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見習い魔術師とちっちゃな真祖  作者: であぼろ
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17. 一人で


「うう...やっぱりこわいよ...」


 最深層では、巨人や魔竜などの怪獣達がズシンズシンと跋扈している。襲われないのはわかっているが、さっさと抜け出したい。


「安全地帯なんてどこにも無いんだけどねぇ...」


 そう言いつつもアンドレ達は急ぎ足で迷宮内を駆け抜ける。左を進み右を進み、幻影の壁を抜け、次の階段を上がる。上の層も同じ要領だ。次も、その次も。

 そして何事も無く第一階層への階段に辿り着いた。


「はぁ...毎日こんなんかよ...ワープ呪文が欲しくなる」


 しかしそれは最上級魔法に分類される。覚える頃には魔術師らしからぬ強靭な足腰を手に入れているだろう。


「前回ではここで冒険者と遭遇したけど...」


 この階に上がってきた所を迎え撃ったが、そいつら以外に二階層にいるパーティはいなかったし、今回も同様だ。でかでかと国が釣り上げるにしては少々集まりが悪いのでは無いかとは思う。それにしろ、アルカルドの言いつけ通り、一人でもクビを取らなくてはどやされる。冒険者を見つけなくては。

 前回引き返した地点の先を行くアンドレは奇襲に可能な限り備えようとする。前にゾンビ達、殿に下位僧侶ズ。ジジイは...どこでもいいや。


 そして階段を駆け終え、とうとう第一階層に踏み入れた。最も浅く、より弱いモンスターが配置される所だが、最深層以上の緊張が走った。

 何せ、冒険者は自らの実力に合った敵をある程度選択出来るのに対し、迷宮の魔物側は浅い所にいても、弱い奴から勝てない奴まで遭遇するのだ。これ程過酷なものは無い。


「ここからが本当の地獄だ...」


 一層気を引き締め、対冒険者に望む。

 そんな時に一筋の風が吹き抜けたように感じた。


「ん?風なんてこんな所で吹かなかったような...」


 しかし、その次に聞こえたものはアンドレを戦慄させた。

 悲鳴と、何かが落ちる音だ。更なる異変に思わず振り向くと、恐ろしい光景が見えた。


「どういう...ことだ?」


 僧侶達の首が見えていない。ダンジョンの暗闇のせいでなく、はっきりと見えていないのだ。そして、ようやく絶命した事に気付いたように、彼らはゆっくり倒れ、切り口からおびただしい量の血が流れ始めた。


「ッ...!」


 突然味方が落とされた事により、恐怖は最高潮に達した。まるであの時倒した冒険者の亡霊からの報復のように思えた。


「クソ...どこだっ!」


 アンドレの声に応じたのか、何者かはゆるりと姿を現した。装束を身に包み、避ける事を重視した軽い出で立ち、ニンジャだ。

 しかし姿を見せたのは一人のみ。他に仲間がいないのかが気になる所だが、それならばゾンビ共の爪を掠めるだけでこの戦いは終わる。加えてダメ押しの『睡眠』呪文も準備しておこう。


「行け!お前達!」


 四体ものの亡者をけしかけるアンドレ。

 しかし、その行動は間違いであった事を直後に思い知らされる事になる。

 一体目が腕を振るうより先に、ニンジャの剣閃が横に薙がれ、

 その隙を突こうとする二体目は後ろ向きのままもう片手の持つ刃物で喉に突き立て、

 同時に襲いかかってきた三体目と四体目には流石に反撃出来ないと踏み、跳躍で回避した。

 と思ったが、二体のゾンビの上で、両足で無く『両手』で着き、そのまま、

 頭をもぎ取った。


「んなっ...⁉︎」


 生々しい音が反響した。思わず取り乱してしまい、詠唱が中断されてしまった。

 瞬時の出来事なのでどうなっていたのかは皆目見当がつかなかったが、分かる事は、こちらのモンスター達はほとんど全滅した事と、もう一つあるかもしれない。


「あんたは...まさか」


 一睡前の心当たりをもとに尋ねてみると、彼は固そうな口を開いた。


「いかにも。私がスケイル・ブレイの“ロウ・ザ・サード”だ」



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