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異世界で魔物使いやってます  作者:
ツィツィートガル編
196/276

皆!キャラが!濃い!



「んじゃ、ツィツィートガル初めてな四人の為に今日は観光デーという事で」


「やった!色々と見て回れるのね?」


「楽しみだな。お母様はあまり外に出ない人だったから、こうして実際に見れるのは良いね」


「ツィツィートガルも色鮮やかで楽しみだ、です」


「あっち!あっち!向こうの方が騒がしくて人も多いけど何かな!?あれが屋台ってやつ!?海からだと辛うじて噂を聞けるくらいで見る事も出来なかったんだよね!」



 ツィツィートガル初めて組は元気だなー。

 現在はファフニールとの交渉を終えてからギルド行って宿屋行って寝て、朝になってご飯食べてちょっとゆっくりしてから外出、という感じである。昼前のこのくらいなら屋台を見て歩きながらの観光に丁度良いかなって。昨日は何か凄くバタバタしてたから午前中はゆっくりしてたかったしね。

 あ、ちなみにだが昨日ギルドに依頼を請けてクリアしたよという報告に行った時、受付にはメルヴィルさんが居た。



「……え、ミーヤ!?」


「わ、お久しぶりですメルヴィルさん」


「久々に会った君はより一層可愛く……ってか何か雰囲気研ぎ澄まされてない?王都出てからどんな体験すりゃそんな劇的に変化出来るの?」


「メルヴィルさんがネタを放棄するレベルでやばいんですか私?」



 ……うん、自覚は無かったけど、まあ、魔王国で色々経験して、ヒイズルクニの闇を見て、そしてクトゥルフを踊り食いしたりツィツィートガルで王族と話したりファフニールと交渉したりすればそりゃ雰囲気変わるよね。主に目がちょっと死んだ気がしないでもない。いや、うん、一歩大人になったんだと思おう。じゃないとやってられぬわ。



「というか、メルヴィルさんって裏方なんじゃなかったですっけ?受付って臨時じゃ?」


「そうだったんだけど、受付に男が居ると女性が依頼のアレコレをスムーズに出来るからって意見が多く寄せられてさ。まあ確かに受付嬢目当てに来て長話する男も居ないわけじゃないし、って事で試験的に受付ボーイを試してるってわけ」


「メルヴィルさんが受付ボーイをしてる理由は?」


「前に受付やった事あんならお前やってって感じで流された」



 そんな会話をしつつ、セレスに書いてもらった依頼云々の手紙を渡した。ら、超驚かれた。



「……あの、ミーヤ?」


「はい」


「ごめん、不敬だって言われるかもしれないけどこれだけは言わせて。……馬っ鹿じゃねえの?上級ドラゴンと交渉とか頭大丈夫?しかもそれを請けてクリアするとか普通あり得ないんだけど」



 「でも手紙に押されてる印が完全に王家なんだよなあ……」と呟きながら、メルヴィルさんはギルドカードにクリアしたという記録を付けてくれた。

 ……うん、やっぱりドラゴンと交渉って頭おかしいよね。そう思うのが普通だよね。普通の反応を見れて何かちょっと安心したよ。だよね!って感じで。

 その後ちょっぴり、



「ちなみにだけどさ」


「はい?」


「今までクリアした依頼の分と今回のコレを合わせるとCランク、その気ならBランクまで上げれるんだけど」


「現状維持で」


「嘘だろ」



 という会話をしたりしなかったり。いやしたんだけど私の中ではしなかった事になってるわけであります。……んで前のお高い宿屋に連絡してもらって、移動して、ご飯食べて、寝て、現在に至る。

