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異世界で魔物使いやってます  作者:
異世界に来ました
19/276

エルフの老人は話が長い



「…どうかしたかね、お嬢ちゃん?」


「え、っあ、すみませんエルフの方を初めて見たのでうっわ本当に美形だ!耳長い!って思ってました!」


「ぶはっ!正直に言う子じゃな!良し良し、褒めてくれたし気にしとらんよ。それで、儂に何の用じゃ?」


「あっ」


「ヴー」



 いかんいかん、本物のエルフ!しかものじゃロリならぬのじゃイケだ!って思ってつい本音がポロリ。ポロリして良いのは生え変わる歯と昭和のテレビの中だけだ。落ち着け私。

 つい放心してしまったが、エルフのお兄さん…おじいさんか?とにかくこの人に花壇で蜜を集めて良いかどうか聞かなくては!



「あの、この子は私の従魔であるキラービーなんですが、この花壇で蜜を集めたいみたいで。ですから、えっと、許可を貰えないかと思って」



 くっそ頑張れよ私のコミュ力!基本的にお願いするの苦手なんだよね!ここ数日はイースが心を読み取って先回りしてくれてたのもあってより一層頼み方がわかんなくなった気がする!

 しかし、私の拙すぎる説明でも理解してくれたのか、エルフのおじいさんはにこにこと頷いた。



「おお、キラービーか!キラービーが蜜を集めたいと思う花というのは自慢出来る事じゃからな!勿論好きに集めてくれて良いぞ!キラービーが蜜を集めた後の花畑は、次の年になるともっと綺麗な花を咲かすと言うからな!」


「わ、ありがとうございます!良かったねハニー!オッケー出たよ!」


「ヴヴ!ヴヴッヴヴ?」


「うん、集めてオッケー!好きなだけ集めて良いけど、日が暮れたら終わりね?」


「ヴヴヴヴヴヴ!」



 ハニーを抱き留めていた両腕を離すと、ハニーは勢い良く花壇の方へと飛んで行った。ちなみにここの花壇は、噴水の周りを囲うように大きな花壇が四つ設置されている。

 わかりやすく説明すると、まず十字をイメージしてその中央部分に噴水を設置します。あとは線が通ってない空白部分にそれぞれ花壇を設置するとはい私が見てる光景が完成!!大体そんな感じ!

 目の前の花壇は水遣りされた直後だからか、ハニーは他の花壇へ直行していた。

 凄い素早い動きだったけど、そんなに蜜集めをしたかったんだね。



「おーおー、楽しそうに花の蜜を集めとるなあ」


「あの、許可してくれて本当にありがとうございます」


「うん?いやいや、儂も得するし気にせんで良えぞ。そういやお嬢ちゃんは魔物使いなんじゃよな?」


「はい。…あ!すみません自己紹介がまだでした!私は魔物使いのミーヤと申します!ド田舎から出てきたせいで色々と知識が足りてない一般人です!」


「そうかそうか、まあ数十年では大した知識を得られんのも事実じゃし、あまり気にするで無いぞ?儂は見ての通りエルフじゃ。エルフのメリード。好きに呼んでくれて構わんが、大体800年は生きとるから気軽に祖父と思って接してくれて良いぞ?」



 二十代前半に見えるイケメンなのに、800越えしてるのか…凄いなエルフ。イースもあれで年齢四桁だけど、イースはまた違う事情だしね。素でこの若さと美貌ってやばいなエルフ。

 …まあそれはそれとして、このおじいさん…メリードさん?凄い頭撫でて来る。にっこにこの笑顔でわしゃわしゃと頭を撫でて来る。何だろう、この、えっと、近所の子も自分の孫の様に可愛がるおじいさんみたいな感じ…。



「えっと…メリードさん?」


「じいじでも良いぞ?」



 にっこりとした笑顔なのに謎の圧がある!



「いや、私17歳なんでせめてメリーじいさんで!」


「メリーじいさんか。うむうむ、素直で良いなあ。素直で良い子なミーヤには小遣いをやろう」


「いや小遣い目当てじゃないんで大丈夫です!」



 ビックリした!メリーじいさん本気で銅貨出してきたよ!メリーじいさんって呼んで頭撫でられてるだけなのにお金貰うってあかんでしょうよ!



