表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で魔物使いやってます  作者:
王族誘拐未遂編
226/276

囮作戦の作戦会議



 ニコラスさん曰く、どうやら伸び代のある未成年を優先的にスカウトしてたせいでそんな風評被害の称号を贈られてしまったとの事だった。実際厄除けで弾かれた称号という事は本人にとって厄扱い、つまり本当に風評被害でしかないのだろう。



「何だ……まったく、早く言っておいてくださいよそういう事は。思わず警戒しちゃったじゃないですか」


「確かに言ってなかった俺も悪かったが弁解する間も無く敵意をぶつけてきたよな?」


「身の安全が第一なので。そこに恩や情を絡ませて動きを鈍らせるのはちょっと」


「ロロの教えか……」



 ……うん、まあ、アーウェルとそんな会話をしたニコラスさんは真っ白に燃え尽きていた。青くなったり白くなったり忙しい人だ。それと短時間しか接してないけどニコラスさんの事はよくわかった。この人幸薄属性だね。厄除けでアンラッキーボーイの称号は弾かれたけど。



「しかし素晴らしいお守りだなコレは」



 アンナさんはニコラスさんが持っている赤い生地に厄除けと書かれたお守りを見ながら少し考え、「うん」と頷いた。



「よし、鑑定を使用しながらもう一度弾かれる様子を見たいから……リーダー、何か風評被害のような称号を贈られろ」


「おいアンナ、贈られろって何だ贈られろって。そして断る」


「先程ミーヤに対しての行いから「ラッキースケベ」という称号を得るだけの条件は揃っていると思うが?」



 にこにこしながらもまだ少し圧のある声色でロンがそう言った直後、ニコラスさんが手に持っているお守りからさっきも聞いた何かが弾けるような音が響いた。見てみると、ニコラスさんの手の平にあったはずの赤いお守りは真っ白なお守りへと変貌していた。しかも厄除けの文字も消滅している。

 それを見たアンナさんは「……!」と喜色満面の笑みを浮かべ、その白いお守りを手に取った。



「素晴らしい!たった今ラッキースケベの称号がリーダーに贈られたが即座にお守りの効果が発動し弾かれた!どうやらもう効果は無くなったらしいが、いや素晴らしい!三回も効果があるお守りとは!良い物を貰ったなリーダー!」


「たった今アンナのせいでその良い物の最後の一回が無駄遣いされたのは見ていたか!?」


「おいおいリーダー、私のせいにするな。第一私の知的好奇心から生まれる探究心を満たす行いのどこが無駄遣いだ」


「ああそうだなお前はそういう奴だよなアンナ……!何で俺のパーティの殆どはこういうゴーイングマイウェイしか居ないんだ……!」



 ……な、何か本当に大変そうだなニコラスさん。



「……あー、ゴホン」



 そう思っていると、気まずそうに王様が咳払いをした。



「そろそろ本題の依頼についてを話したいのだが、良いか?」


「あ、はい!すみませんつい!」



 慌てて謝罪しながら椅子に座り直すと、王様は「いや、気にしなくて良い」と手を軽く振った。



「まさか挨拶をさせるだけのつもりがこんな事になるとは、誰にも想像出来ぬ事であろうからな」



 まあ確かに。パンドラだけ目を伏せたまま顔逸らしてるけど、うん、パンドラと違って未来を見たり出来ない一般人には普通想像出来ないよね。まさか挨拶からニコラスさん性犯罪者疑惑というオチになろうとは。どういうジェットコースター展開だよ。



「では依頼の内容だが……ミーヤ達には余やケイン達を狙う賊を捕まえるのに協力してもらいたい」



 「……のだが」と王様は頬杖をついて溜め息を吐いた。



「残念な事に、賊の情報が殆ど無い。今わかっているのは余達を狙っている事と、少なくとも十人以上は居る組織らしいという事くらいだ。しかし変装している事から考えると十人以下である可能性も大きい」


「組織って特定したりは」



 私の問いに、王様は「残念ながら」と目を伏せて首を横に振った。



「心当たりが無いというわけではないのだが……心当たりが多過ぎてな。特定が出来ん。余達だけでも王族という充分過ぎる程の理由がある上に……」



 王様がチラリとブラッドさんに視線を向けると、ブラッドさんはヘラリとした笑みを浮かべながら右手の義手を私達に見えるように上げた。

 ……確か、やべえ組織に所属してたら捨て駒にされてやべえトコに右目と右腕と右足を潰されたんだっけ。



「まあ、俺みたいに事情がある奴も結構居てね。使用人として働いてる奴の三分の二は事情持ちなんだ」



 多い。



「俺もそうだけど、この空間内でも事情持ちは居る」



 ブラッドさんのその言葉と共に、ローランとアボットとオルコットとアディさんが手を上げた。



「ミーヤも知ってると思うけど俺暗殺者なんだよね。んでもって昔は暗殺組織に所属してたの。まあ暗殺組織とは関係無い相手に惚れて、ソイツに王様暗殺を頼まれて暗殺しに来て、思いっきり迎撃されて捕まったと思ったらそのままスカウトされて王の剣に入ったんだけど」



 ローランの過去が波乱万丈過ぎやしないだろうか。暗殺組織て。

 しかも王様暗殺しようとしたってどういう事よ。何より王様を暗殺しようとしたのは暗殺組織無関係ってのもどうなの。というかよくまあそんな危険人物をスカウトしようと思ったなニコラスさんと王様。使用人には事情がある人が多いから?多いからそういう発想に至ったの?慣れなの?



