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異世界で魔物使いやってます  作者:
王族誘拐未遂編
225/276

地獄のような人口密度

とうとうあのキャラとミーヤが出会う……!



 さて、依頼を受けて王城まで来たは良いんだけど、



「人口密度……」



 案内された部屋には王様、ケインさん、ブラッドさん、セイン、アディさん、セレス、タバサ、アラン、ファフニール、それと見覚えがあるような無いようなというかぶっちゃけ一人を除いて見覚えある人しかいない感じの……うん、沢山の人が居た。

 え、というか待って?あの、デリックさんとかロロさんとかアンナさんとかローランとかルークとかが居るのはわかる。王の剣メンバーだし。だがしかし何故にアーウェルにリーンちゃんにギルベルトにアボットにオルコットまでいらっしゃるのか。

 私達は私達で十人越えだし、本当にこの部屋の人口密度やばいんだけど。部屋の広さは足りてるっぽいけど空気足りてる?山の山頂みたいに空気薄くなってないよね?大丈夫だよね?王族が酸欠で倒れたりしたら困るんですけど。



「久しいな、ミーヤ」


「あ、はい、お久しぶりです王様……」



 やべ、つい動揺の余り王様相手に失礼な態度を。

 いやでも前はもっと失礼な態度だった気がするし、王様本人は特に気にしてないっぽいから良いとしよう。勝手にそう思わせてもらおう。うん。主に私のメンタルの為に。

 王様と顔を見合わせながら、「で、えっと」と私は問い掛ける。



「私は何か、賊を捕まえるのに協力して欲しいって感じの依頼内容としか聞いてないんですけど」


「それで合っている。ケイン達が居るのは狙われている側だからこそ、同じ空間に居た方が被害も少なく済むだろうという考えからなのでな」


「成る程」



 それは確かに。

 一箇所に集まってると一網打尽にされそうではあるけど、その分守りやすくはあるもんね。守る対象がそれぞれ違う部屋に居たりすると情報とかが混乱しそうだし、守る側が移動した隙とかを突かれかねないし。



「そして他の者達は、王の剣のメンバーだ。新入りの者達もミーヤと面識があると聞いていたのでな。故に本来は退席させるところだが知り合いならば問題無かろうと思い、かつ学ぶ事も多かろうとここに呼んだ」


「な、成る程」



 確か私はリーダーさんとは面識が無かったから、あそこの赤毛の短髪さんがリーダーさんだろう。そう考えると他の知り合いメンバーが新入りなのか。

 ……本気で知り合いしか居ねえな。リーンちゃんまで居るとかどういう事なのよ。

 あ、でも前に会った時は病み上がりっていうか弱ってる真っ最中だったから今の顔色は健康そうで安心した。薄い水色の髪も可愛らしいツインテールで素晴らしいと思う。

 そう思っていると、リーダーさんらしき人が私の方に近付いて来た。リーダーさんらしき人は茶色の瞳でこっちを見つつ、



「俺は王の剣のリーダー、名をニコラスと言う」



 と言った。



「え、あ」



 私も慌てて椅子から立ち上がり、頭を下げつつニコラスさんに自己紹介をする。



「私はEランクの冒険者で魔物使いのミーヤと言います」


「ああ、知っている」



 ニコラスさんは頷き、



「俺は王の剣のリーダーだけでは無く、騎士団長も兼任している。しかし、俺はラチェスの本性を見抜く事が出来なかった。……他にも色々、君には助けられた。感謝する」



 そう言って深々と頭を下げた。

 は、反応に困る……!



