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異世界で魔物使いやってます  作者:
永遠の図書館編
247/276

初代魔王と現魔王



 フローラを娶ってユグドラシル云々を解決してから五日後、私達は魔王城の前に居た。

 何故かって?いや本当に何故だろうね。不思議だよね。フローラを嫁にした後に見学も兼ねて観光したりして、大体見れたしそろそろ何か依頼受けるかーってギルドに行っただけなんだよ私は。

 ただそこで真っ青な顔色したメルヴィルさんに、



「……ミーヤってさ、マジで何者?魔王から直筆の手紙来てるんだけど」



 と言われて手紙を渡された。

 見てみると本当に魔王からだった。しっかりと魔王のサイン書かれてるし、封筒を閉じてる封蝋も何か豪華な感じだったし。

 書かれてる内容は物凄く丁寧に丁寧を重ねたようなきちんとした手紙の見本みたいな書き方だったからちょっと差出人疑ったけど、魔王はあの性格でも意外や意外に頭が良いから不思議では無いんだろう。最初の時の手紙もそんな感じだったし。

 ……魔王、自国以外の人が居る公の場では猫被ったりしてるのかな。

 ちなみに内容は要約するとこうだった。



「フランが実験大成功したけど想定外が一つあって、でもまあ折角成功したし廃棄せずに済むならって事でお前らの事呼んでる。来い。どうもそれ以外にも話があるらしいがとりあえず来い。あと俺は俺でちょっと相談したい事あるから来い。人間に関係する事だし仕事関係だから来い。とにかく来い」



 ……うん、要約し過ぎた気はするけど要するに以上である。もうちょい詳しく書いてくれても良いと思うの。つかフランさんマジで用件何なのよ。魔王の方も用件いまいちわかんないし。

 でもまあ呼ばれてるのは事実だし、という事で魔王国行きの船に乗ったのが三日前。

 え?勿論ドラゴン旅じゃなくて船旅ですよ。国境越えるのにドラゴンで行くのは流石に……ねぇ?万が一国際問題になられても嫌だし。



「すみません、お待たせしました。お久しぶりです、ミーヤさんに皆さん」


「お久しぶりです、リアナさん」



 扉を開けてくれたリアナさんに頭を下げると、リアナさんは私の背後を見て「……ん?」と不思議そうにガチャリと金属音を立てて首を傾げた。



「……数、増えてませんか?」


「ヒースの後に五人増えました」


「うわあ」



 リアナさんの頭部って兜だから顔色は察せないけれど、口元に手をやった動きと感情の篭もっていない声色から察するに……引かれたと見た!

 ……流石に多すぎるもんね。常識人代表のようなリアナさんからしたらちょっと引いちゃうのも仕方ないか。



「王族以外でこんな大人数のハーレム初めて見ました……実在するものなんですね」



 あ、引かれては無かったみたい。「凄いですねぇ」と感心したように頷いてる様子から見るに単純に驚いていただけらしい。私の早とちりだったか。



「では始めましての方に自己紹介を。私は四天王の一人、リアナと申します」



 そう言ってリアナさんはペコリと頭を下げた。



「生前の記憶が無いせいで酷く不安定な幽霊でして、こうして鎧に取り憑いて活動させていただいております。以後お見知りおきを」


「うん、よろしく!」



 リアナさんの挨拶に、マリンが元気いっぱいに返事をした。



「自分は人魚のマリン!よろしく!」


「儂は上級ドラゴンのロンだ」


「俺様はパンドラ。ま、よろしく頼む」


「あ、俺はヒースと同じで正真正銘人間のローランな」


「わたくしはフローラよ。よろしくね」



 それぞれ自己紹介をすると、リアナさんは微笑んでいるような声色で「はい、よろしくお願いします」と返してくれた。



「……それにしても、ヒースは随分と顔色が良くなりましたね」


「ああ、まあな。ミーヤ達のお陰……でもあるけど、それまで俺に気を使ってくれてたリアナ達のお陰だ。あんがとな」



 少し気恥ずかしそうに頬を掻きながらもニッと笑ってそう言ったヒースに、リアナさんは驚いたような声色で「おや」と呟いた。



「出発前は私達に対する接し方に困っていたようでしたが、敬語無しに落ち着きましたか。ああ、嫌というわけではありませんから気にしないでください。無理に敬語を使われるよりはそちらの方が気楽ですからね」