「…ミーヤは良い子じゃなあ。ああ、そういえばミーヤは冒険者でもあるのか?」


「あ、はい。今日冒険者登録してきました」


「そうかそうか、ところで今日は他に予定は?」


「予定?今日は特に無いし、ハニーも蜜集めをしたいだろうから日が暮れるまで噴水のトコに座って待機ですかね」


「おお!じゃったら儂と話をしてくれんか?歳を取ると寂しくてのー。エルフじゃから見た目変わらんし、そのせいで人間とは微妙に距離があって…中々話も合わんくてな」


「はあ…まあ、今日はもう噴水で座ってハニーを見るしかないなーって思ってたんで、色々教えてもらえるならこっちも凄くありがたいですけど」


「そうか!では座って話そう!ギルドには後で報告すれば良いしな!」


「……ギルド?」



 何故ギルド?



「あまりに寂しかったからギルドに依頼を出したんじゃよ。丸一日話し相手になって欲しいと頼んだんじゃが、いまだ誰も来てくれんくてのー」



 あの謎の依頼はお前かい!



「あの依頼は私も見ましたけど、普通に内容が不審でしたよ」


「不審じゃったか?」


「若い子とエッチな事しようと企んでるのかなって思いました」


「なんと!?……後でギルドにミーヤが依頼達成したという報告と共に一旦下げてもらわんとな…。もう少し来てもらえるような内容に改めよう」



 常駐依頼だったもんね、アレ。でも諦めはしないのか。

 噴水の端っこ、人が座れる位置に座ってメリーじいさんと話す。…話すのは良いけど、メリーじいさん見た目完全に若いイケメンだし声も若いイケメンだからギャップが凄いな。のじゃロリも現実だったら凄いのかな。のじゃロリに対しては最近食傷気味であんまり萌えなかったけど。



「そうじゃなあ、何から話すか。ミーヤは何か儂に聞いてみたい事とかはあるか?」


「そうですねー…あ、エルフって魔族とは違うんですか?」


「違うのう。ではその説明をしようか」


「お願いします!」



 メリーじいさんはにこにこと笑いながら話し出す。



「まず、魔族というのは魔物に近いところがある。…とよく言われるが、一番わかりやすいのは光魔法を使えぬという所じゃろうな。一部の聖なる魔物は光魔法を使えるが、そういう魔物は闇魔法を使えなかったり…まあ、基本出会わんからやっぱり光魔法が駄目なのが魔物や魔族と覚えた方が早いな」


「ふむふむ」


「そして儂らエルフは光魔法が使える。ゆえに魔族とは違うのじゃよ。ちなみに獣人も光魔法が使える個体がおったりするから魔族とは違うぞ。まあ獣人は基本魔法を苦手としとるがな」



 獣人は魔法が苦手……確かに肉弾戦のイメージが強いもんね。



「これはあまり知られておらぬ事じゃが、獣人は元は獣だったと言われておる。ゆえに魔物ではなく、魔族でもなく、人間でもない獣人じゃとな。獣が生きる為に人の姿を真似、獣人になったのだと」


「そうなんですか?」


「うむ。エルフも獣人と似た様なものじゃ。エルフは獣ではなく、植物が人の姿を真似たのではないかと儂は思う。かつて実際にそう考えとる奴もおったしな」


「エルフ植物説…」


「もっとも、この説はプライドが無駄に高い奴等が「エルフは独自に進化を遂げたのだ!誰があのように醜い人間などを真似るものか!」とかほざきおったせいで若い者は知らんがな」


「あ、植物説自体は否定してないんですね」



 素直に思った事を言ったら、驚いたような顔をしたメリーじいさんにまた頭を撫でられた。え、何?驚くような事言った?そして驚いたのに何故私の頭を撫でた?



「儂では無いエルフの言った事とはいえ、人間の悪口を言ったのに気にせんのじゃなあ。小遣いをやろうか?」


「いや、小遣いは自分で依頼こなして稼ぐから大丈夫です。それよりも、話の続きは?」


「おお、そうじゃったな。エルフが植物から進化したのではないかという話じゃが、何故そう思ったのかといえばエルフと植物がとても似ているからじゃ」


「似ている?」


「うむ。エルフはまず、肉が食えん。魚も食えんし卵も食えんし乳も駄目なのじゃ」


「うっわめちゃくちゃ大変。アレルギーみたいな感じですか?」


「あれるぎい?」


「あー、えっと…体に合わなくて痒くなったりする感じですか?」



 いかんいかん、アレルギーって言葉はこっちには無いのか。もしくはご老人エルフだから知らないだけか。でもそれはそれとして金髪イケメンエルフによる「あれるぎい?」いただきました御馳走様です。中身おじいさんだけどね!



