暗殺組織、スノードロップ
あの後、話を聞いてる限りどうやらこれで頭以外の全員を捕らえたようだし、何より今のでかなり注目を集めてしまったから一旦帰還した方が良いだろう、という事で王城に戻って来た。
ちなみに肉饅頭売りのお兄さんはそのまま野次馬の人達に肉饅頭を売り捌き、「完売したから俺帰るわ」と言ってさっさと帰ってしまった。本当に肉饅頭の事しか考えてないねあの人。
さておき、午前中に集まった時と同じ部屋で、尋問係だったロロさんが口を開く。
「捕まえた五人。……というか、主にデカいのと変装する子の二人から大体聞けました」
「眼鏡ははぐらかすし、気絶してた男女はダメージが大きかったから聞けなかったけど」と続けてから、隣で気まずそうにしているローランを指差し、ロロさんは言う。
「彼ら、ローランが昔所属してた組織の奴等でした」
「ごめーん……」
ロロさんに指差され、部屋に居る全員からの視線を集めたローランはしおしおとしゃがみ込んで頭を抱えた。
「あー……」
眉を顰めて困ったように頭を掻きながら、ニコラスさんが言う。
「まあ、ローランが昔所属していた組織というのはわかった。しかしそんな事はこの王城では頻繁に起こりえる事だから、ローランが気に病む事は」
「違うわよ」
ニコラスさんの言葉を遮り、ロロさんはズバッと切れ味鋭く言う。
「ニコラスはこの王城の使用人の内、三分の二が事情持ち。そして王族が居る以上狙われやすく、そういう遭遇も頻繁にある、って言いたいんでしょうけど……残念ながら、ローランが居るからこそ狙って来たみたいよ」
「あ~~…………」
ローランが完全に丸くなってしまった。
「はい!」
マリンが元気に水掻きのある手を上げた。
「ローランが居るからこそ狙って来たってどういう事?」
「彼らの所属している暗殺組織……スノードロップは、つい最近までバーバヤガに居たらしいんです」
組織名スノードロップなの?スノードロップって花の名前だよね?暗殺組織なのに?
「そしてバーバヤガの王に雇われていたらしいんですが……まあこれが酷い職場だったようで」
ロロさん言動に反してめっちゃ良い笑顔。発光してるんじゃないかって思うくらいの良い笑顔浮かべてるんだけど。
「酷い職場とは?」
そう問い掛けた王様に、ロロさんは「はい」と頷いて続ける。
「気に食わない近隣貴族の暗殺なら普通にスノードロップが請け負う任務ですが、どうもそれ以外も頼まれたようですね。まるで小間使いのような雑用から……一般人や観光客の誘拐、などを」
「スノードロップはそういう事しないタイプの組織なんだけどな」
しゃがみ込んだまま、頬杖をついてローランはそう呟いた。
その言葉に、ふとさっき見た頭とお兄さんの戦いを思い出した。
「そういえば、あの頭も肉饅頭売りのお兄さんと戦う時にそんな事言ってたっけ。一般人は傷付けないとか何とか。構えてた短刀も峰打ちになるように構えられてたし」
「そうそう、それスノードロップの原則だから」
ローランが頷いた。
「「一般人に被害は出すな」「犠牲はターゲットのみ」「目撃者を消すのでは無く目撃されないように極めろ」とか、そういう感じのルールだったんだよね。無関係な人は巻き込みたくない、っていうか」
暗殺組織ってもっと人を人とも思わない奴等かと思ってたけど、結構ルールがしっかりしてるんだね。何だろう、どっちかと言うとヤの付くご職業の方って感じ。秩序がしっかりしてるトコとかが特に。カタギの人に迷惑は掛けるな的な?
