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異世界で魔物使いやってます  作者:
ユグドラシル編
245/276

そういやあったわ



「父上、詳しい説明を要求します」


「うむ……」



 アルンさんに睨まれ、メリーじいさんは口を開く。



「まず補給についてじゃが……このユグドラシルは常に世界中のユグドラシルや世界中の植物に魔力を分け与えておってな。しかし分け与え続けていては枯れるのが道理。故に里の長にだけ作り方が伝わっている秘薬……凄まじいまでの濃度の薬を与える事で、不足した分の魔力を補給させ維持していたらしいのじゃが……」


「それをメリーじいさんが教わる前に、奥さんのキャロルさんがお亡くなりに……?」


「そうなるのう」



 うわーお……そこで途絶えちゃったのか。



「少しでもその秘薬について聞いてはいなかったのですか?」


「アルンも覚えておるじゃろう、キャロルの性格を」



 メリーじいさんのその言葉に、眉間に皺を寄せていたアルンさんは遠い目になって「……ああ……」と頷いた。

 え、何?どんな性格だったのキャロルさん。



「……母上は、エルフとしてのプライドが高過ぎる方でしたからね。死ぬ間際までそれを貫いていた事から考えて……はい、納得しました。あの母上の性格からすると私には教えても父上には絶対に教えなさそうです」


「うむ、そして実際にそうじゃった」



 だからどういう性格なのよキャロルさんって。ギルベルトも不思議そうに首傾げてるし。

 そんな風にハテナマークを浮かべてる私達に気付いたのか、メリーじいさんは「あー……」と零しながら頭を掻いた。



「キャロルはのー……何と言うかのー……エルフ至上主義という感じの性格、と言えばわかるか?人間や獣人を見下していて、ハーフエルフやダークエルフを酷く嫌っておってな」


「とても優れた光魔法の使い手ではあったのだが、排他的というか……。その結果毒々ヘビに咬まれ、治療するにはダークエルフの力を借りなくてはいけないからと治療を拒絶し、毒が回りきって全身紫色になって苦しみながら……死んでしまった」


「儂も同じ時に咬まれたが、さっさとダークエルフに治してもらったお陰で今も生きておる。……が、妻がそんな死に方じゃろ?あれ以来毒の沼を見るだけで気絶するくらいにトラウマになってのう……」



