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見習い魔術師とちっちゃな真祖  作者: であぼろ
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21. 二度目の生還

 戦利品と死体の回収を終え、一緒になってホームポイントに戻るアンドレとシェリダン軍団。


「...シケてたな」

「ロングソードだとか薬は見飽きましたよ」


 それでも食料などの必需品は確保出来る。皆訓練の行き届いた良き冒険者達だ。意外とお腹の心配はいらないのかも。


「良い武器も手に入ったし、一段と強くなった気分だ」

「でもちゃんと魔法の方で強くならないと、ムラマサを持ったっておんなじですからね?」

「はーい...」


 ていうか今回は呪文は一つも使っていなかった。使おうとはしていたのだが、敵の奇襲に気が動転して、詠唱がキャンセルされてしまったのだ。よって経験点もクソも無い。


「(呪文を覚えるだけじゃあなかったな...)」


 人間と敵対する側についていても、『何事にも動じない』という冒険者の鉄則は忘れてはいけない。特に魔術師はパーティで一番クールでなければ、と偉い人は言う。


「帰ったらまた、します?」

「うん、お願いするよ(危ない省略だな)」


 今日は反省会も兼ねて魔術のお勉強だ。冒険者では無くても、常に研鑽をし続けるのは善悪中立共通である。彼女の協力もあって、最初の時よりも多く『ハイトの原典』を読み進める事が出来た。

 ...2ページくらい。割合で言うと今の所全体の一分にちょっと満たないかな。先は長い。

 と、そんな事を考えているうちに、アルカルドの事務所(本人曰く)の扉が見えてきた。


「帰ったぞアルカルドー!」

「あっ、駄目ですよアンドレ君そんな強く開けたら...」

「あひっ!」


 ばたーん! と勢いよく開けると突然、アンドレの目の前で燃え盛る火炎が横切り、温かーく迎えてくれた。


「...なんじゃお前らか、蹴り破るような派手な開け方をしおって」


 アルカルドが彼らを認識すると、炎はすぐに治まった。


「前に冒険者がここを蹴り破って侵入された経験もありますから、条件反射で攻撃を加える事もあるんです。言い忘れてごめんなさい」

「こ、今後気を付けます...」

「フン」


 そういう事もあったが、帰宅したということで戦利品をアルカルドに見せた。持ち帰れるだけの死体と、琥珀色の剣やブラックボックスなどを並べる。


「ふむふむ、今回もご苦労であったが...」

「こいつは...あのニンジャではないか」

「アンドレ君、お手柄でしたよー」

「サードに部隊をやられたけど、たまたま連れていったじーさんが弱点だったみたいで...」

「ほう、それは面白い情報だ。少し詳しく聞かせろ」


 アンドレは彼女に、ロウ・ザ・サードの襲撃からその顛末までを可能な限り話した。アルカルドは興味深そうに、こちらが文を切るたびに頷いていた。


「こんな感じかな」

「...無敵のアキレウスがパリスの矢に倒れたように、こいつもまた『英雄』であったな。でかしたぞ小僧」


 英雄とは随分と皮肉めいた言い方だ。父もそう呼ばれる程の器量と実力を持つが、そんな人でもそういうような最期を迎えたのだろうか。いや、そんな事は考えたくない。


「しかし、よくもまぁ一人で探索できるよなぁ。バカみたいに強かったにせよ...」

「ああ、儂もナメられたもんだ」


 アルカルドが『レベルドレイン』をする為に爪をニンジャの死体に突き立てた瞬間、何故か死体が消えてしまった。

 そして、消えた死体、と思っていたものは、いつの間にか彼女の背後へと回り込み、鋭利な手刀を構え始めた。


「こんな子供ダマシの死んだフリを差し向けられるとはな!」


 アルカルドはぐるり、と後ろのニンジャを見やった。


「御命、頂戴!」

「真祖様!」


 アンドレも「危ない!」と口に出そうと思った時には、すで に彼の腕は次のコマに進んでいた。

 それは、右腕が振り抜かれ、彼女の細い首を寸断される図。

 ではなく、止まったものを持つかのように、太い手首を捉えるアルカルドの姿があった。


「お前、ヴァンパイアロード一人ならば、どうにでもできるだとか思っていないだろうな?」

「おのれ...」


 ニンジャは残りの手足で抵抗を試みていたが、焼け石に水。全て空を切った。


 ゴッシャァ!


 そんな彼を黙らせるように、空いた右腕はそのままヴィンクの時と同じ箇所にぶち込まれた。一度は顔を変形させるに留まったが、彼女の殴打はそのような生易しいものでは無く、中心点から頭蓋骨ごと粉砕させた。


「つ、つよすぎる...」


 彼は劇的な整形を遂げ、倒れた。それは、首無しの方がまだマシと言える程、見るに堪えない有様だった。


「一人でも大丈夫だろうという傲慢さが、死を招くのだ。最後の最後で勉強不足だったな」

「お前がいうかね」




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