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異世界で魔物使いやってます  作者:
王族誘拐未遂編
227/276

おっちゃん強い!

今回からちょっとモブ祭り。



(大丈夫?ミーヤ。変なのにこっそりぶつかられたりはしてないわよねぇ?)


(大丈夫)



 心配してくれているイースに従魔用テレパシーでそう返しつつ、私はセレスと手を繋ぐ。



「とりあえず、どの辺歩く?」


「そうですね……人気の多い場所でしょうか」



 え、人気の多い場所?



「危なくない?」


「いえ」



 セレスは首を横に振った。



「今の所わかっている範囲ではわたくし達を狙っている賊はプロの組織と見て良いでしょう。ターゲット以外には被害が出ないようにされています。低俗な輩であれば周囲の人間の被害も顧みませんが、どうやらそうでは無い様子」


「ああ、そういえばすり替わったりで拘束されるくらいしかまだ被害出てないんだっけ」


「はい」



 セレスは「もっとも、相手が切羽詰ってきたらどうなるかはわかりませんが」と少し顔を俯かせて言った。

 ……まだ10歳なのに、理解出来ちゃうだけの頭があるもんね。被害が出た場合の最悪も想定出来ちゃうんだろう。ポンコツな私からすると頭が良いのは良い事だけど、色々と理解出来ちゃう分気苦労も多そうだ。



「ですから、人気のある場所に行くんです。人気がある、つまり人目のつく場所ならそこまで派手な事はしないでしょう。何より人混みに紛れて事を起こしやすいという利点もありますから」


「それ利点?」


「相手視点で考えたら、ですよ」



 「ふふふ」と笑ってるけど、中々に凄いよね。相手の視点に立った上で色々想定して、って。



「……もっとも、わたくしはあくまで本を読んだ知識しかありません」



 そう思っていると、セレスはしゅんとして呟く。



「想定と違う可能性も大いにあります。万が一読みが外れていたら……」



 「……わたくしは、国民に被害が出るのも厭わなかったと後ろ指をさされるでしょう」と小さな声でセレスは言った。



(ミーヤ様、タバサから伝言だ、です。「姫様のテンションもうちょい上げてやってください。気晴らし設定なのに落ち込んでんのはちょっと。あと付き人としてもちょっと」って)


(ん、伝言ありがとね、ヒース。タバサには了解って伝えといて)


(ああ、じゃなくて、はい)



 相変わらず敬語に慣れないね、ヒースは。それも可愛いから良いんだけどさ。ハの字眉に見上げるような目、そして小さめの口……から発される柄の悪い言葉。良いギャップだと思う。これも要するに個性だよね。