 「じゃけど毒の沼があったら浄化の為に強制で連れて行かれるから、儂はアルンに長を任せて引退して隠居したんじゃよ」とメリーじいさんは溜め息混じりに言った。

 ……そういや、何か、そんな話聞いたな。毒々ヘビにやられて死んだエルフを見てトラウマになったとか何とか。そうか、奥さんだったのか。そりゃトラウマにもなる。



「……俺が生まれた時にはもう死んでたからあまり話を聞いた事は無かったが……婆さん、そんな性格だったのか」


「ああ。もし今も存命だったらギルベルトが人里に行くのを全力で止めていただろうな。どうにか人里へ行く許可をもぎ取っても王の剣に所属するのは却下した事だろう」



 アルンさんの言葉に、ギルベルトは無言で「うへえ」と言わんばかりの嫌そうな顔をして舌を出した。



「……つまり、その秘薬についての情報はその人の所で途絶えてしまったという事で良いのかな?」


「そうなるのう」



 ノアの問いにメリーじいさんは頷いた。それを見たアレクが「せめて何か聞いてたりは?」と聞くが、



「一族による秘伝の薬だから、と儂は薬を見せてすらもらえなかったぞ」


「私ももう少し大きくなったら、と言われていたのでな……」



 駄目か。



「あ、でも婆さんが使ってたという書庫があるだろう。あそこに作り方とか」


「キャロルはそういうレシピや式などを全て暗号に変える癖があってな」


「駄目か……」



 メリーじいさんの返答にギルベルトは溜め息を吐きながら頭を抱えた。

 いや本当にこれはどうしたものか……と思っていると、イースがとても小さな声でポツリと呟いた。



「……そもそもぉ、あの秘伝薬って作るのに五十年くらい掛かるのよねぇ。だから五十年単位で補給してたんだと思うんだけどぉ……」


「え、イース作り方知ってるの?」



 思わず問い掛けると、胸を支えるように腕組みしながら「一部だけよぉ」とイースは答えた。



「大昔は沢山のエルフがそれぞれ役割分担して作ってたのよねぇ。そうする事で量も確保出来るからぁ、ユグドラシル以外にも使用されてたのぉ」



 「……戦争とかもあったしねぇ」と小さな声でイースは続けた。



「凄まじい量の魔力を有している薬だからぁ、戦争時に魔法で戦ってたエルフからすると必需品だったわぁ。魔力を一瞬にして回復させれるものねぇ。ちなみに複数でそれぞれに役割分担をさせてる理由だけどぉ、量もそうだけどそうする事で情報も漏れ難くさせる為なのよぉ」


「ああ、情報を分散させる事でもし誰か一人から情報が漏れても情報漏洩は一部だけしか起こらないって事か。それなら全員を確保して聞かない限り、全容は把握出来なくなるもんな」


「そういう事ぉ」



 ローランにそう返しつつ、イースは小声で「だから私も一部しか知らないのよねぇ」と呟いた。

 ……あー……エルフの魂つまみ食いとかした時に、その辺を知ったのかな。ただかなり昔だったから一部しかその秘薬についての情報をゲット出来なかったのね。納得。



「……ん?つまりレシピはわからないままだけど、仮にわかったとしても作るまであと五十年は掛かるって事?」


「そうなるわねぇ」


「あれ?でも花の国の女王様は確か「あと一年で手遅れ」って言ってたよ!?」



 私の意図を察したらしいマリンの言葉に「だよね」と頷くと、周囲の空気がずんと重くなった。



「……仮に作り方がわかっても、手遅れになるという事か?」



 ギルベルトの呟きに、私は無言と無反応を返す。だって同意すら示し難いじゃんコレ。同意しちゃ駄目なタイプの呟きじゃんコレ。ツイッターだったらいいねも押せないよこんな呟き。だって何も良くないもん。

 もう何か、完全な手詰まりに思えるけど……と唸っていると、ずっとユグドラシルの根に触れ続けていたフローラが細過ぎる茶色の手を上げて「ちょっと良いかしら?」と言った。



「どしたの、フローラ」


「その……ユグドラシルが、補給に使われてた薬と同じような濃い魔力を感じるって言ってるの」


「え?」



 近くにあんの?もしやこんな感じの事態を危惧した誰かが付近に埋めてくれてたり?



「それもミーヤからその魔力が漂って来てるって」


「ほわっつ?」



 え、私?



「でもミーヤだけどミーヤじゃないって……」



 フローラはユグドラシルに触れていない方の手を口元に当てながら、「わたくしはあくまで表面の感情とかを読み取って言語化してるだけだから具体的にはわからないんだけど……」と困ったように続けた。



「どういう事だ?」


「私に言われても困るよ」



 怪訝そうなギルベルトにそう返すと、「それもそうか」と頷いた。素直か。



「……そういえば……女王、に……ミーヤが、何とかする、って……言われてた……」


「確かに……言われていたな。花占いの結果でそう出ていたとか何とか」


「つってもその占いも漠然とした結果だったみたいだしな。具体的にどうなのかまでがわかってりゃミーヤ様も楽だろうが……それがわかんねえんじゃな……」


「あ、俺様はヒント出さないからな。もう殆どヒント出揃ってるし」



 上からラミィ、ハイド、ヒース、パンドラの順である。

 いや教えてよパンドラ。テレフォンさせてよ。ギャルゲーの親友キャラの如く攻略のヒントを教えてくれよチュートリアルのように。

 ……でもヒント出揃ってるって言ってるし……。

 もういっその事スマホで神様にメールしてどうしたら良いのか聞こうかな、と思いスマホを取り出す為にアイテムポーチの中を探ると、ふと封印していた記憶が脳裏を過ぎった。いや封印って程でも無いけど正直衝撃が強かった記憶だからごにょごにょって感じで記憶という押入れの奥深くに突っ込んでいた記憶が、アイテムポーチの中にあったとあるアイテムを見た瞬間に蘇った。

 私は無言のままティーポットのようにも見える豪華な意匠が施されたとあるアイテムをアイテムポーチから取り出す。



「……パンドラ」


「流石はミーヤ。大正解だ」



 アイテムを見せると、パンドラは久々にうっすらと目を開けて虹色の瞳を覗かせ、とても楽しそうに微笑んだ。

 ……成る程なー!

