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異世界で魔物使いやってます  作者:
ちょっと寄り道編
218/276

上級ドラゴンの巣



「…………気配はあるのに人気がゼロだね」



 知らない内に不老長寿になっていたと知った事件の日から二日。

 到着した上級ドラゴンが住んでいるという山は、仙人とかが居そうな高く険しい山だった。そして元の姿に戻ったロンの背中に全員で乗り、ハイドの糸で椅子などを作ってもらった。だってうっかり落ちたら嫌じゃん?

 しかしそこは上級ドラゴン、空間歪曲によって山登り時に強風に煽られる事も空気が薄くなる事も無く、それどころか重力まで歪んでいるのか内臓に負担が来なかった。凄いね上級ドラゴン。飛行機扱いで申し訳ないにも程があるけど。

 で、雲が下にも上にもあるようなレベルの高さである山頂に着いたわけなんだけど……凄く、気配がする。あちこちの岩壁とかに穴開いてて、その向こうから凄く気配がする。生き物の気配だ。なのに人の気配はしない。人間独特の人間臭さというか、そういうのが一切無い。

 つまり、



「……警戒されてる?」


「いや、そういうのでは無いな、この匂いは」



 すんすんと鼻を鳴らしたロンがそう言った。

 ……同属がそう言うならそうなんだろうけど、じゃあ何で隠れてるんだろう。視線はものっそい感じるのに。



「僕が見る限り、あっちこっちに上級ドラゴンが居るね」



 恐らく魂を見てだろう、アレクが骨の右手で上級ドラゴンが居るらしい方向を指差す。



「あそこの岩壁に三体、あっちの影の中に一体、向こうの岩の上で霧みたいなものを纏って姿を隠してるのが一体。他にも何か、変わった隠れ方しながらこっち見てるみたい」


「変わった、っていうか……影の中にっていうのはローランみたいな?」


「あ、そうそう、そんな感じ」



 影に潜める上級ドラゴンとか超やばくない?



「霧みたいな、っていうのは?」


「水の魔力が濃いドラゴンが使う隠れ方だな。周囲にとても細かい水を沢山浮かべ、光の屈折率を曲げる事で……」



 アリスの問いにロンは比較的わかりやすく教えてくれているようだけど、光の屈折率という言葉を聞いた瞬間に私の脳が理解するのを拒絶した。お勉強嫌いです。

 それが伝わったのか、ロンは苦笑して「わかりやすく言うと」と端的に教えてくれた。



「認識阻害や幻覚に近いな。ミーヤにわかりやすく言うならマジックミラーが近いかもしれぬ」


「成る程、向こうからは見えてるけどこっちからは肉眼的には見えない、と」


「そういう事だ」



 よし正解!良かった!勉強は苦手だから物理的なアレコレでは理解出来ないけどそういう感覚的な感じでなら理解出来る!オッケー!