「ああ、そういうのではない。なんじゃろうなあ……例えると…例え方酷い言い方でも良いか?かなりキツい例えになるんじゃが」


「?多分大丈夫だと思います」


「そうか?なら言うが……排泄物、食べたいと思うかね?」


「思いませんね」


「もしくは赤子のなりそこないとか……食べたいか?」


「食べたい食べたく無い以前の問題ですね」


「エルフからするとそんな感じなんじゃよなあ…。食える食えん以前に、食える物と認識出来んのじゃよ。儂らにとっては、肉も魚も卵も乳も、土を食うのに近いんじゃ」



 成る程、わかりやすい。土を食う民族に「食えるよ!」って言われても、「無理!」としか言えないもんね。何より口に入れたとしても結局土は土、食えるもんじゃない。

 ……流石はおじいさんというか、メリーじいさんの説明わかりやすいな。

 食べ物を排泄物とか赤子のなりそこないって例えには目を瞑る。見ない振りは日本人の特技だ。



「まあ、そういうわけじゃからエルフは植物系しか食えんのじゃよ。植物の仲間じゃから植物しか食えんのじゃないか?というのがそやつの考えじゃったなあ」


「へえー…」



 もし本当に植物だったら、骨はいけるんだろうか。植物って骨を栄養に出来るとか聞いた事ある気がするんだけど。豚骨みたいなのならいける可能性が…あるのだろうか。



「あとエルフは植物に関係する魔法が得意でな。水、風、土、光…この四つの魔法を得意としておる。そのせいで火魔法は苦手じゃったり、闇魔法に至ってはまったく出来んかったりするがの」


「え、でも四つも得意って凄いですね!?」


「そうじゃろうそうじゃろう!基本的に儂は花に水を遣ったり、土の状態を良くしたり、光が少ない時に光魔法で光合成をさせたりという使い方をしておる」


「めっちゃ平和的!」



 凄い理想的な魔法の使い方じゃん!確かに凄い花が生き生きとしてるなとは思ったけど、魔法の効果で良い育ち方だったのか!そりゃハニーも蜜を集めたがるよ!



「うむうむ、ミーヤは良い子じゃなあ。そしてな?エルフは基本的に闇魔法を使えぬのじゃが、一部使えるエルフもおるんじゃ」


「え、使えるんですか?」


「うむ。一般的にはダークエルフと呼ばれておるのじゃがな?そいつらは光魔法が使えぬ代わりに闇魔法が使えるのじゃ。光魔法が得意な儂らエルフは肌が白く、闇魔法が得意なダークエルフは肌が黒い。中々面白い違いじゃろ?」


「はい、凄くわかりやすくて良いと思います」



 というかこの世界ではダークエルフってそういう感じなのか。勝手にダークエルフは迫害されてると思ってたよ。



「昔はエルフの間に肌の黒いエルフが生まれ、しかも闇魔法の使い手じゃろ?突然変異で魔族が生まれた!とか騒がれて、ダークエルフとそれを産んだ者達が殺されたりしとったんじゃ。数百年前に勇者様が「ダークエルフはただ闇魔法に特化しているだけだ!」と皆に教えたんじゃがあまり広まらんくてのー…。最近になってやっと迫害が無くなったんじゃよ」



 あ、やっぱり迫害はされてたのね。



「勇者の言葉でも結構時間かかったんですね…」


「まあのう。どうにか光魔法はエルフ、闇魔法はダークエルフの領域、みたいな形になった。もっとも、いまだにびっみょ~~な距離が開いとるせいでエルフの里にはエルフしかおらんし、ダークエルフの里にはダークエルフしかおらんがの」


「……それは、まあ、仕方ないですね。そう簡単にどうにかならないですよねー…」



 国と国の戦いの話を聞いている気分だ。

 個人的には戦争の授業はあまり得意じゃなかったので話を変えたい。



「あ!ハーフエルフっていう種族も実際にいるんですか?」


「うむ、おるぞ。ハーフエルフはエルフと他種族のハーフ…と言われておるが、基本的に人間とエルフの間に出来る子じゃな。ハーフエルフは人間に比べれば長命で、エルフに比べれば短命な種族。顔付きはエルフにそっくりじゃが、肉や魚なども平気で食えるという羨ましい性質があるのう」



 羨ましいのか。



「ちなみに、何故人間とエルフの間に生まれる子ばかりなのかというと……まず、獣人とエルフの間に子は生まれんのじゃよ」


「え、そうなんですか!?」


「そうなんじゃよなあ…。やはり獣と植物だからじゃろうか」



 確かにその組み合わせだと子供は生まれそうにないけど!



