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異世界で魔物使いやってます  作者:
ニーラクス学園編
209/276

ニーラクス学園の合宿内容はやばい



「一体何が…………」


『昔の話なのだがな』



 ふう、と溜め息を吐き、ドラゴンさんは話し始める。



『昔、儂は決まった時間に空を飛んでいた。空から見回り兼周囲への威圧の為にな。そんなある日、翼の付け根に毒が塗られた矢が刺さった』



 『飛んできた方向を見ると、物陰に弓を構えたブーリンが居た』とドラゴンさんは続ける。



『いや、儂も避ければ良かったのだが……上級ドラゴンは基本的にある程度の攻撃は通さぬのでな』



 ドラゴンさんは老人らしいしゃがれた声で、『それに、儂が避けると流れた矢の被害に遭うわらべが出るやもしれなかった』と言う。



『そして儂はその後すぐにこの塔の中に戻り、以来上空を飛ばなくなったのだ』


「え」



 ……毒矢、って言ってたよね。



「まさか、翼に異常が」


『ああいや、それは無い』



 ドラゴンさんは首を横に振ってさらっと否定した。



『貫通もしとらぬし、そもそも上級ドラゴンは毒が効かん。故にあやつは自分で毒を調合したようだったが』


「効かなかったと」


『うむ』



 頷き、『儂相手で無ければいい線いっておったのだがな』とドラゴンさんは溜め息を吐いた。



『下級のドラゴンであれば数十分でもがき苦しみながら死ぬであろう毒だったが、生憎ドラゴンの上級と下級には雲泥よりも差があるからな。そもそも鱗を貫通しておらぬし』



 上級ドラゴン凄えな。

 というか下級だったら数十分でもがき苦しんで死ぬって相当どころじゃないレベルでやばい毒なのでは。何を自家製してんだあの副学園長。流れ弾ってか流れ矢に掠った生徒居たらどうする気だったんだあの野郎。

 ……あの副学園長だしね。何も考えてなさそう。



『しかし、万が一またあやつが儂に向かって矢を射ったら今度こそ流れた矢に当たる童が居るかもしれぬ。それ以前に矢に塗った毒が儂に届くまでの間に垂れて下の生徒達に当たったらと思うとな』



 『儂は確実に無事であろうが、生徒達はそうでもあるまい』とドラゴンさんは続けた。



『故に、儂は矢に射られてすぐに『もう大分歳なのでな、しばらく飛ぶのは止めておく』と言って飛ぶのを止めた。飛べぬわけではない……どころか何のダメージも受けておらぬが、周囲に被害は出したくなかった』


「成る程……」


『まあその結果あやつは自分の作った毒が儂に効いて飛べなくなったと誤解したようだがな。ミーヤ達に儂を倒すよう依頼したのも、毒で儂が弱体化していると思っての事だろう』


「あらまあ致命的な誤解」



 まあ確かに毒矢が刺さった後に相手が隠居ってか引き篭もる?ようになったら効いた!って思うだろうけど……もし本当に私達が副学園長に騙されてたら大変な事になってたね。主に私達が。良かった副学園長が浅はかさとかその他諸々隠し切れないタイプで。



