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異世界で魔物使いやってます  作者:
ツィツィートガル編
202/276

正直すまんかったとは思ってる



 テレサさんの一件から三日が経った。あの翌日ギルドに行ったら、メルヴィルさんが、



「貴族のブラック家の人からミーヤに連絡あったよ。「お陰で両親から跡継ぎに認めてもらう事が出来た。サリアも変わった私を受け入れてくれた。多大なる協力、感謝する」だって。ところであのイケメン、テレサって名乗ってたんだけどマジでどういう事?何があったの?俺が知ってるテレサって人女だったはずなんだけど。何か性別変わってたんだけどアレってミーヤ達関係してる?」



 と言っていた。テレサさんが両親と話を上手に纏めれたようで何よりだ。

 ちなみにメルヴィルさんの疑問には無難に「イヤサスガニワタシタチデモソンナトンデモネエコトデキマセンヨー」と答えておいた。「嘘だ!絶対嘘だ!」と叫ばれたけど知らぬ存ぜぬ。



「ミーヤ、ここだけの話って事で良いから俺に教えてくんない?」


「そういえばメルヴィルさんってイルザーミラの受付嬢であるチェルシーさんと双子でしたよね。武道大会の時、あちこちから受付嬢さんが臨時で来てましたけどチェルシーさん居ましたっけ?」


「ああいや、チェルシーはあの時何か忙しかったらしくて来れなかったんだよね。何でもイルザーミラの領主が変わったとかで、色々と体制を整える為にって意見交換とかしてて忙しかったんだって。来年は武道大会と俺の様子を見に、かつ小遣い稼ぎの為に来るって」


「成る程、だからあの時居なかったんですね」


「そうそう……あれ、俺今話逸らされた?」


「あっはっはソンナマサカ。というわけでこの依頼受けたいんですけど」


「あ、はいはーい」



 ちなみに受けた依頼は新作の服を作りたいがアイデアが出ないからモデルをやってくれという依頼だった。「多種多様な種族!多腕だったり足が無かったりするだなんて、何て非日常的で素敵なモデル!」と……まあ、うん、結果的にとても喜んでもらえたから良しとする。

 主にモデルをやったのはハニーとラミィとコンとハイドとノアだった。依頼人さんは着せられる側としてのノアの意見がとても参考になったとも喜んでいた。

 ハイドは作る側の視点だけど、ノアは着る側としての視点がしっかりしてるよね。人形だからかな?着せ替え人形みたいな感じなんだろうか。まあノア自身結構楽しそうだったので良しって事で。

 そんな事もありつつ、今日も良さげな依頼がないかとギルドへ向かう途中、



「ミーヤ!?」



 ポテもちチーズ屋台のお兄さんことエヴァンさんに偶然会い、



「お前!おっま、お前、本当お前さあ!ふざけんなよ!先に言えよ!一昨日の俺マジで自殺すら考えたんだからな!?」


「うぇあっ!?おぶ、おぶ、ちょ、ま、あば」



 襟掴まれてめっちゃ前後に揺さぶられた。

 尋常じゃない様子だった為、ハニーやハイドによる締め上げではなくコンによる背後からの拘束によって引き剥がされた。



「え、あ、ハローですエヴァンさん。何かありましたか?」


「何かあったかだと!?あったよ!ありありだ馬鹿!ふざけんなよお前!」



 涙目になりながらそう言うエヴァンさんに、私何かしたっけと思いつつ周囲に聞き耳を立てる。



「え、何事?」


「修羅場?って思うトコだけど……あの目立つ集団って事はミーヤちゃん一行よね」


「目立つし結構好意的で顔見知り多いもんだから絡みに行く馬鹿はそうそういねえし……マジで何があった?」


「狐獣人のコンが相手を羽交い締めにしてるっぽいけど…」


「あ、なら大丈夫だろ。前に酔っ払いがミーヤちゃんに絡もうとした時、一瞬にして酔っ払いが糸でぐるぐる巻きにされてたし」


「問答無用で糸に巻かれて無いって事は交渉の余地ありって事ね。でも本当に何であんなに騒いでるのかしら?」


「ミーヤちゃん普通に挨拶してたから知り合いじゃねえの?他の従魔達も警戒してねえからそれなりに素性知ってる感じするし」



 うっわー、目立ってる。ただでさえ結構顔と名前知られてるのにこんな風に騒げばそりゃ目立つよね。うーん……王都でお店持ちたいっぽいエヴァンさんがマイナスのイメージ持たれるのは良くないし、一旦ギルド行こうかな。個室借りて話そう。



「エヴァンさん、とりあえず何があったか聞きますからギルド行きましょう。めっちゃ見られてるし」



 私がそう言った瞬間にこっちを見ていた野次馬の皆さんは一瞬にして顔を背けて何事も無かったかのようにそれぞれの会話を再開した。何アレ証拠隠滅のプロか何か?変わり身早くない?

