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見習い魔術師とちっちゃな真祖  作者: であぼろ
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1. 誤算

「誰じゃ、お前は?」


 こんな洞窟の奥底に女の子?どうなってるんだ。こちらより一回り小さいくせに偉そうな口調をしている。


 しかしながら、これでは人の家に勝手に入ってきてるという事だから、謝罪から入ろうか。


「勝手に入ったのが気に障ったのならごめんね。」

「...まあよいわ。それに、どこから湧いてきた?」


 この流れだと、この子の質問は続きそうだ。こちらも聞きたい事が山程あるのだが。


「一階から落ちてきたんだが...」

「なんと、それでこの『地下5階』まで来たというのか⁉︎」

「欠陥なの?アレ。」


「当たり前じゃろう。あんな入り口付近からいきなり最深部に来られたらダンジョンが成り立たんわ。」


 考えて見るとそうだわな。


「すぐに塞がんといかん。少しここを空けるから大人しく待っておれ!」

「あと、隅の『ペンタグラム』を踏んだり触れたりするなよ、とんでも無い所に飛ばされるからな。」


 そう言って、少女はアンドレが入って来た扉から出ていった。


「?」


 かなりの情報量に頭がこんがらがってきたので、彼女不在の間に少し整理する事にした。


 彼女が何者かであるという事だ。

 あのナリだが、滅茶苦茶偉そうだし、ダンジョンの穴を塞ぐとか言っている。


 以上から導き出された結論は、「あの少女がダンジョンのボスなのではないか」という事に至った。


 しかし、見た目からして弱そうだし、どうやってあんなピットを塞ぐのかは知らんがな。


 後の時間は、部屋の物色に充てた。ちょうど本棚もある。



 ーーーーー



 ダンジョン入口前


「恐らく奴はここに隠れた筈だ。それ程深い層にはいないだろうが...」


 穴ぐらの周囲は、騎士長マーカスと配下のトランレーゼ兵達が取り囲んでいる。


「魔術師一人でこんな所に入ろうだなんて無謀だと思いますがね。本当にいるんですかね?」

「自棄になって死にに行った可能性もある。未だに馬で逃げているのなら徒歩のお前達では無駄だろう。」


 一応、騎馬の追手は出してある。国王は、アミュレット奪還の為ならば如何なる手段も問わない。


「それにしても帰ってくるのが遅いな...私も待っている場合じゃあ..」


 ぎゃああぁッ!


「⁉︎」


 突然、叫び声が響いた。

 何故だ、この兵士共は低階層程度から安全の筈だが、


「お前達はここで待っていろ!すぐに戻る!」


 マーカスは穴ぐらに入り、梯子を使わずそのまま飛び込んだ。


 通路に出ると、右側に沿って走る。悲鳴はそこから聞こえた。


「ぐあっ...」


 急いで駆けつけると、兵士を装甲ごと片手で貫く、

 子供の姿が見えた。すでに五人程横たわっており、広場は血の池と化している。


「貴様は...」


 マーカスはその少女を知っている。彼女は...


「王宮付きの近衛騎士殿が一体何の用だ?」

「性懲りも無く『ペンタグラム』が目当てか?」

「....」


 かつて、先々代国王は、かの魔法陣を手に入れる為に総出を上げていた。しかし、迷宮攻略は悉く失敗し、次の国王以来、これは中止されている。


「ただの「人探し」だ。」

「ほう、そういやバカが一人彷徨いてるのを見たな」

「(...まさか)」


「だが残念だな。最近は来客が少なくて餌に困っておるのだが...」


「お前は協力してくれるな?」


 そう言って少女は手の平を張って真っ直ぐ突き出す。


 しかし刺突が届く頃にはマーカスの姿はそこに無かった。


「”転移”の呪文か、つれない奴め。」

「まあよい、迷宮の「修復」ついでにそこそこの死体が採れた。」


「あの餓鬼にも聞きたい事も出来たしな。よし、」

「帰るか」



 ーーーーー



「(フン、あんなもんに付き合ってられるか。)」

「あ、マーカス様。どうでしたか?」


「部隊は全滅だ。まさか奴と遭遇するとは...」

「⁉︎」


 周囲の空気が淀んだ。


「何があったんです?」

「ヴァンパイアロードだ。どういう訳かヤツはあの階層に姿を見せていた。私も正直危なかった...」

「ヴァンパイアロード⁉︎」


 更にざわついた。

 それが伝承の怪物の名であるのは、兵士達も周知の事であるが、近くに居たと、指導者である彼の口から伝えられたとあれば、狼狽えずにはいられなかった。


「それに、ヤツは冒険者を一人だけ見かけたと聞いた。」

「それって...」


「ああ。そいつが「造反者」である線が強い。」

「マーカス様の仰る通りでしたね。」


「あんな怪物と遭遇したんだ。奴は確実に死んでいるだろう。」

「だがその場合アミュレットはどこにあると思う?」

「まさか...」


 そう、事態は更に悪化していた。常勝無敗の力を宿すアミュレットを、あの大悪魔が所有している事になる。

 そうなると、こんな数十人程度の戦力では絶対に足りない。国全ての戦力をこの迷宮に注ぎ込まなくてはならない。あの魔道具にはそれだけの価値がある。


「一度撤退だ。この事を陛下に申し上げなくてはならぬ。」

「...はっ!」


 部下の口から高々と伝えられ、来た道へと並んで行く兵士達。


 今回の鎮圧は、対象を取り逃がし、アミュレット奪還すら叶わない散々な結果だった。国王ロベルトからの厳しい叱責、処罰は免れないだろう。


 しかし、先頭を征く騎士マーカスは途方に暮れる兵士達の裏で口を緩めていた。まるでこれが「嬉しい」誤算であるかのように。


「(ここまで事が運ぶとは思わなかった。しぶといアンドレには感謝しないとな。)」


「(このトランレーゼは近い内に滅ぶ。今に見ているがいい。)」



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