『儂自身は特に何のダメージも受けていないからこの件に関してはあまり気にしてはいなかったが……あやつの言葉に生徒達が心に傷を負っているのもまた事実』



 『儂は基本的に外部の者からこの学園を守るのが役目。故に学園内での事には触れぬようにしていたが』と、ドラゴンさんは続ける。



『……儂を排し、生徒達が楽しんで行っている娯楽的活動を支配しようというのは、少々やり過ぎだな』



 目を細めながら低い声でそう言ったドラゴンさんは、『そういえば』と私に視線を向けた。



『ミーヤはこれから、被害届を集めるのであったな』


「あ、はい。あの副学園長から受けた被害についての被害届があれば退職させれるっぽいんで」



 というか学園創設の時から学園を守ってくれていたドラゴンさんに対する行動からすると普通に通報レベルな気もする。

 ……それ以前にアウト過ぎる毒作ってるから通報挟む間も無く逮捕かな。



『では、儂も行こう』


「え?」


『む?儂も一緒に居た方が話が早いだろう?』



 確かに私達この学園の生徒に知り合い居ないけど……だからってドラゴン本人が行くのはアウトでは。

 そう思い、言おうとした瞬間。ドラゴンさんの細長い巨体が姿を変え、



「……心配するな、擬態は得意分野だ」



 気付けば、そこには一人の老人が立っていた。

 腰まである長い白髪を下ろした、青い着物姿の老人。背の高い彼は赤みがかった金色の目を細め、長い顎鬚を撫でながら微笑んだ。



「ドラゴンの姿で見回りが出来ないのであれば人に擬態すれば良い。幸い魔力に敏感なエルフくらいにしかバレておらぬしな。ここ数十年の間擬態で見回りを続けていたお陰で学園の皆にも学園七不思議「何故か居る老人」として受け入れられている」


「それ受け入れられてます?」


「普通に会話は交わすしそれなりに仲良くやれているから大丈夫だろう」



 ドラゴンさんは穏やかな笑みを浮かべながらそう言った。

 ……本人が良いなら良いけど……七不思議扱いかあ。というか異世界でもやっぱあるんだね七不思議。



「ねえねえ!」



 そう思っていると、マリンがドラゴンさんに声を掛けた。



「自分達はドラゴンさんの事何て呼べば良いのかな?だってドラゴンさんをドラゴンさんって呼んだらバレちゃうし!でも今まではバレてないんでしょ?ならドラゴンさんって呼ばない方が良いんだよね?」


「あ、確かに」



 普通にドラゴンさんって呼ぶ気だったけど、ドラゴンである事がバレてないって事は違う名称で呼んだ方が良いよね。

 マリンの言葉に同意して頷くと、ドラゴンさんも「そういえばそうか」と頷いた。



「ふむ……まあ、基本的には「お爺さん」や「爺さん」と呼ばれているが……」



 少し考えるように目を瞑ってからドラゴンさんは赤みがかった金の瞳で私を見て、「そうだ」と微笑んだ。



「ミーヤ、適当に儂に似合う名を考えてくれぬか?」


「……ドラゴンさん、それって私の記憶を読んで私が名付けに凄い悩むのわかった上で言ってます?」


「ああ」



 頷いて肯定されても困りますがな。

 えー……えーと、龍…っていうとシェンロンしか出て来ない。でもアレ神龍って意味だよね。あと色々アウトな気がするから無しで。

 んー、でもこのドラゴンさんアジア系だったしな。着物着てるし、そうなるとアジア…ってかヒイズルクニ系?あ、いやよく考えるとヒイズルクニってアジア系混ざったような国だったからアジアでも別に良いのか。

 シェンロンのシェンは確か神って意味だっけ。そうなるとロンが龍って意味……で、合ってたはず。

 クラスメイトである真面目系腐男子が中国人で、日本生まれ日本育ちだけど中国語に詳しかった。だからドラゴンの球を集めるあの漫画について語ってる時にそんな事を教えてくれたようなうろ覚えの記憶。でも多分合ってるはず!きっと!



「……じゃあ、とりあえずロンって名前でどうでしょう?」


「ではそれで行こう。ロンでもロンさんでもロン爺さんでも好きに呼ぶと良い」



 凄くあっさり採用された。しかも爺さん付けして良いなら仮名考える必要無くないかな。

 ……まあ、ニーラクス学園に長年居るドラゴンだしね。娯楽目当てでオッケー出したならこういうちょっとした会話とかやり取りも好きなのかもしれない。

 ドラゴンさん……改め、ロンさんは「では校舎に向かおうか」と言って塔の扉を開いた。



「おおミーヤさん!無事に出てこられたという事はあのドラゴンを……」



 扉の前で貧乏揺すりをしながら立っていた副学園長は下種さを感じる笑みを浮かべながらこっちに視線を向け、そしてロンさんを視界に入れた瞬間に表情を歪めた。コンは「べっしっ!」とくしゃみをした。



「……おや、何故貴方まで?」


「いや、ドラゴンに少々話を聞きに先客として来ていてな。そしてミーヤ達の事情も聞いたが、解読する間はこの学園で過ごすのだろう?ならば校舎などの案内をしておくべきだろうと思ってな」



 あ、そういう感じで?先客が居たから私達はドラゴンに対して交渉も敵対も出来ませんでした的な感じで行くんですね?

