35. どっちも
「まるで違う世界にいる気分ね...」
僕もアルマと同じ感想だ。あの日から、僕の生活はガラリと変わった。
いや、より良い方向へ変わる筈だったと言った方が正しいか。盗まれた国宝のダミーを押し付けられ、僕はこの暗い地の底へ突き落とされたのだ。
訓練生時代の仲間であるエースとフォルテ、そしてそばにいる彼女も、僕を守る為にその命を散らした。これまでもこれからも、人生で一番恐ろしい日になる事は間違いないだろう。
仲間に直接手を加えた訳ではないが、その一因を作り、僕にこのような目にあわせたマーカスには、もう一度会ってその真意を確かめなくてはならない。
そう思っていたのだが、自身の潔白を証明する筈が、僕は逆にモンスター側につき、悪事に加担してしまっているのだ。これでは、仮に盗みの罪が無くなったとしても、余罪によって、彼らは僕を断頭台にかけようとするだろう。
僕は当初の目的を諦めかけていた。
「ドレ...アンドレ君」
「はっ...」
そのような考えにふけっていた僕を現実に引き戻したのはシェリダンさんであった。
「ご、ごめんよ、ちょっと考え事をしててさ」
それを聞いたアルマはニヤニヤ笑いながらからかってきた。
「考え事、ねぇ...そりゃあ、美人二人と同じ席に着くもんだからボーッとしたくなるわよねぇ」
「そんなんじゃないよ...ていうかお前もカウントするんじゃない」
「あらあら、私の方は否定なさらないので?」
「それは...その...」
...シェリダンさんの言及はなんだか卑怯な気がする。アルマはいじけ顔で「いーっ!」て感じだが、彼女は悪そうな部分をちらりとも見せないのだ。
「...その...なんだ...どっちもキレイです、ハイ」
最早、しょんぼりと引っ込めるしか無かった。
「貴方も綺麗な顔して、小悪魔ねぇ」
「そんな事はさておき、て言うのは何ですが、少し聞きたい事があるんです」
「...何だろう?」
「アンドレ君の言っていた騎士の方と、事が起きる前は親しい仲と言ってましたね」
「アンドレの言っていた...マーカスの事かしら?」
ちなみに彼は、僕の仲間と特に接点がある訳では無い。仲間からの印象は、あの時の僕と同じ『尊敬する騎士様』であったが...
「そうだが、それについての事かな?」
「ええ、先程まで『外』へ出かけていた時、たまたまその騎士を見かけまして、なんとなく怪しいと思い、後を追う事にしたのです」
「どう...なったんだ?」
「いえ、ゴロツキ共に絡まれたせいで、見失ってしまいました。奴がけしかけたようには見えませんが...」
...そいつらをどのように処理したのかも聞きたい所だが、話がそれるのでやめておくか。
「わかった、聞きたいのは、その時のマーカスの行き先を予測しろ、という事かな」
「...! 心当たり、あります?」
「...」
予測なんてチート臭い事はこれっぽっちも出来ないが、元々は親しい間柄だ。住処ぐらいなら知っている。
という訳で僕は首を縦に振った。




