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異世界で魔物使いやってます  作者:
ちょっと寄り道編
220/276

どういうこっちゃねん



「ここにロンが欲しがってるキセルがあるらしいけど……私達まで入って大丈夫なの?」



 昨夜酒を飲んだ後、山に湧いている温泉に入らせてもらい、そして空いている空間を借りて一泊させてもらった。

 で、現在。昨日ロンが言っていた新品のキセルを取りに山の内部に繋がっているらしい洞窟に来た……んだけど、コレ本当に入って大丈夫なんだろうか。何かあちこちに部屋みたいな空洞があって、どうも倉庫として使ってるっぽいんだけど……。



「宝……その辺、ごろごろ……。完全……放置……」


「魔王城でもまだしっかりと管理されてたぞ」


「うわ、あの部屋から酒と血の匂いが漂ってきた」


「酒蔵かしらねぇ」



 上からラミィ、ヒース、コン、イースの順である。

 ……うん、その辺に石ころかなって感じで宝石とか放置されてるんだよね。さっき見た部屋なんて金銀財宝が積まれてたし。その横の部屋は上級ドラゴンが脱皮したらしい皮が重ねられていた。んで向こうの部屋は恐らく上級ドラゴンの内臓を入れ物代わりにして酒が造られていて……管理!しっかりして!



「これさ、私達がこういうのにあんまり興味無いタイプだったから良かったけど普通の人ならアウトだよね。欲に目が眩むよねコレ」


「魔王城の、あの死体のキメラ?のフランなんて目が眩むどころで済むかな。彼、確か内臓が下級ドラゴンなんだよね?でもあの時「上級ドラゴンの内臓が手に入らなくて」って言ってたし……」



 ノアの言葉に思わず遠い目で「確かに」と頷いてしまう。内臓どころか脱皮した皮まであるからね。今通り過ぎた部屋には爪っぽいのが積まれてたし、フランさんからしたら天国だろうな。

 そう思っていると、ロンは「そうなのか?」と首を傾げた。



「儂ら上級ドラゴンからすると、酒以外は特にそこまで価値は無いのだがな。脱皮した皮は垢のような物だし、爪や角、それに牙も生え変わらせようとすれば生え変わる。故に儂らからしたら処分が面倒なだけの不用品だ」



 「ああ、もし欲しいなら持って行くか?」とロンは言った。



「どうせこれらも処分が面倒で放置しているだけだろうからな」


「いやいやいや」



 そんな独断で勝手に持って行くのはちょっと。



「せめてボスに許可貰ってから、かな」


「その本ドラゴンが「宝が場所取って邪魔臭えから欲しいのあったらついでに持ってけ。結婚祝いって事で」と言っていてな」



 「「酒以外なら他のも好きに持ってって良いぜ」とも言っていたから、問題は無いはずだ」とロンは笑った。



「……上級ドラゴンからすると、宝とかってどういう認識なの?」


「何か人間がよく大事にしていて交渉の時に持って来たりするやつ、という認識だな。ミーヤの記憶で見たファフニールのように宝を大事にする性質の方が珍しい」


「わーお」



 ファフニールの方が珍しいんだ。ファンタジー的にはファフニールの方がドラゴンっぽい習性だと思うけど……まあ、ファンタジーっぽい現実だもんね。飲める酒ならともかく、食べれない金銀財宝じゃ上級ドラゴン的に価値は少ないのかな。



「んじゃ、キセルゲットしたら適当に良さげなの貰ってって良いかな?」



 シンプルな装飾品とかならお土産に良さそうだしね。副学園長逮捕には王様達も協力してくれたっぽいし、こういうお宝なら王族に渡しても違和感無さそうだし。ついでに千客万来みたいな効果のアイテムとかあったらエヴァンさんに渡すってのも良いかもしれない。色々申し訳なかったし。



「今でも良いと思うぞ?ホレ、この辺りはアイツの記憶によると大昔のとある王国の城の地下に隠されていた秘宝でな」


「そんな凄いのを通路の横っちょに放置しないで!?」



 ふっつーにその辺の石ころかなって感じの扱いで転がってる大きめの宝石だなとしか思ってなかったのに!そんなとんでもないアイテムなの!?大丈夫なの!?



