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見習い魔術師とちっちゃな真祖  作者: であぼろ
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36. 共同体

「本当、ですか?」

「マーカスの住処を知ってるだけだよ。でも、行き先がそこだとしても、ただの早上がりや見回りかもしれない」


 それを聞いてなお、シェリダンさんは十分だという顔をしていた。

 しかし、彼女がわざわざあいつの事を僕に尋ねる理由が気になる。


「ところで、どうしてシェリダンさんはマーカスを追いかけようと考えたんだ?」


 僕の問いに対してシェリダンさんは特にうしろめたさも無く答えてくれた。


「彼がアミュレットを持っているかもしれない以上、目をつけるべきだと思ったからです」


 そういえば、アルカルドは「それを持っていればお前でも無双できる」とか言ってたな。彼女も、あのアイテムに関して興味深そうにしていたから、狙っていると考えるのが妥当だろう。


「でも、もしその人が持っていたら、とっくに何かしらの行動に出ているんじゃないの?」

「いえ、アミュレットは、厳密には『起動』の術式を行なった場合のみ、その恩恵を受ける事ができます」

「超、機密の情報で、国王しかその術式を知らないらしいけどな」

「へぇー、それは初耳...て、何でアンドレも知ってん...いや、あんたその手の事情には詳しいんだったわ」


 一応僕の父親は近衛騎士だから、父がいた頃は、食卓を囲んでいる時によく国の事とか話してくれてたな。

 もうそんな事は無いんだろうが...


「でも、道筋の説明もしにくいんだよな...」


 また、マーカスの住処を知っているには知っているが、説明する道筋は単純でなく、割と入り組んだ所にあるので、正確には言えないのだ。

 どうしたものかと考えていると、シェリダンさんは思わぬ提案をしてきた。


「では、『案内』をお願いできますか?」

「それって...」


 それは、僕も彼女に付いていく事であった。


「ちょっと、アンドレは確か手配されている筈よ、大丈夫なの?」

「確かに危険ですがアンドレ君の為にもなります、そうですよね?」

「...うん」


 今まで戦っていた場所は、こちらの有利なフィールドだった。元々モンスターのはびこる所に、たかだか冒険者が十数人が短期的にとどまっている程度、数が違うのだ。

 シェリダンさんに同行する場合は、実質敵地に飛び込むようなものであり、大変危ないが...

「無理矢理、とは言いませんが、どうします?」

「...」

 しかし、これはチャンスである。虎穴に入らずんばなんとやらだ。首を横に振る事も考えられない。

「...分かった、僕も街に行くよ」

 ひとしきり考えた後、僕は承諾の意思を示した。

 すると、アルマが身体を前に出し、何かを訴えるように言った。僕の意思に対する文句だと思ったが、それも違っていた。


「じゃあ私も付いていきたいわ、駄目?」

「お、お前も?」


 僕が彼女の言葉に面食らっていた一方、シェリダンさんは動じずに「いいですよ」と、許した。

 しかし、僕は許した訳では無く、制止の言葉をアルマにかけたが――


「お前もとばっちりを受けるかもしれないんだぞ」


「運命共同体ってやつよ」


 と言って聞かなかった。


「では、街へは、真祖様が帰ってきた後に向かいましょう。あと、アンドレ君は先程の続きを...」


 休憩を終えて、僕は再び書物を開いた。アルマはしばらくその様子を見ていたが、シェリダンさんの了承を得て、室内をあちこち見回るようになった。


 やがて、各々の行動に集中するようになった時、変わった事が起こった。


 ズズズズ...


「...!」

「地震...かしら?」


 僕もはじめはそう思ったが、自然に起こるそれでは無いと感じた。


 子供が上の階でドンドン足踏みをされているような感覚。

 震源地は下からでは無く、上。


 心当たりは、ある。


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