 いやー、



「多種多様の肉を焼いたのあるぞ!ガッツリ食いたい奴におすすめ!タレありタレ無し選べる仕様!」


「ジュースとカットフルーツ売ってっぞ!シュガーバタフライから採った砂糖も付いてくる!お買い得だぞおいコラそこの兄ちゃん喉渇いてる面ぁしてんな買ってけ!」


「ピンポイントに狙い撃ちされた!?」


「味のこってりしたシチュー要りませんかー?お隣のパンと合わせるのも美味しいですよー!」


「お昼にパンはいかがですかー?お隣のシチューと一緒に食べるのも最高ですよー!」


「なあ、昼飯あそこのシチューにしねえ?あとパン」


「お前確実に売り子の女目当てだろ。俺は向こうの肉が良い」


「この猛禽類が!シチューだって肉入ってんだろ!」


「すみませんうちのシチュー野菜メインでお肉はちょっぴりなんですよー」


「……良し、ジャンケンだ。三回勝負で勝ちが多い方の意見優先な」


「望むところだ」


「そんな二人に肉饅頭。何の魔物だったかは忘れたがとにかくとっ捕まえた魔物をありったけ捌いてミンチにして臭み消しの野菜と少しの毒消しを混ぜて作った美味さ爆発の肉饅頭!買え!そして食え!」


「うわビックリした!」


「目ぇ死んでるぞコイツ怖え!」



 屋台の通りに来たけど凄く見覚えのある方が多いね。というかキャラが濃すぎて忘れてなかったとも言える。何だこの人達の濃さ。濃厚過ぎて喉に詰まるわ。



「えーと……どうする?」


「お困りならまずうちのアクセとか見て行く気ねーかお嬢さん方!」


「うわビックリした!」



 アクセ売ってる露店のおっさんの声掛けいきなり過ぎて超ビビった。おっさんは商品の中から一際アレなデザインのアクセを手に取って見せる。



「コレなんかオススメ!」


「いやいやいやいや。それスカルの天辺に矢が直立してるデザインじゃないですか。反応に困るにも程がありますよそのデザイン」


「マジか。じゃあこっちは?」


「何でブレスレットなのに内側にトゲが付いてんですか。それ逆向きだったりしません?」


「いやコレで正解。製作者曰く「セルフで痛みを感じれる傑作」との事」


「すみませんうちそういうキツめの被虐趣味居ないんで結構です」



 ハッキリとそう言うと、おっさんは「そうか……」とアクセを元の位置に戻して項垂れた。



「俺どうもこういうの選ぶセンスが無いみたいでよ、お嬢さん方何かアドバイスとかねえ?」


「客に聞きますか普通」


「売り上げ悪くて切羽詰ってんだよ。迂闊に生活に困窮するとストーカーが養おうとしてくるから何が何でも売り上げを安定させねえとだし」



 情報量が多いんだよなあ。

 もういっその事養われろよと思わないでも無いけど、まあこういう会話も楽しいから良いか。



「ですが、こういうのはやはり本人の好み次第ではないでしょうか?」



 そう思っていると、ハニーが上の右手を顎に当てながら続ける。



「私の場合だと動くのに邪魔そうなのでアクセサリーなどは不要に思えますし」


「……ラミィ…は、誘惑、の、為……の、飾りつけ…イメージ」


「確かにラミアだとそういう意味でアクセサリーを付けてるものねぇ」


「自分こういうの、えっと、指輪?ゴツゴツした指輪とか良いと思うよ!攻撃力高そうで!自分水掻きがあるから指輪つけれないけど!」


「妾としてはこっちのシンプルなデザインが良いんじゃないかと思うけど……ノアはどう思う?」


「僕かい?僕は普段着にも使えそうなのが売れやすいと思うけど。特別な日の為のアクセサリーなら相応の店で買うだろうしね。だからシンプル系をメインにもう少し見やすい配置にするのはどうかな」



 「ちょっと弄って良いかい?」というノアの言葉におっさんが頷いたのを確認してから、ノアはアクセの配置を少し変えた。



「……うん、大体こんな感じ。基本的に癖が強いデザインは目を引くけど、実際身につけるならシンプルな方が使い回しやすい。アクセサリーは付けている人間を引き立たせる為の物だしね。アクセサリーが人間より目立ちそうなのは避けた方が良い」



 ノアの真面目なアドバイスを聞いていたおっちゃんは「ふむふむ」と納得したように頷きながら言う。



「坊ちゃんの実家は売店か?」


「人形が沢山ある館だったよ。お母様は人形に合うアクセサリーを考えたりもしてたから、そういう知識が少しあるだけさ」


「へえー、やっぱこういうアクセが家に沢山ありそうなお坊ちゃんだと知識があるんだな」



 正確には館は消滅してるし坊ちゃんでも無いんだけどね。まあ嬢ちゃんでも無いから間違ってないんだけど……うん、何ていうか、良い感じに話が噛み合ってるようで良かった。微妙に噛み合ってない気もするけど噛み合ってるという事にしておこう。