「ならこっちか?このドレスは裁縫関係に優れていた勇者が世話になった姫に祝いとして一針一針心を込めて刺繍したというウェディングドレスで」


「それもう持ち主にお返しした方が良い品じゃないかな」


「姫以外が受け取ったら呪われそう!」



 マリンの言葉に全力で同意だわ。



「アイツの記憶ではその持ち主本人が「このドレスは何より大事な宝。しかしこのまま城に置いておけば賊に奪われる事でしょう。ですからどうか、私が死ぬまでこれをお守り下さい。私が死んだその時、このドレスが無事なら……私は、悔い無く天へ昇れるはずですから」と渡してきたらしいぞ」


「ねえソレどんなドラマ?」



 もうそれストーリーだよね。誰かのストーリーだよねそれ。あとそのドレス絶対貰っちゃ駄目なやつだよね。



「いや、数千年前の人間のようだから既に死去しているはずだ」


「えー……」



 それならセーフ……にはならないよね。人道的にアウト。



「いや、うん、止めておく」


「そうか。ではこれは?魔石を仕込める弓」



 あ、やっとまともそうなのが。



「これは空いている穴の部分に魔石を仕込む事で己の魔力を補強する事が可能で、術式を刻んだ魔石を仕込めば少ない魔力で魔法を発動させる事が可能だ。人間の場合は詠唱などが少なく済むな」


「他に危険性とかは?」


「無いぞ」


「じゃあソレを貰って行こうかな」



 弓使わないけど、お土産には良さそう。



「あと似たような危険性の無い物だと……これか」


「本?」


「ああ、中身は白紙だがな」



 受け取ってページを捲ってみると、ロンの言う通り白紙だった。ニーラクス学園で内容を書き写す用として渡された白紙の本みたい。



「それは無限に書く事が出来る本……というか、ノートだ。書いて一旦閉じるとまた全てのページが白紙になるが、あの時書いたページを、と念じながら開くとそのページが出現する」


「超便利!」



 スマホのメモ帳機能みたい。本とかだとページの分嵩張ったりするからこういうのは良いね。助かる。

 そして他にも良さそうなアイテムを幾つかと少しの爪や牙、脱皮殻をアイテムポーチに仕舞いながら、「そういえば」と私はロンに問い掛ける。



「キセルと、あと内臓掃除用…の、ハーブだっけ?それってどういうもの?」



 そう問うと、ロンは「ああ、余り知られていないからな」と言って保存空間から葉っぱを出した。



「これが内臓掃除用のハーブだ。内臓の汚れを落とす効能がある」


「へえー」



 見た目はミントっぽいね。



「上級ドラゴンは炎を吐いたりする為の臓器などがあるから、定期的にこれを食べて内臓の汚れを落とす。でないと内臓の汚れに火が移るからな」


「怖っ!?」



 それマムシが自分の毒にやられる感じじゃない!?もしくはホースが防水性じゃない感じ!

 私の反応にロンは「ははは」と笑った。



「故にこれを食べるんだ」



 ハーブを再び保存空間に仕舞い、「……まあ」とロンは少し視線を泳がせながら言う。



「正直に言うと上級ドラゴンは自分の炎でやられる程脆くは無いのでな。面倒だったから儂は食ってないなかった。多少汚れても新しい内臓を複製すれば良いと思っていたからな」



 そんなサメのように次の歯が生えるから歯磨きはしなくて良いやみたいな事を言われましても。



「そんなわけで今見せたハーブはアイツに貰った分だ。繁殖用の苗も受け取ったから儂が忘れん限りは大丈夫だろう」


「繁殖用?」


「保存空間をまた別に作り少し魔力を調整すると持ち運び可能なプランターのようになる。このハーブも光や水では無く魔力によって増える性質だからな。相性が良いのだ」



 よくわからんけどハーブが尽きたりはしないから安心だよ!って事だよね。多分。内臓掃除用ハーブという名の増えるワカメが入った保存空間というボウルに魔力という名の水が入ってれば無限増殖、って感じの理解で良いはずだ。多分。多分が重なったが地球人にはこのくらいまでレベル落としても理解が難しいんでやんす。



