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異世界で魔物使いやってます  作者:
ユグドラシル編
243/276

お久しぶりです



 行きと同じく、否、ロンが少しスピードを速めてくれたお陰で三十分程でエルフの里に戻ってこれた。

 ユグドラシルの根元の泉に行ってみるとギルベルトもアルンさんも居なかったので、近くに居たエルフさんに声を掛けて聞いてみる。



「あの、すみません。アルンさんとギルベルトってドコ行ったかわかります?」


「あ、後は待つしか出来ないからと言って家に帰ったぞ」


「成る程」



 確かにかなり距離があるっていう部分は聞いてたもんね。んでもってロンが居るとはいえどのくらい時間を早めれるのかまではあの時点ではわかんなかったわけだし。そう考えると数日は掛かる可能性があるから帰ろうと思うのは当然か。往復で一週間は掛かるだろう可能性も高かったしね。

 まあ普通日帰りしてくるとは思わんよなと思いつつ、エルフさんに頭を下げてお礼を言う。



「ありがとうございます」


「いや……」



 目を逸らされてしまったが、まあ人間に慣れて無いからこその反応だろうと思っておく。というかこっちの人数が多いのも問題な気はするしね。大人数相手とか普通に萎縮するわ。

 魔力感知能力が高いエルフからしたらロンとかパンドラとか化け物だろうし……いやまあ化け物寄りなのは割りと事実だから否定も出来んのだけどね。

 場所はわかったし、とアルンさんとギルベルトの家の方に歩き出すと、



「おい今あの子に話し掛けられてたよな!?どんな会話した!?」


「うるさい今は内心反省会中なんだ話し掛けるな!」


「まあ確かにぶっきらぼうな言い方ではあったけど、よく頑張ったと思うわよ?」


「そうそう、暴言はどうにか吐かなかったしな」


「しかしせめてどういたしましてくらいは言いたかった……だというのにこの口が!この口が勝手に!」


「どんまい」


「里のエルフが少なくなるのは避けたいが、やはり人里に行って人間に慣れた方が良いのかもしれんな……」


「でもエルフの友人とわかってて、それも先代の長であるメリードが認めた友人だとわかった上でのあの態度だものね。エルフの友人でも無い人間相手だと考えると……どこまで口が悪くなっちゃうのか、想像もつかないわ」


「自分の心に傷を負い、エルフの誤解が深まるの覚悟で人里に行くか……そうならないようにと人とのコミュニケーションを諦めてこのままエルフの里で生活するか……難題だな」



 そんなエルフ達の会話が背後から聞こえた。いやもう何か、私からするとちょっとした旅行とかでゆっくり慣らしていくんじゃ駄目なのかって思うけどね。

 まあでも慣らしたから他国の人と円滑なコミュニケーション出来るかって言うと断言は出来ないんだけど。だって鎖国までした歴史がある日本人だもの。色んな国で交渉代理人としといて何言ってんだとかのツッコミはお断りしておりますので廃品回収の時に捨てといて。

 そんな事を思いつつ、私はアルンさんの家の扉を軽くノックする。そしてすぐに扉を開けて出てくれたアルンさんが私達を見て目を見開くのを見ながら、ヘラリと笑って軽く手を振る。



「アルンさん、ギルベルト、ただいまー」


「…………」


「……偽者か?」



 完全に硬直して反応返してくれないアルンさんもアレだけど、アルンさんの背後から顔を出してこっちを確認したギルベルトの言動も酷い。こんなとんでもない面子を偽装出来る奴が居ると思うのか。私は思わん。

 とりあえず本物だと示す為に、私は自分を指差して言う。



「イッツ本物。アイアム本物」


「そ、その意味不明な言動は間違い無く本物のミーヤ!?嘘だろまだ数時間しか経っていないぞ!?」


「おいコラ前半」



 確かに私は割りと頻繁に意味不明言語を使用しているけど、ギルベルトの前ではそこまで……うん、確証は無いけど多分そこまで意味不明言語を使った覚えは無い。記憶を綺麗さっぱり消去してるだけな気もしないでもないから言い切れないんだけどね。



「まあ良いや。……えっと、端的に報告すると色々と花の国で女王と話し合って来ました」


「…………」



 端的に纏め過ぎな気もするが、一応報告……をしたが、アルンさんは未だ硬直したままだ。それに気付いたらしいギルベルトが自分の父親であるアルンさんをガクガクと揺さぶり始める。



「父さん、おい父さん、起きろ。確かに想定よりミーヤの帰りが早くて驚くのは仕方ないがこれが現実で、これがミーヤだ」



 言い方。まるで私が未確認生命体とかその辺の何かみたいじゃないか。自称して良いのか疑問に思い始めているとはいえ、一応普通の人間だよ。異世界人で不老長寿だったりするだけの人間です。