「あの、えっと、私の方は完全に成り行きだったのでお気に為さらず。とりあえず、あの、頭上げてください」


「……すまんな」



 謝罪しながら頭を上げたニコラスさんに「いえ」と返す。



「…………ニコラス、始めましてって言い忘れてるわね」


「ああ、そういえばリーダーは初対面だったな……」


「多分俺達がミーヤと面識あるし、かつ結構話題にしてたから……」


「……自分が顔を合わせた事が無い自覚はあるらしいが、一方的に知ってはいたからな」


「てかミーヤと会話するとかリーダーずるい」



 小声で喋ってるつもりなんだろうけど普通に聞こえてる。聞こえてますよ皆さん。ちなみに上からロロさん、アンナさん、ルーク、デリックさん、ローランの順である。ていうかローランだけ小声じゃない。

 同じく彼らの声が聞こえたらしいニコラスさんは気まずそうな表情で口を開く。



「……すまん、あいつらは無視してくれ。それと言い忘れたが始めまして」


「あ、はい。始めまして」



 さっと握手の為に右手を差し出すと、相手も握手の為だと気付いてくれたらしい。ニコラスさんは右手を前に出しつつ一歩を踏み出し……その瞬間、奇跡が起きた。

 偶然床にカーペットが敷かれておらず、偶然足元にツルツルした紙が落ちており、ニコラスさんが踏み出した足が偶然その紙を踏んでしまい、偶然というか必然的に紙が滑り、偶然ニコラスさんは体勢を崩し、偶然という名の不意打ちだったせいでニコラスさんは踏ん張る事が出来ず、そして、



「ぶっ!」


「わお」



 そんな偶然が重なった結果、ニコラスさんの顔が私のそこまで大きくは無い胸に埋まった。しかも必死にコケないようにした結果か、無意識なんだろうけどニコラスさんの右手が思いっきり私の尻を掴んでいる。ちなみに左手は私の右肩を掴んでいた。

 凄え!ラッキースケベだ!天然モノのラッキースケベだ!

 ……おっと、いかんいかん。まさか現実で起こるとは思わなかったせいで私の中の小学生男子が。

 私はラッキースケベされて喜ぶような痴女では無い。ただちょっとラッキースケベを見たのが初めてだったからはしゃいじゃっただけである。そう、言うなら太鼓のプロが鬼のモードでフルコンボだドンしたのを見たかのような感じなのである。仕方ないよね。



「……!?」



 ……というかいつまでこの状態なんだろうか。下手に動くとその瞬間に押し潰されそうなんだよね身長差的に。つまりニコラスさんに退いてもらわんと動けないんだけど……ニコラスさん、完全に硬直してるね。

 と思ったらニコラスさんは「す、すまん!」と叫んで私の胸から顔を離し、



「…………アッ」



 どうやらたった今自分の右手が私の尻を鷲掴んでいた事に気付いたらしい。顔を真っ赤にして右手の中の感触を確かめるように二回程揉んだと思ったら、真っ赤な顔が真っ青を通り越して紫色になってしまった。

 ……え、大丈夫?



「……あの」



 大丈夫ですか、と声を掛けようとした瞬間。

 ニコラスさんが目の前から消え、目の前に壁が出来ていた。……あ、コレ違う。壁じゃない。コンとハイドとロンだ。どうやら三人の動きが早過ぎて脳が認識出来なかったらしい。



「ぐるるるるるぅぅぅううう……!」


「…………我の。我のミーヤに触れた我のミーヤに触れた我のミーヤに触れた。胸に。顔を。埋めた。尻を。手で。揉んだ」


「ははははは。……そのつもりは無かったとはいえ、再起動が少々遅い。それと最後に尻を揉むのは不要だったはずだが?」



 わー、やっべえ激おこだー……。

 コンが唸り声上げながら全身の毛を逆立たせつつ耳の先と尻尾の先から火を燃やしてるし、ハイドは黒く尖った指をチキチキ鳴らしながら感情が篭もってるような篭もってないような声で同じ様な言葉を繰り返してるし、ロンは笑ってるのに笑ってない声色で言いながら足の爪で床をカチカチ叩いてるし。