「で、キセルはそのハーブを節約する為の物だ」



 節約、とな。



「上級ドラゴンの姿であのサイズのハーブを食ったらすぐに苗ごと全滅だろう?」


「全滅だね」



 ロンのドラゴン姿、人間一人くらい丸呑み出来そうなサイズだもんね。アレが平均サイズだとしたらちょっとした森くらい前菜で消え去るよ。



「故に人間くらいのサイズに擬態し、ハーブを刻んでキセルに入れて煙を吸う。煙だけでも充分内臓の汚れは落とせるからな」


「でも煙だとこう……ヤニだっけ?ああいう感じで逆に内臓汚れない?」



 キセルって事は煙草みたいな感じだろうし。



「いや、どちらかというとスチーム掃除機のように汚れが落ちる」


「超わかりやすい」



 成る程、煙で湯気みたいに汚れを浮かすのね。あとは多分水とか飲む事で排出するとかそういう感じなんだろう。種族違うから微妙に違うかもしれないけど、多分大体そんな感じだと思う。



「ただまあキセルで吸う時は人間くらいのサイズに擬態するとはいえ、あくまでサイズだけなのでな。ドラゴンがそのまま二足歩行で人間サイズになったような見た目になる事が多い。故に最初、あのメスのドラゴンは身を隠してミーヤ達を観察したのだろう」


「成る程」



 つまりあの時お姉さんは人間サイズだけどドラゴンベースの竜人って感じだったのね。うわ、見とけば良かった。今の人間ベースの竜人姿も良いけどそっちはそっちで需要高いよ。

 そう考えていると、イースが「ふふっ」と紫の瞳を細めて微笑んだ。



「ミーヤって本当に範囲が広いわよねぇ」


「いやドラゴン系は結構ベーシックだと思うよ?」



 オタク以外にも人気高いジャンルだし。



「と、ここだ。思ったより奥の方だったな」



 到着したキセル置き場らしい部屋に入ると、中には机が一定の幅を空けて置かれていた。そしてその上にまるで展示されるかのように種類豊富なキセルがケースに入って保管されていた。

 幾つか空のケースもあるのはボスとか他の人が確保した分かな?



「へー、沢山種類があるんだね」


「色や飾りが違うだけだがな」



 アレクの言葉に薄く微笑みながらそう答え、ロンは近くのケースを空けてその中にあるキセルを手に取った。



「……これが良いな」


「どんなの?」


「ほれ」



 ロンの鱗に覆われたドラゴンの手の中にあるキセルを見せてもらうと、黒と金のシンプルなキセルだった。そして黒地に模様として金で描かれているのは……、



「……桜?」


「ああ」



 「丁度良い柄だろう?」とロンは笑った。



「このキセルはかつて、あちこちを旅していた異世界人から買った物……を、別の上級ドラゴンから貰い受けたようだな。アイツの記憶からすると」



 ロンは太い指で器用にキセルを回しながら、「どうもキセルを造る能力しか持っておらず、国から追い出された異世界人だったらしい」と続けた。

 また何か作品作れそうなストーリーが……。



「まぁ、桜の模様があるなら異世界出身かその関係者でしょうねぇ。こっちに桜は無いものぉ」



 ……え?



「イース、この世界桜無いの?」


「無いわよぉ?無いから桜を契約印にしたんでしょう?」



 まあ確かにそうなんだけど……え、でもこっちって結構同じような感じで色々あるよね?



「……いや、あれ、確かケインさんがくれたパイにさくらんぼ入ってたよね?」


「アレは果物とかを作れる能力を持った勇者が作った植物なのぉ。でも果物を作る能力だったからぁ、花になって実をつけて……っていう途中経過が無いのよねぇ。そのまま果物がポンと生るのよぉ」



 つまり桜は無い、と。



「え、でもヒイズルクニは?ヒイズルクニって秋のクレナイしか行ってないけど春のミドリもあるんだよね?クレナイは紅葉とイチョウだったけど、そうなるとミドリには」


「ミドリには桜じゃなくて梅の花が咲いてるわぁ」



 そっちか!確かに梅も春の花!