 ……もういっそ開き直って仙人とでも名乗った方が良いのかな。いや、でもこっちの世界だとリアルに仙人という種族が居てもおかしくないから止めておこう。魔女と魔法使いと魔術師で微妙に差がある世界観だもんねここ。



「……父さんは本当に予想外の展開に弱いな」


「放っておけ。その分私はある程度の予想が立てれる分強い」



 「……確かに予想していない展開には本当に弱いが」と呟いてからアルンさんは頭を振り、私の方を見た。正確には私を見た後に私の背後に立つフローラを見て、そして私に視線を戻した。



「……話し合って、それで……ミーヤの背後に居るのが、花人か?」


「はい」



 頷き、フローラを抱き寄せて紹介する。



「花の国の女王の妹で、私の嫁になりました」


「始めまして、フローラよ」


「常識はドコだ!?」



 わかりやすく紹介したら頭を抱えて叫ばれてしまった。

 頭を抱えて酷く困惑している様子のアルンさんを見て、ギルベルトがアルンさんの背中をぽんぽんと叩く。



「……父さん、ミーヤに常識は通じない」


「ああ、お前からの手紙に時々書かれていたからわかっていたつもりだったが……考えていた以上に凄まじいな」



 アルンさんは片手でこめかみを押さえながら、「一体誰が、花人に協力要請するどころか花人を嫁にして連れてくるなんて結果を想像すると思う……」と力無く呟いた。

 ……うん、まあ、そうなるよね。でも弁解させてもらうと私だって想定外だったですよ。



「でもまあ、えっと、フローラがユグドラシルに触れれば今回の件についての真相がわかるはずですから!」


「触れれば?」



 眉を顰めながら首を傾げたアルンさんにこの情報は知らないのかと判断し、簡潔に説明する。



「どうも花人や木人は植物故の同調?が出来るらしくて、触れればある程度はわかるらしいんです。その代わり触れないとわかりませんけど」


「そうだったのか……だからユニコーンは凄まじい苦痛に耐えるようにしながらも誰かを花の国に連れて行こうとしていたのだな」



 「直に見る必要があるのかと思っていたが、直に触れる必要があったのか」とアルンさんはうんうんと頷いた。



「ほうほう、花人にはそんな特性があったとは流石の儂も初耳じゃなあ」



 そんな言葉に、



「まあ花人自体秘匿された種族らしいしな」



 とヒースが返した。



「木人にいたっては見る事も出来なかったのが残念だが……パンドラ、お主なら木人の見た目を知っていたりせんか?」


「ん?ああ、いや、木人の見た目は女王が言っていた通りだぞ。花人よりも背が高く、のんびりした性格の者が多い。花の国に居た時点でのあり得る可能性全ての未来を観測した限り、どうやら今の木人の流行りは髪に生る実の位置やサイズを調整して髪飾りのように見せる事らしいな」


「……木人……独特、な、流行り……」


「俺らじゃそもそも髪に実も生らねえしな。それ以前に俺からすると髪って言うより毛なわけだし」


「というか、かなり凄まじい能力であるエルピスを使用して確認するのが木人の見た目や流行りというのはどうなんでしょうか。平和的で良いとは思いますが」


「……ねぇ、せめてハニーは反応したらぁ?」



 上からロン、パンドラ、ラミィ、コン、ハニー、イースの順である。苦笑気味のイースの言葉にハニーが「はい?」と返すと、イースはいつの間にか皆の中に混じっていたエルフを指差した。

 ……と、とても見覚えがあるエルフのような気がするんだけど。具体的にはラミィにもまだ会ってない時期に見覚えがある。



「……あっ」



 気付いたらしいハニーがそのエルフの名を呼ぶ前に、私は私でそのエルフの名前を呼ぶ。



「……何で混ざってるんですかメリーじいさん」


「ついさっきアルンから連絡を受けてのお。これは様子を見に行くべきじゃろうと歳を食って重い腰を上げて来てみれば見覚えのある子らと種族がバラバラの集団が家の前におるという状況。これは混ざって話を聞いて楽しむべきじゃろうとお茶目な儂が顔を出したというわけじゃ」


「成る程」



 めちゃくちゃわかりやすい動機だった。確かに混ざるだけのメンタルがあったら積極的に混ざろうと思うくらいには面白い面子だろうしね。



「というかコンとか普通にメリーじいさんが混ざってるのに気付いてただろうに何でスルー?」


「いや、エルフだから様子が気になって話を聞く為に混ざってきたのかと」


「あー」



 それに加えて話しかけようにも中々話しかけられないエルフさん達の会話も聞こえてただろうからね。そりゃ何か言って萎縮させたり心にも無い事言わせちゃうよりはスルーしておこうって気になるか。