 やばい。まずい。というかロンが足の爪で床をカチカチやってるのは怒りの余り足をタンタン鳴らすアレかな。そんな可愛いモンじゃないけど。



「ミーヤ様大丈夫ですか!?」


「……変なトコ、触られてた……!」


「ミーヤってばもう!もう!動揺してないのか動揺し過ぎてるのかわかんないけど嫁でも無い男に胸やお尻を触られたんだよ!?もっと反応して!そして反抗して!相手をちゃんと引っ叩くとか悲鳴を上げるとかして!」


「そうだよミーヤ。今のは完全に相手が悪いんだから!」


「性的なつもりは無かったんだろうし、事故だろうとは思う。でもそれはそれとして拒絶はちゃんとするべきだ。僕みたいな作り物の人形とは違うんだから」


「み、ミーヤ様!大丈夫か、ですか!?怪我とか、あと心とか!つか、あの、もっとちゃんと嫁以外には拒絶してくれ!ください!」


「そうだよ!駄目だよ!ミーヤにそういう性的なアプローチをして良いのは嫁である自分達だけなんだから!他の人は駄目!」


「駄目というか、胸に顔を埋められて尻を触られていると認識した時点で相手の横っ面を殴るくらいはした方が良かったと思うぞ」


「ううん……凄い!って思うのは仕方ないのかもしれないけどぉ、取り返しのつかない事になる前に拒絶はしてねぇ?ミーヤは何とも無くてもぉ、私達が取り返しのつかない事を……相手にしちゃうかもしれないからぁ」


「……な、何かごめんね?」



 上からハニー、ラミィ、アレク、アリス、ノア、ヒース、マリン、パンドラ、イース、私の順である。色々と申し訳ない。でも衝撃よりも心の中の小学生男子の感動が勝っちゃったから仕方ないと思うの。

 というかニコラスさんどうなったんだと壁になっている三人の横からひょいと向こう側を覗くと、王の剣メンバーに囲まれながら正座をしているニコラスさんが居た。うっわ顔色真っ青。



「ニコラス、私は悲しいわ。幼馴染をこんな風に亡くすなんて。でもケジメは必要だと思うの」


「……ニコラス、俺も悲しい。お前には色々と世話になったからな。しかしそれはそれだ。お前の幼馴染として、そして仲間として。お前が性犯罪者として始末される前に自分で腹を切ってくれ。安心しろ、介錯はする」


「ヒイズルクニ式の「切腹」という処刑方法だな。リーダー、自分の罪をきちんと理解した上で腹を掻っ捌くんだぞ」


「……すみません、リーダー。俺には何も……出来る事は……!俺が出来るのは切腹用の刃物として俺の剣を貸すくらいです……!」


「リーダー、俺一応我慢してるからな?恩はあるわけだし。でもそれはそれとして早くに覚悟決めてくれないと俺限界。今すぐにリーダーの頚動脈を斬っちゃいそう」


「お前達俺に対して容赦が無さ過ぎないか!?」


「事故だろうと何だろうと嫁が居る女性に手を出した事に変わりは無いわ。潔く自分の罪を認めなさい」



 上からロロさん、デリックさん、アンナさん、ルーク、ローラン、ニコラスさん、ロロさんの順である。

 ……あの、ミサンガが反応してないのが怖いんですけど。え、全員マジでマジなマジ?