 ……リアナさんって心読んだり出来るのかな。ヒースが何か言う前にさらっとフォロー入れてるし。いや、あの魔王の秘書的存在だから先読みが上手いのか。先読まないと大変そうだもんねあの魔王。

 そう思っていると、イースが口を開いた。



「リアナ、入り口で立ち話もなんだからとりあえず中に案内してくれるかぁ?」



 魔王国だからか久々に男版になったイースの言葉に、リアナさんは「それもそうですね」と頷いた。



「では皆様、お入り下さい。魔王様に挨拶をしてからフランさんの元に行った方が面倒も無いと思うので、まずは魔王様の元に案内しますね」



 リアナさんバッサリ言うね。まあ確かに魔王ちょっと子供っぽいトコあるからそうした方が良いのは事実だろうけど。

 そう思いつつ先導してくれるリアナさんに続いて魔王城に全員が足を踏み入れると、急に周囲から耳が痛くなるような警報音が響き渡った。あの、何かビュヴィーン、ビュヴィーン!って感じのあの音。しかしその音はすぐに止まった。



「……え、何今の」


「さあ……不審者が居てもこんな警報は鳴らないはずですが……」



 私達だけじゃなくリアナさんまで困惑気味だ。イースも怪訝そうに首を傾げている事から、前例の無い出来事なんだろうか。フランさんが変なのでも発明したのかな?



「?魔王城に入ったら毎回ある音なんじゃないの?」



 首を傾げるマリンに、「いや前回はこんなの無かったよ」と誤解を解いておく。すると、パンドラが気まずそうに「あー……」と呟いて頭を掻いた。



「パンドラ?」


「いや、コレ俺様のせいだ。すまん」



 どういうこっちゃと思っていると、遠くからバタバタバタ!という足音が近付いて来た。そして近くの扉から転がり出るような勢いで、涙目の魔王が私達の前に現れた。



「おいリアナ今の警報って魔王が住んでる場所に初代魔王が到来した時に鳴る警報音だよな!?やばい俺先祖の魔王が残した「人類は皆敵だから滅ぼすように。可能なら神も仕留めろ」って遺言に背いて人間と同盟組んじまってる!最強だったと名高い初代魔王が相手じゃ俺の不死身も通用する気しねえから今すぐ逃げたいんだが良い逃げ場所知らないか!?」


「こら魔王様、お客様の前でみっともないですよ。呼びつけたのは魔王様なんですからきちんとご挨拶くらいしてください」


「そりゃ悪かったな久しぶりミーヤ!」


「あ、うん、おひさ」



 というか、うん、めちゃくちゃ慌ててるらしい魔王には悪いんだけど、今の魔王の言動で警告音の謎が解けた。魔王とリアナさん以外の皆がパンドラに視線を向けると、パンドラは「俺様がやった事じゃないからな」と弁解した。

 ……そういやパンドラに聞いた話では、側近みたいな魔族に魔王を押し付けたとか何とか言ってたっけ?その二代目魔王が仕掛けたのかな。

 とりあえず一刻も早く逃げようとしている魔王に対し、私は言う。



「魔王、一旦落ち着いて」


「落ち着けるか!俺は誰よりも死にたくない男!死にたくないから長年の戦争まで終わらせて同盟組んだんだぞ!?そうでもなかったら五百年以上も童貞死守してねえよ!」


「いや童貞云々は聞いてねえよ」



 動揺のままそんな情報を暴露すんなや。知ってるし。



「とりあえず落ち着いてって魔王。魔王の先祖は知らんけど、初代魔王はそれを怒ったりする性格じゃないし」


「お前は初代魔王の何を知ってんな事言ってんだよ!?」



 何を知ってと言われましても。

 私は無言のままパンドラを指差す。



「初代魔王」


「元、だがな。今は引退してミーヤの従魔兼嫁だ」



 そう言ってパンドラはべえ、と舌を出してそこに刻まれている契約印を見せた。



「……え、俺死ぬ?」


「死なない死なない」


「俺、死ぬ前にヒイズルクニのおみくじ引いて大吉から大凶までをコンプリートするって決めてたんだ……」



 なんてささやかな夢。つか何故自分から死亡フラグを立てる。



「いや、だから死なないってば。頑張って自分の脳を働かせて考えて。初代魔王と魔王の先祖は別存在。初代魔王から魔王職を引き継いだのが魔王の先祖。んでもって多分確実にその遺言を遺したのは魔王の先祖で、初代魔王は無関係。んでもってそんな初代魔王は私の嫁をやっているわけで?」



