浮かべずにタバサは説明を始める。



「今回の依頼っすけど……隣国のバーバヤガについて、ミーヤはどんぐらい知ってます?」


「え?」



 バーバヤガというと……。



「とにかく悪人率が高くて、奴隷売ってたりもして、獣人から毛皮剥ごうとしたり邪神を崇め奉ってたりして、何かもう悪の代名詞みたいな国」


「意外と詳しいっすね」



 やめて。そんな感心したように頷くのはやめて。勝手に詳しくなっただけなんであります。



「それでぇ?そのバーバヤガに何かあるのぉ?」



 既に心の中を読んで内容を把握しているのか、にやにやした笑みを浮かべながらイースが言った。



「あーっとですねー……」



 気まずそうに頭を掻きながら、タバサは言う。



「……スノードロップから詳しく話を聞いたら、バーバヤガが戦争を仕掛けようとしてるっぽいんすよね。うちに」


「え、ツィツィートガルに?」


「ツィツィートガルに、っす」



 まあ確かに隣国だし……ん、いや、確かヒイズルクニも隣国じゃなかったっけ。



「あの、ヒイズルクニは?」


「ヒイズルクニは何か、バーバヤガの近くに「三メートルくらいの背丈で触手のような髪の明らかに接触してはいけない雰囲気の男」がうろついてるらしくて」



 クトゥルフだねソレ。



「んでもってその男が「ヒイズルクニという我らを消費する愛すべき国の民達に手を出すならバーバヤガを海にしてくれる」とか言ったらしくて、ヒイズルクニは完全にスルー状態。ツィツィートガル一点狙いされてます」


「お、おおう反応し難い……」



 ヒイズルクニ側の意見としてはラッキー!良かった無事で!って感じだけど、ツィツィートガル側からの意見としてはせめて分散して欲しかった!って感じだよね。でもやっぱりヒイズルクニが安全っぽくて安心という……うーん複雑。ツィツィートガル側から見ると同盟国が無事なようで良かった良かったと言うべきだろうか。



「で、現在そのバーバヤガにうちの奴等が潜入してるんすよ。諜報係とか、獣人部隊の一部とか、スノードロップのメンバーとかが。でもやっぱり情報は多い方が良いなって思うじゃないですか」


「まあ、そうだね」



 ……まさか情報収集お願いしますとかの依頼じゃないだろうな。



「そんでもってちょっと問題もありまして」


「問題?」



 首を傾げると、タバサは「はい」と真面目な顔で頷いた。



「ルーク、居るじゃないっすか。王の剣の」


「居るね」


「んでルークには、光魔法に特化していてあちこちを旅しながら立ち寄った村の人の怪我や病気を治して回る姉が居まして」


「え、凄い」



 何て良い人なんだ。その人こそ勇者的存在なんじゃなかろうか。



「そしてそんな姉がバーバヤガの馬鹿王によって誘拐され、国民に調子乗らせる為の聖女として無理矢理祭り上げられてます」


「どういう事!?」



 勇者的存在って思った私が悪かったのか!?そうなのか!?



「え、えーと……つまりどういう事?」


「要するに、国民達に戦争をさせるにはそやつらを乗り気にさせる必要がある、という事だろう」


「ロン」



 煙を吐きながらキセルをドラゴンの手で軽く遊ばせつつ、ロンは言う。



「勇者が居れば、こっちには勇者が居るぞという意識が生まれる。つまり優位性が生まれる。恐らくそれと同じ様な状態にする為、聖女的活動を行っていたルークの姉を誘拐し、聖女という事にして、戦争を有利に進めよう……とでもしているのではないか?」


「書籍らの知っている限り、そういった偽りの勇者や聖女を作りあげた国は大体負けて滅びるがな」



 リオ、その注釈要る?いやまあ、本として補足しておきたかったとかなのかな。そうかもしれない。



「あの、それでその方はどうなったのでしょうか。ご無事なのですか?」



 あ、そうだそこ重要だ。ありがとうハニー。



「どうも強かなトコがあるっぽくて、諜報係からの報告によると城内の一室に軟禁されながらも割りと自由に生活してるらしいっす。暴力や性的な行いで無理矢理言う事聞かせようとした奴相手には大体金的見舞って沈めてるとかで、完全無傷を更新中だとか」


