めっさ視線凄い
リオが嫁になった後、再び五日程掛けて魔王城に帰還。フランさんとゴーロクさんに禁書の写本を手渡しながらリオを紹介すると、リオはゴーロクさんに謝罪した。そしてそれを見たフランさんは、
「あっはっはっは!」
めっちゃ大笑いしてた。
「成る程なあ!そうか!確かにゴーレムっつったらそういうモンだからな!そりゃうちのゴーロクだけ特別かどうかなんざわかるわけねーか!あっはっはっはっは!ゴーロク、オメェとばっちりみてぇな形で損したなあっはっはっは!」
そんな風に大笑いされながら背中をバッシバッシ叩かれてたゴーロクさんは、苦労人……苦労ゴーレムらしい笑みを浮かべながらリオの事を許していた。
「実際大分昔の話ですからね」
……うん、ゴーロクさんがそう言った瞬間、そりゃそうだって思ったよね。三十年以上昔の話だもん。
そして魔王城に一泊し……うん。
「何か魔王様が言ってたんですけどミーヤさんが永遠の図書館に保管されてた本を嫁にしたとか本当ですか写本ください!」
扉壊すかなって勢いでユラさんが入って来たのはビックリしたな。リオがゴーロクさんに謝罪した直後だったし。
「ユラ!扉を乱暴に開けるな!お前デュラハンとかいう大鎌装備してる種族なせいで怪力なんだから!その扉が壊れたら誰が直すと思ってんだ!つかイーはどうした!?」
「扉はゴーロクが直せば良いでしょ!イーなら本って聞いて「え、じゃあ凄い燃えるのかな!?」とかわくわく顔で聞いてきたから「そんな事したら封印する」って脅して置いて来たわ!」
……うん、久々の再会でもユラさんは揺るぎ無かった。ニーラクス学園知った後なもんだから異様にしっくり来るしね。あの学園の卒業者は絶対にブレないという確信がある。
あとイーさん置いてきてくれてありがとうユラさん。それ聞いた瞬間にリオが怯えながら私の服掴んで来たから本人来てたらちょっとリオのメンタルに大ダメージだったと思う。やっぱ本だから火は苦手なのかな。
……ん、いや、焚き火は普通に平気だったな。本を燃やそうとする意思のある火が駄目なのかもしれない。
まあとにかくそんなやり取りの後に、イーさんを置いてきてくれたユラさんにリオがお礼の意味も込めてかリクエストされた本……の写本をプレゼントし、フェレイアさんの手料理を食べて、一泊して、昼のエドウィンさんに見送られて、船に乗って数日後の現在、
「やっぱおっちゃんの屋台のジュース美味しいね」
私達は王都に戻って来ていた。
「魔王国に行く前にも飲んだけど、本当に美味しいわねこのジュース。使われてるフルーツ達から、とっても愛されてる!って気持ちを感じるからより一層美味しいし……うふふ、あの人は本気でフルーツの事を愛してるのね」
「そうだね、フルーツ愛で賊を倒せるくらいには愛してるからねあの人」
でもフローラもあの屋台を気に入ったようで良かった。今も笑顔でジュースのコップに細い茶色の手を突っ込み、根から吸収するようにジュースを飲んでいる。
……擦れ違った人に三度見されたな今。そういや私すっかり慣れてたけどこの飲み方人間から見たら異常か。普通手で飲み物飲まないもんね。
「え、あれミーヤ?ミーヤだよな?あの目立つ一行はミーヤで間違い無いだろうけど……え、何あの露出過多な子」
「背中に印がある事から考えるに従魔……だろうけど、ミーヤちゃんの場合人間でも従魔になってたりするもんな」
「ああ、元王の剣のローランさんとかな。従魔になりたいっつった人間をマジで従魔にして養ってみせるミーヤは凄ぇよ。俺には無理だ」
「お前そんな事言ってるから未だ嫁が来ねぇんだよ。嫁さん良いぞ?ちょっと遠出の依頼受けて遅くに帰って来た時にさ、もう寝てるんだよ。夜遅いから。でもテーブルの上に俺の好物がちゃんと用意されてんだよ!しかも冷めても美味しいやつな!んで手紙に「お帰りなさい。お疲れでしょうから食事を用意しておきました。あ、でもお腹が好いてなかったら明日の私の朝御飯にしますから、無理して食べたりはしなくて良いですよ」ってさー!わかるかこの愛おしさ!もう俺絶対しっかり稼いでデートの時に嫁の好きな店で好きな料理を資金気にせず頼めるようになってみせるって思ったね!」