「僕は……まあ、自分で言うのも何だけど優れた魔術師でもあるから。普通は魔法の術式って中々開発出来ないんだけど、僕は結構そういうのが得意でさ。だから若い時からポンポン開発してたら古臭い奴等に目を付けられたりしちゃって。まあ賊の特徴からすると前に僕を襲撃しようとした古臭い魔術師とは違うみたいだから、そいつらとは違うだろうと思ってるけどね」



 前に襲撃されそうになったって大丈夫だったんだろうか。今普通に喋ってるって事は大事には至らなかったんだろうけど。

 というか若くて新しい魔法をポンポン作れたら目を付けられるの?え、リーンちゃんが心配なんだけど。王の剣というパーティの名前の力でリーンちゃんが守られますように。



「俺はバーバヤガで奴隷として売られそうになった事があるからなァ。まァ奴隷として売られる前に奴隷商人を叩っ斬ったが……あくまで腕とか足を斬っただけで殺しちャいねェから、その辺の関係者って可能性は無くもねェ。もっとも賊の奴等は奴隷商人臭くねェから関わりがあるかどうかは知らねェけどよォ」



 お、おおう……そういやオルコットってそんな過去があったね。そのせいで不眠症を患った結果、初対面は散々だった記憶。睡眠不足さえ無ければわりと普通に会話出来るんだけどね。

 ……んー、でもその奴隷商人が組織を雇ったら、って考えるとねー……可能性があり得ちゃうんだよねー……。



「俺は口調や態度のせいか他の奴を見下すタイプの貴族に目を付けられている。他にも、今まで付き人を付けても自分勝手に行動する馬鹿のせいで長続きする付き人が居なかったらしくてな。そんな中、貴族の出でも無い俺がこの馬鹿の付き人という職務を全うしているのが気に食わない、とかいう奴等に目を付けられたりもしている。付き人という立場を狙う性根の腐った貴族は少なくないからな」



 「まあ、本当に俺狙いだったら俺かこの馬鹿のどちらかを狙うだろうから今回の件は関係無いだろうが」とアディさんは続けた。

 ……うん、確かにアディさん狙いならアディさんを単独で狙うよね。もしくはセイン。万が一セインに何かあったら付き人としての資格無し!とかいちゃもんつけれるもんね。

 いやー、にしても、



「この空間内だけでも心当たりのある人がこんだけ居るって事は、使用人の場合」


「殆どが心当たりのある者達ばかりでな。特定が出来ん」


「でしょうねー……」



 王様の言葉に頷いて同意を示す。三分の二がどのくらいの数なのかは知らないけど、心当たりが多すぎても困るよねコレ。



「そういう理由で、とにかく賊を捕らえて情報を吐かせようと考えている。でないとこちらとしても対策が練れんからな」



 ごもっとも、と再び私は頷く。



「そしてミーヤに頼みたいのは」



 王様は言う。



「囮をするセレスの護衛だ」


「ちょっと待って下さい」



 私は王様にストップを掛けた。



「……囮?」


「ああ」


「あ、ミーヤ様、この囮作戦はわたくしが立案したものなのです」



 「そうなの?」とセレスに問うと、セレスは私の目を見ながら「はい」と答えた。



「まず、王族が狙われているのは確定でしょう。ですから誰かを囮にするのが一番早いと思いまして。しかし囮にするにしてもお父様は王様なので囮になってもらっては困ります」



 それはそうだ。万が一があったら一番駄目な人だもんね。



「次に考えたのはケインお兄様でしたが、ケインお兄様は第一王子。背も高いですし、どこからどう見ても立派な成人男性。それでは優先的に狙われる囮にはなれません。もし相手が狙ったとしても、最大限の警戒をした上で来るでしょうから」



 「妨害も、そして捕らえる事も困難になる可能性が高いのです」とセレスは言った。



「次にセインお兄様……と思ったのですが、セインお兄様はご存知の通り落ち着きの無い性格です。口調に反して聡明ではありますが、うっかり囮だと口を滑らす可能性も否定出来ません。というかそもそも護衛を振り切って急に走り出したという前科がある以上、囮などさせたら最悪本当に誘拐されそうでして」