 まあでも聞き耳立てられてる事に変わり無さそうだしという事でエヴァンさんを連れてギルドの受付に居たメルヴィルさんに個室を使って良いかと聞く。



「ああうん、良いよ。俺多分この件に関しての内容微妙に知ってるし」


「マジですか」


「マジ。あれは本当ビビった。あ、それとミーヤに依頼来てるから後で伝えるね」


「指名依頼って嫌な予感しかしないんですけど」


「大丈夫大丈夫、今回は王族でも貴族でもないから。でもその予感は間違ってない」



 何その言い方超怖え。

 と、ともかく一室を一時的に使用させてもらい、エヴァンさんを座らせてハニーの蜂蜜を入れたお茶を飲ませて落ち着かせる。



「……落ち着きました?」


「落ち着くと思ってるのか?」


「そんなマジギレ顔で言われても困るんですけど……え、マジで何が?」



 エヴァンさんは「はあああああああ……」と深い深い溜め息を吐き、左手で眉間の皺を伸ばしながら右手の指で机をトントンと叩きつつ言う。



「……お前、俺の依頼の後にも依頼があるって言ってただろ」


「言いましたね」


「ついでに宣伝よろしくっつって、俺、お前に土産持たせただろ」


「はい、渡しました」



 頷くと、エヴァンさんは立ち上がって机を叩いた。



「相手が王族だなんて一っ言も聞いてないんだよ!!」



 割れたり零れたりする可能性があったコップ類はイースの魔法によって無事だったが、その辺りを気遣えない程精神が磨耗しているのか、そのままソファに腰を沈めてエヴァンさんは続ける。



「お前に依頼受けてもらった翌日、今日も無事完売した!と思って喜んでたら冒険者ギルドから呼び出しがあったんだよ。商業ギルドじゃなくて冒険者ギルド?何か手続き間違ってたとかか?って思って行ったら個室に通されて……そこで俺を待ってたの、誰だと思う?」



 あー、前に立ったフラグが凄い自己主張してる気がする。具体的に言うと第一王子であるケインさんが言ってたアレコレが凄い鮮明に意識の上の方にきてる。だがしかし私は抗うぞ。



「誰でしょうねー」


「第一王子のケイン様とその付き人のブラッドさんだよ!!」



 叫び、エヴァンさんは頭を抱えて下を向いた。



「……お前にわかるか?呼び出されたら第一王子と付き人が居た時の一般人の気持ちが。まさか、まさかだよな?って自分に言い聞かせてたのに本人達が「……第一王子、ケインだ…」「その付き人のブラッド。ま、そう気ぃ張らないで気楽にね?」って!気楽になんか出来るか!」


「わかる。私もセレスと会った時はまさかセレスが姫だとは……ケインさんもやっぱ兄妹なんですね。やり口が似てる」


「姫を愛称呼びの上で呼び捨てにして、かつ第一王子のケイン様をさん付けしてるとかお前絶対俺の気持ちわかってないだろ」


「わかってるつもりですよ!?」



 だって私も一般人だし!まあここ最近の色々でその辺の感情大分死んでるからこれ以上の反論も出来ませんけれどもさ!



「……それ、で…?」


「あの二人はエヴァンに何て言ったんだ?」



 ラミィとハイドの問いに、エヴァンさんは顔を上げて答える。



「…………資金とか土地とかその他諸々援助するから、一緒に店やらないかって」


「わー、良かったですね夢が叶いますよ」


「そんなレベルじゃねえだろうがコレ!何が起きてんだよ!?五日前の俺は「今日も売れなかったな…」とか嘆いてたはずなのに何が起きてんだよコレは!どんなファンタジーだよ!」



 私からすりゃ異世界であるこっちの世界の殆どがファンタジーだよ。

 でもまあ確かに、いきなり王子が「一緒に店やらない?」だもんね。そりゃ驚くわ。どんなシンデレラストーリー?ってなるもんね。性別や展開的にシンデレラストーリーで合ってるかは知らんけど。



「……ミーヤ、お前マジで何者なんだ?何でお前に土産持たせただけで翌日に第一王子が一緒に店やろうぜって誘いに来るんだよ」


「いやそれはマジで私にもわかんないです。私はただ知り合いの相談役をセレスに頼まれて、ついでだからって素直に王城に土産持ってったら何か王様とか王子とかが美味しい美味しいって食べて、そしてケーキを食べたケインさんがめっちゃはしゃいで何かそんな感じの話題になったっていう意味のわからなさですし」


