7. 召喚
「さぁ行ってこい小僧!儂のために!」
という訳で彼女の住処を出て、死体回収をする事になったアンドレ。
だがその前に下準備が必要である。旅仲間の確保である。
その為にはまずは“ペンタグラム”を用い、召喚を行うのだ。用法は既に心得てある。
「〜〜〜〜...」
アンドレは不用意に環の中に踏み込まぬよう細心の注意を払いながら、高らか...ではなく落ち着いた声で召喚の呪文を唱えた。
カァッ!
「何の光⁉︎」
ペンタグラムはその呪文に応じたのか、ピカッ、と光り出した。
そして、魔法陣からモンスター達が這い上がるように現れた。
僕は一応、今の実力で召喚する事の出来るモンスターは知っている。
そして、出すべきなのは、パーティの穴を埋めてくれる奴だ。その中で適していると踏んだのは、
まず『ゾンビ』だ。彼らには麻痺毒を備えているし、前衛に出せるタフネスを持っている。
次に、傷付いたこちらを回復してくれる”僧侶”が欲しいとは思ったが、なんとこれもモンスターの中にいたのだ。
とは言っても低級の呪文しか使えないが...言うならば『初級プリースト』と言った所か。
モンスター扱いされながら、彼らは人間のようだが、異世界では、他種族に飼い犬や奴隷の様な扱いを受けているのかもしれない。
最後は、先に挙げた2種類で穴も埋まっているし自由枠になるのだが、こんな可愛いモンスターもいたので選んでみた。鋭いウサギと書いて、『ヴォーパルバニー』だ。
回復でなく、“癒し系”として採用したというのが9割だが、突き出た前歯以外、普段のウサギと特徴の変わらないこいつらは、たまに、対象を一撃で仕留める能力を持つ猛獣でもある。
「うわぁ...やっぱり怖いな...」
ゾンビは3体、プリーストが2人、ウサギが3匹の大パーティ(?)が完成した。
モンスター達は指示を待っているのか、その場に留まってアンドレを見ている。
「しょっぱい顔触れじゃの、駆け出し程度なら流石に殺れるだろうが...」
「まぁよい、シェリダン!」
「はい」
アルカルドは部下の名前を呼ぶと、アンドレを指差し、こう続けた。
「こいつについていってやれ」
「はい」
彼女の返事は早かった。
「特別大サービスだ。儂のしもべを一人貸してやる」
「この人を?」
アルカルドは「そうだ」とこくんと頷いた。
コウモリから人型への大変化した、というのを見れば彼女もれっきとした異種であろう。
アルカルドのような性格でなければ良いが...
「えーと、『ヴァンパイア』のシェリダンていいます。今後ともよろしく...」
アンドレに対する彼女の声はさほど威圧をする様なものでは無かった。安心したのかこちらもモンスターっぽく名乗り返した。
「僕は『レベル1魔術師』のアンドレです。コ...コンゴトモヨロシク...」
途中で怖くなって少し途切れてしまったが、まあいいだろう。うん。
「でもアルカルド、このモンスター達は僕の指示で動かすのだけどさ、シェリダンさんは元々あんたの部下だから、指示系統が独立してしまっているんだ」
「かと言って貧弱な僕が指示するというのも...」
「そう固くなるな小僧。あとそれは儂に聞く事じゃーない」
「真祖様がよろしい様でしたら...」
「ならよろしい」
以外とすんなり受け入れてくれたようだ。
「でも、下手糞だと思ったら勝手に動いてくれ...ください」
「はい」
これ、どっちの立場が上なんだっけ?僕下っ端だったよね?この人(?)はそれでいいのか?
後で何か言われそうでまた怖くなってきた...
「では真祖様、言って参ります」
「健闘を祈る」
ドア自体は広がって出られないぐらい狭いので、モンスターとヒトが混じり、一列に並んで退室する様はとてもシュールであった。