 さておき、私はセレスに声を掛ける。



「セレス」


「……はい」


「もうちょっと周りをよく見てみ」


「はい?」



 不思議そうに顔を上げたセレスに、視線だけで周囲を見るように促す。



「あれ、あの子ミーヤじゃね?」


「お、本当だ。ここ最近見かけなかったから旅立ったかと思ってたけど……戻ってきたのかな」


「つまりまたあの宿屋でミーヤ達のわちゃわちゃを見ながら美味い酒が飲める……?」


「やだー、俺今ちょっと金無いのに。誰か貸して」


「おい猛禽類今日は酒盛りするぞ」


「誰が猛禽類だ哺乳類。だが了解だ。早速夜までの間にギルド行って小遣い稼ぐか」


「頼りにしてるぜ相棒」


「お前本当に調子良いよな」


「ねえ、ちょっと、ミーヤちゃんが一人で歩いてるトコ初めて見た……!って思ったら誰かと手繋いでたわ」


「あ、本当。人の壁のせいで見えてなかったわ。……ん、あれ?でも何か、従魔の子じゃなくない?」


「……確かに。ハニーちゃんでもノアちゃんくんでも無いわね」


「新入りとか?」


「いや私さっきメルヴィルから聞いたんだけど、ミーヤのトコに新しく嫁入りしたのは男二人だって。キセル咥えた老人と目を伏せたイケメンだって言ってた」


「老人が嫁入りというパワーワード。これはもう今夜宿屋に行って食事しつつ見に行くしかないわね」


「……いや、つかさ、お前ら、あの子……」


「何よ」


「いや、あの、………姫様じゃね?」


「あら本当」


「気付かなかった」


「いやいやいやいや。軽くね?あの子が第四王女と二人っきりで行動してるのそんなレベル?そんなレベルなの?」


「だってミーヤちゃんだし」


「目立つから目撃が多いんだけど、どうも頻繁に王城行ってたみたいだし」


「販売されてるミーヤ写真あるでしょ?アレを作成させたの姫様らしいわよ。その時点で関わりあるって思うでしょ」


「マジか!?あのやたらローアングルが多い写真!?」



 あっはっは慣れたとはいえ超視線感じる。というかローアングルについてはツッコむな。写真撮る係のローランが私の影に潜んでたりするから仕方ないのよ。短パンにタイツ装備だから事故は起きないしで私も気にしてないしね。

 さておき、周囲の人達の会話が聞こえたらしいセレスに言う。



「ここの国民、結構タフだと思うよ」


「……ふ、ふふ……っ。そ、そうみたいですね……!」



 よし、セレスの機嫌回復した。グッジョブやたら明るい国民の方々。

 でも実際ツィツィートガルの人達ってタフな人多いイメージだし、あんま心配しなくて良いと思うんだよね。ヒイズルクニだと巻き込まれた人が恨む可能性があるから心配必須だろうけど。

 そう思いながら歩いていると、見覚えのある屋台を見つけた。ハーフエルフのおっちゃんがやってるジュースとカットフルーツの屋台だ。



「セレス、あそこのジュース美味しいから寄る?」


「はい、そうしましょう」



 うんうん、どうせならちょいちょい食べ歩きしてる方が油断も誘えるだろうからね。ごめん嘘です。私が普通に欲しくなっただけ。ちなみにタバサから軍資金としてお金渡されてるので食べ歩きし放題。

 ……ここ最近、本当に全然出費してない気がするんだよなあ……。

 さておき、私は屋台の人に話し掛ける。



「すみませーん」


「おうらっしぇい」



 誰だこの厳つい男は。何だその頬の切り傷は。

 屋台の装備を確認するにいつものハーフエルフのおっちゃんの屋台で間違い無いはずだ。だってジュース入れとくサーバー?アレ奥さんの趣味なのか蝶っぽい意匠が付いてるんだよね。だからおっちゃんの屋台で確定と思われる。

 ……いや、うん、ただのバイトさんかもしれない。あのおっちゃんが誠心誠意愛情込めて作った大事なフルーツを他人に任せるだろうかという気はするが、うん、きっと、多分、バイトのはず。

 でも一応聞いておこう。



「あの、ここのおっちゃんって」


「俺が店主だ文句あっか」



 はいダウト。ミサンガが反応しました嘘ですね。というかさっきからうっすらと敵意の反応もあるんだよね。つまりコイツが賊か。

 ……雑ぅ。

 もうちょっと取り繕うとか愛想良くするとかあると思うんだよ。てかおっちゃんどうなったの?



「……ミーヤ様」


「?」



 固い声でそう言ったセレスに手を引かれて視線を向けると、セレスは屋台の横の方を指差していた。そのまま指の先を確認すると、縄で縛られて横にされながらもうごうごと元気に動いている足があった。耳を澄ますと「うー!ふー!」というくぐもった声も聞こえる。

 ……あー、拘束されましたか。

 縄を解こうとしているのか元気そうに動いていて、どうやら怪我はしていないらしいと一安心。しかしそうするとこの現状をどうやって打破するか……。

 いやまあ従魔用テレパシーでこっちの様子筒抜けにしてるからこの事既に伝わってるだろうし、後はもう立ち去れば良いんだろうけど……かといって見て見ぬ振りをして放置決め込むのもね。

 うーん、と悩んでいると、注文をしない事に焦れたらしい男が言う。



「アアソウダ、ヨケレバコノシサクヒンヲノンデイカネエカ?ダイジョウブ、シサクヒンハムリョウダカラヨ」



 おい片言。凄ぇ片言。そして何だそのジュースは。この屋台では澄んだ綺麗な色したジュースしか見た事無いのにドブみたいな濁りを見せてるんだけど。明らかにアウトなんだけど。異物混入されてるようにしか見えないんだけど。

