22. 広告塔
大陸最強の冒険者、ロウ・ザ・サードは今度こそ、真祖の手により葬られた。彼の故郷であるスケイル・ブレイの民は長きこと喪に服すだろう。
...死体が確認されればだが。
「流石にこいつ相手だと、吸う余裕は無かったな...残念だよ」
生き血を啜れず、調子を落としていると思いきや、大して落ち込んでいない様子だった。むしろ...
「だが、全然OKだ。こいつを広告塔として再利用してやるぞ...」
彼女はそう言うと、先程ブッ飛ばしたニンジャを担ぎ、シェリダンの連れているゴブリンシャーマン達に持たせた。
「シェリダン、こいつらを少し貰うぞ」
「は、はい」
「何をする気だ?」
アルカルドはゴブリンついでにヘルハウンド軍団を先導し、室内を出ようとしている。
「入り口近くにこいつを放り込んで呼び子になって貰う。『最強の戦士がこの迷宮にて倒された』という情報は良き燃料になるからの。あとお前らは留守番しとけ。」
そう言って彼女は出ていった。話を要約すると、サードの死を利用して、冒険者の招集に拍車をかけようという魂胆だ。アルカルドは人の生き血と魔術の実験材料である死体を欲しているが、こちらとしては堪ったもんじゃないんだよなぁ。
「まったく、無茶をさせるもんだ」
「もしかしたら皆ビビって来なくなるかもしれませんよ?」
「だといいんだがなぁ...」
来る来ない、どっちにしろここの存在は大陸全体に響くことだろう。ゾッとするなぁ。
「『勉強』する前に腹ごしらえします?」
「言われて見るとお腹すいてきたな。食べるよ」
時間感覚は麻痺してきたが、お腹の空く感覚は一定だ。前回もこのタイミングで食べていたな。そういう訳でやっつけた忍者サードの持っていたブラックボックスに、携帯食があった筈なので、それを取り出して頂こう。ここ室内だけど。
「今日は本当にありがとう」
「いえ、貴方が嵐卿をやっつけてくれなければ、私は恐らくヤツに殺されていました。礼を言うのは私の方ですよ」
「あれはいくらなんでもまぐれだよ...それに殺ったの僕じゃないもん」
だが、今だけはこの生還を喜ぼう。運も実力のうちだと言うし。アンドレは四角いパンの最後の一切れを口に入れる。
ごちそうさま、と言った後はまた彼女に広範囲呪文“大炎”の習得を軸とする魔術の指南をしてもらった。数日程度の修練ではほぼ不可能だが、“原典”による痛みの伴うサポートにより、比較した事は無いが倍以上、上達したような気がする。
“大炎”の習得まではいかないが、これと同じく広範囲で威力の抑えられた“火花”の呪文ならば、コツが分かってきた。明日こそ実戦投入だ。