 ロロさん達を説得するのは無理と思ったのか、ニコラスさんは震えながら「国王様……!」と王様に視線を向けた。



「……副騎士団長に続き、騎士団長まで罪を犯すか……流石の余も悲しくなってくるな」


「あ、お父様そういう感じ?」


「…………事故であれ……女性に触れたのは事実だからな……」


「うーん、義手が勝手に女の子のお尻触ったっていう前科がある俺としては情状酌量の余地を……って言いたいけど、相手がミーヤだからねえ」


「お兄様もブラッドもそっち側?」


「姫様、姫様クールダウン。落ち着いて。事情アリな使用人に教わった靴投げはマズイですって。姫様百発百中でヒール部分当てるし」


「わたくしは落ち着いてるわよ。ただわたくしの大事な友人に不埒な真似をした以上、お父様の大事な部下であろうと罰する気というだけで」


「セレス、お兄様それってかなりの極刑だと思うんですだ」


「えーっと……ミーヤ本人は全然気にして無さそうだから話し合いでも良いんじゃ?って思うけど……もしファニーが被害者だった場合相手が誰であろうと王子の権限全力で使用して始末するだろうからなーとも思うし……うん、ごめんニコラス。俺助けらんない」


「番の前で手を出した以上、まだ生きている方が不思議だがな。俺なら触れた瞬間に殺すぞ」


「ねえちょっと俺以外の皆が過激派過ぎて居心地悪ぃんだけど。え、俺も合わせた方が良い感じですだ?アディ、そこんトコどう思う?」


「周囲に流されるような奴が第二王子とか世も末だなと思う」


「言っておくけど俺この空間内では誰よりも常識人な事言ってると思うぞ!?」



 ……ニコラスさんの味方がセインしか居ないという現状。ニコラスさんの顔色が青黒くなっている気がする。



「…………あ、アーウェル達……」



 ニコラスさんはさっきよりも震えている声でアーウェル達に視線を向けるが、



「俺の好きな人に触れた時点で俺はリーダーの味方にはなれません」


「私がミーヤさんに再会の挨拶とお礼を言う前にこんな事になっちゃったし……もしこれでミーヤさんに距離を取られたらと思うと……ごめんなさい」


「腹を切った後に首を落としたら血が凄い出ると思うから何か布持って来ましょうか?」


「ルークの剣が嫌なら俺の短剣貸してやるけどォ?」


「だ、誰も助けないのか?」


「ギルベルトさん、時には非情になる事も大事なんですよ」


「いや、だが、リーダー……」



 こっちにもニコラスさんの味方はギルベルト一人しか居ないという悲劇。ニコラスさん大丈夫?仲間と上手くコミュニケーション取れてる?いや、寧ろ逆に仲が良い……のか?

 とりあえず止めてくれそうな人が見当たらないし、と私はパッと見一番権限が強そうに見えたロロさんに話しかける。



「あ、あの、私別に気にしてないんでその辺で」


「あら、そんな事言っちゃ駄目ですよ。自分を安く見積もっちゃ駄目。そしてこの男は最低でも指の一本くらいは切り落とさないと」



 ヤが一番初めに来るタイプのご職業じゃないんだから!



「いやあの、安く見積もっても無いですし、事故ですし。あと本題もあるわけですし、張本人の私気にしてないですし。とにかく、えっと、その辺で解放するという感じにお願い出来ませんでしょうか」