 うーん…アドバイスが上手なのはノアが人形だからこその視点ってのもあるのかな?そう思ってノアのアクセ知識に感心していると、「あのー」と声を掛けてきた女性が居た。



「そのネックレス、ちょっと見せてもらって良いですか?普段使い出来そうなデザインで可愛いなって思って……」


「おおお!?おう勿論だ見て行ってくれ!」



 女性はネックレスを確認し、気に入ったらしく購入して去って行った。



「……凄えな坊ちゃん!?いきなり客が来た上に売れたぞ!?」


「僕もまさかこんなに早くお客さんが来るとは思わなかったよ」



 「まあ、役に立てたようで何よりだ」と言ってノアは立ち上がり、「じゃあね」と微笑んでおっさんに手を振った。



「おう!次来たら何割引きかにしてやっからな!」



 ……あ、ノアのさり気ない動きのお陰で買わずに立ち去れた。助かった。



「ノア、凄いね」


「そうかい?」



 ノアはきょとんとした表情をしながら青い右目と桜が描かれた左目で私を見た。



「うん、私アクセ関係の知識サッパリだから。凄かったよ」


「僕としては人形として見栄えの良さを考えただけだったんだけど……ミーヤがそう思ってくれるなら、良かった」



 微笑んだノアの頬を軽く撫でる。本当は頭を撫でたいけどシルクハットがあるからね。相変わらず作り物特有のすべすべ肌だ。

 ノアの柔らかくは無い頬の感触を楽しんでいると、ハニーに袖を軽く引かれた。



「ミーヤ様、あの屋台」


「ん?ああ、前にハニーがジュース買ってきてくれた屋台」



 おじさんの言動が濃かったから覚えてる。



「あの屋台のジュース美味しかったし買おうか。フルーツはどうする?」


「食べたいです!」


「妾も」


「あ、じゃあ自分も!」


「俺は隣の屋台の肉が食いてえな」


「ああ、確かにあの屋台の肉は種類豊富で美味そうだ」


「りょーかい」



 上から私、ハニー、アリス、マリン、コン、ハイド、私の順である。まずはジュースとカットフルーツの屋台に向かう。



「すみません、ジュースを十一人分とフルーツを…私もちょっと食べたいから四人分お願いします」


「多いな!?」



 「まあ売る側としちゃありがてえがよ!」と言ってハーフエルフらしきおじさんはコップにジュースを注ぎ始める。



「つか……そこの腕が多い嬢ちゃん、前にも来たよな?」


「はい。覚えてたんですね」


「んな特徴的な見た目忘れねえだろ」



 確かに、と頷く。ハニーの見た目結構特徴的だよね。蜂っぽさ結構残ってるし。



「ほらよ、まずはジュースな。フルーツは今からカットすっから、とりあえずジュースの分の代金先にくれ」


「あ、はーい」



 ジュースの分の代金をピッタリで渡すと、おじさんは「よし、毎度あり」と言って受け取った。



「うちのフルーツは全部自家製だから美味えぞ?カミさんが虫系魔物の研究してるお陰で環境整ってるしな。シュガーバタフライの砂糖でより甘さも増す!」



 言いつつ、おじさんは流れるような動きでフルーツをカットしていく。



「俺は昔っからフルーツ一筋だったからな!そんじょそこらのフルーツとは比べモンにならねえくらい美味えぞ!」


「確かに、このジュースもとても甘くて美味しいですしね」


「甘いけどサッパリしててくどくないし……うん、美味しい」


「だろ!わかってんな嬢ちゃんと坊ちゃん!」



 ノアって性別無いし見た目中性的だけど、一般人から見るとどっちかというと坊ちゃん寄りに見えるのか。……服がズボンだからかな?