 私が取り出したアイテムは、イルザーミラのダンジョンで手に入れた「エルフの秘伝薬」だ。



「……そういえばそのアイテム、鑑定で表示される説明に「上級ドラゴンやユグドラシルが魔力の枯渇を起こしていても与えるだけでたちまち元気に」って書かれてたわねぇ」


「これゲットした時にイースも「製法を知ってるエルフはもう居ない」みたいな事言ってたしね……」



 そう言いながら、私はエルフの秘伝薬を掲げてフローラに見せる。



「フローラ、ユグドラシルが言ってるのってコレ?」


「うん、それだって言ってるわ!」



 フローラの言葉に合わせてか、ユグドラシルの枝が揺れて葉がざわざわと音を立てた。

 やっぱりコレか。成る程、女王が言ってた私がどうにかするってアレは私が持ってるコレの事だったんだね。



「……いったいどこで手に入れたんじゃ?」



 首を傾げたメリーじいさんに、私は正直に「イルザーミラのダンジョンで」と答える。



「ダンジョン」


「宝箱に入ってました」


「宝箱に入っとるもんなのか……」



 いや多分本来は入ってないと思います。ただちょっとレアラッシュの結果ゲットしたというか何というか。

 とりあえず蓋の部分を取って中身を確認してみると、中にはとろりとした液体が入っていた。あ、そういや説明文にも飲み薬って書かれてたっけ?

 注ぎ口の所の栓を抜いてユグドラシルに注げば良いんだろうかと思っていると、アルンさんがとても難しい顔で眉間に皺を寄せながら「少し良いだろうか」と手を上げた。



「何でしょう?」


「……それを使ったとしても、五十年後にまた同じ状態になるのでは?」


「あ」



 そっか、その問題があった。



「現物があっても作り方を理解して次のを作らない限り、同じ事が繰り返されるだけになっちゃうのか」


「問題解決が先延ばしになっちゃうのは、良くない事だよね」



 アリスの言葉に「だね」と頷く。



「だがそれを今から調べて次のを作ろうとしたら最悪百年は掛かってしまうぞ」


「それも問題だよなあ……今すぐに処置しないと枯れちまうし、かといって今使用すると次が無くなってどうしようも無くなっちまうっつーか」



 ギルベルトとローランの会話にうーーーーんと唸って思考を巡らせてみるが、これといった案は出てこない。何せ私の頭はポンコツだ。これは自分の脳に期待した私が悪かったすまん。

 レシピさえ確保出来れば……もういっそパンドラにどうにかレシピゲット出来ないか聞いてみる?いやでもそれはつまり邪眼の力を使わせるって事だからなー……。パンドラあんまり使いたく無いみたいだし、嫌な事を嫁に無理強いするような夫にはなりたくないし……。

 奇跡的なアレで急にレシピが天から降ってきたりせんじゃろうかと思考を放棄しつつ思っていると、アイテムポーチの中からピロンという音がした。



「…………」



 右手でエルフの秘伝薬を抱えながら左手でスマホを取り出すと、画面にはメールを受信したという知らせが表示されていた。

 そのままメールを開くと、差出人は安定の「神」だった。タイトル部分には「エルフの秘薬のレシピ」と書かれていて、本文には材料らしきモノがずらりとリストのように並んでいる。スクロールするとその下には「①まず最初に材料を~」から始まる作り方までしっかりと書かれていた。うわめっちゃわかりやすい。何コレ初心者用の料理本か何か?