 正直言ってドラゴンさん相手に何もせずに出てきたって事がバレるとぐちぐち言われそうだなって思ってたから助かった。ありがたい。

 副学園長もそういう展開だったらしいと思ったのか、忌々しそうな表情を隠しもせずに「……チッ」と舌打ちをした。しかしすぐに表情を取り繕い、



「そうですか、それはそれは。いえ、ですがミーヤさん達の案内は私がします」



 「正体不明の七不思議の案内よりも、副学園長である私の方が安心出来るでしょうし」と続けた。

 ……いやお前の案内とかまったく安心出来ねえわ。

 それだったらまだ意外と気遣いが出来る分クトゥルフの方がマシだと思う。あの人話し合いに応じる気もあったしちゃんと相手の言葉を聞く気もあったしね。それに比べて副学園長の話の通じない感よ。邪神より話通じないって相当だぞ。



「ミーヤさん達もこちらを選びますよね?」



 圧のある黒い目でこっち見んな。そして強制してくんなや。コンが「えぐしっ」ってくしゃみしちゃうから本当どっか行って欲しい。



「あ!居た居たー!」



 そう思っていると、その声と共にこの学園の制服らしきブレザーを着た子が近付いて来た。

 オレンジ色のショートヘアーでサイドに一つずつ黄色いヘアピンを付けた女の子。首の赤いリボンを揺らし、チェックのミニスカートを履いた可愛い系の彼女は右手でビシッと敬礼した。



「学園長に頼まれて、ミーヤさん達の案内役に来ました!ジェラードです!」



 八重歯が似合うにぱっとした笑顔でそう言って、彼女は「そういうわけなんで、副学園長は仕事に戻ってくださいな!」と続けた。



「ってあれ?七不思議のお爺ちゃん何で居んの?」


「ああ、ミーヤ達に偶然会ったので学内を案内しようと思ってな」


「やだ仕事被った」



 「まあお爺ちゃんなら誰よりもこの学園について熟知してるっぽいし良っか!」と言ってから、ジェラードは「あ、そうそう」とまだ立ち去っていない副学園長に向き直る。



「そういえば学園長からの伝言あったんでした。結構怒った声色で「ただでさえ仕事が遅いんだからさっさとやれ。あと前のように生徒の原稿内容を改竄したら退職させるぞ」って言ってたんで、早く帰った方が良いと思いますよ?」


「あの耳長女……!」



 聞こえてる。小声で言ったつもりなんだろうけど聞こえてる。

 副学園長は今は学園長に従った方が良いと判断したのか、小さく舌打ちをしてから「では大変申し訳ありませんが、彼らに案内をしてもらってください。私は仕事がありますので」と爽やかに言って立ち去った。

 ……いやまあ、全然爽やかじゃなかったけどね。腹黒が露呈してる相手の爽やか笑顔とか闇にしか感じない。

 そう思いつつくしゃみが止まり鼻水が垂れそうになっていたコンに回復魔法を掛けていると、ジェラードが「はー、やっと行ったあのおっさん」と言って私達に向き直った。



「んじゃ、改めて自己紹介!はこの学園に通ってる14歳の五年生!性別は男!名前はジェラード!よろしくな!」



 わー、笑顔と共に見える八重歯可愛い。

 ……てか今何て言った?



「……男?」


「イエス男!」



 ニッと笑ったジェラードはくるんと一回転してミニスカートを翻し、可愛らしいポーズと共にバチンと見事なウィンクを決めた。



「似合うだろ?」


「確かに似合う」



 頷くと、ジェラードは嬉しそうに「だっろー!」と笑った。



「俺、新入生の時に女装科をとってさ。そん時に女装する側の仕草とかを勉強しようと思って女装してみたんだよ。そしたら思った以上に似合ってたからそれ以来女装してんの!」



 キャラ濃いなこの子。

 というか、うん、本当凄いなニーラクス学園。女装科なんてのまであるのか。

 …………あ、今ちょっと、もし本当にバーンズ家のあのやたらと濃い執事さんが元副学園長だったらイーニアスのあのクオリティ高い女装にも納得いくなって思っちゃった。きっと多分恐らく無関係の人だろうから考えないでおこう。