「長い」
「庶民派か」
「庶民は庶民らしく身の程を弁えてた方が夫婦生活も無理が無いだろ?嫁さんも無理して起きながら俺を待ってたりしてないもん。俺がいつ帰ってくるかわかんないのに無理して待ってたらストレスで不満溜まって夫婦生活にヒビ入りかねないからな。それがわかってる嫁さんだからもーさいっこう!」
「ああっ!通りすがりの人間の嫁惚気話にやられて親友が倒れた!」
「くっ、三十代を目前にして未だ独り身である私達にはダメージが強過ぎた!」
「う、うう……二人共……私の事は良い……。私の事なんてどうでも良いからニーラクス学園卒業生としてあの萌えの塊を本に……!」
「何を言ってるの!一人だけ甘い汁啜ろうなんて許さないわよ!」
「そうよ!アンタもちゃんと書きなさい!新婚ほやほやハートフル本!私達だけじゃ二冊しか出ないけど、アンタが居れば三冊も出るのよ!この一冊の差は大きいんだから!」
通りすがりの人達騒がしいな。流石王都。
……というか、
「む、どうしたミーヤ」
「いや……」
目立ってたのはリオか。
そうか。そういや初見は私も度肝抜かれたんだったわこの格好。うっかり慣れてたけど男か女かわからん子供が胸と股間だけを隠すように布巻いてるだけどか、うん、普通にアウトだよね。まだ水着の方が健全なくらいだよ。しかも目立つ事に広げられた巻物が周囲をくるくるしながら浮いてるし。
そう考えるとキラキラ輝いてて目立つかと思われたジェムは結構まともだね。服着てるし。人間との違いは肌色が違ってて硬質なくらいだし。
「ミーヤちゃん一行に新入り増えてね?」
「あ、本当だ。肌色からして明らかに人間じゃない子と……え、何あれ痴女?痴漢?露出狂?」
「いや、ミーヤは普通の感性を持っているはずだ。そうじゃなかったら大会でアボットの野郎と戦った時に勝ってない」
「そういやあいつ露出行為で捕まったんだっけ」
「今は王の剣に所属してるけどな」
「というか周囲にくるくる巻物浮いてるし……明らかに人外よね」
「なら、セーフ……か?」
「まあゴーレムとかだと全裸でも服着てても何とも言われないわけだし、そう考えると……セーフかしらね」
「良いな、ああいう露出」
「え、何お前ああいう子が好みなの?まだ青い果実が熟した果実のように振る舞ってるのが好みなのか?」
「言い回しが気持ち悪い!そうじゃなくて、ああいう露出度の高い格好は過ごしやすそうで良いなって意味だよ」
「着る側かよ」
「着る側だよ。鳥人の場合は腕が羽だからな。袖がある服は着にくいんだ」
「だからお前いっつも上半身ポンチョオンリーなのか。せめてタンクトップくらい着ろって言っても着なかったのはそのせいかよ」
「当たり前だろ。肩紐が邪魔になったりすんだから。他の鳥人だって上半身裸率高いだろうが」
「いや鳥人は好きに飛び回ってる事が多いから獣人に比べて少ないんだよ。そうそう目撃しねえっつの」
「おお、何と美しい透き通るような肌……そして過度な露出!これは是非僕の描くロリショタ本のクオリティ向上の為にお話を」
「はい、お兄さんちょっとこっち来てくれるかなー?」
「え、兵士!?何で!?僕悪い事バレてないですよ!」
「いやもう自白しちゃってるじゃん。何したの」
「学生時代、気に食わなかった副学園長の机の奥にカビの生えたパンを五つ程突っ込んだのは僕です……!」
「思ったより悪質な所業だった。というかそれはもう学園の方の問題で今俺がお兄さんの肩叩いたのとは関係無いから。お兄さん、今すっごく不審な呼吸だったの自覚ある?」
「呼吸!?最近の兵士は呼吸で不審者かどうか判断するんですか!?コミュ障で誰かに話しかける時は必ず変質者みたいになる僕なんてどう生きれば良いんですか!」