 笑みを浮かべたロンに優しく頭を撫でられていると、コンが何かに反応したように耳をピンと立てた。



「……動いた。さっきまで大きなものがずりずり動いてたような音だったのが変わったな。……擬態か?いや、でも……」



 少しの無言の後、コンは耳を立てたまま視線だけを私の方に動かして言う。



「ミーヤ、上級ドラゴンが人間っぽいのに擬態した。こっちに来るぞ」


「マジか。敵対の意思はあるっぽい?」


「……警戒してるような匂いはしないから、無い、と思う」



 相手が上級ドラゴンだから合ってるかわからないけど、獣人であるコンがそう言うならそうなんだろう。少なくともアウトそうならイースとロンが反応してるだろうしね。



「……来た」



 コンの言葉を聞き、コンの耳が立っている方に視線を向けると、



「…………やっぱ二足歩行って遅いわね」



 そうボソリと呟きながら、長い布をローブのように巻いて全身を隠している人がこっちに向かって来ていた。

 そして時々足元の石にふらつきながら、その人は私達の前まで来た。二人分くらいの距離を開けつつ、相手は私の事をジロジロと見る。



「ふーん、ふーん……」



 声からすると女性らしいが、普通に背が高い。まあでも180センチくらいだからアリスよりはずっと低い……私の判断する平均身長狂ってないかな。

 いやそれよりも、何でこうもジロジロ見られてるんだろう。



「あ、あのー……?」


「ああ、ごめんなさいね。でももう少し観察させてもらえるかしら」



 どういうこっちゃと困惑しながらも大人しくしていると、女性は「うん、大体の構造は理解したわ」と言った。そしてイースやハニー達にも視線も向けて「ふんふん」と頷き、女性は最後にロンを見て「あら」と嬉しそうな声を上げた。



「何だ、そのくらいはそのままでも良いのね?もうちょっとしっかり人間の姿にならないと駄目かと思ってたわ。先にそっちを見るべきだったわね」


「あの、えっと、お姉さん……?」



 何の話をしてるんだろうと恐る恐る声を掛けると、女性は「お姉さん?」と首を傾げた。



「ええ、そうね。私はメスだし、人間よりも長く生きてるわ。だったらその呼び方で合ってる……のよね?ごめんなさい、人間なんて数百年前に時々来た勇者くらいしか関わった事が無いからあまり知識が足りないの」



 そう言って、女性は「ああ、そうだったわ。人間相手には顔を見せるのが礼儀よね」と続けた。



「今整えるから、ちょっと待ってて」



 女性がそう言って長い袖から手を出した。その手は赤い鱗に覆われた、ドラゴンの手だった。

 彼女はそのままその手をフードの中に突っ込んで手の平で顔を覆い、髪を掻き上げるような動きでフードを後ろに下ろした。



「大体、こんな感じで良いのね?」



 フードから現れたのは、綺麗なお姉さんの顔だった。

 肩までのボブヘアーに整えられた赤い髪に、ドラゴンらしい鋭い瞳孔の赤い瞳。その耳はロンのように尖っていて、しかし色はロンとは違って真っ赤な色。耳の少し上の位置には外側に向けたS字を描いている西洋風の黒い角が生えていた。



「服……は、よくわからないからこんな感じかしら」



 お姉さんがするりとローブのような長い布を脱ぎ捨てると、そこには豊満なおっきいおっぱいがあった。違う、爆乳があった。じゃなくて、赤いマーメイドラインのドレスを身に纏っていた。

 ちなみにヘソの部分にひし形の穴が開いていてヘソ出しドレス状態というとてもセクシーなドレスだった。素晴らしい。

 ……というか、このお姉さん上級ドラゴンで確実だよね。

 だって二の腕から指先に掛けてがドラゴンの腕になってるもん。スカートのヒラヒラな裾から覗いている足もロンと同じようなドラゴンの足。

 お姉さんは脱ぎ捨てた布に視線を向けるだけで燃やして灰にすると、私達の方に視線を戻してにっこりと笑い、



「いらっしゃい、外からのお客様!数百年ぶりの他種族の来訪、私達ドラゴンは歓迎するわ!」


「むぐぅっ」



 正面から思いっきりハグされた。

 あ、ちょ、おっぱいに顔が、顔が埋まる!役得だとは思うけどこのお姉さんのおっぱい、イースのおっぱいのように弾力が強い。つまりめっちゃ反発力がある。え、ちょ、潰れないよね私!?



「あー、ちっちゃーい!人間ってこんなにちっちゃくて細いのね!こんなに可愛いお客様なら大歓迎よ!勇者達って皆こっちを警戒してて全然親しくなれなかったんだもの!って、あら?」



 私の頭部を豊満な胸に押し付けながら、お姉さんは「あらあら?」と……胸から伝わる振動から察するに、不思議そうに首を傾げたらしい。



「……ふんふん、ミーヤって名前で通してるのね。本名は三岡美夜で異世界人!でも勇者ってわけじゃない、と……だから明らかに怪しかっただろう私相手にも普通に声を掛けてくれたのかしら?」