 とりあえず私は「えーっと……」と前置きしてから、こっちを不思議そうに見ている三世代エルフにスマホの画面を見せる。



「……何か、エルフの秘薬の作り方が送られて来ました」


「誰から?」


「神様」



 ギルベルトに「何言ってんだろうコイツ」みたいな目で見られたが私嘘吐いて無いよ。事実だよ。事実で神様なんだよメールの送信者は。背後でパンドラが「神にしては思ったより正攻法、というか……地道に好感度を稼いでいるのか」って呟いてるから確実に本物だよ。

 ……そういやパンドラって神様と確執的なのあったんだっけ。やっべ配慮が足りてなかった。いやでもパンドラは平気そうにしてるから大丈夫、かな?嫌だったら言うだろうし、多分大丈夫って思っておこう、うん。



「ふむ、嘘は吐いておらんようじゃが……」



 画面を覗き込みながら、メリーじいさんは目を伏せて首を横に振った。



「残念ながら、儂には読めん文字じゃな。ミーヤの母国語か?」


「あっ」



 そっかコレ日本語表示だ!



「しかしミーヤには読めているのだろう?なら手間を掛けさせる事になるが……」



 アルンさんは「エルフ語……は無理か」と小声で呟いてから「ツィツィートガル語で紙に書き写してもらえるか?」と続けた。



「そうすればレシピは確保出来るし、レシピさえ確保出来ればそのエルフの秘薬を調べて解析する必要も無いから即座に使用も可能になる」


「えっと……信じてくれるんですか?」



 今の私かなり怪しい事言ってる不審者だっていう自覚あるけど。



「父上は嘘に敏感だからな。嘘を吐いていないと言うなら吐いていないのだろう。そしてどの道エルフの秘薬を使用しなくてはユグドラシルは枯れてしまうのだから、真偽がどうのこうのと言うのは時間の無駄だ。秘薬があってレシピもある。なら秘薬を使用してユグドラシルを回復させ、レシピ通りに次の秘薬を作る作業に入った方が賢いと私は思う」



 「どっちにしろ私達はレシピを知らないわけだからな」とアルンさんは溜め息を吐いた。



「万が一レシピが間違っていても、秘薬が無い以上はユグドラシルの死因が衰弱死か毒死かという違いくらいしかない。秘薬が無ければ枯れるだけだからな。全ては私達の不甲斐無さのせいだ」



 「すまない」と言って、アルンさんは頭を下げた。



「……いや、あの、頭は別に下げなくて良いです」


「だが君に頼り切りになっているのも事実だ。原因究明の為に頼り、そして君の持ち物まで奪おうとしている。本来ならこちらで負担すべき事だというのに。それだけでは飽き足らず、これから先の為にと君の元に預けられたレシピまで私達は」


「いや本当に気にしないで下さい気まずい!」



 アルンさん真面目が過ぎる!頭を上げてよお願いだから!頭が低いんだよ長なのに!

 てかこの問題は突き詰めるとエルフのせいでは?ってなるかもしれないけど実際はただ引き継いでた人が死んじゃったっていうのが真相だからね!?誰も悪く無いからね!?強いて言うならユグドラシルを枯らして泉を毒沼にして毒々ヘビを生み出したとも言えるどこかの誰かだからね責任を問われるなら!被害をどうにかしようとして被害を受けてその結果二百年後にちょっと被害が……みたいな事だからねこれ!エルフ悪く無いから!



「良いですかアルンさん、この問題は全世界級の問題です。私達にも関係がある。だから私が嫁との幸せライフの為に特に使用予定も無くて持て余してたどころかうっかり持ってる事を忘れてたアイテムを使用するのは当然です。使い道があってラッキーくらいの感覚ですからね私からすると」



 全て事実である。ガチで存在忘れてたからね私。



「あとレシピについては私が持っててもどうにもならんから解読して押し付けるようなもんですからね。アルンさん達に引き継いでもらわないとこっちが困るから引き継いでもらうわけですし。私が持ってても宝の持ち腐れだから宝を宝と扱える方にお渡すだけでござりますから。おわかりましたか?」