 おじさんはカットしたフルーツを皿に盛りつけ始める。



「俺は見ての通りハーフエルフだが菜食主義でな。その理由ってのもお袋がエルフで親父が人間だったんだが離婚してよ。何でかってお袋に聞いたら、「肉を食う生き物は臭い」っつってよ!エルフは肉とか食わねえから体臭が薄い奴か甘い奴しか居ねえから、肉食う種族の体臭が駄目だったんだと!笑えるだろ!」


「いや凄く繊細な話題過ぎて笑えませんよ!?」


「そうか?まあそういう理由でお袋は俺に肉系を食わせたがらなくてよ。そんなお袋の気持ちを汲んでかは俺自身にもわからねえが、とにかく俺はフルーツ大好きに育ったんだ。その結果がこの屋台だ!これなら比較的趣味の範囲で俺の育てたフルーツを誰かに食わせたり出来るしな!」



 何というか……うん、



「色々と凄いですね」


「そうか!あんがとよ!」



 褒めたつもりは無かったけど褒め言葉として受け止められたなら良い事だろう。多分。



「あれ、そういえばおじさんってハーフエルフで……年齢お幾つです?」


「生まれてから67年だな」



 ……おかしくない?

 エルフは100歳で成人で、800歳だったメリーじいさんなんて二十代でも通りそうな若さだった。そしてトモノギ村で見たハーフエルフの人達もどっちかというとエルフ寄りであんまり老けてないように見えたけど……と首を傾げると、それに気付いたらしいおじさんが「ああ!」と笑った。



「見た目の年齢が気になったのか!」


「はい」


「まあ確かに俺みたいのは少ないからあんま知られてないから無理はねえな。実はハーフエルフってのはな、2パターンあるんだ。基本的にはエルフ寄りで見た目や中身が老いるのが人間に比べて遅いっつー感じだが、時々人間寄りのハーフエルフも居てな。そういう奴は人間と同じように老いてくんだ」


「おおう……女性だと悲惨ですね」


「あー、まあこういう場合は精神的な老いも人間と同じ速度だからな。魔力多くて耳が尖ってるくらいしか人間との違いは無えし、あんま気にしねえんじゃねえか?」


「成る程」



 そんな会話をしつつ皿に盛られたカットフルーツを受け取ってお礼を言って代金を払い、次に隣の屋台で肉を買う。凄い種類豊富だねこの屋台。え、しかもタレだけじゃなくて甘辛とかもあるの?……多分食べれるだろうから全種類一皿ずつお願いします。

 うっかり欲望に負けて凄い量になってしまったので近くの座れるところを確保し、テーブルを繋げて料理を置いていただきますをしてからそれぞれ好きなように食べる。



「うわ、このお肉柔らかっ」


「こっちのお肉は意外とジュースにも合うわよぉ」


「ん~~!やはりあの屋台のフルーツは最高ですね!」


「……タレ付き、美味しい…」


「味濃い目で良いよな。でも俺、ヒイズルクニで出してもらった肉巻きおにぎりが結構気に入ってて……アレこっちには無えのかな」


「どうだろうね?お米系は少ないけどヒイズルクニ出身の人用にヒイズルクニの料理を出すお店とかあるはずだし、探せばあるんじゃないかな」


「虫の素揚げもか?」


「ハイド、蜘蛛だから虫の素揚げ気に入ったの?確かに味は美味しかったけど……見る限りこっちでは虫とか食べそうにないよ」


「まあ、世の中には変わった料理を好む人間も居るから……探せばそういうのもあるとは思うけど」


「俺は普通にこういう肉とかフルーツが好きだけどな。まともな食い物はそれだけで大好きだ」


「自分はこういう火に通した食べ物はちょっと不思議な感じ!海だと火使えないから!あとフルーツも基本的に陸にあるものだから、海に落ちた奴以外は初めて食べるよ!だってフルーツ採りに陸に上がって万が一があったら危ないからって事で人気が無くとも採りに行くのは禁止されてたからね!」