「でも人間との間には生まれるんですよね?」


「うむ。獣人も人間との間には子を生せるようじゃしの。でも獣人とエルフでは子が生まれんのじゃ。恐らく獣人は獣半分人間半分、エルフは植物半分人間半分、みたいな感じだからではないかと儂は考えておる。ゆえに人間となら子を生せるのではないか、とな」


「あー、そういう…。獣人の中にエルフ成分が少しでもあればエルフと子を生せるかもしれないけど、普通にあり得ませんもんね」


「そうなんじゃよ」



 確かにエルフと獣人のハーフって聞いた事無いかも。

 人間とのハーフなら沢山創作物で見たけどね。人間が書く物だから人間との間に生まれるのかなーって思ってたけど、そういう説明をされると成る程ってなる。

 やっぱこの世界現実だわ。ファンタジーならどんな種族の間にだって子供出来るもん。男同士でも子供が出来ちゃうのがファンタジーである。触手とだって子供出来ちゃうのがファンタジーである。

 ………別に私はお姉ちゃんのプレイしていた触手系エロゲーを見てトラウマを抱いたりなんてしていない。ちょこっとしか抱いてない。人間牧場に吐き気を覚えただけでやんす。

 うっかり嫌なものを思い出してブルーになった私の脳内の惨状には気付かず、メリーじいさんはとても楽しそうに色々と話してくれる。



「ああ、それとな?エルフもダークエルフもこれは共通なんじゃが、集落には必ずユグドラシルというとても大事な樹が生えておるんじゃ。森には必ずこのユグドラシルが生えているとされ、エルフ達はその樹の近くに集落を作り、魔法で集落ごとユグドラシルを隠して守る。何故かといえば、ユグドラシルは枝を折っただけで枯れてしまう繊細な樹でな?」


「うわ、それは本当に繊細な樹ですね」


「うむ。じゃというのに、ユグドラシルはかなりの魔力を有した樹なんじゃよ。ユグドラシルの魔力で森が生きていると言っても過言では無いくらいには魔力を有しておる。そのせいでユグドラシルが枯れるとその森全部が枯れてしまってな?とても大変なんじゃよ」


「めっちゃくちゃ大変な事じゃないですか!?生態系が狂うじゃないですか!」


「そうなんじゃよ!じゃというのに、葉っぱや枝、木の皮やらに凄い価値があるとか言って人間がベキベキ圧し折って行ったんじゃよ昔!集落とユグドラシルを隠す魔法は勇者様が教えてくださった魔法なのじゃが、ほんっとーにあの魔法が無かったら森は死に絶えておったぞ…」


「ひえ…。過去の人間が申し訳ない…」



 私異世界人だから完全に何も関係無いんだけど、それはそれだ。

 人間がやらかした事には謝罪せねば。



「今はどうにか問題無いから気にせんで良い。それでユグドラシルなんじゃがな?ユグドラシルはユグドラシル同士で魔力か何かが繋がっておるらしくてな。ユグドラシルが枯れて森が一つ消えると、他の森のユグドラシル達もしばらく落ち込むというか…葉の力強さがちょっと減るんじゃよ」


「離れていても仲間の死はわかっちゃうんですね…」


「うむ。しかもな?ユグドラシルの根元にはそれはもう綺麗な泉があるんじゃ。その泉の水を飲めば病は消えるし呪いは消えるしHPもMPも回復するし…と何かもうもの凄い効果のある泉なんじゃよ。凄かろ?」


「凄すぎませんか!?」



 チートかと思っていたキラービーの蜂蜜よりも上を行ってるチート仕様!

 HPとMPならわからんでも無いけど、病気も呪いも消えるって相当だよね!?