「あ、良かった結構強い」



 流石はツィツィートガル国民、暗殺者と戦える一般人が存在してるだけはあって逞しい。



「でもそのままうちの国民が軟禁されっぱなしっつーのもアレですし、最悪の場合被害者でしかないルークの姉も犯罪者扱いされかねないっつー危険があるんすよ」


「え、何で?」


「国民扇動する役だからじゃねえかな」



 頬杖をつきながら、ローランは言う。



「例え無理矢理その役に座らされただけとはいえ、それを知らない側からすりゃクソボケバーバヤガ王と同じようなクソに見えちまう。もし戦争の時にクソボケバーバヤガ王が国民を粗末に扱おうとして国民の不満を買えば、その矛先はルークの姉にもいっちまうって事だ」


「ごめんクソボケバーバヤガ王って単語がインパクト強過ぎる」



 内容が頭に入ってこん。

 ……えーと?つまり?犯罪者の出身校なんざ犯罪者の巣窟だろみたいな扱いで、被害者でしかないルークのお姉さんも八つ当たりで被害受けるかもしれん的な感じか?あ、良かったイースが頷いたから合ってるっぽい。



「まあそんなわけでして」



 初めて見るレベルの真面目な表情と声色で、タバサは言う。



「ミーヤにはバーバヤガに潜入して情報収集しつつ、ルークの姉を無事救い出し、そしてバーバヤガとの戦争を無血で終わらせて欲しいんすよ」


「どんな無茶振りだ!」



 情報収集だけならまだしも!救助もまだどうにかセーフ判定だとしても!バーバヤガとの戦争を無血で終わらせろとは何たる無理難題!んなモン犬に対してヒトデになれって言うレベルの無茶振りだよ!?



「だよな、やっぱどう考えても無茶過ぎだって」


「馬鹿が喋ると雰囲気壊すから黙ってろ」


「痛い!」



 いつも通りの笑みを浮かべたセインが口を開いた瞬間にアディの手刀がセインの脇腹を穿った。

 うっわ痛そう。セイン脇腹押さえて震えながら丸くなっちゃってるじゃん。



「セインお兄様の事は無視してください、ミーヤ様」



 セレス、その人実兄だよね。いやまあ割りとよくある光景だから「あっはい」としか答えられないけど。



「……ミーヤ様。わたくしは、ミーヤ様を大切な友人だと思っています」


「……あ、ありがとう?」



 疑問系になってしまったのは仕方ない。何故なら、そう言ったセレスが酷く辛そうだったからだ。



「………………」



 セレスは深呼吸をして息を整え、覚悟を決めたような目でこっちを見た。



「ミーヤ様。現在、情報を仕入れてくれている者達の報告によると、バーバヤガがツィツィートガルに戦争を仕掛けてくるまでのカウントダウンは始まっているそうです」



 「ですから、わたくしはミーヤ様に依頼します」とセレスは言った。



「この無理難題をこなせるのは、わたくしの知る限り、ミーヤ様しか居ませんでした。ミーヤ様が関わった場合、どんな事件でも平和的に終わりますしね」



 辛そうに、泣きそうにセレスはそう言った。

 ……泣きそうな顔でそう言われても、私の方にはいまいち実感無いんだけどね。スノードロップの件は王都の人が強かったお陰だし、ユグドラシルの件は偶然と幸運が味方してくれただけって感じだし。あくまで私は添えるだけのパセリだ。どうしよう私パセリは残す派だから要らない子になってしまう。この考え良くないから思考を切り替えねば。



「……故に、わたくしはセレスでは無く、第四王女としてミーヤ様に依頼します。拒否権はありません」


「えっ」



 思考切り替えてたらとんでもない事言わなかった今!?



「でもミーヤのランクはEランクだよ?そういう強制の依頼は基本的にCランク以上にしか出来ないルールじゃ……」



 アレクがそう返すが、しかしセレスは頷かない。



「確かにその通りです。けれど、第四王女としての権力を使えばCランクまでミーヤ様のランクを上げる事は可能です。ミーヤ様が昇級試験を受けていないだけで、功績自体は余裕でBランクに上がれる程ですから」


「マジか……」



 え、私知らない内にそんなに依頼こなしてたの?通りでメルヴィルさんが頻繁に「昇級試験受けたら?」って言ってくるわけだ……。

 ……というか私、一つ解せない事があるんだけど。



「あの、セレス?」


「何でしょう」


「何で友人だからってトコをアピールしないの?」



 いや、まあ確かに姫って肩書きは強いよ?私殆ど王都に入り浸ってたわけだしね。でも私に対してはそういう権力もいまいち効果を発揮しない。だって私この国の住民じゃないもん。唯一の肉親であるお姉ちゃんも異世界に居るわけだしね。