「でも女の人に褒められるのはやっぱ嬉しいな!しかも学園の奴じゃなくて外部の奴だし!学園の奴だと目が肥えてる分うるっさくってさー。でもミーヤさんが似合うって言ってくれたって事は外部でも通用するって事だよな!?よっしゃ!今度から修学旅行ん時も女装で行こう!」


「あ、修学旅行あるんだ。そして今までは女装してなかったんだ」



 思わずそう言うと、ジェラードは「あっはは、そりゃそうだろ?」と笑う。



「修学旅行……という名の聖地巡礼及び資料集めは何より重要なイベントだからな!」



 あ、ニーラクス学園の修学旅行ってそういう感じなんだ。



「制限時間内でどこまで資料を集めきれるかが重要なんだ」



 うんうんと頷きながらそう言うジェラードの目は狩人の目になっている。うわー、お姉ちゃんと一緒に行ったコミケとかでそういう目の人見た覚えあるわー。というかあの場所にはそういう目の人しか居なかった。



「その状況じゃ男物と女物両方の服を持ってくのは大荷物になるからって男物一択だったけど……今年からは女物一択にしてみるよ!」


「あ、うんそれは良かった……」



 ふと気になったので、私はジェラードに問い掛ける。



「ところで合宿とかもあるの?」


「何科の合宿に行くかで何もかもが変わるからなー。まあその科をとってて、尚且つ合宿費出せば行けるからあっちこっち行ってる奴も居るけど。俺の場合は女装科の合宿が印象深いかな。あの科の合宿の結果、俺はポールダンスをマスターした」


「何故」


「いや確かにアレな印象あるけど良いぞポールダンス。バランス感覚から普段使わない筋肉まで均等に鍛わるし」



 いや私が聞きたいのは何故ポールダンスをマスターしたんだという事じゃなくて何故ポールダンスをする事になったのかなんだけど。そして未成年に何故ポールダンスを教えるんだニーラクス学園。

 ポールダンスってアレでしょ?エッチなお姉さんが棒掴んでくねくねしながら大道芸みたいに凄いバランス感覚を披露するアレでしょ?何を学んでんだよ。



「他に俺が聞いた印象深い合宿話では、BL科と筋肉科をとってる奴等の合宿では実際に男同士の合体を見に行ったらしい」


「見!?」


「何か見せてくれるカップル探して見せてもらったんだって。ニーラクス学園って歴史長いから卒業生があっちこっちに居て、そういう特殊な知り合い多いらしい」



 だからって見せるか普通。いやまあ武道大会の一回戦で戦ったアボットみたいな露出癖を持っているカップルならあり得るかもしれない。だがそれを合宿で見に行くか普通。そりゃ本物見れば表現力とか構図とか助かるだろうけど!けど!



「あ、念の為に誤解が無いよう言っておくけどコレ重要な合宿だからな?実際の合体に嫌悪感を抱いて「リアルなぞ不要!」みたいな事を言い出さないように、っていう考えだから。先生曰く「食って駄目なら仕方が無いが食わず嫌いは許さん。もし本当に食って駄目ならそれが好物だという人に譲れる人間になれ」って」



 ……そう聞くと崇高な合宿にも思えるけど、でも内容は男同士の合体見学なんだよね。



「ちなみに人外科とってる奴等の中でも魔物科も一緒にとってる奴等は魔王国に合宿行ったりしてた。ただ最近はヤンデレ科の奴等が「ヤンデレ合宿はどこに行けば……」って悩んでるんだよなー……」



 そりゃ悩むわ。ヤンデレ合宿ってどういう合宿だよ。



「今まではヤンデレ伝説がある場所に聖地巡礼しに行ってたんだけど……ミーヤさん、リアルでヤンデレが居る場所知らない?」


「ヒイズルクニ」



 反射的に即答してしまった。



「私が行ったクレナイのお稲荷様んトコは凄かった。一番やばいのはお稲荷様の養子である賢兼さん。次点では狛犬の阿吽二人。お稲荷様自身もちょっと危ういトコあったよ」


「マジか。後でヤンデレ科受け持ってる先生に伝えておく!あいつ等マジで悩んでたから助かるよ!」



 明るい笑顔がとても眩しいけど、話の内容が内容過ぎる。



リアルも二次元もそれ以外もまずは食えという方針なニーラクス学園。

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