 「はい答えをどうぞ」と言うと、魔王は俯かせていた顔を上げて口を開いた。



「……俺存命ルート?」


「イエス」


「っだあああああああ何だよビックリしたああああああ!脅かすんじゃねえよミーヤ!やっべえ俺殺される!?って思って超ビビったじゃねえか!」


「おいコラ責任転嫁が酷い」



 勝手に怯えたのそっちじゃねえか。



「パンドラ自身はその遺言をどう思ってるの?」


「俺様か?いや、正直ミーヤを知る前は正にそんな感じだったからな。ただミーヤを知ってからはそういうのが割りとどうでも良くなったから、そんな昔の事をわざわざ子孫にまで強制する必要あったか?って思ってる」



 アレクの問いにそう答え、「あいつ無駄に忠誠心高い上に盲目で猪突猛進なトコがあったからな」とパンドラは溜め息を吐いた。



「まあそういう事だから、別にその遺言を律儀に守る必要は無いぞ。俺様の事は初代魔王というよりもミーヤの嫁の一人だと認識してくれれば良いから。どうもパンドラですよろしく魔王」


「よし任せろ堅苦しくなくて良いなら得意分野だよろしくパンドラ」



 そんな会話をして、パンドラと魔王はしっかりと握手を交わした。

 ……魔王、ついさっきまでそのパンドラに超怯えてなかったっけ。いやまあ意識の切り替えが早いのは良い事だから良いけどね。



「……えーと、魔王が落ち着いたところで……手紙に書かれてた相談って何?」


「ん?ああ、まあとりあえず意見聞きたいだけだから大した事じゃないんだけどな」



 そう言ってから、魔王はリアナさんの方に視線を向けた。



「リアナ、ミーヤ達は俺がフランのトコに案内するから仕事に戻っといてくれ。案内ついでに相談出来るし」


「わかりました。案内が終わったらすぐに戻ってきて下さいね。サボったらフェレイアさんに頼んで魔王様の食事をお仕置き用メニューにしてもらいますから」


「血も涙も無い所業!」


「そりゃまあ血も涙もありませんから」


「あっクソ!そうだった!」



 そんなやり取りの後、リアナさんは仕事に。そして私達はフランさんの所まで案内してくれる魔王の後ろに付いて行く。



「んで魔王、相談って?」


「ああ、何かツィツィートガルとヒイズルクニから頼まれてんだよ。駆け込み寺?みたいな村作れないかって」


「駆け込み寺?」


「おう。何かヒイズルクニ曰く、ピンチの時に逃げ込める安全地帯なんだと」



 あ、いや、駆け込み寺についてを聞いたわけじゃなかったんだけど。



「どうも女にトラウマがある男とか、男にトラウマがある女とかがそれなりに居るらしくてよ。異性が近くに居るだけで過呼吸になる奴も少なく無いらしい。で、そういう奴等用の村とか作れないかって」


「何で魔王国に?」


「異性以前に異種族ばっかだから性差をあんまり気にしないで済むんじゃねえかってさ」


「あー」



 まあ確かに性別が無い種族も居たりするもんね。キラービーやラミアなんて女しか居ない種族だし。



「あとまあ、人間恐怖症を併発してるのも多いらしくてな。同じ被害者ならまだ平気だけど、そうじゃない奴が相手だと視界に入るだけで駄目なレベルでトラウマになってるのもチラホラ居るらしい。だから精神的回復目的で人里から離れるのも良いんじゃないか、って」


「確かにそっちの方が良いかもね。人間の国じゃどれだけ人里離れようと人間は来れちゃうし、生活を考えると近くに村とか町とかあった方が安心だし」


「やっぱそうか。まあ、まだあくまでお試しだしな。実行する気ではあったけど一応人間の意見も聞いときたかったんだ。サンキュ」


「いえいえ」



 私大した事言えてないし。



「あ、でも強いて意見を言うならイースみたいに心が読める人で相手の気持ちを考えられるような人?を一人で良いから配置すると良いかも。かなり精神的に追い詰められてる場合だと、限界にならないと感情を表に出せない人も多いだろうし」