「……被害者にそこまで言われたら仕方ありませんね」



 ふう、と溜め息を吐き、ロロさんは「ホラ、お許しが出たわよ」と言ってニコラスさんの足を軽く蹴った。



「ああ……ロロ?俺を蹴る必要は無かったんじゃないか?」


「それより先にミーヤに言うべき事があるんじゃないかしら。次は腹よ」


「胸や尻に触れてしまい大変申し訳ありませんでした」


「お、お気に為さらず……」



 流れるような謝罪に動揺しか無い。というかロロさん強くない?見た目聖女なのにちょっと乱暴入ってない?そしてニコラスさんも慣れてるのか凄い滑らかな動きで頭下げるし。

 とりあえず頭を上げて、あと立ち上がってくださいと促すとニコラスさんは「本当にすまん……」と言って立ち上がった。



「……言い訳に聞こえるかも知れんが、実はアンラッキーボーイという称号を所持してしまっていてな。先程のは恐らくそれかと……」


「あー」



 確かにラッキースケベってコケた瞬間だったり、その直後に不幸があったりするもんね。実際今なんて命の危険だったわけだし。そういう感じか。



「……ミーヤ、そいつ、許すのか?」


「せめて吊るし上げるくらいは…………」


「せんでよろしい」



 ニコラスさんに向ける目が大分やばいコンとハイドにしゃがんでもらい頭を撫でておく。よしよし、守ろうとしてくれたのは嬉しかったよ。



「ロンもありがとね、壁になってくれて」


「ははは、気にするな。儂もつい「おお!生徒達が描いた作品で見たシチュエーション!」と思って反応が遅れてしまった。故に少し傍観していたが、思っていたより硬直が長かったから、つい」



 ついで威嚇してたんかい。

 ……ニコラスさんのアンラッキーボーイ、洒落にならんレベルでやばいね。命の危険が伴い過ぎる。

 そう思った瞬間、ふとヒイズルクニで長房さんに貰ったアイテムを思い出した。



「あの、ニコラスさん」


「ん?」



 私はアイテムポーチから取り出したお守りをニコラスさんに見せる。赤い生地に厄除けと書かれていて、横に狐と紅葉が刺繍されている素敵な一品だ。



「良かったらコレ、どうぞ。ヒイズルクニのクレナイのお稲荷様の神社で貰った厄除けです」


「……くれるのか?」


「まあ、何か放っとくと命の危険がありそうだったので……」


「まったくだな。気遣い、感謝する」



 そう言って頷いたニコラスさんの手の平にお守りを渡すと、お守りから何かが弾けたような音が二回響いた。



「……えっ?」



 思わずお守りに視線を向けると、お守りに確かに施されていたはずの狐と紅葉の刺繍が消滅していた。えっ、何?イリュージョン?そういう仕掛け?



「これは……」


「素晴らしい!」


「アンナ!?」



 手の平の上にあるお守りを見つめていたニコラスさん、の手首を掴み、アンナさんが興奮した様子で目を輝かせながらお守りを見る。



「先程まであった刺繍、どうやら特殊な魔法が掛けられていたようだな。私でも知らないという事はヒイズルクニ独特の魔法だろう。狐と紅葉の刺繍が消えたのは、恐らく厄除けという効果を発動した為。成る程、身代わり系アイテムに近い効果があると見た!」


「アンナ!手首!俺の手首を離せ!その捻り方は痛い!」


「いやしかし素晴らしいぞリーダー!ヒイズルクニに行く機会は少ない上、行くとしても中央だからな。まさかクレナイの神社にこのような品があるとは……!かなりの高性能だぞ!」


「ア!ン!ナ!」



 駄目だアンナさん完全にスイッチ入っててニコラスさんの悲鳴が聞こえてない。



「アンナさん!私にも見せてください!術式の参考になるかも!」


「僕も確認したいです」


「ああ」


「いったぁ!?」



 に、ニコラスさんの手首に人権が無い……。



「というか、えっと……リーンちゃん?」


「はい?……あ!ミーヤさん!改めてお久しぶりです!前の時は本当にありがとうございました!」


「あ、いえいえ元気になったようで何よりだよ」



 うん、本当に何よりだ。子供は元気が一番だよね。



「ただ、その、えーと……大丈夫?」



 ……もっとも、その横に居る奴がちょっと心配なんだけどね!

 リーンちゃんに露出行為をしてないだろうなこのニーラクス学園の卒業生、と思いながらチラチラとアボットに視線を向けていると、アボットは「心配は不要だよ」と笑った。



「あの後露出行為や危険な魔法を製作、使用したという事で捕まってね。でも実力があるのは確かという事、実害は出ていない事、そして初犯という事で契約書にサインをして出てきたんだ。今の僕はただの無害なお兄さんさ」



 どういうこっちゃ。

 実害……っていうのは、魔法を掛けられた私が暴れなかったとかのその辺かな。あの時の私のメンタル的には大分実害出てると思うんだけど。あとその後遺症で羞恥心も死んでる気がする。言わないけど。

 で、契約書?