 セレスの容赦無い言葉に、セインが「お兄様もショック受ける事はあるんだぜよ……」と項垂れた。それに対して「日頃の行いのせいだろう」とスッパリ切り捨てるアディさんも容赦無い。



「そしてアラン。アランは第三王子ですし、まだ幼い5歳児。誘拐しやすい体格や年齢である事を加味すると相手の油断を誘えるのでは?とも思ったのですが……」



 セレスの視線を受け、アランを膝の上に乗せながらアランの髪を弄っていたファフニールが「ふん」と鼻を鳴らした。



「ようやく再会出来た番を囮にするなど、許せるはずが無いだろう」


「という事でして」



 ファフニールの膝に乗りながらアランは「俺は別に良いって言ったんだけどさー」と笑う。しかし、ファフニールの危険性を理解しているのだろうセレスは真面目な顔で続ける。



「……正直に言いまして、人間の賊よりも上級ドラゴンの逆鱗に触れる方がアウトなので……」


「アウトだね」



 うん、と私も頷く。

 うちのロンなんて若い時に大陸消したらしいからね。しかも内臓を複製する事が出来るもんだから心臓を一個や二個潰そうが普通に生存可能だろうし。絶対敵に回しちゃいけない種族だわ。



「それで、囮になれるのはわたくししか居ないという事になりました」


「……うーん、まあ、確かに……」



 まだ幼い女の子だから狙われやすいだろうし、囮を全う出来るだけの賢さもあるもんね。アランも前世とかがあるお陰で囮は出来そうだけどファフニールが許さない。つまりセレスが適任という……ね。

 可能なら囮が無い方が良いとは思うけど、いつ本格的な被害が出るかわからない。そう考えると囮作戦をしてでも捕らえないと、とはなってしまう。



「そういうワケなんで、姫様が囮。んで付き人の俺が居ない方が誘い出しやすいだろうって事で、護衛はミーヤのみで」


「え、私オンリー?」



 私って単独行動すると碌な事が無い事に定評があるんだけど。

 そう思ってタバサに視線を向けると、タバサは「ああ、あくまで表向きっすよ」と笑って手をヒラヒラさせた。



「まず設定だけど、今回の件で色々と疲れてしまった姫様が息抜きの為にこっそり王城を抜け出して知り合いの冒険者に護衛を依頼。目立たないようにミーヤは単独で姫様の護衛、って感じで」



 あー、確かにそれなら良い誘い文句かも。セレスの聡明さを知らなかったら、年齢的にそういうわがままを言っても不思議じゃない、と思うだろう。



「それに女子供二人組なら狙われやすいはずだ。良い感じに屋台とか楽しんで隙を見せて狙われてくれ」



 うわあ、私超適任。確実に屋台に夢中になって隙だらけになって狙われるね。

 それに私なら万が一セレスと一緒に誘拐されても従魔用テレパシーがあるから連絡も可能だし……うん、本当に囮に適任な気がするね、私。



「で、イース達には俺と一緒に不審者の捕縛係として姫様とミーヤをストーキング」


「ねえそれ監視とか尾行とか影ながら護衛とかって言い方あるよね?」


「まあまあ」



 まあまあと言われましても。タバサが良いならそれで良いけど、お前はストーキングするという感覚で良いのか。そりゃ確かにやってる事はストーキングに近いけど。



「んで次に王の剣のメンバーだが、一部は王様のゴエイ。一部は捕縛した賊のカイシュー。一部はジンモン。一部は万が一俺らが取り逃がした時の為のフォロー役、って感じで」



 タバサの指示を聞き、ニコラスさんは「ふむ」と頷いた。



「護衛は戦闘能力の高い俺とデリック、回収は移動が速いルークとオルコット、尋問はローランと……一応自殺対策の回復役としてロロ、残りのフォロー役は遠距離を得意とするアーウェルとギルベルト、そして近距離中距離遠距離も可能なアンナの三人をメインにしつつ、手が足りない所を臨機応変に……というのが良いか」



 あ、ニコラスさんってちゃんとリーダーだったんだ。

 ……いや、リーダーだってのはわかってたよ?わかってたけど幸の薄さについうっかり失念していたというか。そうだよね、リーダー兼騎士団長もやってるんだから役割分担の割り振りくらい普通に出来るよね。



「残りのメンバー、ってか王子様達と付き人達はいつも通りにお願いしマス」



 タバサの言葉にそれぞれが、



「……ああ……」


「りょうかーい」


「了解ですだ」


「わかった」


「はーい。ファニー、図書室で図鑑でも見ようか」


「そうだな。人の出入りが少ない場所の方が不審者独特の違和感も感じやすい」



 と返事をしながら頷いた。



「んじゃまあそういう事で、ミーヤ」


「うん?」



 タバサはにっこりと笑ってサムズアップした。



「普段通りに隙だらけ状態になって狙われる役、ファイト!」



 ねえ待って私って普段そんなに隙だらけなの?否定は出来ないけど!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