「そうか……何か凄い衝撃。旅してて勇者が色々残してるの見て来たから桜もどっかにありそうだと何となく思い込んでた……」



 まさかガチで桜が無いとは。そう考えるとあの時の私グッジョブ。良かった契約印を桜の模様に決めて。ありがとう学校指定の靴下。別に強制じゃないしダサいしとあまり好きではなかったけどありがとう。とりあえず穴が開くまで履けば良いやって思って履いてて良かった。



「さて」



 キセルを一旦保存空間に仕舞ったロンは「これで用は済んだな」と言った。



「そうだね、じゃあもう戻る?」


「ん?奥には行かぬのか?」



 奥?



「奥に何かあるの?」


「この奥にはダンジョンがあってな。どうやら相当深く、百階まであるようなのだが……上級ドラゴンでもその半分である五十階までしか潜れんくらいに強い魔物やトラップがある」


「よし無理。Uターンで帰ろう」


「早いな」



 いやそりゃ即答でしょ。何が悲しくてそんなトコに身投げせにゃならんのじゃ。自殺目的ならともかく嫁と幸せ生活してる私には無縁な場所でしかないよ。



「だが三階までならそこまで強くないようだから大丈夫だと思うぞ?宝箱もトラップが八割のようだが、中身はかなりレアのようだし」



 うーん、ロンが言ってるのはボスや他の上級ドラゴンさん達の記憶からの情報だよね。つまり本当……ではあるんだろうけど、その分上級ドラゴンですら強いとか言う魔物が居るってのも事実だし……。



「ちなみに四階に行くと?」


「勇者でも死んだらしい」



 被害者が!死人が出てる!しかも勇者かよ!

 えー……同郷の誰かよ、安らかに眠れるかはわかんないけど南無阿弥陀仏。



「んー……」



 普通に死人出てるからやっぱお断りしたいけど、でも少なくとも三階まではセーフっぽいのも事実だよね。同郷の誰かがお亡くなったの四階らしいし。

 ……それに、コンがちょっと気になってるっぽいんだよね。ぴこぴこしてる耳の動きから察するに。

 コンって冒険譚とか結構好きだし、イルザーミラの時もダンジョンを気にしてたからね。こういう系が好きなんだろう。アレクとアリスとマリンも興味持ってるっぽいし……。



「行くなら一階までだけど、どうする?」


「行っても良いのか!?」



 コンが弾けるような笑みを浮かべてそう言った。



「べ、別に俺はそんな普通の冒険譚でも見れないくらいレアなダンジョンが気になってたわけじゃないからな?それにミーヤはそういうの嫌がりそうだったし。でもミーヤが行っても良いって言うんなら折角だし、そう、折角の機会だからちょっとチラっとだけ見たいっていうか!」



 ちょ、尻尾千切れそうなんだけど。そんなに気になってたの?