 上から私、イース、ハニー、ラミィ、コン、アレク、ハイド、アリス、ノア、ヒース、マリンの順である。

 美味しい美味しいと食べていると、思ったより早いペースで山のような肉が丘くらいに減っていた。



「んー……追加で別の何か買って来ようか」


「あ、じゃあ俺も行く。…いや、違うぞ!?ミーヤと二人っきりになりたいとかそんな事はほんの少しだけしかねえし!さっきから匂いが気になってた屋台があるだけだし!」


「うん、単独行動は嫌だから一緒に行こうか」



 クリーンで少し汚れていた手を綺麗にしてからコンと一緒に席を立つ。



「気になってる屋台ってどこ?」


「あそこだ。あの、ちょっと人が疎らなトコ。端っこだから人気少ねえけど、さっきから良い匂いが漂って来てる」


「おお、楽しみ」



 確かにちょっと人通りが少ないのか屋台のお兄さんも元気無さげ。でもコンが良い匂いって言うなら確実に美味しいんだろうし、と私はお兄さんに声を掛ける。



「すみません、ここ何の屋台ですか?」


「え、あ、ポテもちチーズっていう……ジャガイモとヒイズルクニの餅ってやつを混ぜた物の中にチーズを入れて揚げた……食い物だな」


「ポテもちチーズ」


「ああ。一人前で二個」



 まさかこっちの世界でもポテもちチーズがあるとは……多分昔の勇者の誰かが伝えたんだろうけど、その人グッジョブ!アレ結構好きなんだよね。



「じゃあえっと……コンは何人前食べる予定なの?」



 聞くと、コンは鼻を鳴らして匂いを嗅ぎながら悩むように尻尾をうねらせ、



「……控えめに、三人前」



 と言った。

 ……本当は五人前くらい食べたいけど、って感じの声色だったね。



「ラミィやアレクも食べるだろうし……とりあえず三十人前くらいでお願いします」


「はあ!?」



 お兄さんが信じられないものを見るような目でこっちを見ながら叫んだ。しかしすぐに客だという事を思い出したのか、「あ、ああ、悪い」と謝った。



「いやでも、本当に?三十人前?冗談でも言い間違えでも無いんだな?」


「そう思われるかもしれませんがちょっと、メンバーが十一人居まして」



 ハニーは多分食べれないだろうから正確には十人なんだけど、まあそこは良いや。



「んでもってその中の半分が大食いでして」



 ラミィとコンとアレクとハイドとノアの事だ。



「なので、とりあえず三十人前で。あ、在庫とか厳しいですか?」


「いや、あんま売れてないから揚げればあるけど……揚げる間、ちょっと待っててくれ」


「了解です」



 というか売れてないってお客に言っても良いのかな。まあ見るからに人気が無いけど。

 お兄さんは揚がった先から皿に盛りつつ、私達の事が気になったのか質問してきた。



「あー、と……お前らは親戚……では無さそうだよな」


「俺はミーヤの従魔兼嫁だ。待機してる残りの九人も同じく」


「あ、ミーヤです」


「……そうか」



 お兄さんの目が思考を放棄した人の目になった。



「従魔って事は魔物使いだよな?冒険者か?」


「はい、Eランクですけど」


「そうか」



 お兄さんは揚がったポテもちチーズを幾つかのお皿に盛ってくれた。



「悪いな、大皿用意してなくて」


「いえ、こっちが非常識な量注文しただけですんで」



 三十人前とか本当に非常識な量だよね。親戚の集まりかな?って感じだ。全員私の嫁だからある意味間違っては無いんだけれども。

 そう思いながら代金を支払ってお皿を受け取ると、



「……なあ」



 お兄さんが口を開いた。



「俺、ギルドにGランクで依頼出してるんだ。客が少ないから呼び込みしてくれって依頼。報酬は一人につきポテもちチーズ一人前無料っていう安い依頼だけど……もし明日とか暇だったら、受けてくれないか?」



 ふむ、とお兄さんの言葉を聞いて私は考える。

 今からってのはアレだけど、明日なら問題無いかな。適当な依頼を受けるか観光するかくらいしか予定無かったし。

 私は皿の上にある、最初の方に揚がって素手で触っても問題無いくらいには冷めているポテもちチーズを掴んで一口食べる。……うん、懐かしくて、



「美味しい」


「!」



 五口くらいで残りのポテもちチーズを食べ切って、私は笑ってお兄さんに言う。



「美味しかったんで、また食べる為に明日も来ますね!」


「……!」



 お兄さんは驚いたような表情からくしゃりとした泣き笑いのような表情を浮かべ、「……ああ!」と答えた。



ポテもちチーズ屋台以外の屋台の人達はモブのはずなのに何故か微妙に設定が生まれている……。

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