「そう、だからスノードロップはバーバヤガとの契約を破棄したとの事でした。一般人を誘拐するなど、と」
「……なあ」
人間が相手だからか、少し人見知りが発動しているらしいヒースは私の服の裾を掴みながら、おずおずと右手を小さく上げた。
「……その、誘拐した場合……誘拐された側はどうなってたか、わかるか?」
ヒースの問いに、ロロさんは「残念ながら」と首を横に振った。
「バーバヤガの王と直に話をしたのは頭だけのようでして。故に部下である彼らは知らないようでしたが……王と話を終えた頭が酷く嫌そうに顔を顰めていた、という証言からすると、恐らく奴隷か、それより酷い何かをされるかでしょうね」
「そうか……」
顔を俯かせながら私の服の裾を強く握り直したヒースの頭を軽く撫でておく。
……バーバヤガと奴隷って言葉で、嫌な事でも思い出しちゃったかな。
「そしてバーバヤガと契約を破棄したスノードロップでしたが、どうやら今までの任務の報酬が未払いだったらしくて。その上実費で幾つか負担させられていたりもしたようなので、組織の金銭的な部分がかなーりカツカツになっちゃってたらしく」
「だからこそ、王族を狙ったようですよ」とロロさんは優しげに微笑んだ。
……内容全然優しくないけど。
「王族を狙った、っていうのは身代金目的って事かい?」
「そのようですね」
ノアの質問に頷いたロロさんに、今度はラミィが首を傾げながら問う。
「……でも……ローラン、関係……ある、って……」
「まあ……どうも、どっちかが達成出来ればそれで、って感じだったみたいなんですよね」
「どっちか?」
ハテナマークを浮かべたアーウェルに、ロロさんは「そう、どっちか」と返す。
「王族を誘拐して身代金を奪い、活動の為の資金を確保。または、次期頭の予定だったスノードロップのエース、ローランの復帰。資金があれば再び暗殺組織として活動は出来るし、資金が確保出来なくてもローランが復帰すれば出来る事が増えるからそれでも良し、って考えだったみたい」
「俺自由に恋愛したいから、自由に恋愛出来ないスノードロップ抜けて自由に恋愛出来る王の剣に所属する!って事で抜けたってのに!何だよその仕事無くしたから田舎から上京してた息子頼るみたいな感じ!」
わあローランの例えわかりやすーい。
「……嫌いになった?」
「ん?」
ぽつりと呟き、ローランは下半分が黒い口布で覆われた顔を青褪めさせ、ざかざかざかっと床を這って私の足に縋りついた。
「コレ、全部俺のせいだった。全部じゃないかもしれないけど俺のせいだった。ミーヤに迷惑を掛けた。も、も、も、もし、もしこれで、これで俺、ミーヤにきらっ、嫌われ、嫌われでもしたら俺、俺、どうしたら」
「はいストーップ」
「えぶっ」
ガクガクと震えながら動揺している様子のローランの頬を両手で掴むように覆い、喋るのを中断させる。
……ん、良し、大人しくなった。焦点が合ってなかった目も安定したね。
ローランの頬を両手で覆いながら、しっかりと目を合わせて私は言う。
「とりあえず被害も出てないから、私はローランを嫌いになったりはしない。嫌う理由が無い」
「で、でも、迷惑……」
「どっちかというと迷惑被ったのは王族と屋台の人達だから。私はセレスと屋台巡り出来たし、頭と肉饅頭売りのお兄さんのバトルなんて見世物みたいで面白かったから問題は無し。私はね」
ローランの頬から手を離し、右手でぽんぽんと軽く緑色の頭を撫でる。
「どっちかというと、迷惑掛けたって気にした方が良いのは王族相手じゃないかな?」
そう笑い掛けると、ローランはハッキリとした声で宣言した。
「王族よりも俺が惚れた相手であるミーヤ優先!」
「王族の前で言う事じゃ無いと思うなあ!」
まあ後ろで王様とか「ローランはそういう奴であるからな」って言ってるし、ケインさんは「……俺達は……付き人が守ってくれるから……それで良い……」って言ってるし、セインは「最低限仕事こなしてれば良いぜよー」って言ってるし、セレスは「まあ、大事な事よね」って言ってるし、アランは「わかる。惚れた相手を最優先するの大事」って頷いてるから良いんだろうけど!良いんだろうけどそれで良いのか王族達!