「後半言語が崩れていないか?」


「こんだけ喋った私に対してそこツッコミます?」



 頭上げてくれたのは良いけど他にもツッコむトコあったと思うの。ツッコミは無くともコメントとか反応とかさ。あと口調は混乱すると崩れんでやんすお気になさらず。



「まあ要するにアレですよ。フローラと出会わせてくれてありがとう記念的な贈与って感じの認識でオッケーです」


「それはこちらが結婚祝いを贈るのが正しいのでは……」


「良いから気にせず受け取るするよろしオーケイ?」


「言語」



 そこはオーケイと復唱して欲しかったけど、まあ意識は切り替えられたっぽいから良いとしよう。今日は何かもう、頭動かしすぎて脳みそバーニン。語彙村が火事になってるよね。生き残りの語彙を寄せ集めるととんちんかんになるんだね不思議だね。駄目だ脳内語彙すら死に掛けている。

 これ以上思考巡らすのはあかんなと思いつつ、私は「んじゃもう秘薬ユグドラシルに捧げますよー」と言ってアルンさんの言葉を聞かずにフローラの方まで歩いて隣に膝をつく。



「フローラ、これってどうすれば良い?」


「本当は泉に流し込むらしいんだけど、今は本当に枯渇してるから直に根に思いっきり掛けて欲しいって言ってるわ」


「了解」



 注ぎ口の栓をきゅっぽんと抜いて、ティーポットを傾けて地面から盛り上がってこんにちはしている根にダバダバと掛ける。そうそれはもうお茶漬けにお湯を掛けるが如くドバドバと。容赦はせぬ。



「よし」



 ティーポットから中身が出切ったのを確認して残っている数滴をピッ、ピッ、と掛けると、ユグドラシルから葉が擦れ合うざわざわした音が聞こえた。

 それを認識した瞬間、隣で地面に膝をついているフローラが私の肩を掴んで揺さぶった。



「ミーヤ、上見て!」


「上?」



 フローラが茶色の細い指で示している方に視線を向けると、ユグドラシルがざわざわと音を立てて枝を伸ばしていた。枝が伸びると同時に葉も増え始め、幹もメキメキ音を立てて膨れ上がっているような気がする。

 葉が増えるごとに古い葉がひらひらと……否、ボロボロと落ち始める。そしてその葉が地面に落ちると、そこから草が生えた。既に草がある場所の場合は草に花が咲き、花がある場所には何かの実が生っている。え、何コレ凄い。



「何だこれは!?今まではユグドラシルの葉が落ちても地面に魔力が浸透して植物の芽が出やすくなる程度だったはず……!」



 周囲を見て動揺しているらしいギルベルトに、アルンさんは「……いや」と首を横に振った。



「これが本来のユグドラシルだ。……実に二百年振りに見る」



 「過去の記憶を美化していたのかと思っていたが……弱っていたからだったのか」とアルンさんは呟いた。

 ……二百年って年数からすると、もしやフローラが愛に飢えたのってユグドラシルが弱ってたのも理由の一つなんじゃなかろうか。いや確証は無いけどね?



「……儂は秘薬が必要と知りながらも作れぬからとユグドラシルが弱っていくのを見て見ぬ振りをしておったが……ユグドラシルはずっと頑張っておったんじゃな」



 「……休眠状態になってまで」と小さく呟くメリーじいさんの言葉は、聞かない振りをすべきだろうか。脳の容量をすっかり超えている今の私にはわからん。



「ユグドラシル、とっても元気になってるわ!」


「わっ」



 横からフローラにぎゅう、と抱き締められた。フローラの緑の髪から沢山の綺麗な花が落ちて地面を彩っているのを見ながら、私は片腕でフローラを抱き締め返す。

 フローラは「うふふ」と幸せそうに微笑んだ。



「ミーヤのお陰ね!」


「フローラが読み取ってくれたお陰だよ」



 私はフローラの頭を撫でてそう返しつつ、この後頑張ってレシピ書き写さないとな、と嫁で充電しながら気合を入れ直していた。



気付いてた人は気付いていたであろうあの時のアイテム。忘れた頃に使用チャンスはやってくる。

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