24. レベルアップ
外では皆が二度目の食事を摂り終わった頃、アンドレはまた、冒険者狩りに勤しんでおり、今、敵パーティと遭遇していた。そして彼はその対応に追われている。
「アッシャーはそのまま攻撃、僧侶は皆で麻痺呪文、羽虫共はブレスを頼む!」
アンドレが連れているモンスターは彼自身がレベルアップをしたのか、一睡前とは違う面々であった。
より高位の僧侶モンスター五人と、死体を焼いた後の灰で造られた泥人形である『アッシャー』が四体。
そして、目に見えぬ虫達の巨大な集合体『ウォームズ』が九つ。以上がアンドレの新しいしもべ達である。
彼の指示を聞いた、アッシャー』の群れが無機質な音をたてて突き進んだ。
「守りを固めろ!」
三人の戦士は、モンスターの灰の腕を受けようと前に出た。アッシャー達の敵意が彼等へと向けられる。
「うおおおぉ!」
戦士の一人は剣で向かってくるモンスターの手首部分を叩き斬った。片手程度で止まるものではないが、バランスを崩す事が出来たので、残りの戦士が一度、二度と魔力の源を狙って突きを入れた。
「せぇやっ!」
「おあァ!」
二本目の剣は見事、当たりの部分に刺さり、アッシャーの一体は力尽き、灰の山と化した。
「やったぜ!」
「...とは言えねーな」
まだ、残りのアッシャーを処理した訳では無く、間髪入れずに、埋め込まれている麻痺毒を塗られた爪が襲いかかっていく。
「危ねぇ!」
二人は薙ぎ払いをなんとかバックステップを入れて回避。
いや、させられたといった方が正しい。
「やべ...」
二体のアッシャーは更に突き進み、硬直中の戦士達をその爪にかける。
「ほげっ!」
「ぐわっ!」
二人共、再回避は間に合わず、切り裂かれてしまった。傷は大して深くないが、麻痺毒は冒険者の自由を奪うだろう。これで戦士二人は倒したと言ってよい。
後衛の魔術師僧侶は彼等を案ずる気持ちを抑えつつ、詠唱を進めている。
ブゥゥゥゥゥン...
「ん?」
そんな冒険者達に追い打ちをかけるように、羽虫の大群『ウォームズ』の一匹一匹の四枚羽が力強く振動した。
「ま、まずい」
一塊のみではそよ風程度であるが、それが九つも集まれば話は違う。やがて強度を増した風はダンジョン内のガレキと共に冒険者達を吹き飛ばしていった。
「(これが、『ウォームズ』の恐ろしい所なんですよ)」
「お前そいつの何知ってんねんんんんんッ!」
バニィッ!
羽虫の大群が起こしたブレスは後衛もまとめてカベに叩きつけた。戦士はなんとか動けるが、他は彼のようにやわに出来ていない。僧侶一人と魔術師二人を戦闘不能にさせた。
「....」
しかし、魔術師の一人はまだ息があったようで、先程から練った呪文の締めの部分を呟く事が出来た。彼女の震えた手が赤く光っている。
それに気付いたアンドレは直ちにモンスターに退避を命じたが、遅かった。
直後、火炎が渦巻いた。
「畜生、許してしまったか...!」
アンドレや他のモンスターはなんとか避けたが、全ての『ウォームズ』が炎に包まれた。こいつらは高い攻撃能力を持つが、このように広範囲の呪文を受けると、簡単に全滅してしまうのだ。
そんな中でも術式を完成させたアンドレは、報復及びダメ押しにと、新しく習得した呪文を奴らへ解き放つ。
「(とうとう使えるようになった“火花”をくらえ...!)」
アンドレが腕をかざすと、今までの呪文と変わらぬ火の玉が打ち出された。それは、ある程度飛ぶと...
ボボボンッ!
火の玉は散弾の如く飛び散った。
「あぅ...!」
呪文はしっかり命中した。相手の魔術師にはしっかりトドメを刺したのを確認したが、最後の戦士がしぶとい。
しかしそれも、運悪く後手に回ってしまった僧侶達の麻痺呪文×5を浴びせて終わる筈。本来は一人だけに向ける予定ではなかったが、結果オーライだ。
「いけーっ!」
ビビバーッ!
「お..の....れ....」
無事、呪文は命中し、冒険者達を全員戦闘不能にした。なんとか勝った。
「“大炎”呪文まで使ってくるなんて、行動が一歩遅れてたら確実にやられていたぞ...」
そんな事を言いながらも、『戦後処理』を進める。すると、魔術師の死体に目を引くものがあった。
「良い外套だな、少し借りるぞ」
辺りをキョロキョロ確認した後にそれを脱がし、自身の装備と取りかえた。
「まぁ、僕が死ぬ前には返してやるさ」
この外套は呪文の強度を高める貴重な一品。そこそこの冒険者にしても良い物である。あの呪文が僧侶達に向けられなくて良かった。
処理を終えたアンドレは、動かぬ冒険者達をアッシャーらに担がせ、立ち上がる。
この戦闘で一体のアッシャーと、全てのウォームズがやられてしまったので、探索を中断しなくてはいけない所だが、これまで来た道を引き返したりはしなかった。
「(やらなくてはいけない事があるんだ。今回はちょっと無理をするぞ)」




