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見習い魔術師とちっちゃな真祖  作者: であぼろ
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6. 身をやつす

 ーー翌日ーー


「...うーん」


 随分と寝込んでしまった。赤い”原典”が枕になっている事に気付くと驚き飛び上がってしまった。


 よだれなどで、皺くちゃになっていないか慌てて見回したが、異変は無いと確認すると安堵の溜息をつく。お陰様で眠気は覚めた。


 最上段に書いてしまっているが、そもそも翌日なのかどうかは分かっていない。元々ここはダンジョンの内部なのだから。


「起きたか小僧」

「お、おはよう...」


 アルカルドは起きる彼を見ていた。先程の慌てふためく様子もだ。


「だだ..大丈夫だよ?」


「結局貴様、あれから1ページしか進められなかったではないか。見事に『気絶』しとったぞ」

「あっ...」


 そうだ、思い出した。僕は『ハイトの”原典”』を進めたけど、読む途中で気を失ったんだった...


「まあ、人間ならそんなもんじゃの」

「アルカルドはこれ、読んだの?」


「ああ、一通りな。筆者の体験談が中々面白くての、ついつい読み入ってしまったわい」


「(”原典”に対する感想じゃねえ⁉︎)」


 いたってなんとも無さそうだ。2〜3ランク下のモンスターだったらどんな反応をするだろうか。



 バサ...バサ....


「む」


 出入り口の方から何か聞こえてくる。しかし徐々に大きくなっていく訳でも無い。その場に留まっているかのようだ。


「開けてやれ」


 彼女はそれの正体を知っているようだ。


 言われるがままにアンドレは出入り口の扉を開けると、一匹のコウモリが飛び出してきた。


「うわっ!」


 びっくりしたアンドレをよそに、コウモリはアルカルドの目の前でその位置を保つと、みるみる形が変わっていく...


「コウモリ...じゃない?」

「儂の部下じゃ」


「ただ今帰って参りました」


 コウモリはヒトの形になって地に降り立つと、アルカルドの下に跪いた。


「何か変化はあったか?」


『彼女』は間をおいて、険しそうにこう告げた。


「王宮から”お触れ”が敷かれました。内容は...」



「ヴァンパイアロードの討伐とアミュレットの回収に莫大な懸賞金と”王宮付”の地位を約束する、と...」



「フッフフフ...」


 それを聞いたアルカルドは待ち侘びたとばかりに高らかと笑い出した。


「聞いたか小僧⁉︎大繁盛だ!」

「この国は軍隊を弾いたくらいで怖気づくようなチキンばかりで閑古鳥が鳴いていたが...」


「隣国、いや、世界中からぞろぞろとやってくるぞ!儂のために!」


 大量の”来客”を予感し、これ以上無い程の喜びを見せる彼女。


「あわわわ...」

「(やべぇよ...やべぇよ...)」


 彼女のテンションについて行けないのはさておき、冒険者を目指す筈がその冒険者の大群に本気で殺される羽目になった事にこれ以上無い程の戦慄を覚えたアンドレ。


「...ごほん、報告ご苦労であった。シェリダンよ」

「はっ...」


「さて、」


 彼女の首がアンドレの方にくるりと向けられる。何か特別な血筋でも無いのに、彼女の次のセリフが予測出来るのは何故だろう?


「”死体回収”の時間だ。行ってこい小僧」


 今日から僕は人でありながら、魔物に身をやつすのだ。



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