 そう思いながらさり気ない動きでセレスの肩を抱き寄せつつ、コレ受け取りたくねえな……と思っていると、



「人の大事なジュースに何異物混入してんだテメェはァ!」


「ぐぉっ!?」



 どうやらキレたおっちゃんに頭突きでもされたのか、厳つい男がバランスを崩してジュースを地面にぶち撒けた。



「ああっ!?睡眠薬入りのジュースが!」


「うちの信用に関わるだろうがざっけんじゃねえ!」



 あ、魔法の気配。

 人間と同じように老化するタイプとはいえ、おっちゃんはれっきとしたハーフエルフ。魔法陣や詠唱無しで魔法を使えはするらしい。どうやら何らかの魔法を使って拘束を解いたらしく、肩に掛かっている解けた縄を地面に捨てながらおっちゃんは立ち上がった。

 ……あ、首に布が。どうもアレで声を封じてたっぽいね。

 その布もぺいっと地面に捨てつつ、おっちゃんはドスの利いた低い声で言う。



「おいこら、他人様の大事な商品を、この俺の作ったフルーツを粗末に扱うたあ良い度胸じゃねえかあ゛あ゛ん?ぶん殴るぞデカブツ」



 わー、おっちゃんマジギレしてるー。

 私はセレスの肩を抱いたまま、すすすと摺り足で二歩分くらい屋台から距離を取る。



「この野郎……!」



 ふらついた状態から体勢を整えたらしい男はおっちゃんにニヤリとした笑みを向ける。



「良いだろう!この俺は荒事に特化してぐぇっ」


「……どう見ても物理特化だろお前。真正面から戦う馬鹿じゃねえんだよこっちはよ」



 凄い、一瞬で終わった。

 魔力感知から察するに、どうやら男が油断してる隙におっちゃんが魔法を使用したっぽい。光の魔力と風の魔力を感じたし、魔力の動き方からすると……光魔法で感覚を強化した上で風魔法を使って三半規管を狂わせでもしたのかな。男は「ぐぇぇえええ……」と唸って倒れ伏したままだ。

 ……感覚を強化された上で酔わされたら回復も遅いだろうね。合掌。



「……てかおっちゃん強いね」


「あ?そりゃ俺はカミさんが虫系魔物の研究やってっからな。盗作しようとする馬鹿共追い返してたら無駄に魔法の技術が上がったんだよ」



 「人間と同じように老化するレアなハーフエルフっつー事でコレクターを対象としてる奴隷商人に狙われる事もあるしな」と言って、おっちゃんは疲れたように溜め息を吐いた。



「つか何だったんだコイツ。いきなり人を背後から拘束しやがって」



 すみません、こっちの事情です。



「えーと……あの、おっちゃんを襲ってきたのってこの男一人でしたか?」


「あ?あー……」



 おっちゃんは少し考えるような素振りを見せ、



「あ、いや、多分違うな。一瞬で拘束されたがこのデカブツにそんな技術ねえだろうし。それに様子見てたらさっき異物混入してた時、どっかから出した様子も無いのに異物を混入してた」


「どこかから出した様子も無いのに、とは?」



 セレスからの質問に、セレスが姫だと気付いていないらしいおっちゃんは「ポケットとかに手ぇ突っ込んだりもしてなかったって事だ」と答えた。



「急に手の中に現れたみたいになって、んで急にそう言えって言われたかのように片言状態。んで、デカブツの方からちっと変な魔力を感じた。強い魔力は感じなかったからデカブツ自身の魔力かと思ってたが、多分認識阻害系の魔法使ってる誰かが居たんだろうな」



 情報凄い細かいね。



「……おっちゃん、凄いね。よくそんなに細かく……」


「さっき言ったように変な奴に絡まれる事があるからな。適当に認識してると事情聴取とかで時間取られて面倒なんだよ。果樹の世話出来なくなるし。だから出来るだけ記憶するようにしてんだ」


「おっちゃんマジ凄え」



 思わず拍手。何このおっちゃんハイスペックかよ。いや多分フルーツに特化してるタイプな気はするけど。でも充分に凄い。



「んで?嬢ちゃん達、ジュースは買うのか?」


「あ、もう普通に営業再開するんですね?」


「おう。魔法で三半規管狂わせた状態を維持してっからこのデカブツも逃げらんねえだろうしな。後で兵士に通報する」



 可能なら即行で通報して欲しい。



「えーと、じゃあジュース二つお願いします」


「おう!任せとけ!」



 そう言ってジュースをコップに注ぎ始めたおっちゃんを見ていると、脳内にパンドラの声が響いた。



(ミーヤ、ミーヤ達が移動してからそのデカブツを回収するらしい。一応その男に伝えておいてくれ)


(りょうかー……一応ルークとオルコットの特徴も伝えた方が良いかな?)