「あー、限界来てキレて何か起こす前に対処出来るならそっちの方が良いか。……ちなみに家事とかも出来ない精神レベルの奴の家にはブラウニーを派遣しようと思ってんだけど、その精神レベルだと小人でもアウトだと思うか?」



 「一応ブラウニーにちょっとした食事やったりを忘れたらまずいからそれはこっちでやるつもりだけどよ」と言った魔王に、私は急いで脳内ファンタジー事典を捲る。

 えっと、ブラウニーブラウニー……あ、家事手伝いをしてくれる小人か。パン屑とミルクを置いておくと、その分代わりに家事をしてくれるとかいう妖精、だったはず。



「……うん、多分小人なら大丈夫だと思う。巨人だと無理かもだけど」


「そうか。本当はブラウニーよりもシルキーの方が良いと思ってたんだが、シルキーは見た目が人間の女ソックリだからな。んでブラウニーに頼むかと思ったは良いが小人も駄目だったらどうしようかと……よし、んじゃブラウニーに頼む方向で纏めるか」



 誰だシルキー。ブラウニーはちょいちょい二次元で聞いた事あるけどそっちは知らん。後で覚えてたらスマホで調べよっと。



「と、話してたら着いたな」



 「相談終わったし、後はお前らだけでも大丈夫だろ。んじゃ俺この件リアナと纏めてくっから」と言って、魔王はスタスタと去って行った。早足だった事と小声で「お仕置きメニューは嫌だ……!」と呟いていた事から察するにサボったと思われたくないんだね。うん、案内ありがとう魔王。

 去って行く魔王の背中を見送ってから、私は目の前の扉を軽くノックする。



「おーう」



 このしゃがれた声はフランさんだな。



「フランさん、ミーヤです。入って大丈夫ですか?」


「お、やっと来たか。何日待たせんだオメェは。まあその間に色々教えれたから良いけどよ……おら、扉の前でまごついてねえでさっさと入って来い」



 相変わらずゴーイングマイウェイな人だなあと思いつつ、「失礼します」と声を掛けてから扉を開ける。



「よぉ、久しぶりだな」


「お久しぶりです、ミーヤさん」


「どうも、お久しぶりですフランさん、ゴーロクさん」



 室内、置かれている椅子に座っているフランさんとその横に立っているゴーロクさんに挨拶をする、と、



「わーい!」


「おぐっ」



 とても硬い何かに突進された。

 幸いロンの肉を食べたりボス達の血が染み込んだ酒を飲んでいたお陰か、ダメージは突進された衝撃のみだった。鈍い痛みは一切無し。助かる。

 それはさておき私の腹に向かって突進して来て、そして現在進行形で私の腰に抱きついてぐりぐりしてきてるとても硬い何かを確認してみる……が、



「みー、や、み、や、ミーヤ!」



 どこか子供っぽい舌足らずな発音で、見る限りノアよりも低い身長のソレは私の腹にぐりぐりと頭部らしき部分を擦り付けている。

 ……そう、頭部らしき部分、だ。

 何かこう……ポリゴン?あんな感じ。あんな感じで全体的にカクカクしたビジュアルしてる。腕っぽい部分も胴っぽい部分も足っぽい部分もカクカクしてる。感触硬いし、コレ本当に私が上級ドラゴンの血肉で強化されてなかったら鬼のように擦り傷が出来てたぞ。今までほぼ無傷なのに抱擁で怪我するとか嫌だ。ありがとうロンとボス達。



「……で、フランさん?この……」



 ……何て形容すれば良いのかわからん。とりあえず言動と発音と背丈から子供と仮定するか。



「この子供は一体?」


「オメェに貰った宝石だよ」


「ほわっつ?」



 首を傾げる私に、フランさんは言う。



「言ったろ、宝石でゴーレム作るって。それが成功した結果生まれたのが、今オメェに抱き付いてるガキだ」



 思わずポカンとしてしまった私をスルーし、フランさんは平然と「量が少なかったからガキっぽくなっちまったんだろうな」と続けた。



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