……うん、良いなら良いや。部外者の私が口出す事でもないからね。
「ローランってああいう性格だったの?妾、ミーヤのストーカーって事しか知らなかったんだけど」
「それだけでも充分過ぎる程どうかと思うけど……うん、ストーカー以上に面倒臭い性格でもあったみたいだね」
「でもミーヤが好きなのは事実っぽいから良いと思う!」
「何か、性格が面倒なトコとかミーヤが好きなトコとか……俺と結構似てる気がすんな」
「そうだな、少々過去がアレな所とかも似ていると思うぞ」
上からアリス、ノア、マリン、ヒース、ロンの順である。
……そういやアリス達は前にちょっと話したくらいでローランの闇部分には触れてなかったっけ。ロンは私の記憶読んだから知ってるっぽいけど。
すると、「さて」と言い、アンナさんが手を叩いた。
「ローラン、後は頭一人なんだな?」
「ああ、俺が抜けた後に新入りが居なければ。物理攻撃担当と毒物担当と変装担当とハニトラ担当と隠密系担当の五人と、それらを纏める頭だけ」
本当に少数精鋭だね。
てか、多分あの気絶してた女性がハニトラ担当だとすると、気絶してた男性が隠密担当?
……うん、本当に肉饅頭売りのお兄さん凄いね。隠密系を担当してるプロの暗殺者の気配を察知するとか何者なんだ。肉饅頭売りか。肉饅頭売りなら仕方ないね。仕方ないで済ませて良いかは知らんけどあのお兄さんなら仕方ない。だって肉饅頭売りだもん。
「詳しい話を聞く為にも、その頭を捕まえるのは必須だろう」
「捕まえないと事が終わったとは言えないから当然だと思うわよ」
微笑んでいるロロさんの言葉に、ニコラスさんはばつが悪そうに「それはそうなんだが……」と呟いた。
「あー、とにかく、その頭についての情報をあるだけ聞いておきたい。タバサの報告では認識阻害も使っていたらしいが……」
ニコラスさんの視線を察し、タバサが「そうなんすよね」と溜め息混じりに口を開いた。
「俺らもずっと姫様とミーヤを見てましたけど、ミーヤの鞭がヤローの手を弾くまでヤローの姿は見えませんでした。その後髪を切って分身を作り、そっちに視線が向かってる隙に逃亡。恐らく意識を一瞬でも逸らせれば完璧に認識阻害を使えるっつー……まあ、言っちまうと厄介な感じっすね」
あ、ソレ知ってる。ミスディレクションだ。漫画で見た。右手で派手な事をして見せる事で左手から意識を逸らさせ、その隙に左手で仕掛けるっていう手品のテク。
……分身なんて出されたら誰だって意識逸らすわな。直前に煙も出てたし。あの頭めっちゃ逃亡慣れしてんね。
そう考えていると、ローランがようやく立ち上がりながら「頭の認識阻害についてだが」と手を上げた。
「頭の顔にさ、刺青彫ってあっただろ?二対の爪跡みたいな赤いやつ」
「確かにあったわ」
セレスが頷き、「ミーヤ様も見ましたよね?」と私に言った。それに「うん、見た」と頷くと、ローランが溜め息を吐き、
「ソレのせいなんだよ」
と続け、自分の頬の辺りを指でクルクルしながら示す。
「頭の刺青はかなり特殊な仕様になっててさ、すっげぇ細かく魔法の術式が刻まれてんの」
「肉眼じゃただの刺青にしか見えないけどな」と頬を示していた手を下ろしてローランは言う。
「一つの刺青に一つの効果があって、その中の一つが認識阻害。刺青が詠唱と魔法陣の役割を持ってるから、相手の視線を逸らした隙に刺青に魔力を流せばその瞬間に認識を阻害出来る」
凄いねソレ。
私は詠唱も魔法陣も無しで魔法を使用可能だけど、それって結構レアなんだよね?なのにソレを出来るようになるっていう刺青……彫る時にちょっとでもミスったらアウトだろうね。こわっ。
「ちなみに残りの三つは、一つが自分から発する音を消す無音魔法、一つが身体能力の強化魔法、そして最後の一つがそれらの魔法の効果が部下にも及ぶようにっていう広域化魔法」
「凄まじく厄介ですね」
ハニーに全力で同意。無音が広域化とか超怖いんだけど。暗殺者なら当然ですかそうですか。
