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見習い魔術師とちっちゃな真祖  作者: であぼろ
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16. 弱そうなじーさん

 

「う、う〜ん...」


 随分とぐっすり寝たもんだ。いつもならこんな時は朝だとか言っているのだが、外部と遮断され、時間感覚が狂っているのでそうはっきりと言えない。こうなれば、寝た数で日数を定義しよう。そうすると今は『三日目』、と言ったところか。


「お早うクソッタレ」

 目を開け、真っ先に見えるのはのんびりと腰掛け、茶を啜るアルカルドの姿であった。


「お...おはよう」

「冒険者の朝は早いとよく聞いておるぞ。適当に何か食ったら出るがよい」

「(そういえばやっつけた冒険者のカバンに携帯食があったな)」


 これからはダンジョンの中で生きる事になる。そうなると誰かの物でしか食いつなぐ手段が無くなるだろう。まあ、どっちみち危ない所に入り浸るつもりであるから文句はないのだが...


「わかったよアルカルド。あと、僕が呼んだモンスター達は?」

「ダンジョン内に摘み出したわ。邪魔だったんでな」


 見渡しても彼らの姿が見えないと思ったら彼女の仕業だったのか。結局ウサギを愛でられなかったな...


「という事はまた『召喚』をしなければいけないのか」

「ああそうだ。さっさと呼べ」

「はーい...」


 アンドレはよろけながらペンタグラムの元まで歩み寄り、再び召喚の呪文を唱えた。


「(流石に一往復だけでは目に見える強化点は無いからなぁ)」


 召喚可能モンスターが増えた訳ではないので、前回と同じメンツにしようと思ったが...


「(シェリダンさんから教わった呪文全体化のコツも実践したい所だがなぁ...あれ?)」


 別の事を考えていたせいか、手元が狂ってしまった。自身に悪影響は無かったが、次に見える光景によって、呪文の失敗を悟った。


「...なんだこのオッサン⁉︎」


 ゾンビと下位僧侶までは良いのだが、こちらの意図とは異なる者が一人いた。召喚陣に紛れて立っている、カンテラを持った謎の老人だ。


「見ただけでも間違えた奴を呼びおったのう...」

「知ってるのか?」

「ああ、『ヴィンク』といってな、見た目通り使えないジジイさ。だが、手に余る」

「手に余る?」


 アルカルドならば、弱いの一言で片付けられそうだと思ったのがこいつの説明でもう一つ加えられるとなると、只者では無い気がする。

 しかし彼女はその説明をする為に口を開いたと思いきや、何かしらの呪文を唱え始めた。


「うん?」

 そして完成した呪文は一筋の稲妻になって、彼女の指先から老人だけを貫かんと射出された。


 ずどんッ!


「のわぁっ⁉︎」


 突然の閃光に目を逸らしてしまったアンドレ。アルカルドが放ったそれによって真っ黒になった様を想像したが、チラッとヴィンクのいた所を見た。


「あれ?」


 老人はまるで何も受けていないかのようにピンピンしていた。しかも発生源の彼女にさえ目をやる事もしないのだ。


「こういう事だ。コイツにはデーモンと同等の呪文妨害能力を持つ。ついでに物理も当たらないぞ」

「...何それ?最強じゃんか!」

「だがなぁ...」


 アルカルドは深刻そうな顔で告げた。


「攻撃手段を一切持たんのよコイツは。儂とて仕留められない故、決してザコとは言えんが、使えない奴と言ったのはそういう訳だ」

「やっぱりね...僕が召喚できる程低レベルに分類されるもんだから仕方が無いよねぇ..,」


 一時真っ赤な期待を寄せていただけに少しガクンとした。だが、非常に惜しい奴である。


「最下級だが、長年謎に包まれたモンスターじゃ。連れていれば、もしかしたら何か分かるかもしれんぞ」

「(絞りカス同然のじーさんにこれ以上何を期待するんだか..)」


 アルカルドは意外にもそこらのスライムよりもまともなフォローをしてくれていたが、それでも正直再召喚を行いたい気持ちだ。しかし、召喚呪文は一日に一回という制約がある。一日というよりは十分な睡眠を取らないともう一度使えないと言った方が正しいか。


「これで行くしか無い...あっそうだ」


 冒険に行く時になってようやく気付いた。シェリダンの姿がさっきから見えていない事に。こんなタイミングで思い出すとは中々性格の悪いと思ったが、構わず彼女の行方をアルカルドにたずねた。


「そういえば、シェリダンさんはどうしてるんだ?」

「ああ、あいつは先に迷宮へ行かせた」

「げっ」


 という事は早速彼女抜きでの探索をしなくてはならないのか。いつかはこんな日が来るとは思っていたが、早い、早すぎる...


「そう焦るな、探索箇所は変わらんから合流は出来るじゃろ。それにお前は迷宮の大まかな構成を覚えている筈。ガイドなど必要なかろう」


「(そういう前提で言ってやがるぞこの悪魔...)」

 一応は死ぬ程歩き回ったので迷宮を理解出来てはいるつもりだが、もし覚えていなかったと思うと背筋が凍る。


「まぁ、行ってくるよアルカルド」

「無惨に狩られない事を祈るよ」


 再びアンドレはモンスター達を率い、戦場に身を投げた。次の冒険は、より重苦しい気がする。






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