「契約書って?」


「あれ、知らない?初犯の場合はもう二度とするなよっていう契約書にサインをしないと出られないんだ。特殊な魔法が掛けられた契約書でね、奴隷契約を元に作られた魔法なんだよ。それにサインをすると、再犯した時点で魔法が発動し大変な事になる」



 大変な事って何ぞやと首を傾げると、察したらしいアボットは自分の身を抱き締めるようにしながら視線を逸らし、言う。



「……僕の場合、公衆の面前で性的興奮の為の露出行為を行った瞬間に衣服が皮膚に縫いつけられる。魔法、つまり魔力の糸で縫いつけるから痛みは無いだろうけど……その後の生活を考えると地獄でしかないからね。仕方なく自室や風呂場で自己満足するくらいに留めているよ」


「最後の情報は要らなかったかな」



 というか普通に怖い魔法だよねソレ。話聞いてると奴隷契約を応用した魔法っぽいし。確かにそういうのがあれば再犯率はぐっと下がりそうだけど罰がかなりの極刑な気がする。いやまあ再犯させない為にはそんくらいの罰が必要だったんだろうけどね。軽いと再犯しかねないし。

 そう思っていると、リーンちゃんにくいっと袖を引かれた。



「本当に大丈夫ですよ、アボットさんは」



 ふふふ、と笑いながらリーンちゃんはアボットの良い所を指折り数える。



「魔術師の先輩として色々わかりやすく教えてくれますし、普段はかなりまともですし、私の髪を整えてくれたりもしてますし。このリボンもアボットさんがくれたんです」


「そうなの?」


「はい。似合いますか?」


「うん、めちゃくちゃ似合ってる」


「良かった!」



 ……うーん、ミサンガは発動してないんだよね。

 そしてリーンちゃんの笑顔も凄い可愛い笑顔だし、髪型もリボンも似合ってるし、アボット自身も罪はもう犯さないっぽいし。なら良いか。私がごちゃごちゃ言う事じゃないしね。



「……うん、大丈夫そうなら良かった」



 そう言ってから、私は「ところで」とリーンちゃんの言葉で気になったところを聞いてみる。



「魔術師って魔法使いとは違うの?」


「違いますよ」



 あ、違うんだ。呼び方が違うだけかと思ってた。魔女と女魔法使いは違うって前例もあるからもしかしたらと思ったらやっぱそうなんだ。

 「えっとですね」とリーンちゃんは教えてくれる。



「魔術師は魔法使いでは無いんですけど、魔法の原型を作る人なんです。魔法使いは魔法陣とかを使いますが、その魔法陣とかはちゃんとした式を作らないと成立しなくて」



 あ、コレ難しい話?



「ああ、ミーヤは魔法陣無しで魔法を使ってたからピンと来ないかな?」



 アボットの言葉にコクコク頷くと、「そうだね……」とアボットは顎に手を当てた。



「専門外の人にわかりやすく言うと、魔法使いが使う魔法は剣士が使う剣みたいな物なんだ。しかし剣士が剣を作れないのと同様に、魔法使いの殆どは魔法を作った事が無い。普通は既にある魔法の式を覚えて、使えるようになるわけだからね。しかし剣を使う人が居る以上は剣を作る人が居るように、魔法を使う為の式を作るのが魔術師」