「うん、そういう感じの変質者に見えたから一旦詰め所行こうか。大丈夫大丈夫、俺お兄さんみたいに変な人と会話するの上手だから。同僚には「軽い会話に釣られて話してたら余罪まで喋っちゃって罪が重くなるから本当犯罪者にとっての疫病神だよな」って言われてるし」
「安心要素がゼロ!」
な、何か今ニーラクス学園卒業生と思われる男性が兵士に連れて行かれたぞ!?アウトかセーフで言えば声掛け未遂だったからアウト寄りのセーフだとは思うけど、大丈夫だろうか。リオの露出が高かった結果兵士に仕事が増えてしまった。
「……リオ、ちょっと聞いても良い?」
「何だ?」
「リオってさ、ちゃんとした服着る気は」
「無い」
無いのか。
「というか既にちゃんと着ているだろうが。本である書籍らとしては着たくは無いが、人型の場合は胸と股間を隠さないと駄目だと知っているからな。故にこうしてちゃんと隠しているのだ」
「ちなみに何で隠さないと駄目かわかる?」
「出版出来ないからだろう?そこが隠れていないと大半は修正される」
本の感覚過ぎる。
「書籍らとしては表紙をやたら分厚くすると中身が読みにくいだろうからあまり着たくないのだがな。しかし人間のルールと表紙あってこその本、という考えからこうして最低限は身に纏っている」
ああ成る程、表紙もあってこその本って感じなのねリオは。だからブックカバー派では無いけど、一応マナーとしてブックカバーを付けてるような感じ……なんだろうか。
「書籍らにこれ以上どうしろと?」
「……ああ、うん、まあリオの感覚がそうならそれで良っか。一応際どいトコは浮いてる巻物がカバーしてるしね」
私の言動が理解出来なかったのかリオは首を傾げたが、頭を撫でたらちょっぴり擦り寄ってきた。可愛い。リオって図書館の本だったからか触られるの意外と好きだよね。
「と、着いたよ。ここがギルド」
そんな風に考えていたら、ギルドに到着した。いやまだ宿屋にも行ってないから依頼を受ける気は無いんだけど、ほら、魔王直筆の手紙とかあったから。メルヴィルさんに無事問題無く帰ってきましたよーの報告をしようかなってね。
「あ、良かったメルヴィルさん居る」
ギルドに入って確認すると、受付にはいつも通りメルヴィルさんが居た。
「それじゃあこの人数だと邪魔になっちゃうし、皆はそれぞれギルド内で好きなトコ見るなりして待っててくれる?」
「えぇ、いつも通りに壁の方で待ってるわぁ」
魔王国を出たから女版へと姿を変えたイースは、そう言ってにっこりと微笑んだ。
「そこらに置いてある本は読んで良い本か?」
「ああ。初心者の冒険者用だからな」
リオめちゃくちゃ素早く本に食いついたね。ロンはロンで前に読んでたからさらっと教えてるし。
「んじゃさっと報告して」
「や!」
「ぐえ」
「報告してくるね」と言おうとしたら、ジェムに思いっきり抱きつかれた。背後から腹を押さえる体勢はキツイぜよジェム。私が上級ドラゴンの肉を食べてない一般人だったら耐えれずにさっき飲んだジュースをギルドの床にリバースしてたぞ。職員さんに怒られてしまう。良かった上級ドラゴンの血肉食べてて。
……ジェム、宝石だから硬いんだよね。手加減してくれててもホールド系の攻撃力が強い。
「ジェム?」
背中側からお腹に回されたグリーントルマリンの腕を軽く叩いて離してと伝えると、逆に圧が強くなった。
「ジェム、ミーヤ、いっしょ、いく、する!」
「いや遠く行かないから。すぐソコ」
「ミーヤ、いっしょ、いい!」
「圧が強い」
これ私が強化されてなかったら胃の中身どころか胃その物が口から転び出てたかも知れん。危ねえ。
「……まあ一人なら良いか。ジェム、一緒に行く?メルヴィルさんとちょっと話すだけだけど」
「うん!」
あー笑顔がキラキラ輝いてて可愛いなー。
それはさておき、離してくれたジェムと手を繋いで受付にいるメルヴィルさんに声を掛ける。
「ハロー、メルヴィルさん」
「やっほーミーヤ。入って来た瞬間からめっちゃ視線集まってたよ」
「知ってます」
こんな面子目立たない方が難しいからね!しかも王都だとそれなりに知名度あるし!そりゃ視線も紫外線以上にガンガン浴びるわ!