 そんな私達をスルーし、メリーじいさんは相変わらずの若々しい顔に笑みを浮かべながらアルンさんの頭を撫でた。



「久しぶりじゃのお、アルン。知り合いから時々手紙で「アルンはよくやっている」と書かれておったから特に心配もしておらんかったが、元気そうで何よりじゃ」


「父上……」



 アルンさんはそんなメリーじいさんの言葉に眉間の皺と頬を緩め、



「そんな事を言われても父上に長を押し付けられたと思ったら直後失踪して「人里で隠居生活送っとるから気にせんで良いぞ」という手紙だけが送られて来た事、まだ許していませんよ。そしてこれからも許しません」


「お主本当ねちっこいのう」



 緩めたと思ったら直後に思いっきり眉間に皺寄せて恨み言を吐いていた。そしてそんな恨み言を少し眉を顰めるだけでスルーするメリーじいさんも凄いな。

 メリーじいさんはアルンさんの頭から手を離し、今度はギルベルトの方に視線を向けた。



「おお、しばらく見ん内に大きくなったなあ」



 「最後に会ったのはいつじゃったか」というメリーじいさんによしよしと頭を撫でられながら、ギルベルトは「大体十年振りくらい……か?」と答えた。



「いや、十九年振りだ。最後に父上が来たのはギルベルトが70になった時だったからな」



 そんな年数を覚えてるアルンさんも凄いけど、そんな年数会って無いのも中々凄いな。十九年前とか私生まれて無いよ。



「そう思うと、ミーヤは数ヶ月振りくらいじゃからそこまで久しぶりでも無いのかのう」


「わ」



 ギルベルトの頭から手を離したと思ったら、今度は私が撫でられた。メリーじいさんは優しげな笑みを浮かべながら髪の流れに沿って私の頭を撫でる。



「まあでも久しぶりじゃな、で良かろう。儂と会った時はそこの魔族とまだ擬態も覚えとらん頃のハニーだけじゃったが……ふむ、随分と仲間が増えたんじゃな」



 メリーじいさんの言葉に、そういえばそんなにも前なのかと改めて認識した。そういやツギルクの町を出てからラミィ達に会ったんだっけ。

 ……アニスさんに会ったり、アーウェルとリーンちゃんと再会したり、レオナルドさんの妹さんに会ったり、そしてメリーじいさんの息子と孫に会ったと思ったら再会したり……ツギルクの知り合いと再会したり関係者に会ったりする率高いな私。いやまあそれ言っちゃうと知り合いと知り合いにやたら縁があるから本当今更だけど。



「なあイース、話を聞く限り……あのエルフがミーヤにエルフの友人の証をくれたエルフで、ギルベルトの祖父って認識で合ってるんだよな?」


「えぇ、それで合ってるわよぉ」



 ローランとイースの会話に、そういや改めて紹介するのを忘れてたなと思い至り反省。次に似たような事があったらちゃんと紹介しよう。忘れるかもしれないけど。

 とと、その前にメリーじいさんに私の仲間……ではなく、嫁でもあるという事を紹介しなくては。



「あの、メリーじいさん」


「うん?どうした?」



 首を傾げながら私の頭から手を離したメリーじいさんに、私は手を広げて皆を示しながら言う。



「確かに皆私の従魔で仲間なんですけど……皆私の嫁でもあるんです」


「……ほう」



 流石のメリーじいさんでも驚いたのか、どこか呆然とした声色で頷いた。



「そこの魔族……イースもか?」


「イースもです」


「狐獣人も?」


「あ、名前はコンです。そしてその通り」


「こっちの人魚っぽいお嬢ちゃんもか?」


「そうですそうです。マリンって言います」


「明らかに所有しておる魔力量がおかしいこの男も?」


「パンドラですね。まあパンドラの魔力量は事情が事情なアレやソレなんでスルーしてください。あとパンドラもしっかりと私の嫁です」


「ふーーーーむ」



 顎に手を当て、メリーじいさんは「最近の若い子の進化は目まぐるしいのう」と呟いた。

 ……若い子の進化というよりは、若い子故に流されやすいだけな気もするけどね。まあでも受け入れて幸せにする気満々という現状から考えると流されてるだけでは無いのかな。……そうだと良いなあ。



「……これだけの数、それも種族の垣根も越えて受け入れる度量……か」



 そしてメリーじいさんは聞こえるか聞こえないかの酷く小さな声で、



「キャロルにも、せめてその百分の一でも心にゆとりがあれば、のう……」



 と呟いた。

 ……誰だろう、キャロルさん。



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