 そういや触れた相手の記憶とかを読むのは上級ドラゴンの特性だっけ。まあ上級ドラゴン相手なら異世界人云々について知られても問題は無さそうだから良いけど。

 良いけど、あの、ちょっと、人間ってのはあんまり息止めてられなくてですね。



「あら、ごめんなさいね」



 そう言ってお姉さんはパッと私を解放してくれた。



「ぶはぁっ!」



 良かった、思った通り心の声を聞き取ってくれた。久々の圧迫だったがぜーはーぜーはーと呼吸を繰り返していたらすぐに息は落ち着いた。うん、慣れですね。自慢しにくい慣れだなあ。



「えーと……お姉さんは」


「大丈夫、さっきので疑問は全部読み取ったから」



 私が言い切る前に、お姉さんは笑顔でそう言い切った。



「何で皆が隠れてるのか、私が布に身を隠して現れたのか、どうしてミーヤ達をじろじろと観察したのか、でしょう?」



 「あ、上級ドラゴンっていうのは確定してるから答えなくても大丈夫よね?」とお姉さんは続けた。

 ……それ、答えてくれたようなものだと思う。でもやっぱ上級ドラゴン確定なんだね。情報ありがとうございます。



「何で隠れてるのかっていう疑問に関しては、私達皆本当の姿のままだったから、っていうのが答えね。十メートル以上あるドラゴンがうじゃうじゃ居たら、基本二メートル以内の身長しかない人間は怯えちゃうでしょう?敵と見なされて無駄な戦闘が始まるのも避けたかったし」



 「だから隠れてたのよ」と言ってから、お姉さんは思わずといったように笑った。



「まあ、ミーヤの体験からすると上級ドラゴンに囲まれるくらいじゃ動じなかったかしら」


「いや流石に驚くと思いますよ?」



 そうお姉さんに返すと、



「……そうか?」


「多分動じないよね」


「うん!動じないと思う!」


「ミーヤ様でしたら上級ドラゴンが目の前で大口を開けても平気そうですよね」



 背後からそんな声が聞こえた。上からロン、アレク、マリン、ハニーの順である。

 ……確かにSAN値MAXだけど、流石に驚きはすると思うよ?多分。



「続いて私が布に身を隠してた理由だけど、これは単純。人間を最後に見たのが数百年前だったからちゃんと人間に擬態出来る自信が無かったの。じろじろと観察してたのもそれが理由」



