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見習い魔術師とちっちゃな真祖  作者: であぼろ
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31. 大災厄

 アルカルドは彼女を咎めるような鋭い口調では無かったが、シェリダンは何かとんでも無い事をしてしまったように、青ざめた顔になっていた。


「...シェリダンさん?」


 その直後、彼女はアルカルドに深々と頭を下げた。


「申し訳ございませんっ! あんな易々と道を教えてしまうなんて...!」


 僕が見た事の無いような取り乱し方であったが、アルカルドはそれを当然のように扱わず、彼女を宥めて顔を上げさせた。


「気にするなシェリダン、だがこの使い魔の飼い主に心当たりはあるか?」

「...は、はい、酒場の廊下で『オールスターズ』を見たのです。奴らは気付いていない素振りをしていましたが、やはり...」

「!」

「何ですって⁉︎」


 オールスターズという単語を聞いて、僕は震え上がった。嵐卿だけじゃなく、そいつらも介入するのならば、ここは今最高レベルの注目度になっている。ああ恐ろしい。

 だが、反応を示したのは、僕とアルマの二人だけでは無かった。シェリダンの話を聞いたアルカルドも、関心を寄せていたのだ。


「成る程、ならば飼い主はそいつらの誰かで決まりだな。お前が死ななくてよかった」

「すみません...」

「なーに、どのみち儂が対処するべき奴らだ、知ってる知らないで変わる状況じゃないさ」


 アルカルドは不敵にそう言いきると、彼女にその他に報告する事は無いかと続けた。


「んで、他には?」

「いえ、以上です」


 シェリダンの話はそれで終わった。二項目のみであるが、僕らを唖然とさせるにはそれで十分であった。


「どんどん大事になっていくぞこれ...」


 彼女は僕の方にも向き直って、頭を下げられた。アルカルドもこっちを向いたが、逆にふんぞり返っていた。


「ごめんなさい、こんな事になってしまって...」

「そういう訳じゃ。お前達はしばらく休んでてよいぞ。危ないからな」


 アルカルドはそう言った後、向かったのは部屋隅の『召喚陣』であった。彼女が陣の前に立ったのは見た事が無いが、その動機は一つと分かった。


「アルカルド...まさか」

「『奴ら』が相手となれば、儂もこのペンタグラムを使わなくてはならんのでな」


 彼女は手慣れたキャストで素早く陣を起動させ、モンスターを呼び出そうとした。床に刻まれた部分が光を放つ。


「アンドレ、これって...」

「うん、これがペンタグラムだ、わかるか?」

「これもあの子の影響なのかしら、わたしはあの模様を知っている...」


 またアルマが頭を抱えだしている。その気持ちは本当にわかるぞ...

 そして、とうとう召喚陣から大きな腕が這い出てきた。次に有角の頭部、筋肉質な胴体、翼と、そいつの全体像がはっきりとしてきた。


「ほげっ...」

「何よこれ...」


 そいつは、幼い彼女はおろか、僕らでも見上げる程巨大な『悪魔』であった。一体でも十分、震えるべきであるが、それだけではない。

 その悪魔が更に数体湧いてきたのだ。僕が召喚した場合は、一度に出現させる事が出来たが、彼女のしもべはサイズが大きすぎて陣の中に全員が収まりきれないのだ。

 やがて全ての召喚を終え、不自然に広い部屋の筈が、ギチギチになってしまった。彼女のしもべは以下の通りだ。

『グレートデーモン』が七体。

『ブラックドラゴン』が三体。

 極め付けには『デーモンロード』。


「フシュゥゥ...」

「グォルルルル...」

「...」


 ええ、大陸規模の大災厄ですとも。アルカルドはこんな化け物達を容易く味方につけられるというのか...


「デーモンに...ドラゴンなんて...そうよ...これは夢...」

「お、おい、しっかりしろ」


 僕はよろけるアルマを支えてやった。彼女は常識離れをした異形の出現に耐えきれず、卒倒してしまったのだ。


「僕は耐性がついてるから良いものの...」

「あの時アンドレ君、いっぱい怖がってましたもんね」

「うっ...」


 彼女も痛い所を突いてくるとは思わなかった。ギャーギャー叫んでいた時を思い出してしまったじゃないか...



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