「ま、何か元気そうで何よりだけど…………ところでその子ってさ」
「魔王国行ったら何やかんやで嫁になりました、ジェムです」
「ジェム、ゴーレム!よろしく!」
ジェムが笑顔で挨拶すると、メルヴィルさんは「俺の知ってるゴーレムの輝きじゃない」と小声で呟いた。そうだね、宝石だからね。
「まあミーヤの嫁なら逆に普通か。よろしくね、ジェム。俺はギルド職員で最近はもっぱら受付業務をしているメルヴィルだよ」
逆って何だ。逆に普通って何だ。
まあでも普通に握手してるから良いか。ジェムの手を握った瞬間のメルヴィルさんの「え、硬いんだけど。色もカラフルだしこの子本当原材料何で出来てんの?」という視線はスルーしよう。
私がスルーした事でジェムの素材について聞くのは諦めたのか、メルヴィルさんは「ところでさ」と話を変えて私の後ろの方を指差した。
「あの背中に印があって周囲に広げた巻物浮かせてるやたら露出の高い性別行方不明の子って」
「嫁です」
「だろうな!」
「良かった違ったら逆にどうしようかと!」と叫んでメルヴィルさんは受付の机に突っ伏した。うん、そうだね。あれで違ったらもう反応に困るどころじゃないもんね。
……いやまあ、私の嫁だから良いって判断するのもどうかと思うけど。私は助かるから良いけどさ。
「ちなみにあの子の格好って既にツッコミ済み?」
「ここに来るまでにめっさ見られたしざわざわされました」
「じゃあ二番煎じ以下になりそうだし俺は止めとこ」
流石芸人。パクリはしない精神か。
……本当、リオの格好ってめっちゃ見られるんだよね。魔王城では一切そんな感じ無かったんだけど。
魔王国からツィツィートガルまでの船では……海の男達がアレクに騒いでたからそんな些細な事に反応出来るテンションじゃ無かったな。船のお客さん達はお客さん達で魔王国の人が多かったから気にしてなかったし。
……人外からすれば、普通なのか、アレ……。
「んで、ミーヤどうした?依頼受けに来たの?」
「いえ、前に魔王直筆の手紙来てそのまま魔王国行ったんで、無事ですよって報告の為に顔見せておこうかと」
「顔どころか嫁まで見せてるけどね。しかも二人も新入り増えてるし。最近の王都の恋愛率と結婚率とあぶれた独身達の酒飲み率が物凄い事になってるよ」
「私関係ない!……ですよね!?」
「本人がもう自信無さげじゃん」
いやだって肯定する証拠は無いけど否定する証拠も無いじゃないっすかソレ!
「ところでそんなミーヤにですね」
「あ、それじゃ私帰りますね」
「駄目」
ちっ、嫌な予感のままに帰ろうとしたら普通に却下された。そんな綺麗な発音でハッキリと「駄目」って言われたら従うしかないじゃん!何その滑舌!ニュースキャスターか!
「……依頼ですか?」
「優しくオブラートに包めば」
「包まなかった場合は?」
「強制」
「強制の何!?」
メルヴィルさんの顔面に揺らがぬ笑顔が張り付いてるのが怖いんですけど!?
「まあ詳しくは王城行って王族から話聞いて」
「待って。……セレスからの依頼ですか?」
「……正直に言って良い?」
「どうぞ」
促すと、メルヴィルさんは笑みを崩して儚い微笑みを浮かべた。
「「……詳細は聞かずに、とにかくミーヤが来たら……頼みたい事があるから王城に来るように、と……。……これは強制だから……絶対に来てもらう……」……って、仕事終わりのケイン様が」
「仕事終わりにギルド寄って受付にどういう伝言を頼んでんのさ第一王子……」
まず第一王子が仕事終わりにギルド寄るってのもおかしいけど、まあこれはケインさんのデフォルトだからしゃーない。
「つまり、詳細はまったく不明と?」
「イエス。ごめんなミーヤ、俺みたいな一般の受付ボーイには第一王子を前に詳しく聞く勇気は無かったんだ」
「顔に「面倒事には巻き込まれずゆったりのんびり生きていたい」って書かれてますよ死亡フラグ回避の達人」
「やだ俺の気持ち丸見え!?」
ここ数日リオという前髪ガードが固くて目元が窺えない子の感情とかを察しようとしてた結果察知スキルが跳ね上がったよね。まさかのビンゴかよ。ちょっとは外れてて欲しかった。
メルヴィルさんは「うわー」と言いながら頬を手で覆う。
「やっぱこれからは男も化粧の時代かな?」
私ノーメイクなんで化粧で腹の内隠れるかまでは知らないです。