「僕も気になる!上級ドラゴンが棲んでる集落って時点で伝説でしか語られないような場所なんだし、その上でその集落にあるダンジョンだからね!」


「妾もダンジョンは初めてだから少し見てみたいな」


「自分は海の中にあるダンジョンになら一回入った事あるよ!でも陸のダンジョンは初めてだから!気になる!」



 アレクとアリスとマリンもやっぱり行きたい組なのね。



「じゃあ、他の皆は?」


「私はどっちでも良いわよぉ。怪我をしないように気をつけるなら、ねぇ」



 イースはくすくす笑いながら「まぁ、上級ドラゴンの肉を食べたから怪我もしないでしょうけどぉ」と続けた。



「私はミーヤ様が良いのであればどちらでも」


「ラミィ……は……階段、面倒臭い……けど、一階だけ……なら……」


「我もハニーと同じく、ミーヤが良いなら良い」


「僕はどっちでも」


「俺はちょっと気になるかな…じゃなくて、気になる、ます」



 行くなら行くけど行かないなら行かないって感じだね。まあでも嫌ってわけでも無さそうだし。



「じゃあ一階だけちょっと見学してから帰ろうか」


「おう!」



 尻尾をブンブン振りながらそう頷いたコンを見て微笑みながら、「では、ダンジョンはこっちの奥だ」とロンは通路の奥の方を爪で指差した。

 そのまま通路の奥に進んでいくと、重厚な扉があった。そしておどろおどろしく刻まれている「この奥に進むなら死を覚悟せよ。難易度MAX」の文字。



「よし帰ろう」


「帰りましょうかぁ」


「帰りましょう」


「……ん、帰る……」


「命優先で帰った方が賢いな」


「そうだね、僕死んでるけど。でもダンジョンのアレコレを管理してた家出身として言わせてもらうと難易度MAXとか普通に死ぬ。アンデッドでも死ぬ」


「なら止めた方が良いな。帰ろう」


「残念だけど命は一つしかないもんね」


「ロン達の血肉のお陰で頑丈になってるとはいえ、僕の場合魔力を奪うようなトラップにやられたら一発でアウトだからね。つまり帰った方が良い」


「そうだな、それに痛みがずっと続くようなトラップとかは嫌だ」


「自分が行った事あるダンジョンは難易度中だったからコレ本当に危険だね!リーブさん「危険度が「高」って書かれてたら勇者以外即死だから近寄るな」って言ってたし!帰ろう!」



 満場一致で帰る事が決定した。ロンだけ不思議そうにしてるけど無理だわコレ。入っちゃ駄目なやつだわコレ。上級ドラゴン以外無理だってコレ。



「……儂らの血肉を摂取したから即死はせんぞ?」


「いや、即死するとかしないとかじゃなくて普通に危険がやばそう」



 というか即死の可能性あったの?

 ……上級ドラゴンって大きい体を支える為に心臓が最低でも三つはあるらしいし、そう考えると即死が縁遠いのかな。種族差による意識の違いは大きいね。



「てかイルザーミラのダンジョンにこんな注意書きあった?」



 扉に刻まれている「難易度MAX」を見ながら言うと、アレクを「無かったよ」と首を横に振った。



「だってあそこのダンジョン初心者向けだったもん。難易度は一番下。超簡単と簡単だけは表記無いんだ。普通…っていうかそれなりの難易度は中表記。それ以上はただの地獄だって本には書いてあった」


「つまりこの先地獄って事か……」



 はあ、と溜め息を吐きながら扉に刻まれている「難易度MAX」に触れる。この先崖って看板みたいだよねこの注意書き。これが無かったら入ってたわ。危なかった。



「……なあ、ミーヤ様?」


「ん?何?ヒース」


「光ってるぞ、ます」


「何が?」


「ミーヤのアイテムポーチが!」



 マリンの水掻きのある手で指差された自分の腰を見てみると、確かにアイテムポーチが光っていた。……え、何で?