「…あの、まさか」


「うむ。想像通り、人間の狙いはその泉も含まれておった。そういう争いのせいで人間嫌いなエルフも増えたんじゃよなー…」


「うっわあ過去の人間欲に目が眩みすぎの馬鹿野郎じゃねえのか本当すみません」


「いやいや、ミーヤは無関係じゃしな。同じ人間とはいえ、時代も相当違うんじゃし。……じゃがな?困った点はあった。ユグドラシルが枯れるとその泉の水は毒に変じ、辺り一体を毒の沼地へと変えるのじゃ」


「何ソレ怖い。というかさっきから思ってたんですけどかなり重要な情報喋ってませんか?」


「ああ、風魔法で音を遮断しておるから大丈夫じゃよ」



 発動してたのすら気付かなかったよ!凄いなメリーじいさん!

 通りでさっきから周りの音が聞こえないはず…もうちょっと異変に敏感になろう。今回はメリーじいさんだったから良かったけど悪人にやられてたら終わってたぞ私。



「それでの?樹が枯れると泉は毒の沼へと姿を変えるんじゃが、その毒の沼がまた嫌なんじゃよ!毒の沼を光魔法で浄化せんと辺り一体瘴気で生き物が住めん土地になってしまうんじゃが、とんでもなくしつこいんじゃよ!どれっだけ光魔法を浴びせてもちょこーっとしか浄化出来んくてな?しかも浄化しても元の泉には戻らんし!ただの大きな池でしかなくなるんじゃよ浄化しても!」


「メリーじいさん、ちょっとクールダウンして。興奮し過ぎて倒れないようにちょい落ち着いてください」


「儂は落ちついとるから大丈夫じゃ!」



 いやまったく落ち着いてませんよおじいさん!

 見た目程若く無いなら落ち着いてくれ!そんだけ面倒だったんだろうけど!

 私の祈りがメリーじいさんに届いたのか、自分がちょっと興奮気味だったのに気付いたのか、メリーじいさんは一回咳払いをしてちょっと落ち着いてくれた。あー良かった。血管切れたら怖いもんね。



「…それでな?浄化せんと毒の沼のままじゃし、しかも毒の沼には無数の毒々ヘビが住んでおるんじゃ。毒々ヘビの毒は光魔法では浄化不可能で、闇魔法でないと対処が出来ん。じゃというのにあやつらの毒、放っとくと死人が出るんじゃよ。毒にかかって大体一年で全身に毒が回る。最初は咬まれた辺りがちょっと麻痺しとるなーくらいなんじゃけど、半年で咬まれた場所周辺がドス黒い紫色になってな?そこから段々肉が腐り始めて、最終的に全身紫になって腐って死ぬんじゃ」


「こっっっわ!!?」


「そうなんじゃよ!怖いんじゃよあのヘビ!その一件もあってダークエルフを受け入れたんじゃよエルフは!光魔法で対処出来ん毒は闇魔法で操作するしか対処方無いからの!ほんっとーに…儂もな?昔咬まれた事があるんじゃよ」


「え!?大丈夫だったんですか!?」


「うむ、見ての通りピンピンしとるからの。儂はもう対処方がわかっとったし、ダークエルフと敵対もしておらんかったしな。すぐに解毒してもらった。…でもなあ、昔毒々ヘビにやられて死んでいったエルフを見た事があるせいでトラウマになっとってな。毒の沼を見た瞬間に気絶するくらいにはトラウマになった」



 それってかなり危なくない?毒の沼付近で気絶とか死亡確定じゃないか。



「でも光魔法が使える一定年齢を超えたエルフは強制的に浄化に連れて行かれるんじゃよ。儂はそれが嫌で嫌で……」


「それは…確かに、嫌ですね」



 プールで溺れた経験から水が駄目になった子を「慣れれば大丈夫!」って言って無理矢理プールに連れて行くのに近いと思う。本人としては慣れる慣れない以前に「無理!」が前面に出てるから結局無理なんだよね。



「じゃから儂は集落を家出同然で出て、人間の住む町に来たんじゃよ。それ以来ここ二百年程この町で生活しとる」


「家出して人里来たんですか!?」


「そうじゃよ。嫌な事強制されるのは嫌じゃからな。幸いここは森も草原も近いし、自然も豊かじゃしな。エルフとしては多少不便じゃが、昔ちょっと強い魔物を退治した礼にこの花壇と大きめの家を貰ったから住み着いたんじゃ」


「メリーじいさん行動力が凄ーい」



 二百年くらいって事は、その当時でも600歳くらい?うーむ、エルフの平均年齢がわからない。

 私はその後、日が暮れてハニーが満足するまでメリーじいさんの話に付き合った。



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