「……正直に言って、その刺青に関してを凄く、凄く、凄く聞きたくて聞きたくて仕方が無いが……今は我慢しておこう……!」
「……そうしてくれ」
血が滲み出そうな程の力で手を拳の形にしているアンナさんに、少し引いたような表情でデリックさんはそう言った。
「あ、でもその刺青彫ったりは頭が自分でやってたから捕まえたら聞けるんじゃないか?一回見た事があるんだが自分の分身に彫らせてた」
「よし今すぐにそいつの情報を確認して捕らえるぞ!全ては私の知的好奇心とかその他諸々の為に!あと王族の安眠の為に!」
「何か超粗雑な扱われ方してね?俺ら王族なんだけど」
「安心しろ気持ちはどうあれ頭を捕らえるという結論に変わりは無い!」
ハッキリとそう言い切ったアンナさんに、セインは「まあそれはそうなんだけどよー」と唇を尖らせた。
……うん、自分に正直過ぎたよね、さっきの発言。他の人達はスルーしてるからいつもの事なのかも知れんけど。
「さて、では次の確認すべき情報は何だ?分身か?分身魔法か?」
わくわくの様子でそう言ったアンナさんに、オルコットが「確かにその魔法は知らねェなァ」と呟いた。
「そうか、では教えよう!分身という魔法は元となる、いわゆる媒体となる物質が必要不可欠だ!ゴーレムを作る時には材料となる土が必要、というタイプに近いな。そして材料に用いられるのは髪が多い!何故かと言えば髪は魔力がふんだんに含まれているからだ!」
「え、そうなんですか?」
「ああ!」
私の問いに、アンナさんは深く頷いた。
「髪は体の一部であり、魔力が通っている。故に髪の毛は魔力を通しやすい。どのくらい通しやすいかと言えば水を吸うスポンジ級だ。だからこそ髪には沢山の魔力が含まれており、少し変わった魔法の媒体として使用される事が多い。魔女が対価として髪を求める事もあるくらいには魔力が豊富な部位でもある」
アンナさんはそのまま、「何より内臓は限りがあるが、髪はその人物と毛根が生きてさえいれば何度でもゲット可能だからな!」と笑顔で続けた。
……そういや髪を対価にって絵本とかでも見たな。人魚姫とかで。髪は神に通ずるって説もあるし、魔力が沢山含まれてても不思議じゃない、か。
「そういえば阿さんも髪は魔力を通しやすいって言ってたっけ。自分達が作られる時も髪に魔力を含ませて何とかかんとかって言ってたし……」
アレクの呟きに少し首を傾げる。言ってたっけ?魔力がどうとかは言ってた気がするけど……まあ、私の記憶違いかな。よくあるよくある。人間の記憶力に期待しちゃいかん。
「というか、ミーヤは知っていると思っていたが」
「え」
「何でですか?」とアンナさんに問うと、アンナさんは私が手首につけているミサンガを指差した。
「ソレ、髪で作られたミサンガだろう?鑑定が弾かれるから詳しくは見れんが、材質くらいは肉眼でわかる。魔力を通しやすい髪を材料に作られているし、複数の魔法の気配を感じるから知っているのだと……」
無言になった私を見て、アンナさんは「……もしや、私はまずい事を言ったか?」と眉を顰めた。
「あー……いえ、まずくは無いんですが……イースさん?」
振り向いてイースに問うと、イースは少し目を逸らしながら言う。
「聞かれたら答えたわよぉ?」
「さいでっか」
イースが目を逸らしてるのは今まで言うタイミングが無かったせいで言えなかったから、って気まずさのせいかな。
……まあ私が今まで気付かなかったせいなんだけどね!
あー、そっか、通りで白いミサンガのはずなのに時々銀色に見えるはずだよ。銀の糸ってあるのかな?うーん、多分光の加減でそう見えるだけで白かな、うん、多分白!って私が勝手に思い込んでいただけだしね。
そうか、このミサンガはイースの髪の毛で作られてたのか。通りで中々ほつれたりもしない頑丈なミサンガのはずだよ。髪の毛って編むと頑丈だって言うもんね。
……うん、何か衝撃の事実ではあったけど、今回の件といい助けられてるのは事実だから良しとしよう!