「な、成る、程……?」



 ……つまり、パソコンを使う人は沢山居るけど、パソコンを組み立てたりは出来ないよねって事か。プログラム作ったりも一般人には無理だ。

 そう考えると魔法使いは既にあるパソコンを使ってる人で、魔術師はそういうパソコンやプログラムなんかを作る人、と。これならわかりやすい。



「つまり魔法使いでは無いけどその原型が作れるのが魔術師で、リーンちゃんはそんな凄い事が出来る、と」


「す、凄くなんて無いですよ!私、魔法は全然使えなくて。だからお兄ちゃん達に試してもらわないと駄目ですし」


「いや、リーンちゃんは本当凄いよ。時々僕より凄い術式作っちゃうもん」



 そう会話していると、アンナさんが「話は終わったか?」と言った。



「あ、はい!」


「すみません、つい話が長くなってしまって」


「いや、説明は大事だからな。構わん」



 「さてそれでは続けるが!」とアンナさんは「あだだだだ」と言っているニコラスさんの手首をガッシリと掴んだまま続ける。



「このお守りだが、刺繍に厄除けの、つまり厄とされるモノを除ける効果があるらしい。二回発動した結果狐と紅葉が消滅したという事は、恐らく紅葉で一回、狐で一回の効果があるのだろう。私が今鑑定したところ、どうやらまだ一回効果は残っているらしいが……いや本当に素晴らしいお守りだ!ミーヤ!これは常に販売されている品なのか!?」


「え!?はい、多分そうだと思いますよ!?お守りを補充しに来てた人がくれたんで!」



 正確には人じゃなくてムカデビジュアルだったけど。



「いや、しかし素晴らしい。それ以外言えなくなる程素晴らしい!これ程の品が常にあるとは!リーダーが触れた瞬間に、リーダーが持っていたアンラッキーボーイとロリショタコンという称号が厄と認識されたのか刺繍と共に消滅する程の効力!確かにアンラッキーボーイは厄でしかないし、ロリショタコンも風評被害の結果だったからな。厄と判断されるに相応しい称号だった。しかしまさか称号を消滅させてしまう程の効力を持っているとは!いやはや、本当に素晴らしい!」


「あっ」



 アンナさんの語りにニコラスさんが顔色を悪くした。しかしそれも当然だろう。

 ……ロリショタコンって、どういう事だ。



「…………アボットさん」


「ああ、わかってるよアーウェル。リーンちゃん、ちょっと僕の後ろに回ってくれる?」


「え、あ、はい」


「おいアーウェル、お前も俺の後ろに下がれ。お前も未成年だろう」


「それ言ったらギルベルトもエルフ基準じャ未成年だろォが。ロリコンっつー称号ならともかくロリショタコンって事ァお前らも危険ってこったろ」



 瞬時にアボットとオルコットの二人がリーンちゃんとアーウェルとギルベルトを守るかのようにニコラスさんに立ち塞がった。



「姫様、一旦ちょっと俺の後ろに」


「そうするわ」


「アランも隠れておけ。中身はともかく、見た目は5歳だからな」


「中身はともかくって何?まあでも5歳なのもそのせいで抵抗する程の力も無いのは事実っていうね。大人しく隠れてまーす」


「おい馬鹿、お前も一応隠れておけ」


「え、俺成人済みだけど」


「中身がガキな時点でアウトかも知れんだろうが。万が一があっても困る」


「アディってば……そんなに俺の事心配してくれてんの!?」


「お前がロリショタコンに好き勝手されたいなら好きにしろ」


「ごめんごめんマジで茶化してごめんってば付き人として守ろうとしてくれてマジでサンキューですだアディ」



 そしてタバサの後ろにセレスが、ファフニールの後ろにアランが、アディさんの後ろにセインが隠れた。



「えーと……一応ハニーとノアも後ろに隠れててくれる?」


「はい」


「うん」


「ミーヤも見た目は未成年だから少し離れた方が良いんじゃないの?」



 アリスの言葉にそうかもしれないと思った瞬間、



「誤解による風評被害の結果不可抗力で得てしまった称号だから!俺にそんな性癖は無い!」



 顔を覆ったニコラスさんによる切実な悲鳴が室内に響いた。



魔法使いと魔術師の違いに関してとお守りの効果を出せて満足。そして起きるラッキースケベとニコラスの不幸。

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