 万が一ツィツィートガルに居られなくなっても、一応トシロセージュやヒイズルクニ、魔王国とかに行き場が無いわけでもないし……。

 だからこそ、私に対しては友人として頼む方が効果が高い。権力系には疎くとも友情には厚い、それが女子高生である。セレスは頭が良いからそのくらい気付いてると思うけど……。



「……その手を使う気はありません。友情を盾にするような事だけは、したくありません」



 ふる、とセレスは首を横に振った。



「わたくしはミーヤ様の事を本当に大事な友人だと思っています。だからこそ、それを利用する事だけはしたくありません。故にわたくしは友人では無く、セレスでは無く、第四王女であるセレスティーヌ・ヴェラ・ベイルとしてミーヤ様に依頼するのです」



 背筋を正して真っ直ぐに私を見るその目は、10歳の女の子がする目では無い。覚悟を決めた大人がする目だ。



「嫌われるのも、絶交されるのも覚悟の上です。けれどわたくし達には、ミーヤ様に頼む以上の案が浮かびませんでした。……だからこそ、第四王女としての依頼です。ミーヤ様とセレスの間にある友情を汚さない為に、わたくしは権力でもってミーヤ様に拒否権の無い依頼をします」



 「例え何と反抗されようとも、わたくしはこの依頼を引き受けさせます」と言って、セレスは深々と頭を下げた。



「どうか、お願いします」



 ……成る程、珍しく王族と付き人がピリピリしている理由がわかった。

 セレスは私との友情を汚したく無くて、だからこそ前に立ってくれたんだろう。他の誰かがそう依頼してしまったら、微妙な雰囲気になってしまうから。それなら己が前に出る、とこうして私に真正面から依頼したんだろう。確証は無いけれど、そんな気がする。

 そしてきっと他の皆もセレスの考えを知っていた。だからこんなにもピリピリした空気だったんだろう。セインまで黙ってるとか相当だとは思っていたけど、成る程これは相当だ。

 ……ただね、私ね、ちょっともやもやしてるんだわ。理由はセレスに無茶振りされた事じゃない。10歳の子供に、嫌われてでも自分の役目を全うしなければ、なんて覚悟を決めさせた事にだ。私が不甲斐無いせいで……とは思わん。思うのは「おのれバーバヤガ」のみである。だって実際この国がいらん事せんけりゃこんな面倒事にはなっちょらんけん。



「セレス」


「はい」



 頭を上げたセレスは真っ直ぐに私を見る。机のせいでセレスの手元は見えないが、肩に入っている力から察するにスカート、または己の手を強く握り締めているんじゃないだろうか。

 リオと数日過ごして察し能力が格段に向上した私がそう思うんだから多分きっとそうなんだろう。間違ってても知らん。



「私はセレスを大事な友人と思ってる。そりゃ確かに依頼内容とんでもないけど、こっちはこっちで頼れる嫁達が沢山居てくれるからね。その程度で嫌ったりとかはしない」



 こっちゃ魔王城からヒイズルクニ、そして海の王国トシロセージュという旅をして色々と吹っ切れてるんだよ。要するにどうにかなるさのテンションでどうにかしようとすればどうにかなる。実際クトゥルフの時はそれでどうにかなったんだから必要なのはそれだけだ。



「セレス、私は友人の頼みだったら多少の無茶でも聞くつもりだよ。勿論どうにか出来るだろうと判断したお願いしか聞くつもりは無いけど」



 「クリア出来るかどうかは不明だしね」と言って私はセレスに笑ってみせる。



「で、私は友人であるセレスが頼むんであれば今回の依頼にも頷くけど……私の依頼人は、どっち?第四王女?それともセレス?」



 そう言うと、セレスは泣きそうな、けれど子供らしいへにゃりとした笑みを浮かべた。



「ミーヤ様の友人であるセレスとして依頼しますわ。……どうか、助けてください」


「友人に言われちゃ仕方ない。可能な限りの出せる手使って、助けてみせるよ」



 ニッと笑ってそう言うと、安心したようにセレス以外の王族と付き人全員が体から力を抜いて、上半身の体重を机に預けた。



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