(相手が変装したりする以上は……あ、大丈夫だ。未来を確認したが半分以上の確率でその男が偽物を見抜いている。どうやら感じた魔力も記憶しているらしいな、その男)



 本格的におっちゃんがハイスペック過ぎる。いやまあナチュラルに未来を確認してるパンドラも凄いんだけどね。凄過ぎてスルーしちゃうよね。

 さておき、コップに注がれたジュースを受け取り、代金を払うついでに回収の事を伝えておく。



「あの、実はその人今私が受けてる依頼関係の人……というか、敵?でして。なのでこの後すぐに回収役の人が来てくれるらしいです」


「兵士か?」


「冒険者だけど、まあ似たようなもんですね」



 王様直属の冒険者パーティのメンバーだし。



「あ、でも一応、変装した偽物に引き渡したりしないよう気をつけてください」


「おう、さっきの認識阻害使ってたらしい奴の魔力なら覚えてるから心配すんな。相手が人間である以上、ハーフエルフの方が魔力感知能力は上だからな」


「おっちゃん超頼りになる」


「だろ?今後ともご贔屓に頼むぜ」


「ジュース美味しいんで是非ともよろしくお願いします」



 「というか何か色々ご迷惑お掛けしました、ありがとうございます」と言ってから、おっちゃんの屋台から離れる。一旦離れないと回収出来ないだろうしね。

 セレスと手を繋ぎながら、空いている片手でコップを持ってジュースを飲む。うん、美味しい。



「……ミーヤ様」


「うん?」



 固い声のセレスに気付いて視線を向けると、セレスはジュースを見つめながら少し落ち込んでいるようだった。



「……一般人に、被害が出てしまいました」



 アレ出てたかな?



「今からでも人気の少ない方に移動した方が良いのでしょうか……」


「いや、でもあのおっちゃん強かったよ」



 「確かに強かったです」とセレスが真顔で即答した。



「……ですが、拘束だけとはいえ巻き込んでしまいました。ジュースを利用されたという事は屋台にも被害が出たと同じ事で……」


「セレス、一旦そのジュース飲んでみて」


「?」



 不思議そうな顔をしながらも、セレスは素直にジュースを飲んだ。



「……!このジュース、使われているフルーツがとても新鮮ですわね」


「うん、あのおっちゃんフルーツに凄い拘りあるらしいから」


「…………」



 セレスは何かを考えるように無言になってから、言う。



「……巻き込んでしまった分、後で何かお詫びを致しましょうか。そしてその為にもまず、賊を全員捕まえなければいけませんね」



 どうやら思考が良い方向に切り替わったらしいと安心しながら、「そうだね」と私は返す。



「優先順位が高いのは賊の捕獲。少なくともそれさえ済めばもう被害は出ないんだし。巻き込んじゃった人には申し訳ないけど、後日きちんと話し合いなり何なりしてお詫び、っていうのがベストだと思う」



 「私はね」と言うと、セレスは少し考えるような素振りを見せた。



「……このジュースに使用されているフルーツ、ケインお兄様がエヴァン様と経営するらしいお店で使う事は出来ないでしょうか。このように美味しいフルーツなら、ケインお兄様の作るケーキはもっと美味しくなると思うのですが」



 あ、そういう感じのお詫び?フルーツに拘りがあるからこそ、それをきちんと扱う事の出来る場所で使うという前提で取り引き、みたいな?



「いやー、販売してるかどうかは私にはちょっと……。あと多分、カットフルーツやジュースにしてる事から考えて生で食べる用として作ってる可能性も高いし、ケーキとかに適してるかどうかを先に聞いた方が良いかもね」


「そうですわね!もしケーキに適したフルーツもあるようでしたら是非交渉を持ちかけましょう!そうでなくともこのように美味しいジュースが作れるのですから、ちょっとしたおやつとして購入するのも良いかもしれませんわ」



 「きちんと王城からの取り引きをすれば王城内でも食べられますものね」と笑うセレスに、お詫び以上に素でそんなにおっちゃんのフルーツ気に入ったのかな、と私は少し嬉しくなった。



モブが弱いとは限らない。

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