「止めろよ。何が何でも止めろよそこは」


「王様と第一王子の決め事に口挟めるわきゃないでしょうが。あと言っておきますけどこのやり取り一瞬でしたからね。本当一瞬でしたからね。ケインさんが「これ作った人と店やりたい」っつって、んで王様が「却下するのが当然だけど普段から頑張ってるし……王子としての勉強とかと両立出来るなら良いよ」って許可出しましたからね。一応私だって止めはしたんですよ。聞いて貰えなかったけど」



 さらっとスルーされたからね。止めとけって空気をバリバリに出したはずなのに完全にスルーされたからね。王族として色々なものを潜り抜けてきたんだろう人達にその程度の圧は通用しなかった。無念。



「……で、エヴァンさんはケインさんに店やろうぜって持ちかけられて、どうしたんですか?」


「土地とか店舗とか店の雰囲気とかインテリアとか、あと出す料理とか勤務時間とかその他諸々めちゃくちゃ纏めてある書類出されて説明された。そして気付いたら第一王子と店出すって契約書にサインしてた」


「ちょろいぞこの人」



 というか私散々色々言われたのにエヴァンさんのちょろさやばくない?ギャルゲーの幼馴染かよ。



「仕方ないだろ!非の打ち所が無かったんだよ!ブラッドさん見た目怖えのに丁寧かつしっかりと説明してくれるし!口調と雰囲気で警戒と緊張解けたし!」



 エヴァンさん曰く、



「メインはエヴァンで、ケイン様はあくまで職業体験って感じね。俺もそんな感じで。ケイン様が来れない時は俺単体、もしくは他の誰か…多分セイン様辺りが来るから人手も気にしないで良いよ。体験って事で給料も不要。適当な賄いがあればそれで充分。あ、基本的にケイン様は厨房担当で俺がホール担当が良いかな。俺接客得意だし、ケイン様は会話が苦手だけど料理の腕良いし、特にお菓子作りは得意中の得意だからね。適材適所って感じ?」



 みたいな感じであれよあれよと説明され、納得し掛けているところで契約書を出され、そしてそれもまた説明忘れが無いようにとしっかり説明してもらったらしい。で、サインをした、と。

 ……ブラッドさん、昔やべえ組織に居ただけあって凄いね。良かった今のブラッドさんケインさんの付き人で。悪人だったら超怖い。



「……って、あれ?じゃあ何で私怒られたんですか?丸く収まってるじゃないですか」


「あの時俺に次の依頼人は王族だって言わなかったから。最終的にはめちゃくちゃ俺に嬉しい結果になったけど、突然王子に呼び出された時の俺は本当に死を覚悟したからな。両親に迷惑を掛けない為に即座に死ねるようにしないと…っていつでも舌を噛めるようにした瞬間ブラッドさんに見抜かれたのも怖かったし」



 エヴァンさん曰く、



「あ、別に何か苦情とか忠告とかそういうのじゃないから舌噛もうとしないでくれるかい?俺達はただ交渉に来ただけだし、あとホラ、目の前で舌噛んで死なれたらケイン様のトラウマになっちゃうと思うからさ」



 とブラッドさんに言われたらしい。

 ……元やべえ組織所属は伊達じゃないね。



「まあ、でも、うん、ほら、……結果的に見ればお店も人員もゲット出来たわけですし!王子様と軽食屋を経営なんて一生に一度経験出来るか出来ないかですよ!」


「そりゃあな!?一生に一度経験してたら充分だよ!」



 ごもっともだ。



「……まあ、ミーヤの言う事ももっともだ。実際俺の夢は叶うわけだしな」



 「だが」とエヴァンさんは言う。



「…………俺、昨日、ケイン様とブラッドさんとの三人で店舗を見に行ったんだよ。そして今日も三人で店内の内装用の壁紙とか、インテリアとか、そういう色々を見に行く予定になっている」


「楽しそうですね」


「そうだよ結構楽しいんだよ!」



 エヴァンさんは、わっと顔を覆った。



「ケイン様口数少ないけど見た目に反して雰囲気とか性格優しいし、ブラッドさんも見た目アレなのに気さくだし話しやすいし話すのも聞くのも上手だし!でもあの人、気を抜くと俺にケイン様と自分の事を呼び捨てにさせようとしてくるから油断ならねえ!」


「まあ敬称無しの方が経営的には良さそうですしね」



 そう返し、何か上手く行きそうで良かったなと他人事のように思った。



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