 成る程、と私は頷く。確かに参考にする為のモデルが無いと擬態も出来ないよね。



「そういう事だ」


「うわっ!?」



 驚いたようなヒースの声に振り向くと、そこには見知らぬ青い髪の男性が立っていた。否、その男性だけじゃない。



「成る程成る程、大体こんな感じで擬態すりゃあ良いんだな。よーし理解した」


「人間ってこんな小さい視点で日常的に生活してるの?ちょっとした石にも躓きそうで大変ね」


「そもそも二本足っていうのが不安定じゃない?」


「我らは魔力の分だけ筋力を補う事も可能だから良いが、脆い人間ではただ立って歩くだけでも重労働だろう」


「ふーむ、人間だけじゃなく魔物も居るのか。俺達よりも擬態が上手いな」



 いつの間にか、人間に擬態した上級ドラゴン達に囲まれていた。いやまあ人間に擬態っていうか、ロンみたいにドラゴンと人間のハーフみたいな擬態だけど。つか全員背高ぇな。



「ん、んん?」



 ふと、その中の一人がロンの匂いを嗅いで不思議そうな表情になった。



「……お前、人間のつがいになったのか?」


「ああ。儂が惚れて嫁入りした」



 さらりとロンがそう答えると、周りの上級ドラゴン達の表情が一変した。



「そうか!そりゃあめでたいな!」



 喜色満面の笑みへと。



「同じ上級ドラゴンだ、番が中々作れん辛さもわかるとも!だってのに人間を番にするとはそんだけ惚れたって事だな!?おいおい、後で記憶見せろ!」


「ははは、断る」


「あら残念」


「いやだが、その角にある模様は?魔力含んでるし、そこの人間の嬢ちゃん以外にも付いてるよな?」


「ああこれか、これは従魔の証である契約印だ」


「契約印!?」


「従魔契約の!?」


「嘘だろ!?上級ドラゴンなのに契約が可能だったのか!?」


「うむ、どうやら従魔になる側が受け入れていれば可能らしい」


「はー、そりゃ知らなかった」


「人間の従魔になって番になって、ってお前どんだけてんこ盛りなんだ」


「クズの魔物使いだったらこの場で引き裂くところだが……上級ドラゴンが自ら嫁入りする程の相手って事はクズではねえよな。おい、この子の記憶どうだった?性格とかは?」


「読んだ限り完全なる善人だったわよ。だって私達上級ドラゴンに対して、子供のような「凄い」っていう感想しかないんだもの。素材として見たりも、神聖視したりもしてないわ。完全にそのまま、そこに居る上級ドラゴンとしか認識してないわね」


「へえ、それは変わった人間だな」


「だから従魔である他の子達もその契約の影響であんま慌てふためいたりしてないのかしら」


「大丈夫か?嬢ちゃん。人間世界は生き難かったりしてねえか?」


「悪用されそうになったりしてない?もししてたら国くらい滅ぼせるからいつでも言ってね?って、まあ、まあまあまあ」


「ほっほーう、お嬢ちゃんは異世界出身か。昔は異世界出身って奴もよく来たんだが、最近は滅多に来なくなってて退屈だったんだ。ゆっくりしてきな」


「ふんふん、酒はいける口らしいな。丁度良い、上級ドラゴンお手製の酒がたんまりあるんだ。果実で作った酒もあるから飲んでいきな」


「気にしなくて良いわよ、同属の嫁入り祝いみたいなもんだから。元々ドラゴンは酒好きだしね」



 何このフレンドリーな上級ドラゴン達。しかもめっちゃ頭撫でられたしその際に記憶読まれたっぽいし。良いけど。良いけどどういうこっちゃねんこの状況。ロンも違和感無く混じってるし。



「……あの、ロン?」


「うん?どうした?」


「えーっと、この人たちが昔馴染み?」


「いや?」



 ロンは首を横に振った。



「皆初めて見る者達だ」


「ああ、初めて会う」


「まあ基本的に上級ドラゴンは移動しないから、外から来た以上は初対面だよな」


「名前はロン、だったかしら?その名前にも聞き覚えは無いわ。そもそも上級ドラゴンは名前が無いのが普通だもの。お互いでの意思疎通は魔力でも出来るから言語である必要も無いし」


「匂いや魔力量から察するにボス並みの歳って事くらいしかわかんねえな」



 ……上級ドラゴン、超フレンドリー……。

 ファンタジー系じゃこういう強い存在って一触即発、会ったら殺す、みたいなイメージあったけど……超平和的。というか人間よりも平和的なんじゃないかとさえ思うよ。副学園長みたいな悪人に会ったもんだから余計にそう感じるのかもしれないけどさ。

 すると、ロンが「ああ、ソイツだ」と呟いた。



「そのボスとやらは茶色の鱗を持っているな?」


「あ?知ってんのか?」


「うむ」



 ロンは頷いた。



「儂はソイツに会いに来たのでな」


「あら、そうだったの」



 最初に私達の前に来た全体的に赤色のお姉さんは納得したように頷いた。



「なら案内するわ。私達のボスが居るのはこっちよ」


「え」



 めっちゃくちゃあっさり案内するね!?

 私が戸惑ったのを察したのか、お姉さんは私の頭に手を置いて微笑んだ。



「ああ、そういう事。別に私達はミーヤを不審者だなんて思ってないわ。完全にお客様だと思ってるもの。なら案内するのは当然でしょ?」



 当然のように読んでくるなこの人達。別に良いけど。



「大体、ボスは私達でも殺せないくらい強いんだもの。そんな相手に人間達が敵うわけないってわかってるから、安心して案内するのよ。だから大丈夫」


「なーる」



 殺せない強さだから気にするな、と。ものっそい腑に落ちたわ。



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