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見習い魔術師とちっちゃな真祖  作者: であぼろ
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25. ご褒美

 何故、やらなくてはいけない事があるか、それは僕が迷宮内に出る前まで遡らせていただく。僕が目覚めた直後の事である。


 ーーー


 ソファーの上で起き上がったアンドレは、やや朦朧とした気分の中に確かな期待を寄せて、自身の使用できる呪文を頭に思い浮かべて確認した。


「やった...とうとう習と」

「やったぞぉぉーっ!ついに成し遂げたぞーっ!」


 レベルアップの実感を喜んだその時、突然アンドレのとは別に、歓喜の声をあげながらドアが乱暴に開けられた。


「うわっ、なんだよ⁉︎」


 そして、見てわかるくらいのウキウキ気分な少女アルカルドがその部屋から出てきた。こんな彼女は見た事がないぞ。


「おお、起きてるなら丁度いい!ちょっと来い!」

「ちょ...待って引っ張らないで...」


 寝起きである事お構いなしにアンドレはしわだらけの衣服をつままれ、彼女の部屋へと連れていかれた。


「ん?」


 そういえばこの場所に入ったのは初めてだ、とアンドレは辺りを見回した。しかし、王様ってくらい偉そうな女の子に似つかわしく無い、血生臭い光景であった。


「げっ」


 部屋内は広くとられており、奥にはロウソクの灯でほんわり照らされた机と隣にまた書棚、そこまではまだ良い。脇の方を見ると、死体らしきものが直立で並べられてあったのだ。

 だが、真に目を向けるべき点はそこでは無かった。


「あっ!まさか...」

「そのまさかよ」


 中央部にて今まさに起き上がろうとしているゾンビ...違う、生き人...あれ?


「蘇生を、完成させたというのか...?」

「如何にも!」


 それは、早すぎる朗報であった。ウソと言いたい所だが、目の前の綺麗な生き人が、術の完成を物語っていた。


「えええええええぇッー!」


 この歴史的瞬間を祝う方法は、ただ叫ぶ事だ。


 被験体も今の状況が掴めずにいた。迷宮の魔物達に蹂躙され、焼かれたと思ったら、それが無かったような綺麗な状態で意識があり、動けるのだ。彼からすれば、神の奇跡のように思ったのかもしれない。しかし目の前には女子供しか見えず、ますます謎が深まった。


「どうなってんだ...?」


 そんな彼のもとにアルカルドが見下ろして告げた。


「おめでとう。君は世界で一番最初に『死んだ状態』から生き返った人間だ」

「え? 生き返った? えぇ?」


 いきなりそのような事を言われても男は理解が出来なかった。しかしアルカルドは、困惑する人間を余所目に、更に歩み寄り、指をパキパキと鳴らしている。


「よくぞこの術を完成レベルに昇華させてくれた。褒美に死...いや...」

「何をする気だ⁉︎」


 彼女は今まさに鋭い爪を突き立てんとしていた。


「永遠の命をくれてやろう!」


 ずぶり、と首筋に刺さった。皮膚を突き破ったというのに、流血を起こさないのは、指先を通して血液を吸い取っているからである。


 ズギュン...ズギュン...


「あ...ああぁ...」


 急な脱力感に彼女の腕を引き抜こうとしている男の両腕は次第に降りていった。


「これが...『レベルドレイン』か...」


 モンスターの暴虐に対処しなくてはいけないのが我々人間のやる事ではあるのだが、最上位種『ヴァンパイアロード』に対して、先程毛が生えた程度の成り立て冒険者では月とスッポン。見慣れない彼女のドレインをただただ眺めている事しか出来なかった。


「...」


 うめき声はやがて止んだ。力の抜け切った手足は彼女に掴まれながらぷらーん、と垂れていた。ドレインの終着点は魂の喪失である。


「...こういった理由も兼ねてるのか?」

「ああ、その時はちょいと不足してたもんでな」


 やっぱり生を糧とする彼女にとってはぴったりの研究テーマであったとようやく実感した。本当に恐ろしいヤツだ。


「あと、この抜け殻って...」


 生き返ったばかりの男は、気の毒な事に、早速アルカルドの餌とされてしまった。ドレインによる死は、他より異質な死に方であるが、再蘇生はできるのだろうか。


「流石にこの状態での蘇生は不可能じゃが...」


 ピクッ


「...そういや、あんたはヴァンパイアなんだったな...」


 被ドレインによる死体がぴくんと動き、立ち上がった。


「そういう事じゃ。これぞ、生命のサイクルよ」


 アルカルドのドレインによって、新たな眷属が生成されたのだ。彼女はそいつを指先一つで示すと、ヴァンパイアと化した男は迷宮内へと消えていった。


「これって、すごーくヤバイ事なんじゃ...」

「その気になれば、人手なぞ無限に造れる...とはいっても、一度に何十回も使えるヤツじゃあ無い上、必ず成功する訳でも無い。まだ術式を突き詰めなくちゃあならんよ」

「それでも研究はまだ終わってないって感じか」

「勿論だ」


 変な奴だとは思った。しかし、この強い探求者気質は一体どこから来たのか、と彼女への関心もより深まっていった。平然と殺しを行うような悪い怪物なのに、どうしてだろう。


「そういえば、だ。前に儂が『友達を生き返して欲しいのか』と言って、お前頷いておったな」

「!」


 意外にも、アルカルドがそんな事を聞いてきたので、思わずオーバーな反応をとってしまった。しかし彼女は、アンドレの期待にそっくり応えてきた。


「ビッグネームを討ち取った褒美だ。お前が望む人間を持ってくればこの呪文をかけてやらんでもないぞ?」


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