「よし、飲み込めました。特に問題は無かったんで続きお願いしますアンナさん」
「そうか?本当に良いんだな?言っておくが私はそう言われると本気で受け取ってさっさと続きの事だけを考え始めるタイプだぞ」
アンナさん中々に我が強いね。
「ご自由にどうぞ」
「よし、では続けよう」
「とは言っても分身に関してはさっき言ったくらいしかなくてな」と前置きしてから、アンナさんは語り始める。
「媒体となるのは爪でも歯でも良いんだが、さっき言った通りの理由で髪を利用する事が多い。そして媒体となる物質に含まれる魔力量によって強さや制限時間も変わる。聞いた話ではその頭とやらは髪をほんの少しだけ切る、というやり方だったんだろう?それなら数は稼げるが十分持つか持たないか程度だろう。強さも頭本人の……百分の一あるかないか、だろうな」
「元となる物質の量で魔力量も変化し、魔力量によって強さも変化するのが分身魔法だからな」とアンナさんは続けた。
「故に分身魔法を使われた場合、強さはアラン様でも倒せる強さだろう。しかし人間に生えている髪は平均十万本。それを刻んで増やせると考えると、分身魔法を使われる前に捕らえた方が良いだろうな」
「……つまり、結論は?」
ニコラスさんの言葉に対し、アンナさんは端的に、
「魔法を使用される前に捕らえるが吉!」
と答えた。
……おみくじか。
「あー、少し良いだろうか」
心の中でツッコんでいると、パンドラが目を伏せたまま扉の方に顔を向けながら挙手して言う。
「あと数十秒でそこの扉から認識阻害を発動させた頭が来るぞ」
「マジで?」
「マジだ」
マジなのか……と思っていると、ブラッドさんが首を傾げた。
「数十秒って、何でわかるの?」
「俺様は未来予知系のスキルを所持していてな。詳しくは面倒だから言えんが、もうすぐ来るぞ。扉が勝手に開き、誰も居ない……ように見えるだろうが、そこには頭が居るはずだから警戒しておけ」
パンドラのその言葉に、王様が「ふむ」と頷いて顎鬚を撫でた。
「未来予知系のスキルを所持している者は信じてもらえぬ事が多い故、自分から名乗り出る事は殆ど無い。しかし今言ったという事、そしてミーヤが疑問を抱いていない事から察するに事実なのであろう。……ニコラス」
「はっ!」
王様に名を呼ばれ、ニコラスさんは腰にある剣の柄に触れていつでも剣を抜けるように体勢を整えた。それと同時に付き人達は守るべき主を背中側に回し、それ以外の私を含めた全員が扉の方を見ながら警戒を強めた。
「!」
音も無く、唯一の出入り口である扉が開いた。この扉は開閉の時にギィって音がしてたはずなのに。
……無音魔法かな。
見えるのは開いた扉だけで、そこには誰も居ない。つまり既に頭が認識阻害を使用しているのだろうけど……とまで考えた瞬間、
「っ、何っ!?」
慌てたような声がした。
そして次の瞬間、瞬きをしたと同時に、空中で動けなくなっている頭が居た。頭は身を捩り、その動きによる光の反射で見えた自分を拘束している物に気付く。
「これは……糸か!?」
まずは王族を攫おうと思ったのだろう頭は、見事に扉付近に張られていた糸に絡め捕られていた。宙に浮き、不安定な状況をどうにかしようともがいているらしいが、もがけばもがく程その糸は頭に絡まっていく。
「……室内なら安全だとでも思ったか?」
「甘いな」と呟き、ハイドが黒く尖った指を動かすと同時に頭に絡まっている糸が動いて頭の手足を拘束していく。
「蜘蛛が居る場所には蜘蛛の巣がある。常識だろう」
手足をハイドの糸で拘束され、完全に動けなくなった頭はハイドの操る糸によって床に転がされた。
「暗殺者なら、いつでもトラップを警戒しておけ。毒で体内を溶かされても我は知らんぞ」
そう言って、ハイドはニヤリと微笑んだ。
……ハイド超カッケェ。
やっと……!やっとミサンガの裏設定を出せた……!




