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見習い魔術師とちっちゃな真祖  作者: であぼろ
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23. 王国では

 翌日、Tレーゼ国内では、激震が走っていた。何故そうなっているのかと道行く人に聞けば皆、口を揃えてこう言う。


『大陸一番の冒険者が、かの迷宮にて死んだ』


 探索を始めようとしたパーティからもたらされた彼の訃報は、瞬く間に国中に広がっていったのだ。

 城内でも勿論、その話題で持ち切りであった。


「国王も焦っていましたね」

「だが、未だ様子見との事だ。報酬をより引き上げてな」


 朝の訓練を終え、カチャカチャと昼食を摂っているマーカスと、その取り巻きの騎士。彼らや、国王も嵐卿のこれまでの功績は十分認知しており、提示した『報酬』を受け取るのは彼であると期待を寄せていた。この騎士らの場合は危惧であるが...

 しかし嵐卿は、変わり果てた姿で寺院に担がれるという形で帰ってきた。それを聞いた国王はひどく落胆したが、気持ちは崩さず、報酬金の引き上げと、国籍問わずに迷宮探索を行う冒険者に対して寺院にて安く治療を受けられるなどの経済面での援助を行い、冒険者の招集を続行する考えを示していた。


「したたかな方だよ。まあ、『最強』を名乗っているのは何もヤツだけでは無い」

「...『オールスターズ』ですね」


 オールスターズとは、かつて世界を支配せんとした邪悪な魔術師を滅ぼした、四人の英雄達である。


『ムラマサブレード』の所有者、トシオ。

 聖なる守りに包まれた大君主、バナン。

 魔術師の頂点、エーコ。

 教皇を継ぐ者、ヨク。


 個々の戦闘力はサードに及ばないものの、束になった時の戦力は彼を凌ぐとされている。現状で最強の一団だ。


「ああ、そいつらが一番のヤマになるだろう」

「...あのヴァンパイアロードと、どっちが強いんでしょうね?」

「さあな、俺にもわからんさ」


 マーカスがそう言った後には彼の皿は空になり、先に席を立ったので、向かいの取り巻きが声をかける。


「マーカスさんはこの後どうされるので?」

「『パトロール』だ。最近、何が起こるかわからなくなったからな。そういう訳で先に行かせてもらうよ」


 そう言って彼は踵を返し、食堂を後にしていった。


「(何か起こすのはこっちの方なんですけどね〜...)」


 とり残された『取り巻き』は辺りを見渡すと、最早自身以外に誰もいない事を知る。


「やべっ!もうお昼休みが終わっちゃうじゃん!」


 急いでスプーンをかけこんで皿を空にすると、彼もすぐに食堂を出た。既に騎士達は集まっていたが、未だ昼礼の挨拶が聞こえていない事を確認すると、安堵のため息をついたのであった。

 一方、先に食堂を出たマーカスは、狭い路地裏を中心に歩いていた。一応、周囲を見渡してはいるが、隈なく通っている訳では無く、何処かへと一直線に進んでいるようであった。

 その場所は、どこにでもある一軒家、彼の住処である。

 中身も一見、こじんまりとした、という感想ぐらいしか思い浮かばないだろうが、玄関には、ある仕掛けが施されている。


「〜〜〜...」


 扉を閉め、小言で呪文を呟くと、何もない床がひとりでにスライドしたのだ。そして、その先には階段が続いていた。

 マーカスは出てきた階段を下りた。スライドされた床が彼の頭をくぐる頃には、玄関は先程の呪文が無かった事のように元通りになっているが、その時の為の光源は勿論用意している。彼は『明かり』を含む僧侶呪文を一通り使える『君主』クラスであるからだ。

 階段を抜けると、そこは壁のように書棚が敷かれた部屋の奥に机、その上には、何かが柔らかい綿に包まれて大事そうに置かれていた。それは、

 彼がアンドレに記念という建前で手渡したものと似たもの、いや、そのオリジナルである『アミュレット』が、

 マーカスの懐にて煌めいていた。


「いつ見ても美しいものだな」


 薄暗い一室の中でも一際目立つ程の輝きを放つアミュレット。一度じっくりと眺めたマーカスでも、また魅入られざるを得なかった。


 彼は、アミュレットの不在が騒がれる前に近衛騎士の信頼度をもってそれを盗みだし、あらかじめ作っておいたダミーを押し付けた者にその罪をなすりつける。

 そして、そいつがあの洞窟に逃げ込んだのも、実は彼が組んでいたシナリオの内である。この国の王はアミュレットを優先する余り、盲目になる。故に彼には再び同じ過ちを犯してもらう事を狙っているのだ。

 しかしながら、絶大な魔力を持つアミュレットを手中に収めたとはいえ、ただ持っているだけでは何の効果ももたらさない。マーカスはこれの使い方に難儀していた。

 国王は力を解放する手段を知っているらしいが、だからといって今聞き出す訳にはいかない。あくまで最終手段である。

 なので、この数日間はほとんどこの隠し部屋にこもり、試行錯誤や調べ物を続けていたのだ。


「とは言ってもな...こいつに関わる資料が少ないんだよな...」


 これは何処からやってきたのか、どんな物質で造られたのかも分からない。最早藁にも縋る思いで書物を開いている。

 ページをめくり、まためくり、を繰り返してみてもピンと来るような文字列は出てこない。やがて、本の右側が表紙一枚になったことに気付くと、今回も不作かとまた落胆した。


「これもハズレ、か」


 だが、こんな事くらいでへこたれる彼ではない。かれこれ十数冊は一通り目を通しているのだ。ただ、次の一冊に手をかける、または魔力を費やすだけである。


「(常勝無敗を作り上げた大因とも言われる一品だ。いくら闇に葬られたと言えども、必ず形跡は残っているはずだ)」


 この時の彼の目は、執心の王と同じものになっていただろうが、自身は気がついていなかった。











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