 チャックを開いて中を見ると、どうやら中にあるアイテム袋……の中で何かが光っていた。その中に手を突っ込み、光っている何かを取り出して見ると……、



「……何だっけコレ」



 全体に不思議な文様が刻まれている丸い石がピカピカと光っている、が、マジで何だっけコレ。

 そう首を傾げていると、イースが警戒した様子で口を開いた。



「…………ソレ、初代魔王の目覚め石、よねぇ」


「あ」



 そうだ、そういやイルザーミラのダンジョンでゲットしたんだっけ。そう思い出した直後、



「眩しっ!?」


「……や……っ」


「グルゥッ!?」


「っ、これ、魔力……っ!?」



 初代魔王の目覚め石が目を潰すんじゃないかというような光を放った。すぐに光は収まったらしいが、視界はいきなりのフラッシュでまだ白塗り状態だ。

 どうにかしぱしぱする目が回復し、取り戻した視覚で周囲を確認すると、



「……どこじゃここ」



 全員で、見知らぬ洞窟の中に立っていた。



「……酷い目に遭ったわぁ」


「まさかあそこまでの光を放つとは思いませんでした……」


「僕もだよ。僕の目は飾りだからただの光による視覚的影響は無いはずだけど、あの光は凄まじく強い魔力だった。術式による擬似的な視覚機能まで塗り潰されるなんて……」


「儂もだ。上級ドラゴンの目を潰す程の魔力とは……」


「ビックリした!」


「……?……ここ、は……?」


「何だここ……」


「洞窟……のようだが、さっきとは違う場所だな」


「だね。でも魔物は居ないみたい。ただし近くに他の上級ドラゴンも居ない。さっきまで結構近くに魂があったのに」


「ああ。匂いも完全にさっきまでとは……いや、山とは同じ匂いだな。多分山の中の違う場所、か?少なくとも幻覚ってわけじゃ無さそうだ」


「どうなってるのかしら?」



 上からイース、ハニー、ノア、ロン、マリン、ラミィ、ヒース、ハイド、アレク、コン、アリスの順である。やっぱり皆もわかってないらしい。

 ……というか、イースにもわかってないって相当な状況では。

 多分確実に初代魔王の目覚め石が原因だよね、と思い手の中にある石を確認すると、石の文様が一瞬だけ淡く光る。またあの目潰しかと全員で警戒すると、その光は一筋の光となって私達が立っている場所の奥の方を懐中電灯のように差した。

 同時に、洞窟内の壁にも光が現れた。青く淡いその光は私達の方からゆっくりと奥の方へと道を作るように光り、洞窟を照らした。

 ……間接照明みたい。

 というかこの石は一体何を示してるんだと魔法で視力を強化して確認すると、その光は奥に置かれている宝箱を差していた。



「えーと……どうする?」


「「初代魔王の目覚め石」だものねぇ……」



 そう、それが怖い。多分あの中に初代魔王が封印されてる可能性がある。つか何で初代魔王が封印されてるらしい入れ物が宝箱なんだよ。



「ですが外に出る方法も……」



 ハニーの言葉に、私は思わずイースに視線を向ける。



「……イース」


「無理ねぇ。この洞窟の内部に強力な魔法が掛けられてるわぁ」


「ああ。儂が全力を出せばどうにかなるかもしれぬが……その場合、その前にミーヤ達がどうにかなる可能性が高いからな」



 上級ドラゴンの全力なら出れるかも知れないけど、その余波で私達は死ぬかもって事ね。



「んー……私の何かあってもどうにかなるさ系の称号に期待して、とりあえずあの宝箱にこの石嵌めてみる?嵌めれそうな窪みに向かって光差してるし」


「そうねぇ……」



 眉を顰めながらも「嫌な予感は無いしぃ……」と呟き、イースは「そうねぇ」と頷いた。



「とりあえずやってみましょうかぁ」


「了解!」



 奥の方にある人一人くらいなら納まりそうな宝箱に近付き、蓋と箱の境目部分にある窪みに初代魔王の目覚め石を嵌め込む。

 ……これで初代魔王が復活して恨みMAXなタイプだった場合、最悪私達が死ぬどころか世界が滅ぶんじゃないかな……。



「あ」



 そう思っていると、パキンという何かが割れたような音が宝箱から響いた。そしてゆっくりと宝箱の蓋が自動的に開き、



「…………人、っぽい?」



 宝箱の中には、体育座りをしてコンパクトに収まりながら眠っている人が居た。

 いや人間かはわかんないけど、見た目は人間っぽい。



「……ん」



 その人は長い睫毛を震わせ、ゆっくりと目を開けた。



「…………」



 ……わあ。

 その人の瞳は、とても綺麗な虹の色をしていた。



「ああ……」



 ゆらり、と立ち上がったその人は、見る限り男性のようだった。

 全体的に暗めの配色だが豪華な装飾が付いている服を身に纏い、襟足だけが股下まで届く程長い紺色の髪。宝箱を跨いで目の前に立った感じから計るに身長は175……いや、176センチくらいかな。そして整った顔立ちに、何より目を惹く虹色の瞳。

 警戒はしてるようだけど特に何の行動も起こしてないイースに、反応しないミサンガ。つまり敵意とかは現時点では無いっぽいけど……と思いながら様子を見ていると、気付けば目の前の男性は私に向かって両腕を広げていた。

 そして、次の瞬間。



「やっと会えた……!」


「ほわっつ!?」



 抱き締められた。

 まるでそこに居るのを確認するかのように強く、しかし痛くは無いくらいの力で、宝箱から出てきた男性はしっかりと私を抱き締める。



「ずっと、ずっと待っていた。一度君の事を、美夜の事を、ミーヤの事を知ってから。長い長い眠りの中で、夢を見ながら、未来を見ながら、何万年も!」



 「君を知ったあの日から、今日という日を待っていた!」と、その人は心底嬉しそうな声色でそう言った。

 ……どういうこっちゃねん。



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