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見習い魔術師とちっちゃな真祖  作者: であぼろ
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30. 虫コロ

 結局アルカルドの次の言葉を遮れなかったが、僕はこれ以上は言えなかった。しかしアルマは、特に困惑している訳ではなく、意を決したように言葉を返した。


「ええ、もしわたしでも力になれるならお願いするわ」

「...いいのか?」


 あんな事を思っていたが、友達が味方してくれるというのは正直、満更でもない気持ちだ。僕の意見はアルカルドの方へ振れてしまっていた。


「大事な人を放って帰れる訳が無いじゃない」

「...ごめん、アルマ」


 独りよがりな考えで、彼女を再び連れ戻してしまったのならば、二度と辛い思いをさせないように守ってやらないといけない。そうしなければ『向こう側』にいるフォルテとエースにどっせーい、と挟み撃ちにされるだろう。


「アルカルドも、ありがとうな...」

「...お前に礼を言われると気持ち悪くって寒気がするわい」


 そんな訳で、訓練所でのパーティメンバーの一人だったアルマもこれから住みつく事になった。慣れない生活の中に、馴染み深い友達とも一緒になれるので、これ以上に頼もしい事は無い。


「改めて、わたしはアルマっていいます。クラスは僧侶で、たたかいはできませんがちりょうのじゅつがつかえます」

「(嘘つけ僧侶は半分前衛職だゾ)」

「ああ、よろしく頼む」


 アルカルドは握手をする為に手を差し出した...というタチでは無く、それをアルマの額に当てた。


「え?」


 既視感がある。これは、僕も同じような事をされたので何をしているかは、はっきりとわかるぞ...


「挨拶ついでにだ。少し痛むぞ...」

「どういうこ...」


 ズキズキズキィン!


 しばらくしないうちに、彼女は激痛が走ったようにもだえ始めてしまった。


「うきゃーッ⁉︎」

「大丈夫、僕もそれ体験したからー!」


 やがて次の言葉が話せる程にアルマは立ち直るが、未だ痛みが残っているのか、片手で頭を抱えたままであった。


「うう...何をしたのよコレ...」

「ああ...それはなぁ...」


 知っている事なので、僕が代わりにアルカルドの行為の説明を行った。この住処に敷かれてある『召喚陣(ペンタグラム)』の起動法と、彼女特製の魔物除けも兼ねている。僕の場合は、それに加えて新しい呪文を無理矢理覚えさせられた事だ。


「でもアルカルド、アルマは僧侶だし、呪文は覚えさせたのか?」

「ああ、覚えさせたぞ。魔術師のお前が迷宮を把握するのに対し、こいつには、死んだ者の位置を知る呪文、“捜死者”を流し込んだ」

「捜、死者? 何をするつもりかしら?」

「その名の通り、死者を捜す為じゃ。故あって儂は必要としておる」

「なんか物騒だけど、訳は聞かないでおくわ...」


 僕も彼女と同意見だが、その呪文があれば、戦闘と探索時間を抑えられる可能性がある。

 一応味方モンスターにもプリーストはいたが、言う事を中々聞いてくれないのだ。さっき戦ってた時なんか、実は二人か三人かは別の呪文を使っていたんだよなぁ...ウサギ共もあんなんだったし。


「とにかく、探索する上で必要な知識は最低限与えた。ありがたく思え」

「強い悪魔ってこんな事出来るのねぇ...」


 そんな時、アルカルドが何かに気付いたように、玄関の方へ目を向ける。

 すると、ドアが開けられる。シェリダンが帰ってきたのだ。


「只今、帰りました」

「お前もご苦労だった」


 シェリダンを見てか、アルマがこっそり僕へぼそぼそと耳打ちをした。


「(あの人は...?)」

「(シェリダンって名前で、アルカルドの部下の吸血鬼なんだ)」

「(へぇ、この人も吸血鬼...)」


 アルマが声を出さずにびっくりしている一方で、アルカルドはシェリダンにこう尋ねていた。


「外で何か変わった事はあったか?」

「はい、城の方へ兵士が集められていると聞きました。恐らくは、こちらへ攻め込む準備をしていると見られます」


 それを聞いても、アルカルドは表情を変えずに次へ流そうとする。


「ふむふむ、それと他には何か...ん?」


 しかし、アルカルドは何かを見つけたように、顔をシェリダンから僅かにそらし、視線の先に『それ』を確認すると、地面の小石を拾い上げる。


「お前、虫がついてるぞ」

「?」


 アルカルドは彼女にそう指摘し、小石を右手の親指に乗せた。


 ビシィッ!


「いっ⁉︎」


 その直後、雷かと疑うような轟音が響いたアルカルドがその小石を指で弾いたせいであろうが、それが発する音では無かった。


「真祖様...一体何を...」

「まあ見てな」


 アルカルドは飛ばした先へと歩み寄り、壁にめり込んだ小石を摘み上げると...


「これは...」


 それを見たシェリダンの反応が気になり、僕とアルマもその跡に見入った。そこには、米粒程の小さな虫が潰れていた。


「...ただの虫じゃないの?」

「アルカルド、どういうことだ?」


 特に何の変わりも無いものだが、アルカルドはこんな虫コロに高い関心を示している。何故だろうか?


「こいつはこんな姿をしているが、何者かの『使い魔』じゃ、しかも高レベルのな」


 彼女はシェリダンの方を見て、言葉を続ける。


「シェリダン、お前は泳がされたようだな」

「...!」




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